広告:ここはグリーン・ウッド (第6巻) (白泉社文庫)
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■夏の日の想い出・翔ぶ鳥(17)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-03-17
 
宮城県M市でのカウントダウンライブを終えた私たちは、こけしで有名な遠刈田(とおがった)温泉まで移動して旅館に投宿した。午前1時半頃に到着して、松前会長の音頭で乾杯した後、即解散してほとんどの人がそのままお弁当と飲み物をもらって部屋に入ったが、18人ほどが大広間に残って歓談をした。それでも私や和泉などの常識派は1時間ほどであがって部屋に入ったものの、近藤さん・鷹野さん・黒木さん、それに海香さん・ゆまなどが、まだまだ飲む態勢であった(七星さんは私たちと一緒に2時半頃引き上げた)。
 
私は6時頃目が覚めて、まだ熟睡している政子は放置して温泉に入りに行った。私が出ようとしていた所で和泉も起きたので一緒に行く(部屋数に余裕が無いので、私と政子、和泉・小風・美空が5人で1部屋である)。
 
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途中の廊下で、千里・青葉の姉妹と一緒になった。この2人は、ゆま・七星・ヒロミと同室である(七星さんの言うよう『性別の怪しい人の部屋』)。
 
「ゆまは結局海香さんや近藤さんたちと一緒に朝まで飲み明かしたみたい」
「頑張るなあ」
「七星さんも参戦したかったみたいだけど疲れてダウン」
「七星さんは負荷が大きいから、体力もたないだろうね」
 

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「他の所のカウントダウン・ライブもかなり盛り上がったみたいだよ」
と千里が言う。
 
「へー」
「ラビット4は予定時間を大幅にオーバーして午前3時頃までやってたらしい」
「それ会館側は何か言わないの?」
「何度ももう時間過ぎてますと言われているのを強引に続けたんで、会館側が物凄く怒っているらしい」
「ああ・・・」
 
「プロダクションの社長とレコード会社の社長が今日にも現地に赴いて、謝罪するという話になっているみたい」
「ルールは守らないといけないなあ」
 
「他のアーティストにも影響が出るからね。特にカウントダウンは本来貸せない時間帯をお正月だからというので特別に貸してくれているんだから」
 

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「リダンダンシー・リダンジョッシーは、カウントダウンをやって0時になった瞬間に、リズムセクションの4人とホーンセクションの4人の位置が瞬間的に入れ替わるというイリュージョンをやって、物凄く盛り上がったらしい」
 
「面白いことするね〜!」
 
「実は男性メンバーが女装して、女性メンバーが男装しただけです、などと中村さんが言って、笑いを取っていたとか」
 
「あはは」
 
「スカイヤーズは『新しい年になったので僕らは性転換することにしました』と言って、全員ナース服を着て、0時以降0:30まで演奏したらしい」
 
「冗談がきつい」
 
「『これ、トイレは女子トイレに入らないといけないかなあ?』とかBun-Bunが言ったので、『どちらに入るかは個人の自由だが、痴漢で逮捕されたら、メンバー首だから』とYamYamが言っていたとか」
 
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「いや、Bun-Bunは過去の発言からも結構女装が好きみたいだ」
と和泉が言っている。
 
「ステラジオは0時以降はPAを落として、生ギターと生ピアノの音だけで0:30まで演奏したらしい」
 
「ああ、それもいい風情だろうね」
「私たちとアコスティックの順番が逆だね」
 
「でも実際問題として、私たちの場合は、前半が元々アコスティック・タイムだったから、落雷の後、補助スピーカーだけのPAでも何とかなったと思うよ」
 
「うん。それも運が良かった」
 

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「そして何と言っても凄かったのがレインボウ・フルート・バンズみたいね」
と千里はニコニコして言う。
 
「何があったの?」
「むしろ何も無かったことが凄い。ごく普通のレインボウ・フルート・バンズの演奏だった」
「へ?」
 
「フェイが妊娠中で演奏できないからハイライト・セブンスターズのヒロシが代役した訳だけどさ、フェイはライブの時、いつも様々な楽器を演奏するんだよね。今日はフェイは何種類演奏したでしょう?とクイズが出るくらい。でもヒロシも昨夜は結局16種類の楽器を演奏したって」
 
「すごーい!」
 
「それからフェイはライブの時、前半は男装、後半は女装なんだよ」
「まさか」
「うん。ヒロシも後半は女装で出てきたけど、それが物凄く可愛かったらしい」
「へー!!」
 
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「これは多分後で写真も出ると思うよ」
 
「そういえば、アクアのデビュー番組になった、女装番組でもヒロシは女装していたね。あれすごく可愛かった」
「100点取ってたもんね。マリちゃんの思い人さんも100点だったけど」
と千里が言うので、私はあたりを見回した。
 
「それ人前で言わないでよ」
と私。
「周囲に誰も居ないから言ったのさ」
と千里。
 
「昨夜、政子はアドレス帳に8人と言って7人しか名前を言わなかった。その残り1人がその人だよね?」
と和泉が言う。
 
「ああ、和泉も気付いたか」
「気付いた人はごく少数だと思う」
と青葉。
 
「まあそれでヒロシだけど、何と言っても凄かったのは、彼が全曲ソプラノで歌ったことなんだよ」
 
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「おぉぉ!!」
 
「フェイはソプラノだからね。その代役をするんだからソプラノで歌いますと言って、きれいなソプラノを披露したんだよ」
 
「それはマジで凄い」
 
ヒロシはふだんテノールの声域で歌っている。彼がソプラノを出せるというのは私も知らなかった。
 
「フェイはレインボウ・フルート・バンズのメインボーカルだから、けっこうソロを取るところもある。それを全部きれいなソプラノで歌ったから、会場はもう異様な盛り上がりだったらしい。フェイが出ないなんて・・・と思いながら来場した人たちも、かなり満足したと思う」
と千里は言う。
 
「うん。今回は久しぶりのライブで、しかもレインボウ・フルート・バンズ初のカウントダウンだったにも関わらず、やはりフェイが出ないことでチケットの売れ行きが悪かったんだよ。ファンクラブの抽選も倍率が1.2倍くらいしかなかったし、一般発売分もソールドアウトに1週間掛かっている。過去のレインボウ・フルート・バンズのライブだと、ファンクラブの倍率は3倍くらいで、一般発売も2時間で売り切れていたから」
 
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と私。
 
「ポールから『春のツアーでもフェイの代役しない?』と言われて、うちの事務所の社長の許可が取れるなら、と言っていたらしいから、春のツアーにも参戦するかもね」
 
「それは今度は物凄く売れると思うよ」
 

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「ところでヒロシが言っていた秘密の集まりCBFって何だろう?」
と和泉が言ったのだが
 
「サークル・オブ・バス・フィメール(Circle of Bath Female)」
と青葉が言ったのと
「クラブ・ドゥ・バン・ファム(Club de Bain Femme)」
と千里が言ったのが、ほぼ同時だった。
 
「同じこと考えたね」
と青葉と千里は言っている。
 
「何それ!?」
と和泉が言うが
 
「要するに女湯の会ってこと?」
と私は訊く。
 
「だと思いますよ〜」
と青葉が言っている。
 
「だからアクアを勧誘してるんでしょ? 一緒に女湯に入ろうよって」
と千里は笑いながら言っている。
 
「うーん・・・・・」
と和泉は腕を組んで考えている。
 
「アクアのディレクターさんのご意見は?」
「まあいいや。個人的なことにはあまり興味無い」
と和泉は言った。
 
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「まあ確かに私生活の部分だけどね」
 
「実際問題としてアクアが女湯に居ても、私たぶん何も考えずにふつうにおしゃべりしちゃうと思うよ」
と和泉は付け加える。
 
「あの子って透明な気を持っているんだよ。だからどこに居ても不審に思われない」
と千里が言う。
 
「どうもアクアは何人かの女性タレントさんとこれまで女湯で遭遇したことがあるっぽい」
と私。
 
「ああぁ」
 
「それきっと、フェイや丸山アイとも女湯で遭遇しているんだよ」
と千里。
 
「そんな気がする」
 
「ねえ、まさかヒロシも女湯に入る訳〜〜?」
と和泉が訊く。
 
「多分入る技術持っているんでしょうね」
と青葉。
 
「女湯に入るのって技術が必要なんだ!?」
 
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今年も昨年と同様に、年末年始の§§プロ系タレントさんが振袖を着て挨拶するCMが年末版「今年もありがとうございました」年始版「今年もよろしくお願いします」とテレビに流れた。私たちはカウントダウンをやっていたので年末版を見逃したものの、動画投稿サイトに(無断)転載されていたので見ることができた。
 
「アクアが今年も振袖だ!」
と政子は喜んで見ていた。
 
昨年出ていたのは桜野みちる・品川ありさ・アクア・高崎ひろか・西宮ネオンの5人と、指揮者の秋風コスモス(社長)・川崎ゆりこ(副社長)だったが、今年はこれに姫路スピカと今井葉月が加わって、挨拶をするのは7人になっていた。
 
そして・・・・この中で、羽織袴を着ていたのは西宮ネオンのみである。
 
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つまり、
 
アクアも今井葉月も振袖である!
 
「去年は騙されて振袖着せられたみたいなこと言ってたけど、今年はもうそんな言い訳はできないよね〜」
などと政子は楽しそうに言っていた。
 

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2日にはオールジャパンが始まった。
 
関東代表の我がローキューツは1回戦では北信越代表のT大学に勝ち、2回戦では大学2位の強豪と激戦の末僅差で勝利した。しかし3回戦で当たったプロ5位のブリッツ・レインディアとは、まるで勝負にならなかった。
 
5年前の千里在籍時代にオールジャパンに出た時は、3回戦でプロ1位のチームと対決したものの、相手チームがこちらを甘く見ていたため、その油断に乗じて勝利をもぎ取って準々決勝に進出する快挙を成し遂げたのだが、今年の相手はこちらを全くなめていなかったし、ある程度こちらの戦力も分析しており、紫、ソフィア、アミラ、ミナミといった中心選手を各々の弱点を突いてうまく押さえ込んだ。そうなると実力の差は如何ともしがたく、大差で敗れてしまった。
 
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「5年ぶりのBEST8を結構狙っていたんですけどね」
と当時から残る数少ない選手の1人であるキャプテンの愛沢国香は残念そうに言っていた。
 
「やはりオールジャパンは3回戦の壁が厚いです」
と次期主将の原口揚羽も悔しそうに言っていた。
 

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一方、私たちは3日夕方に札幌公演だったのだが、2日の午後から移動した。
 
実は最初は疲れも溜まっているし、2日まで温泉に泊まって身体を休めてから、3日朝から移動すればいいと言っていた。
 
ところが年内に札幌でライブをする予定だった有名歌手グループが、ライブ当日飛行機が天候不順で停まったため函館から車で長距離移動していて、その車が事故を起こし、乗っていたメンバーが大怪我して入院し、結局ライブは中止になるという事件があった。それで冬の北海道では余裕のあるスケジュールで移動しないとまずいということになり、私たちは2日に移動することになった。
 
その日は仙台空港から新千歳に飛び、札幌市内に前泊した。そして3日の夕方から札幌スポーツパークでのライブを行い、そのまま札幌に連泊する。
 
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ローズ+リリーのツアーの、次の日程は7日仙台なので、4日には東京に戻り、私はKARIONのアルバム制作に従事した。政子はひとりにしておくと心配なのでスタジオまで連れて来て、調整室に座らせておいたが、おやつの消費量が凄いので、菊水さんの助手で入っている三川という若い技術者さんが目を丸くしていた。
 

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ところで三つ葉たちの『3×3大作戦』だが、彼女たちは毎月何か1つのテーマで鍛えられていた。
 
10月はとにかく走らされて、マラソン大会の結局10kmの部に出場したが、9人全員完走して完走証をもらい、嬉しそうにしていた。9人の中でいちばん辛そうにしていたのは年長の桜野みちる(22歳)で
 
「年齢的限界を感じた」
と発言して
「まだ若いのに何言ってる?ただの運動不足。運動してないと成人病になるよ」
とみちるより年上の円香(26歳)から言われていた。
 
その円香も9人に付き合って一緒に完走した。
 
11月は今度は水泳に挑戦させられたが、9人の中で実はスリファーズの春奈がカナヅチであった。これは彼女が性別問題で、小学校以来水泳の授業を全て見学で押し通していたこともある。
 
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それで彼女は特別レッスンを受けさせられ、他の子の3倍くらい泳ぎを練習したようである。しかしお陰で1ヶ月後(実際には撮影スパンはマラソンの練習と重なっており、企画スタートからは3ヶ月経っている)には、水泳大会に出て、100mのタイムが9人中3位(1位はサッカー選手だった品川ありさ、2位は小さい頃から水泳大好きだったというシレン)に入る立派な成績をあげた。この水泳大会にも円香はちゃんと参加して100mを泳いだ。
 
12月はバスケットをやらされていたが、最初はみんなドリブルしながらコートを1往復するだけで息があがって「きつーい」と言っていた。またランニングシュートは、身体の各所の動きがバラバラで全く入らない。
 
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それが最後の方ではドリブルで1往復してきた後、ランニングシュート、というのがみんな高確率で入るようになっていた。この指導をしてくれたのは、実はレッドインパルスの選手たちで、練習は川崎のレッドインパルスの練習場と江東区の40 minutesの練習場(当時建設中だった深川アリーナと同じ敷地内の古い体育館)で行われていた。このあたりは千里の人脈である。
 
最後は都内の女子中学生のチームと練習試合をした。勝てなかったものの、結構善戦した。ゴール数は1位がやはり品川ありさ、2位がコトリであった。コトリは試合中スリーも1発決めて、躍り上がって喜んでいた。
 
1月はスキーのノルディック(走るスキー)をやることが予告編の映像で示唆されていた。
 
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夏の日の想い出・翔ぶ鳥(17)

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