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■夏の日の想い出・翔ぶ鳥(4)

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18:55。1ベルが鳴る。ロビーに居たお客さんが自分の席に戻る。出演者もステージに上がり、楽器の音を確認する。私とマリもスタンバイする。あらためて携帯やスマホの電源を切るよう注意があった。
 
「過去のローズ+リリーのライブでは警告を聞かずに電源を入れたままにしておいてスマホが壊れた方が多数発生しております。あらためて、ちゃんと電源が切ってあるか、ご確認ください」
と氷川さんは注意を促すアナウンスをしていた。
 
18:59:30。2ベルが鳴る。客電が落ちる。客席に静寂が訪れる。そして19:00ジャスト、緞帳(どんちょう)がアップすると同時に強烈な16ビートのリズムを刻むドラムスの音、そして多数の楽器が鳴り出す。
 
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しかしマリとケイの姿はステージ上に無く、代わりに大きな赤白ストライプの風船がある。そしてその風船が割れると、中から赤い振袖のマリと白い振袖のケイが出てくる。
 
大きな歓声と拍手が起きる。
 
私たちは歌い出す。観客が総立ちになる。
 
この曲は『赤い玉・白い玉』である。
 
この曲を先頭に持って来たのは、桃川しずかを使うので出来るだけ早い時間に演奏したかったこと、ギターとベースは各々2人の演奏者が同じ楽器・同じ弦・同じピックで演奏するが、ライブが進行していくと、どうしても微妙なズレが生まれてくる。それで最初に調整したままの状態で演奏したかったのもあった。
 
東城先生の意欲的な作品は、普通使わないようなコード進行が多数使われているものの、妙に聴き心地の良い曲である。
 
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今回のローズ+リリーのツアーでは、ステージ上に日本全国47都道府県の「花」を飾っている。私たちはその花に埋もれるようにして演奏した。ただしメンテの都合上全て造花である。
 
チューリップとかツツジとかはよいが、桜などはどうしても盆栽っぽい感じになってしまったが、やむを得ない。
 
背景のホリゾント幕には後ろ側から映像を投影するようにしている。この『赤い玉・白い玉』では、赤い玉と白い玉が動き回って甲子園の人文字のように、様々な言葉を浮かび上がらせるCGが流された。そこで出てきた文字は『ローズ+リリー』 『Rose+Lily』『やまと』『Yamato』『赤い玉・白い玉』『Red ball White ball』 『東北復活』『Dona nobis pacem』などなどである。政子にだいたい選定させた後、氷川さんの判断で政治的とも受け取られかねないものをカットさせてもらった。そういう訳で『たいやき食べたい』『牛肉美味』とか『アクア、女の子になれ』などというのもあり、演奏中、失笑が漏れていた。
 
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演奏が終わったところで拍手があり、それが納まった所で私たちは挨拶する。
 
「こんばんは!ローズ+リリーです!」
 
また拍手な歓声がある。
 
「今のは東城一星先生から頂いた『赤い玉・白い玉』という曲でした」
 
「私たちの衣装も赤と白だけど、それにちなんだの?」
「私たちが赤と白を着るのはいつものこと」
「でもふだんは私が白で、ケイが赤だよ」
「うん。私も逆じゃないかと思ったけど、いや今日はそれでお願いしますと言われたから」
「まあ、たまには逆でもいいよね」
 
「ところで東城先生のお名前は今の若い方はご存知ないかもしれませんが、20年ほど前にたくさんヒット曲を書いた方なんですよ」
 
と私が言うと、マリが
「東城先生は性別が無いと言っていたね。全部取っちゃったんだって」
などと言い出す。
 
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「そういう個人的な情報を勝手に言ってはいけないよ」
と私は注意したものの
「wikipediaにも書かれているよ」
などとマリは言う。
 
「だからと言って勝手に言っていいものではないよ。マリがラーメン10杯食べたことがあるなんてのもwikipediaに書かれているけど、あまり言われたくないでしょ?」
「別に構わないけど」
 
ここで爆笑される。
 
「それでもプライバシーは大事にしなさい」
「はーい」
 

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「まあそれで先生は、今は某所で隠遁生活を送っておられますが、久々に意欲が湧いたということで書いて頂きました。本当に意欲的な作品でしたね。演奏する人も大変だったようです。ということで、演奏者を紹介します」
 
「第1ギター、近藤嶺児、スターキッズ」
「第2ギター、中村正隆、リダンダンシー・リダンジョッシー」
 
ここで会場の女の子たちから歓声があがる。
 
「第1ベース、鷹野繁樹、スターキッズ」
「第2ベース、鹿島信子、リダンダンシー・リダンジョッシー」
 
ここで会場の男の子たちから物凄い歓声があがり、私は「おっ」と思った。
 
「ドラムス、酒向芳知、スターキッズ」
「キーボード、月丘晃靖、スターキッズ」
「ピアノ、桃川春美、チェリーツイン」
 
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「ヴァイオリン、鈴木真知子。ピッカピカの女子大生ですが、実は私のヴァイオリンの先生です。私が中学生の頃、まだ小学生だった鈴木さんにヴァイオリンを教えて頂いてました」
 
と私が言うとけっこうざわめいている。
 
「フルート、田中世梨奈」
「笙、若山鶴海」
「龍笛、川上青葉・林田風希・桃川しずか」
「アルトサックス、近藤七星、スターキッズ」
「ソプラノサックス、沢田立花」
「コーラス、月野美鶴・月原清花、ムーンサークル」
 
「そしてボーカルは」
「私マリと」
「私ケイです」
 
ここで大きな拍手がある。
 
「今の曲は以上19名での演奏でした。このあと曲毎に演奏者はかなりコロコロ入れ替わります」
 
実際、リダンリダンの中村と鹿島、ムーンサークルの2人、龍笛の林田・桃川、といった面々が下がる(青葉は残る)。代わりにヴァイオリニストが9人入って来て、真知子もそこに並ぶ。スターキッズはアコスティック楽器に持ち替える。月丘さんはキーボードの所から離れてマリンバの所に行く。入って来たヴァイオリニストの先頭に立っていた野村美代子さんが私に愛用のヴァイオリン"Angela"を渡してくれた。この曲はその私のヴァイオリンソロから始まる。
 
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前半のステージはアコスティックタイムで、アコスティック楽器中心の演奏をしていく。
 
「では次の曲、『夜ノ始まり』」
と言って、私はヴァイオリンを弾き始める。
 
私が8小節のイントロを弾いた所で10人のヴァイオリニストの音、香月さんのトランペット、七星さんのサックスが響き、青葉の龍笛が踊るように鳴り、他の楽器も誘われるように少しずつ演奏に加わっていく。
 
そして私とマリが歌い始める。
 
太陽が落ちた後のまだ静まりきれない地上の情景を私たちと多数のアコスティック楽器が奏でて行く。私は間奏とコーダでもヴァイオリンを弾いた。
 
この曲のPVでは太陽が北海道の忍路に沈む所の美しい映像から始まり、各地の都会や田園・漁村・温泉地などの日暮れ時の風景が流れて行く。撮影した場所は札幌、東京、名古屋、福岡、那覇、津軽のリンゴ園、長野のレタス畑、新潟の水田、和歌山のミカン畑、小豆島のエンジェルロード、沖縄のサトウキビ畑、登別温泉、浅虫温泉、草津温泉、伊香保温泉、和倉温泉、鹿教湯温泉、湯の峰温泉、湯の児温泉、波佐見温泉などである。実はあちこち撮影に行った時についでに撮っておいた映像を★★レコードの佐久間さんがうまくまとめあげてくれたものである。
 
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演奏後10人のヴァイオリニストとトランペットの香月さんを紹介する。
 
続いて『灯海』を演奏する。ヴァイオリン奏者は4人退場して6人になる。月丘さんはグロッケンシュピールの所に移る。今日は似たような楽器が、グロッケン、マリンバ、ヴィブラフォン、シロホンと並んでいて、月丘さんは曲毎の使用楽器を確認しながら移動していた。
 
(左前にマリンバ、右前にヴィブラフォン、左後にシロホン、右後にグロッケンシュピールと置いている。つまり共鳴管のある楽器が前で無い楽器が後ろ、木琴が左で鉄琴が右である。但し今日のシロホンはコンサート用で一部の鍵の下に共鳴管が付いているので一瞬マリンバにも見える)
 
フルート奏者が青葉の友人の田中・久本と、さっきは龍笛を吹いた林田さん。彼女は元々がフルート奏者らしい。クラリネットが七美花、バスクラが干鶴子。龍笛が桃川しずか。篠笛が明奈。サックスが七星・青葉と沢田さん。
 
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と、この曲ではけっこう楽器のやりくりが大変であった。私は曲毎に初めて登場した演奏者、担当を変わった演奏者を紹介していった。
 
なお、中学生の桃川しずかはこの曲であがりである。本来はホテルに返すべきだが、ホテルには誰もいないので、客席に座らせ、★★レコードの綾野さんが付き添ってくれることになっている。本人としては楽屋にでもいた方がのんびり出来るのだが、8時以降に楽屋に座らせていると仕事場に居るということで労働させていると見られかねない。しかし大人同伴で観客席に座らせておくのは問題無い。
 
大変な曲が続いたので箸休めに『雪虫』を演奏する。スターキッズ以外では青葉と沢田さんだけが残る。青葉が鈴を持ち、沢田さんはキハーダを持って、この静かな曲を演奏した。
 
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続いて『来訪』ではヴァイオリニスト10人が戻り、七美花がホルンを持ってカスケーディング・ストリングスの重厚なヴァイオリンの音の中、ホルンが神々を先導するかのように鳴り、本当に今神々がここに来訪してくるかのような、厳かな響きの中、私とマリは歌っていた。
 

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ここで少し長めのトークをする。演奏者たちに束の間の休憩を与えるためで、私とマリ以外の演奏者がいったん下がる。
 
「そういう訳で今日のコンサートはこの深川アリーナのこけら落としとして使わせてもらっているのですが、都心にこういう大きな会場が出来たのは嬉しいです。2〜3年前から東京周辺の大きな会場がいくつも閉鎖になったり、あるいは改修工事に入って使えなくなって、会場が明らかに足りない状態になっているんですよね」
 
「私、牛丼屋さんが気に入った。本番前にも3杯食べちゃった」
「まあ3杯でレフリーストップが掛かっていたからね」
「体育館で食べ物屋さんって意外に無いよね」
 
「公共の施設だと色々制約もあるみたいだしね。ここは女子バスケット選手たちが主導して建てた私設の体育館だから自由がきくみたい。練習でお腹が空くから、牛丼食べたいということで牛丼屋さんを誘致したんだよ。特に、まき家は同系列のファミレスで作ったケーキ類も置いてあるから、女の子たちには嬉しいんだよね。ピザも頼めばそちらからデリバーしてくれるし」
 
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「そういうのいいなあ。うちのマンションに焼肉屋さんを誘致できないかな」
「さすがにお客さんがマリちゃんだけでは商売にならないし、マリちゃんは特別料金にしないと採算が取れない」
「むむ、残念だ」
 
このあたりで忍び笑いが漏れる。
 
「でも実際、ライブをやったのは私たちが最初だけど、既に女子バスケットの試合は行われているね」
 
「うん。元々この体育館は、私がオーナーをしている千葉ローキューツ(Rocutes), 私の友人・醍醐春海がオーナーをしている東京40 minutes(フォーティー・ミニッツ)、そこと交流のある同じく東京のクラブチーム・江戸娘(えどっこ)、そして実業団のKL銀行・ジョイフルゴールドという4チームが共同で建設したものだからね。最初にその4チームが運営しているクロスリーグの試合をした。その翌日にはWリーグのレッドインパルスとブリッツ・レインディアの試合をした。レッドインパルスもクロスリーグに参加しているのと、醍醐春海が今年の春からレッドインパルスに移籍したので、その縁で、そこの試合をこちらに持って来た」
 
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と私は説明する。
 
「醍醐さんは自分は40 minutesのオーナーで、選手としてはレッドインパルスの選手なんだ?」
「うん。なりゆきで、そういうことになってしまった」
 
「でも女子バスケのチーム4つで体育館建てちゃうとか凄いね。誰かスポンサーとかあったの?」
「いや、だから私とか醍醐春海とかがスポンサーだよ。江戸娘のオーナーは上島先生だし」
「ああ。じゃケイもお金出したんだ?」
「まあ私は3割だけどね。醍醐が4割、上島先生が2割。残り1割はKL銀行」
 
会場がざわめいている。
 
「ケイって割とお金持ちなんだね」
「実は株で儲けたんだよ。私と醍醐と2人合わせて50億ほど儲けたから、こういうあぶく銭は使っちゃおうと醍醐と話し合って体育館を建てることにしたんだよ」
 
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「株って50億も儲かるんだ?」
 
会場がかなりざわめいている。
 
「たまたまだと思う。こういう危険な相場は2度としない。何十億も損した人もあったようだし」
 
などと私が言うと、「あぁ」という感じの顔をしている観客もいる。この春の★★レコード株の大変動で大損した人・大儲けした人が多数いたことに思い至ったのだろう。
 
「でも民間の建築で、しかも運営グループに銀行さんが入っているから、経費は徹底的に節約されている。公共工事ならたぶんこの3倍の費用が掛かっていると思う」
 
「へー。なんか廊下に子供の落書きのされた板が壁板に使われていた」
「うん、ここに建ってた小学校で使われていた木材とかガラスとかをかなり再利用しているから」
「ああ、そういうので節約しているんだ?」
 
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「エコだよ。控室の椅子とか黒板は教室の椅子や黒板をそのまま置いているし、時計も教室に掛かっていたものだし、トレーニング室には小学校の体育館にあった鉄棒とか平均台とかも置いている。場内アナウンスのスピーカーとかロビーのモニターテレビとかはほとんどリサイクル業者から買ったもの」
 
「なるほどー。それでいろんなメーカーの物が混在していたのか」
 
「最初醍醐はバスケット専用の体育館を作るつもりだったけど、私が入ったことで、コンサートにも使える音響をきちんと計算したホールにしたんだよね。だからこうやって固定のステージも作られている」
 
「ドラムスのセットを脇のほうで組み立てて配線もつないでおいて、動く床でステージに出せる装置とか凄いね」
 
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「多数のバンドが出演するイベントでドラムスの入れ替えは物凄い課題だから。春には軽音の大会で使うことが決まっているよ。入れ替え時間1分でやれるという計算ができている。実験もしてみた」
「すごーい」
 
 
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