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■夏の日の想い出・翔ぶ鳥(11)

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警察の事情聴取のようなものも行われるとは思われたが、私たちは大阪に行かねばならないので、放送局の部長さんや松前社長の判断で、行かせてもらうことにした。
 
「明日の朝また福岡に来ますので、必要なら明日の午前中に事情聴取とかには応じられますので」
「分かりました。警察にはそう言っておきます」
と部長さんは言った。
 
それで騒然としているスタジオを後にして、私と青葉は用意されていたタクシーに乗り、福岡都市高速を通って博多駅に急いだ。
 
新幹線の乗降口の所に居た身長150cmくらいの女性が近づいてくる。
「こんにちは、唐本さんですか?」
「あ。はい」
「これ頼まれたものです」
と言って大きな箱を渡す。
 
「ありがとうございます。取り敢えずお金渡しておきましょうか」
と言って、私は一万円札を出したのだが
「お金は千里さんから振り込んでもらったから大丈夫ですよ」
と彼女はにこやかに言う。
 
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「分かりました。でしたら後で千里との間で精算しておきます」
「ではお気を付けて。あ、これおふたりで車内で食べて下さい」
と言って、女性はもうひとつ持っていた小さな箱と駅弁を2つにお茶のペットボトル4本が入った袋を渡してくれた。
 
「こちらは千里さんからのおごりだそうです」
「分かりました!ありがとうございます」
 

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それで私は彼女に御礼を言って、改札を通り、新幹線に乗った。結局12:43の《さくら552号》に間に合ってしまった。私たちはいったん自由席に乗ったものの、回ってきた車掌さんに言い、グリーン席に変えてもらった。
 
「あれって、正確に男の手首を狙ったよね」
と私は訊く。
 
「はい。千里姉でなければできないことです」
と青葉。
 
「実は姉から『笑顔で近づいて来て、ボールを私にパスして』と脳内直信で言われたんですよ」
 
「さっすが!そんなの千里と青葉でなきゃできない。それと青葉でなきゃ、あの場面で犯人のそばに寄るなんて恐くてできない。でもうまい具合にボールを膨らませていたし」
 
「私は平気ですよ。でもこういう予定調和を起こすのが千里姉なんですよ。そういうの冬子さんも今までに何度も見てません?」
 
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「見てる」
と私は言った。
 
「千里姉はああいう時、準備ができていることについては、何も考えていなかったと言うんですよね。だから事前に何か分かった訳でもないけど、なぜかうまい具合にちょうどいい道具があったりするらしいんですよ」
 
「私なぜここの駐車場に車駐めるんだろうと思ったけど、うまい具合に行ったね、なんてセリフをこれまで5〜6回聞いている気がする」
 
「爆弾のほうも多分千里姉がいたら大丈夫ですよ」
「爆弾って本物だと思う?」
「たぶん本物です。まだ犯人が捕まったという情報がありません。やはり、爆破予告の発信元は複雑に隠蔽されているっぽいです。そこまでするのは愉快犯ではないですよ」
と青葉は言った。
 
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「でも千里って、IPアドレスなんてのが分かってなかったみたいだけど、本当に機械とかコンピュータとか苦手みたいだよね」
 
「冬子さん、何なら今二子玉川のJソフトに電話してみましょうか?絶対、千里姉が出ますから」
と青葉は言うが
 
「やめときなよ〜」
と私は言った。
 
「でも人間だった」
「何が?」
 
「博多駅で私たちにケーキとお弁当を渡してくれた人です」
「人間じゃなかったら何なの?」
「眷属か何か使うかと思ったんですけどね〜」
 
私は苦笑した。
「千里は、そういう所は巧妙で、絶対しっぽを掴ませないようにするんだよ」
「そんな気がします」
 
「実際、千里はバスケットの活動を通して全国に友人がいるみたいだよ」
「それは言っていました」
 
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実際に、この時私たちが改札口の所で会ったのは、ジョイフルゴールドに所属している熊野サクラの妹さん、熊野ツバキであった。自身は地元のクラブ・バレーチームに所属している。ちょうど祇園町でのバイトが終わって帰ろうとしていた所で千里から電話があったらしい。そういう都合のつく人物に接触できるのが千里の“才能”なのだが、本人はそのことを全く意識していない。熊野さんは、お姉さんは180cmを越える長身だが、妹さんは150cmくらいしかないという対照的な姉妹である。
 
「ついでにたいてい《兄妹》と思われる」
などといつかサクラは言っていた。
 

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なお、この銃人質?事件で、事件解決後5分くらいしてやっと駆けつけてきた警察は、最初、ボールをぶつけた行為が危険な行為ではと思ったものの、千里がオリンピック代表のバスケットボール選手で、しかもシューターだと聞いて、納得してくれたようである。
 
「銃に当てると暴発の危険があるから、正確に手首に当てたんですよ」
「なるほど。しかしうまい具合にボールがありましたね」
「事前に妹と遊んでいたので」
「その妹さんがパスしてくれたんですね」
「そうです。妹もバスケでは無いですが、インターハイやインカレに出ている水泳選手で運動神経はいいんですよ」
「スポーツ姉妹ですか。凄いですね」
 
アクアたちは警察に事情を聞かれたが、ライブがあるからというので、すぐに解放してもらえた。やはり私と青葉は明日の午前中、福岡の中央警察署を訪問して事情聴取に応じることになった。
 
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結局この事件は一部始終が全国に生中継で流れていた。東京側でカメラを切り替えていったん東京に戻すかどうか協議している間に、あっという間に解決してしまったからである。現場に居た私たちはけっこう長い時間のように感じたのだが、実際には犯人が乱入してから、千里がボールを犯人の手首にぶつけてコスモスを助けるまで、1分も無かったらしい。
 
あまりにもあっけなく解決してしまったため、番組の演出かと思った視聴者まであったようである。
 
なお、犯人は全国放送のカメラの前で何かアピールしたいことがあったらしいが、何も言う前に捕まってしまった。
 

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新幹線が広島を過ぎた頃、車内の掲示板に「福岡でアイドルのドーム公演爆弾犯逮捕」というニュースが流れるので、私たちはびっくりしてスマホで情報を収集した。
 
その結果、なんと博多公演のサポートミュージシャンとして入っていた、キーボード奏者が自分の荷物に紛れて爆弾を持ち込もうとした所を警官に見つかり、その場で爆発物取締罰則違反の疑いで現行犯逮捕されたということであった。
 
「やはりあの人でしたか」
と青葉が言うので、びっくりする。
 
「怪しいと思った?」
「怪しいということで、千里姉と意見が一致しました」
「え〜!?」
「だから姉は、わざと彼女が警察にチェックされるように仕掛けたのだと思います」
「うむむ」
 
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「普通なら、アーティストやマネージャーまでは荷物チェックしませんからね」
 
「でもキーボード奏者が逮捕されたら、公演はどうするんだろう?」
「きっと姉が代理演奏したと思います」
「あぁ」
 

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実際、18時すぎ、大阪ユーホールの楽屋で私たちが最後の打合せをしていた時に千里から連絡があり、今日のアクア公演での追加キーボード(ヴァイオリンパート)はやはり千里が務めたということであった。
 
「千里が代行できる楽器で良かったね」
「うん。私、本物のヴァイオリンはいまだにダメだから」
「それ練習する気が無いとしか思えないんだけど」
「そうかもね〜」
 
「どういう経緯で見付かったの?」
「ドームに行って、中に入る時に、当然私たちはフリーパス。観客は全員金属探知機のゲートをくぐらせた上に、バッグの中を開けさせられて全部警官がチェックしていたけどね」
 
「うん」
「それで楽屋口のところで、私、あの人を転ばせちゃったんだよね〜」
「転ばせた?」
 
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「すると彼女が慌てて、バッグの心配をしている訳」
「そりゃ恐いよね」
「まああの爆弾は転んだ程度の衝撃では爆発しないタイプだったけどね」
「そこまで分かってて転ばせたんだ?」
 
「彼女の慌てようが異様だったんで、楽屋口の所で警戒していた警官が近づいて来て、どうかなさいましたか?と」
「なるほど」
 
「いや割れ物が入っていたので、なんて言うからさ。じゃ割れてないか見てみたほうがいいよ、と三田原さんが言って」
「ああ」
 
「ところが彼女、実際のものは取り出さずに、手を入れて触って大丈夫みたいです、と。しかも彼女手を入れる時に、わざわざ手袋をしたんだよ」
 
「怪しすぎる」
 
「そこで私が『なんか金属性の音がしたけど』と言って、そしたら警官が『金属ですか?』と言って、念のため見せてください、と」
 
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「千里もけっこう強引だね」
 
「そしたら彼女、荷物を放置して逃げようとするもんだから、警官が『待て』と言って捕まえて。それで荷物を確認すると、中から時限装置の付いた爆弾が出てきた。怪我人が出ないように、公演が始まった後、ロビーで爆発させるつもりだったらしい」
 
「動機とかは?」
 
「自分がなかなか売れなくて食い詰めているのに、へたくそなアイドルが何億も稼ぐのはずるいと思って犯行を思い立ったらしい。ところがお昼に実際にアクアの伴奏をして、アクアが物凄く上手いのに驚いて。それで犯行をやめようかとも思ったけど、テレビ局であんな事件が起きて、荷物をコインロッカーとかに隠したりする時間も無かったらしい」
 
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「テレビ局で事件が起きてなかったら、何事も起きなかった可能性もあったわけだ?」
「今日のところはね。明日は分からなかったと思うよ」
「ああ」
 
「しかしまあ今日はアクアは受難日だね」
「どちらも怪我人とかも出なくて良かったよ」
 

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「彼女を紹介したインペグ屋さんの社長が青くなって、東京から飛んできて、公演終了後になったけど、三田原さん・松前さんと紅川さん・コスモスちゃんの前で土下座して謝っていたよ」
 
「インペグ屋さんには落ち度は無いよ」
 
「うん。松前さんも紅川さんも、そちらには何の責任も無いです、と言ってた。まあ差し入れてもらったお菓子は出演者で分けて食べたけどね」
 
「色々大変だなあ」
 

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「でもこの後の公演はどうするの?」
「Bチームのキーボード奏者さんが残り全部の公演に付き合ってくれることになった」
「わあ、大変だ」
「うん。特に北海道に行った後、1日置いて東京2日間というところが辛いから2チーム作ったんだけど、新たなキーボード奏者を今から手配するのは無理だもん。数日で30曲も覚えるなんて出来ないし」
 
「確かにそんな状態で演奏できるのは千里とか私とかくらいだよ」
 
「うん。私や冬は覚えてなくても初見で弾けるからね〜。ちなみに、醍醐さん、この後の大阪・札幌におつきあい頂くのは無理ですよね?と言われたけど、私はオールジャパンがあるから無理ですと断った」
 
「だよね〜。ちなみにJソフトの方は忙しくないの?」
「どうだろう?私、最近あちらにあまり行ってないし。こないだ青葉が突然来た時くらいかな」
などと千里が言うので、そばで聞いていた青葉が呆れたような顔をしていた。千里も本当に開き直っている!
 
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「あの会社も辞めたいんだけど、なかなか辞めさせてくれないんだよ。もう10回以上退職願い出してるんだけど。それどころか、来年4月から課長になってくれないかと言われて困っている」
などと千里は言う。
 
「うーん・・・」
と言って私は青葉と顔を見合わせた。
 

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