広告:ここはグリーン・ウッド (第5巻) (白泉社文庫)
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■夏の日の想い出・翔ぶ鳥(10)

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11時前に沢村さんが服を持って来てくれたので、ファミレスのトイレで着換えさせる。
 
「こんな可愛い服なの〜?」
と青葉は恥ずかしがっている感じだったが
 
「女子大生はこのくらいチャラチャラした服が良い」
と千里は言っていた。
「桃姉が、スカート穿いたら女装でもした気分だと言っていたのが少し分かる」
と青葉。
 
「うん。これならまあ22-23歳くらいには見えるかな」
と私は言った。実際には青葉はまだ19歳である。
 
膝上丈のスカートで足がたっぷり露出するのが本人は落ち着かないようである。むろんパンティストッキングは穿いているが、これがまた柄物である。
 
そのままロイホを出て地下鉄で天神に出た。歩いて放送局まで行くが、今日はサインを求めて寄ってきたりする人は無かった。それを何気なく言ったら千里が「足止め食うと面倒だから」と言ったので、どうも何か操作をしていたようである。
 
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放送局には既にアクアがマネージャーの鱒渕さんに連れられてきていたが、紅川会長に松前社長(★★レコードでは会長だがTKRでは社長である)も来ているので驚く。爆破予告があったので、急遽東京から駆けつけてきたらしい。他にエレメントガードのメンバーおよびサポートミュージシャンもいる。
 
サポートは5人で、22-23歳のフルート奏者(曲によってはクラリネットも吹く)の女性、27-28歳のギタリストの女性、32-33歳くらいのキーボード奏者の女性、37-38歳くらいのサックス奏者の男性、42-43歳くらいのトランペット奏者(トロンボーンも吹く)の男性であった。
 
ここでキーボード奏者は実際にはヴァイオリンのパートを演奏する。3時間の長丁場のライブなので生のヴァイオリンでは体力的にも辛いし、春のツアーでは弦切れトラブルも起きていたこと、そしてドームでは不安定になりがちな生楽器の音響をきちんとするのは大変なこともあり、今回はキーボードで代用することになったらしい。
 
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今回のツアーでサポートミュージシャンは2チーム編成している。日程がきついので、アクアとエレメントガードは替えが効かないものの、サポートの人たちは負荷を減らすために、Aチーム・Bチームと編成したようだ。実際、サポートのギタリストがヤコのパートを弾いて負荷の大きいヤコを少し休ませたりもする方針のようである。
 

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放送局の人と打合せする。記者会見場には既に50人ほどの記者が詰めかけているらしく、放送局の人も「こんな凄い記者の数は初めて見た」と言っている。
 
打合せが終わった所で青葉に
 
「そうだ、青葉。実はマリからちょっと買物頼まれていたんだけど、博多駅に一足先に行って買物しといてくれないかな」
 
と言うと
 
「ああ、それは青葉が行く必要無いよ。私の友だちにさせるよ。何が必要?」
 
と千里が言うので、博多駅の赤い風船でショートケーキ12個くらい買っておいて、放送が終わった後、博多駅に駆けつけた私に渡して欲しいのだと言う。
 
「了解。うまい具合に近くに居る人がいるから、ちょっと連絡するね」
と言って千里は電話していた。
 
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千里が電話する所を青葉がじっと見ていた。
 
「お金は後日適当に精算するから、冬は博多駅で品物だけ受け取って」
「分かった。千里はまだ帰らないの?」
「私は爆弾騒ぎが心配だから、アクアのライブが終わるまで付いていることにするよ」
と千里。
 
「ちー姉は、物探しが上手いから、本当に仕掛けられていたら、見つけるかもね」
と青葉も言う。
 
「助かる。じゃそちらはお願い」
「うん」
 

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千里が折りたたみ式のガラケーを使っているので、三田原さんが言った。
 
「醍醐先生はフィーチャホン派ですか?」
「マリちゃんなんかもそうですが、私、静電体質なのでスマホはダメなんですよ。一度ショップで触ったら、いきなり電源が落ちて、その端末はそのあと、お店の人がどうやっても再起動しませんでした」
 
「わあ」
 
「私、銀行のATM落としたこともあります。基本的にはATMに触る前にどこか適当な金属に触って放電させるんですけどね。その時はうっかり忘れていたんですよ」
 
「静電体質の人って大変ですね」
 
そんな会話を青葉がなぜかしかめっ面で聞いていた。何かあるんだろうか??
 

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「だけど千里、元々静電体質な上に髪を長くしているから、静電気が更にたまりやすいのもあるんじゃない?」
と私は言った。
 
「うん。それは指摘されたことある。でもこれが私のトレードマークだからね」
と千里。
「スポーツ選手でこんなに長い髪は珍しいよね」
「そそ。だから私はLong tailと呼ばれていることがある」
「ああ。確かにシッポという感じだよ」
 
「スポーツなさるんでしたっけ?」
と三田原さん。
 
「プロバスケットボール選手でこないだのリオデジャネイロ五輪にも出ましたよ」
とコスモスが言うと
「それは知らなかった!」
と三田原さんが言う。
 
「Bリーグとかいうんでしたっけ?」
「それは男子ですね。女子はWリーグです」
「へー!」
 
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「ミュージシャンがどこにでも楽器持ち歩くのと同様、私たちスポーツ選手もどこにでもスポーツの道具を持ち歩くんですよ。だからこうやって、バッシュとかボールとか持ち歩いているんです」
と言って、千里はバッグから出して見せる。
 
「すごーい」
「ああ、ボールは空気を抜いて収納しているのか」
とコスモスが言う。
 
「まあ空気入れたままではかさばるから。空気入れも持ち歩いているからすぐ膨らませられるよ」
と言って千里は実際に空気入れで膨らませてみせた。
 
「おお、凄い」
 
それでその場でドリブルなどしてみせる。
 
「パス」
と言って千里が青葉にボールを送ると、青葉はびっくりしながらもそのボールを胸でキャッチしていた。
 
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「青葉、なかなか反射神経が良い」
「私も水泳選手だし」
 
「大宮先生は水泳なさるんですか?」
「高校時代はインターハイに出たし、今年もインカレに出たね」
「まあ出ただけだけどね」
 
「それは凄い」
と三田原さんは感心していた。
 

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12:00。
 
番組が始まる。最初の10分間は東京のスタジオから放送が行われる。12:10からカメラが福岡のスタジオに切り替わり、記者会見が始まる予定である。エレメントガードとサポートミュージシャンは既にスタンバイしている。エレメントガードの前にテーブルと椅子が並んでいる。カメラが切り替わったところでエレメントガードの前奏が始まり、アクアが出て行って今日発売の曲をショートバージョンで2曲とも歌う。それが終わった所で私・千里・コスモス、三田原さんが出て行き、アクアを中心にして5人で座る。それで15分間の記者会見をする、という段取りである。
 
私たちは控室に置かれているテレビで東京での放送の様子を見ていた。千里が膨らませたバスケットボールは結局青葉がそのまま持っている。
 
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12:10。放送局の人の合図でエレメントガードが演奏を始める。アクアが出て行き歌い始める。記者たちが写真を撮っている。ビデオに関してはここの放送局のスタッフが「代表撮影」しておいて後で希望する記者にデータを配ることになっている。
 

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やがて歌が終わる。記者たちが拍手をしている。顔を見合わせたりしている人もあるので、おそらく福岡勤務の記者さんで、初めてアクアの生歌唱を聴いた人たちではと思った。アクアが思いのほか上手かったので驚いているのだろう。彼はアイドル歌手にするにはもったいないほど歌が上手い。驚いているのは記者たちだけでなく、伴奏者まで顔を見合わせたりしている。特にキーボードの女性など首を振ったりして何か考え込んでいる雰囲気だ。
 
そこで私たち4人が出て行き、各々のネームプレートの置かれた席に座る。ネームプレートは左から順に、作曲家・醍醐春海、作曲家・ケイ、アクア、§§ミュージック・秋風コスモス、TKR・三田原彬子と書かれたものが置かれている。
 
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しかしこのメンツって・・・・5人の内3人が性転換者だ!
しかも主役のアクアはいつも男の娘疑惑が囁かれているし!!
 
この記者会見の放送のため、わざわざ東京から来たらしい、ΛΛテレビの宮嶋容子アナウンサーが司会を務めて、記者会見が始まる。
 
(記者席から見て)右端に座る三田原さんが、今回のCDおよび楽曲に関して説明をする。時々それについてコスモスが補足をする。しばしば記者から質問が出るので、それに答えていくという形で記者会見は進んだ。どの記者に発言させるかは司会の宮嶋さんがコントロールしていた(結構仕込みっぽい雰囲気もあった)。
 
そして会見席での説明と質疑が始まって5分ほどした12:20頃のこと。
 
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「誰です?あなたは」
「ちょっとそちらに行かないで」
という声がする。
 
私はギョッとした。長い銃身の銃を持った男が放送局のスタッフを振り切ってこちらに突進してきたのである。
 
とっさに千里が席を立ち、アクアを抱えるようにして立たせると、奥の方に突き飛ばすようにして逃がした。エレメントガードのヤコが走り寄って、アクアを保護する。コスモスはむしろアクアを守るように立ち上がると男に対峙した。
 
恥ずかしながら、私も三田原さんも反応が一瞬遅れた。
 
このあたりは運動神経の差かも!
 
やはり千里が最初に動いたのはスポーツマンの反射神経なのだろう。
 
結果的に乱入してきた男は、コスモスを人質に取った。
 
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男は1発天井に向かって銃をぶっ放した。
 
「みんな動くな」
と警告する。
 
この発砲で、みんな確かに動きが停まった。放送局の男性スタッフが数人、男を取り押さえようと迫る雰囲気だったのが、銃が本物と分かり、下手な動きはできないと思ったのか、停まってお互い顔を見合わせている。
 
結果的に男がコスモスを左で抱きかかえるようにしたまま右手で銃を持ち、そのそばで、私・千里・三田原さんが男を睨み、部屋の奥の方にはアクアと彼をしっかり自分の後ろにやって守るようにしているヤコおよび他の伴奏者たち、そして多数の記者が立ち上がって3〜4m以上離れた場所から写真を撮ったりしているという状況になった。
 
放送局のカメラは、しっかり撮影しているが、東京側の判断で映像を切り替えたかもと私は思った。
 
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一瞬時が止まったかのようであったが、他の放送局スタッフや紅川さんたちと一緒に入口近くの壁のほうに居た、青葉が歩み寄ってきた。手には先ほどのバスケットボールを持ったままである。
 
「なんだお前、撃つぞ」
と男が青葉のほうに向かって言う。
 
「お兄さん、そんな、か弱い女の子を人質にしちゃダメだよ」
などと笑顔で言う。
 
いかにも無害そうな女子大生が笑顔で語りかけるので、男はちょっと拍子抜けした感じだった。
 
その瞬間青葉は持っていたボールをチェストパスの要領で投げた。
 
男がギクっとするものの、青葉が投げた先は千里である。そして千里はボールをキャッチすると、左手で男めがけてボールを勢いよく投げる。
 
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ボールは男の右手手首の所に正確に当たった。
 
男が「ぎゃっ」と言って銃を落とす。
 
次の瞬間、千里は男に駆け寄り、自分の身体を無理矢理男とコスモスの間に割り込ませてコスモスを解放する。テレビ局の男性スタッフが走り寄って、1人は銃を確保。他の数人で男を取り押さえた。
 
宮嶋アナウンサーがすかさずマイクを持ち、カメラに向かって言った。
 
「男は無事取り押さえました。コスモスちゃんもアクアちゃんも無事のようです」
 

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紅川さんが走り寄ってきて
「宏美ちゃん、大丈夫?」
とコスモスの本名を呼ぶ。さすがに青い顔をしていたコスモスはそれに対して笑顔を作って
「大丈夫ですよ。『踊る刑事』で人質役をした時のこと思い出しました」
と言ってカメラに向かって手を振った。
 
後ろの方でヤコに保護されていたアクアも走り寄り「社長、大丈夫ですか?」と言って、コスモスを心配そうに見ていた。
 
このあたりまでが全国にそのまま放送で流れたようである。
 

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