広告:ここはグリーン・ウッド (第6巻) (白泉社文庫)
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■夏の日の想い出・少女の秘密(11)

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3月2日(木)。青葉が富山から出てきた。私は成り行きで、都内のホテルで行われた彼女たちの打合せに同席することになった。
 
集まっていたのは、青葉、千里、和泉、秋風コスモス、アクア、川崎ゆりこ、ステラジオのホシとナミ、小野寺イルザ、谷崎聡子、阪元アミザ、城崎綾香、谷川海里、リダンリダンの信子、ハイライト・セブンスターズのヒロシ、Rainbow Flute Bandsのポール、ジュン、モニカ、丸山アイ、スカイロードのkomatsu、長尾泰華、奥原沙妃、城島ゆりあ(初対面になったが名刺を頂いた)、それに射水市の病院に勤務している外科の松井医師、それと都内の大学病院に勤務している婦人科の朝倉医師(この方からも名刺を頂いた)、都内で産婦人科を開業している大間医師(同じく名刺を頂いた)、そして@@エージェンシーの野坂社長といった面々であった。
 
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総勢27名である。
 
「これで関係者は全員集まったかな」
と司会役らしい千里が言うので、私は
「何の集まりか知らないけど、私、たぶん無関係」
と言う。
 
「うん。実は誰が関係者なのかが分からないようにするため、無関係の人までかなり集めている」
と千里は言う。
 
「父親である可能性のある人物は全員ここにいる」
とヒロシ。
 
「胎児認知した人物もここにいる」
と信子。
 
「妖精本人と、彼のお世話係で付いている光子ちゃん以外は全員揃っていると思う」
と丸山アイが言った。
 
どうもこの3人あたりは“関係者”っぽい。
 
「そういう訳で『妖精創造プロジェクト』も皆さんのご尽力で何とかここまで無事に来ましたので、とうとう明日、子妖精の遊離を実行することになりました」
と千里は言った。
 
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「遊離って、無性生殖みたいだ」
という声があがる。
「うん。本人に恋愛をする意志がないから、無性生殖と似たようなもの」
と信子。
「実は本人、自分の精子で妊娠した可能性もある。でもDNA検査はしないことにしているから」
と丸山アイ。
「そういう訳でdeliver 出産というよりrelease 遊離だね」
とヒロシ。
 
朝倉医師が立ち上がって発言する。
「クライアントの体調は万全です。ここまで風邪も引かずに安定した状態で妊娠を維持することができたのは関係の皆様のご尽力のたまものだと思います。手術は明日のお昼過ぎから実行します。どうしても本人の生活リズムがお昼前に起き出して夜中すぎに寝るというサイクルになっているので」
 
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「ここ2ヶ月、病院に入院していてもそのサイクルを堅持しているのがなかなか」
とポール。
 
「食事も病院の朝食をパスし、お昼と夕食は病院の御飯食べて、夜食を自主的にとってるし」
 
“妖精”というのは、どうもレインボウ・フルート・バンズのフェイのことらしいと私は思い至る。
 
話を聞いていると、フェイはカウントダウンライブに顔だけ出した後、ずっと入院生活をさせていたらしい。しかしベッドの上でも精力的に曲を書いていたとのこと。
 
「本人が長いこと、そのリズムで生活してきているので、そのままのリズムを崩さない方がいいと言いましたので。それと本人の1日のリズムを観察するとお昼すぎくらいがいちばん出産しやすい状態になるようですので」
と青葉は補足した。
 
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これも話を聞いている内におぼろげに分かったのだが、千里と青葉はここまでフェイの妊娠維持のため、霊的なサポートをしていたようである。それで何とか満8ヶ月まで育ったので、帝王切開して子供を取り出そうということのようである。
 
「十月十日まで待たずに8ヶ月で帝王切開ですか?」
という質問がある。
 
「実際問題としてここまで無事妊娠を維持できたこと自体がほとんど奇跡なんです。一般的にこのくらいの週数まで来た子は保育器で本来の出産予定日まで育てることができますので。それと本人の子宮が小さいので大きくなりすぎると圧迫されて色々不都合が生じるので」
と朝倉は説明する。
 
「まあ何度かヒヤっとしたことはあったね」
「その度に川上さん姉妹に助けてもらった」
「本人が不摂生だから」
「制作やってて、もう寝ろよというのに、後少しとか言って、なかなか寝ないんだもん」
 
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「結局本人の戸籍上の性別はどうなったんですか?」
とステラジオのナミが質問している。
 
「妊娠が発覚してからすみやかに申請をおこないまして、裁判所から本人と医師も呼ばれて裁判官とお話し合いもしましたが、無事認められましたので、昨年11月に、戸籍上も女性になりました。ですから出産届も問題無く受け付けられるはずです」
と朝倉。
 
「妖精君の性別に関しては色々噂もあったんですが、あの子、本当にこれまで戸籍上は男だったんですか?」
と城崎綾香が訊いている。
 
「プライバシーに関わるのであまり詳しいことは申し上げられませんが、元々性別が曖昧で、出生時にはペニスのようなものが認められたため男児として出生届が出されたのですが、当時ご両親は、性別を留保して出生届が出せることをご存知なかったそうです。実際問題としてこれ産科のお医者さんでも知らない人がけっこう居るんですよ」
と野坂社長が説明した。
 
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「でもそのペニス状の突起には尿道が通ってなかったらしいんですよね。だから実はペニスというより大きなクリトリスに近かった。陰嚢は最初から無かったと言うし」
と丸山アイ。
 
「はい。それもあり、本人が物心付く前から、この子、本当は女の子なのでは?という疑惑もあり、大きな病院で精密検査をしたところ、陰茎、睾丸、卵巣、子宮と両方の生殖器を持っていることが判明して、本人が自分で性別について判断できる年齢になった所で、現在の法的な性別にはとらわれずに性別を決めて、必要なら裁判所の審判をあおいで性別を変更し、それにあわせて形成手術もしようという方針になったということです」
と社長が説明した。
 
「ただ排泄とかに絡む部分を修正したり、物理的な位置がこの器官がここにあるとまずい、といったようなものは小さい頃から何度も手術して調整していたらしいです。だから本人は毎年何か手術される、という意識だったらしいですよ」
とポールが言う。
 
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そのあたりは医師のほうから説明してもいい気がしたのだが、敢えて医師は発言しなかったのは、『詳しいこと』『正確なこと』は公開したくないからだろうと私は思った。
 

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「精神的な発達についても曖昧だったみたいですね」
 
「そうなんです。幼稚園に入る段階で、お前、男の子の制服と女の子の制服とどちらが着たい?と訊いたら、スカートの制服を着たいと言ったので幼稚園側とも話して女児として通園させることにして、小学校にあがる時も再度本人に訊いて、両親と医師で教育委員会まで行き、戸籍上は男の子ということにはなっているものの、半陰陽で実質女の子なので、女子として就学させて欲しいと言い、半陰陽であればということで、教育委員会の許可も出て、女子として通学することになったそうです。でも実は本人、スカート穿いている日もあるけど、ズボン穿いていって男の子みたいな言動をする日もあるので、お友達などもあの子の性別については、曖昧であることを認識していたようです」
 
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と野坂社長が言った。
 
「それで小学校で女子として生徒原簿が作られていたので、その延長で中学や高校でも、女子生徒として進学し、基本的には女子制服を着ていたのですが、男子制服も調達して、それを着ている時などもあって、あの子、男装すると男に見えるから、結局曖昧な性別のまま友人たちに受け入れられていたようです」
とジュン。
 
「ただ、そのあたりが人によってとらえ方が違うみたいで、女の子になりたい男の子と思っていた人と、男の子になりたい女の子と思っていた人があるみたいですね」
と丸山アイが言う。
 
そういうMTFなのかFTMなのか、よく分からないのは丸山アイもだよなあと私は思った。
 
「本人の意志で小学5年の時から女性ホルモンを摂取していたので、おっぱいは中学に入る時点でAカップくらいあったそうです。それで体育の着換えなどは女生徒と一緒でも問題なかったみたいです。スクール水着も破綻無く着ていたらしいですし」
と信子。
 
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「中学生の頃は、女の子水着を着る時は、ちんちんはうまく隠していたみたいだね。私もそれやってたし」
とモニカが言っている。彼女は高校1年生の時に性転換手術を受けたと聞いたことがある。
 
「小学校高学年の時点で、やはり将来的には女性として生きて行きたいと本人も言ったので、男性器は結局、中学高校時代に段階的に手術して除去して、女性器が不完全だったのも形成手術して女として機能できるようにしたものの、性別変更の申請は20歳すぎてからしようかなどと言っていたそうです」
とヒロシ。
 
フェイ・ヒロシ・信子・丸山アイの4人がいちばんの“仲良しグループ”のようである。例の“女湯クラブ”というのも、この4人が中心メンバーっぽい。しかしヒロシの言い方だと、子宮や卵巣はあったのに、膣は欠損していたのだろうか?あるいは陰唇などが不完全だったのか。しかしそのあたりが人工的に作ったものであれば、経膣出産は無理だから帝王切開にならざるを得ないだろう。
 
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「半陰陽の場合は、20歳を待たなくても性別の修正はできるのでは?」
と城島ゆりあが尋ねているが
 
「そのあたりはご両親、特にお父さんの感情にも配慮したみたいですよ」
と丸山アイが言っている。
 
そういえばそんなことを昨年9月の記者会見の時も言っていたなというのを私は思い起こしていた。
 

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実際にフェイの帝王切開は翌日のお昼すぎから行われた。
 
青葉と千里、札幌から出てきたフェイのご両親とお兄さんに妹さん、ヒロシ、信子、丸山アイ、川崎ゆりこ、小野寺イルザ、谷崎聡子、阪元アミザ、奥原沙妃、城崎綾香、野坂社長、フェイの事実上の付き人・光子さん、それにレインボウ・フルート・バンズのポールとジュン、それになぜか私が、都内の大学病院に行き、分娩室前の廊下で手術を見守ることになった。昨日の会議の時よりは少ないものの、結構な人数である。
 
この日、ヒロシは女装していた。私も彼の女装は何度か見たが、普通に可愛い女の子にしか見えないし、女声で話せるので、裸にでもならない限り、女でないとは思われないだろう。
 
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丸山アイも女装である。そしてヒロシ、信子、丸山アイの3人だけが、手術着に身を包んで手術室内に入り、帝王切開に立ち会った。ひょっとしたら、その3人が父親候補?とは思ったものの、3年も前に性転換した信子が父親のはずはないと思い直す。精液を冷凍保存していて人工授精したとかであれば可能性もあるがフェイの発言を信用するなら「うっかり妊娠してしまった」状況だったようなので、人工授精はあり得ないだろう。そもそも信子は「突然性転換」してしまったので、精液を冷凍保存したりする時間は無かったはずだ。
 
手術は朝倉医師が執刀し、大間医師と松井医師はサポートだったようであった。
 
青葉と千里は廊下にいたのだが、ずっと目を瞑って何かに集中しているようであった。身体は廊下にあっても、霊的には手術室内に入ってサポートしているのだろう。ふたりも手術着を着ていたので、何かあった場合は、中に入って直接手助けすることになっていたようである。
 
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2017年3月3日。私の時計で12:22:22、「おぎゃー」という元気な産声が聞こえて、廊下にいた面々は顔を見合わせた。思わず拍手が起こり、フェイのご両親がみんなに頭を下げた。
 
産まれた子供は女の子で、体重は1620g。すぐにNICUに運ばれたものの、生まれてすぐに元気な声で泣いたことも示しているように呼吸がしっかりしていた上に、様々な検査の末“どこにも異常が無い”ということになり、3日後にはGCUに移動されたらしい(*1)。
 
「母親が異常だらけなのに、娘は異常無しというのは偉い」
とフェイは自分で言っていたという。
 
(*1) NICU=Neonatal Intensive Care Unit 新生児特定集中治療室 
GCU=Growing Care Unit 発育支援室 
 

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