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■夏の日の想い出・翔ぶ鳥(13)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-03-12  
12月31日、私と政子は別行動になった。政子は朝から風花と一緒に新幹線で仙台に向かった。
 
私は午前中は既に現地に行っている氷川さんや有咲、七星さんなどと電話で話しながら状況の確認をしておいた。
 
お昼を食べてから新宿の∴∴ミュージックで、KARIONの他のメンバーと合流する。今日はローズ+リリーは宮城でのカウントダウンライブのみの予定だが、KARIONは昨年と同様、東京・国際パティオでのオールナイト・カウントダウンライブに参加する。
 
12月31日のお昼に始まり、1月1日の朝6:00に終わるという、18時間ライブである。リダンダンシー・リダンジョッシーなどは、このカウントダウンに参加した後、埼玉県内のホールに移動して、そちらで自分たちのカウントダウン・ライブをする。彼女らも国民的歌合戦には出場しない組である。他に歌合戦には出ず、独自のカウントダウンをするのは、ステラジオ、ラビット4、スカイヤーズ、レインボウ・フルート・バンズなどがある。
 
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レインボウ・フルート・バンズはフェイの妊娠に伴いライブ活動を休止中なのだが、このカウントダウンは春頃から会場を押さえていて、宿泊とセットの券も売り出す予定で、企画が進んでいたので、実施することになった。実はこれまでは18歳未満のメンバーがいたのでこの手の企画はできなかったのだが、今年やっと全員18歳以上になったので「18歳到達記念」でカウントダウン・ライブをやろうという話だったのである。
 
フェイはむろん参加できないのだが、ハイライト・セブンスターズのヒロシが代役を務めるというので大いに話題になった。
 
「ぼくと、フェイ、丸山アイ、リダンリダンのノブ、あと匿名の人物数名で秘密のサークルを作っているんですよ。主として音楽のこととかで、お互いに色々アドバイスしあっているんですよね」
とヒロシは笑顔で語っていた。
 
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「どんなサークルなんですか?」
「それは秘密です。略称がCBFというのですが」
「なんか気になりますね」
「今アクアを勧誘中です」
「アクアさんをですか!?」
 
フェイは一応会場には顔を出し、挨拶やカウントダウンにだけは参加する予定である。
 
なお、ハイライト・セブンスターズはこの国際パティオのカウントダウンには参加するが、その後は「ヒロシのマンションに行って内輪でパーティーします」という話であった。
 
「ヒロシさんは不在なのでは?」
「不在なのをいいことに食料を食い尽くします」
 

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国際パティオのカウントダウンには、某放送局の歌合戦にも参加する、AYA, 南藤由梨奈、スリファーズ、三つ葉なども出ているが、彼女たちは早い時間帯に登場して、放送局のホールに移動したようである。
 
レッドブロッサムは南藤由梨奈と一緒にカウントダウンをした後、由梨奈だけ歌合戦の会場に移動し、レッドブロッサムの4人は新幹線で仙台に移動した。
 
KARIONの登場は昨年よりずっと早い15:00-15:30である(できるだけ早くしてもらった)。∴∴ミュージックで、篠崎マイなど他のアーティストと一緒に「納会」をした後、国際パティオに移動する。
 
時間帯の近い他のアーティスト数組と交款する。
 
美空はひとつ前に演奏するゴールデンシックスのカノンから「美空ちゃん、今日はこちらには来ないの?」と言われて「すみませーん。KARIONの出番より先に出てはいけないというお達しなので」と言っていた。ゴールデンシックスはこの後、横浜エリーナに移動して、XANFUS・丸山アイ・山森水絵・奈川サフィーと共同で「∞∞プロ・グループ」のカウントダウンに出演する。
 
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山森は歌合戦に出ないかという打診があったものの、向こうの演出が山森のイメージ戦略に合わないというので、鈴木社長が断ってしまった。しかし、ゴールデンシックスにXANFUSに山森水絵というのでチケットは2万席に対してファンクラブからの申し込みが10万席分もあった(競争率5倍)。一応一般にも2000席発売しているが、こちらは瞬殺だった。
 
チェリーツインはそのゴールデンシックスのひとつ前で、私たちが行った時に演奏中であった。演奏を終えてステージから降りてきた所で手を振って挨拶しておいたが、彼女たちはこのあと飛行機(羽田17:55-18:35女満別)で北海道に戻り、お正月は牧場で迎えるということであった。
 

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なお、今日のゴールデンシックスは、KB.南国花野子 Gt.矢嶋梨乃 B.橋川希美 Dr.鞠古留実子 Vn.長尾泰華 Fl.大波布留子 というメンツである。留実子は千里の小学校以来の友人で日本代表にもなったことのあるバスケット選手である。ちょうどお正月の期間は自分が所属するチームは試合が無く、出身校の旭川N高校がウィンターカップに出てきていたので、その応援を兼ねて、夫と一緒に出てきていた所を徴用されたらしい。
 
彼女は・・・・ふつうに男性に見える!ので「今日のゴールデンシックスは男の子が混じってたね」「男性メンバーを入れることもあるんだね」などと観客が言い合ったりしていて、それを耳にした長尾泰華が自分のことを言われたかと思ってギクッとしたらしい。
 
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大波布留子は滋賀県在住で銀行勤めだが、今年は31日は土曜日で銀行の仕事が無いので参加できた。しかし30日は0時近くまで仕事をしていたらしい。全くお疲れ様である。東京には朝一番の新幹線で出てきたものの、その後は控室でひたすら寝ていたらしい。
 
その彼女たちが降りてきたのとハイタッチして、私たちはステージに上がった。
 

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「こんにちは〜!KARIONです」
と4人揃って言うと、大きな歓声が来る。
 
「それでは最初は春頃にリリースする予定のアルバムから『青銅の愛人』」
 
観客が顔を見合わせている。「愛人」ということばに違和感を覚えたのと、おそらくこのタイトルはエロティックな意味にも取れるからだろうなと私たちは想像した。
 
むろん、それは織り込み済みである!
 
トラベリングベルズの伴奏に合わせて、私たちは歌って行くが、歌詞の内容を聞くとみんな安堵するような表情になっていく。
 
「ちょっとびっくりした方もあったかも知れませんが、KARIONのコンセプトは家族で安心して聞ける曲ですので」
と和泉が歌唱後“解説”すると、会場からは笑いが漏れる。
 
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「それでは同じアルバム予定曲の中から『大安吉日』」
 
さきほどの『青銅の愛人』に続いて、何のストレスも無い、とっても楽しい歌に聴衆はノリノリで拍手をくれる。私たちもとても楽しい気分でこの歌を歌うことができた。
 
その後は、6月に出したシングルから『ぼくの自転車』と『雨のメグミ』を歌い、過去のヒット曲から『海を渡りて君の元へ』と『雪うさぎたち』を歌ってステージを終えた。
 

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次の出番のステラジオに手を振って交替する。ステラジオのホシは今までと同様私と視線を合わせなかったが、ナミは深くお辞儀をしてからステージに上がった。
 
何か心境の変化でもあったのかな?と私は首をかしげた。
 
KARION, Travelling Bells, そして花恋も含めて10人で国際パティオを出ると、小走りに急ぎ、10分ほどで東京駅に到達する。着換えなど、楽器以外の荷物関係は既に他のスタッフの手で宮城県に運ばれている。
 
16:20の《はやぶさ》に乗り込み、全員グリーン席に座った。
 
「俺たちまでグリーン席というのは待遇がいい」
などと黒木さんが言う。
 
「すみませーん。いつもは経費節減で、伴奏者は普通指定席にさせてもらってます」
と花恋が申し訳無さそうに言う。
 
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「申し訳無いとは思ってますが、スターキッズも普通指定席にさせてもらっています。歌唱者と伴奏者がいつも同じ待遇だったのは、XANFUSですね。移籍前ですけど」
と私は言う。
 
「音羽と光帆も含めて全員普通指定席だったらしいね」
と和泉が言う。
 
「うん。音羽・光帆もグリーン席ではなかった」
 
「あれは本来音羽・光帆・三毛・騎氏・黒羽・白雪の6人でXANFUSだったからなんだよね」
と私。
 
「そうそう。だから6人は印税も6等分だし、ホテルの部屋のクラスなど待遇は全部同じ。でも6人分もグリーン料金を払うとXANFUSのプロジェクトの収支が厳しくなるから、普通席にしてその分ギャラを上乗せする」
 
まあ実際は7人分だった訳だけどね、と私は心の中で付け加える。
 
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「移籍後は変わった?」
「近距離だと指定席料金を惜しんで自由席にしているようだ」
「マジ?」
「ホテルも全員ツインにしているみたいだし」
「嘘!?」
 
ホテルの組合せは音羽+光帆、神崎+浜名、三毛+騎氏、黒羽+白雪らしい。マネージャーが同行する場合はマネージャーと黒羽が同室になる。白雪は「1人」で2人いるからだ!三毛と騎氏も元々の親友である。
 
「会社が出すんじゃなくて自分たちで出すことになったから、経費節減って頑張ってるよ。さすがに東京−大阪とか、東京−仙台みたいな距離は自由席で座れなかったら演奏に影響が出るから指定席取るみたいだけど」
 
「しかし、そのくらい節約するのが、正しい姿かも知れん」
と児玉さんが言う。
 
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「いや最近、みんな懐具合の厳しい歌手が多いから、結構名前の通った人でも自由席で移動しているケースあるみたいよ」
と海香さん。
 
「うーん。。。」
「明日は我が身だなあ」
 
「取り敢えず今回はローズ+リリーのゲストアーティストということで、グリーン席で手配させてもらいました」
と私は説明した。
 

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私は和泉にも促されて新幹線の中では熟睡した。しかし仙台駅から先は少しずつ自分を覚醒させていった。
 
会場最寄り駅に着いたのは19時すぎで、既に前座は始まっているはずだが、音は全く聞こえない。防音壁がけっこう効果をあげているようである。 
 
海岸側まで回り込んでからスタッフ専用出入口のドアを開けてもらって中に入る。控室に行くと、政子がすき焼きっぽいものを食べながら手を振った。
 

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この日、政子は朝から「眠いよぉ」と言いながら、取り敢えず服を着て風花と一緒に仙台行き新幹線に乗り、会場に入った。ラッシュを避けるため東京駅7:16の新幹線に乗ったのだが、新幹線の中でも、仙台で乗り継いだ電車の中でもひたすら眠っていた。
 
既に仮の防風壁(防音壁を兼ねる)が設置され、客席には区画毎にロープが張られている。午後くらいから、その客席に断熱暖房シートを敷いていくらしい。その他、会場内には多数のストーブを置く予定である。
 
「けっこう風が強くないですか?」
と政子は加藤次長に言った。
 
それには★★レコード仙台支店の奥山課長が説明する。
 
「今は昼間ですから海からの風が吹いてきて寒いのですが、夕方以降は陸から海への風に変わるので、昼間よりむしろ暖かくなるんですよ」
 
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「なるほどー」
 
「いわゆる海陸風というやつですね」
と鷹野さんが言う。
 
「ステージはいちばん海側にありますから、会場の熱気が風と共に押し寄せてくる感じになると思います。ですからけっこう暖かいかも知れません」
と奥山さん。
 
「逆に言うと会場のいちばん後ろにおられる方は少し寒い可能性ありますね」
「ええ。ですからいちばん後ろにはストーブを多数配置します。防音の問題もありますから防風壁の高さも高くしていますし」
 

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音響を担当する麻布先生は数人の助手と一緒に数日前からここに入り、音の遅延や反響、スピーカー同士の位相干渉の計測・調整をかなりやっておられたようである。こういう広い会場では、音の遅延を入れないとステージ脇のメインスピーカーから直接来る音と、座席近くに多数配置する補助スピーカーの音とがズレてしまい、音が二重になって聞こえる。
 
それで補助スピーカーは遅延を入れて鳴らさなければならない。この会場ではステージと客席最後尾の距離は52mあるので、伝達に必要な時間は0.16秒である。従って最後尾に置く補助スピーカーはそれだけの遅延を入れることになる。客席の真ん中付近に置くスピーカーなら0.08秒程度の遅延になる。
 
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「風速は関係無いんですか?」
とマリが尋ねる。
 
「音の速度は摂氏0度の場合で330m/s。これに対して風は木の葉が絶えず動いているような風力3のレベルでも風速としては4m/sくらい。秒数としては0.002秒くらいの差だから、誤差の範囲だよ」
と麻布先生は説明してくださる。
 
「0.002秒ではハンガーがー食べられないな」
「いくらマリちゃんでも20秒は掛かるでしょ?」
「最高速度は8秒だけどね」
「ふむふむ」
 
「口の中に入れるだけなら3秒で出来るけど、飲み込めない」
と政子。
「マリちゃんに窒息死されるのは困るから、そういう危険なことはやめて」
と加藤次長。
 
「気温の変化はどのくらい影響するんですか?」
と近藤さんが尋ねる。
 
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「気温が1度変わると音速が0.6m/s変わりますが、5度変わったとして3m/sですから、時間に直すと0.0014秒。これもまあ誤差の範囲ですね」
と麻布先生。
 
「なるほど」
 
麻布先生によると実際に補助スピーカーから鳴る音は、メインスピーカーの音が届いた0.001-3秒後くらいに鳴るのが理想だそうである。人間の耳はその音を最初に聞いた方角を音源の方角と感じるので、ちゃんとステージで演奏している音を聞いている感覚になるのである。
 
逆に補助スピーカーが先に鳴ってしまうと、音がステージからではなく、その補助スピーカーから来ている感覚になって臨場感が失われてしまう。
 
補助スピーカーはあくまで「音量を補う」ためのものなのである。
 
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また近くに2つの補助スピーカーがある場合、両方から来た音の位相がずれると最悪、波動同士が打ち消し合って、特定の周波数の音が聞こえなくなってしまう場合がある。このような現象の起きる場所を見つけ出して是正するのは物凄く手間が掛かる。
 
一応コンピュータ上でシミュレーション計算して「音消失ポイント」を無くすような配置を決めているのだが、現場で確認すると、どうしてもシミュレーションの計算結果とは異なる場合もある。この調整には数日かかるのである。
 
「調整が難しい場合は『ここに座るな』という紙をそのゴーストポイントの所に貼っておきますよ」
と加藤次長は言っている。
 
「ええ。最後どうにも調整がつかない時は、その対応でお願いします」
 
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■夏の日の想い出・翔ぶ鳥(13)

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