広告:トロピカル性転換ツアー-文春文庫-能町-みね子
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■春金(17)

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(C)Eriko Kawaguchi 2020-12-27
 
その日、2週間の旅行から戻った玄子絵菜は、上司の鱒渕水帆に
 
「フォームとか作ってないからネットとかで見て適当なフォームをダウンロードして記入して出してと言われたので」
と言って、書類を提出した。
 
「ああ、お帰り。どうだった?」
「こういう時期なんで、とにかく基本的には車から降りない観光というので、観光地は車の中から見学して、食事はひたすらテイクアウトとか、お弁当を買って、夜は車の後部座席で一緒に寝て、不自由だけど楽しかったです」
と絵菜は言う。
 
「結婚式もネット方式だったんでしょ?」
と女装!の古城羽志夢(風花の夫)が言う。
 
「そうなんです。私と彼は別の所に居て、神主さんは神社からリモートで」
と絵菜。
 
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「そこまでリモートなの!?」
とケイが驚いて言う。
 
「まあそれは冗談ですけど。結婚式は、私と彼と神主さん、巫女さん2人、双方の両親ときょうだいだけでして、それ以外の親戚・友人は悪いけど遠慮してもらって。その後、祝賀会が、ホテルのネット祝賀会プランで」
 
「ああ、今どこもやってるよね」
 
「あけぼのテレビ方式のライブと同じなんですよ。祝賀会会場には液晶モニタが並んでいて、参加者のところには予めシャンパンやサイダーとお料理が届けられていて。でも祝賀会方式で明朗会計だから、お友達とかも「御祝儀幾らにするか悩まなくて済むしドレスも借りなくていいから助かる」と言ってました。
 
「女はドレスも大変だよねー」
と詩津紅が言っている。
 
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ふと鱒渕が絵菜からもらった書類の誤字に気付いた。
 
「絵菜ちゃん、字が間違ってる」
「あれ?違ってました?」
「改姓届けじゃなくて、改性届けになってる」
「きゃー」
 
絵菜が提出した届けは
 
改性届け
 
旧姓名 玄子絵菜 くろこえな
新姓名 白石絵菜 しろいしえな
 
と書かれていたのである。
 
「結婚で姓を変える人は普通だけど、性を変える人は珍しい」
と古城羽志夢。
 
「改性届けなら、性転換手術を受けなくちゃ」
 
「それ、羽志夢さんのことですか?」
「そうなんだよ。妻は姓を変えたんだけど、僕は性を変えることになっちゃて」
などと羽志夢は笑いながら言っている。
 
「でもトランスジェンダーの人で結婚を機会に性転換手術する人はいるかも」
「ああ、それはいる」
「でもそのパターンって大抵別れちゃうよね」
と詩津紅が言う。
 
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「そうなんだよね。性転換手術した人は、それまでの恋人と別れてしまうことが多い。男性と付き合っていた男の娘は彼のいい奥さんになろうと思って痛い思いして手術を受けて女になると、たいてい捨てられる」
とケイ。
 
「きっと男の身体のほうが良かったんでしょうね、相手は」
「隠れ同性愛だよね」
 

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「だけど、絵菜ちゃん、玄子から白石へって、色が大転換だね」
「そうなんです。色性転換だと言われました」
 
「囲碁の石の数のことを“子”とも言うよね?」
「そうなんですよ。だから黒石が白石に華麗なる変身をしたって」
「オセロみたいだ」
「それも言われました。もう黒と白の模様の横断幕を式場に張ろうかと」
「それは別のセレモニーと間違われる」
 
「でも引き出物にダジャレで黒石と白石のセットをつけましたよ。囲碁盤もおまけで」
 
「ああ、それは面白い」
「石はガラス製の安物ですけどね」
「いや、本当に安物はプラスチックでできている」
「確かに。でもさすがにプラスチックは安すぎるだろうと思って」
「確かにね」
「碁盤はプラスチックに木目シール貼った安物ですし」
「そりゃ榧(かや)とか使うと高すぎる」
 
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「だけど羽志夢さん、そろそろ女装が癖になったでしょ?」
「お使いでどこかに出てる時にトイレに行きたくなった時困る。多目的トイレを見つけては、そこでしてる」
 
「女子トイレ使えばいいのに」
「捕まるよ!」
「大丈夫ですよ。羽志夢さん、そうしてると女にしか見えないもん」
「自分でもこんなにきれいになるとは思わなかった」
「これを機会に常時女装で」
「それ癖になっちゃったらどうしよう?と思って」
「既に癖になっていると思うな」
 
実を言うと、風花が産休中(9月9日に出産した)で、風花は結婚した時
「私の産休中は夫に女装させて代理させますから」
と冗談で言っていたのをマリが覚えてて、本当に代理で出て来てくれている羽志夢をうまく乗せて女装させてしまったのである。それで彼はここ1ヶ月ほど、ずっと女装で勤務している。
 
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最初はケイのマンションの中だけだったのが、最近はこのままの格好でお使いに行ったり、消耗品の買い出しに行ったりまでしている。最初は恥ずかしがっていたのが、だいぶ女装生活に慣れてきて、本当に“癖になりつつ”ある感じだ。
 
ちなみに彼は雑誌と契約したライターなので、会社出勤などの必要は無く、ケイのマンションで風花の代理をしながら自分の原稿も書いている。納品もネットですればよい。
 

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ルキアは夢を見ていた。
 
温泉に行き、(普通に)男湯に入り、男物の服を脱いで浴室に移動。身体を洗ってから湯船につかって、少しボーっとしていたら、ふと気付くと周囲にいるのが、女性ばかりになっていたのである。
 
なんで!?
 
まさかここって、時間で男湯と女湯が切り替わる所で、うっかり湯船の中で眠ってしまっている間に、女湯に切り替わっちゃった!??などと考えて焦る。女でないとバレたら、通報されちゃう、と困ってしまう。
 
ところがそこで“バリバリ”っと何かを破るような音がした。
 
見ると、モナが浴室の壁をバリバリと破って、向こうからやってきたのである。
 
「モナ!?」
 
「私うっかり間違って男湯に入っちゃったから、壁を破ってこらに移動してきた」
「間違うもの!?」
「みっちゃんは間違わずにちゃんと女湯に入ったね」
「いや、ボクは間違ったみたいなんだけど」
「一緒にあがろう」
「うん」
 
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それでルキアはモナに手を握ってもらい、一緒に脱衣室に移動した。モナが一緒なら、女湯でも大丈夫な気がした。身体を拭いて、服を着るが、ルキアの服は全て女物である。
 
「あれ〜。ボクちゃんと男物の服を着てきたつもりだったのに」
「みっちゃんは女の子なんだから、女の子の服を着ればいいんだよ。男の服なんてもう要らないよ」
と笑顔でモナは言って、ルキアにキスした。
 
それでルキアはおちんちんを後ろ向きに収納して女の子パンティを穿き、何も無い胸にブラジャーを着け、ブラウスを着てスカートを穿き女子制服の左前合わせのブレザーを着た。
 
「みっちゃん女子制服似合うよ。明日から一緒にお揃いの女子制服で学校に行こうね」
とモナは自分も女子制服姿でそう言った。
 
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「でもボク男子なのに」
「学校に改性届けを出して女子生徒にしてもらえばいいよ」
と笑顔でモナは言った。
 

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そこで目が覚めた。
 
あらためて衣装ケースの下着を入れている段を探すが、男物の下着は見当たらない。むろんモナが全部持ち去ってしまったのである。
 
「男物の下着無いと困るよ。今日は体育あるのに」
とルキアは呟いた。
 
「でも最近、体育のある日以外はいつも女の子下着つけてる状態になってたなあ。なんか女装が癖になりつつあるかも」
 
先日はテレビ局の人から
「ルキアちゃん、局に出入りする時、無理して男装しなくても普段通り女の子の格好でもいいからね」
などと言われちゃったし。
 
事務所の社長なんて、アクアちゃんの水着写真集見て、
「ルキアちゃんもアクアちゃんみたいに、おっぱい大きくして女子水着の写真集出しちゃう?」
なんて冗談(だよね?)言うし。
 
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ボク女の子になるつもりなんか無いのに・・・・
 
でも改性届けとかあるんだっけ??
 

一方、撮影旅行に来ている恵真。
 
9月12日の撮影はトトロ岩で終わったので、福井さんの運転する車で山越えの県道を越えて穴水町に出る。確かにこういう道は3ナンバーだと辛いかもと恵真は思った。珠洲道路で長い坂道を上りまた下ってから少し走り能登空港に戻る。福井さんに御礼を言って別れた。
 
金沢から来た別の撮影隊の人たちと合流する。
 
「こちら近々デビュー予定の葉山セリア。こちら作曲家の大宮万葉。別名金沢ドリル」
 
とAさんが紹介する。
 
「大宮万葉先生!お初にお目に掛かります。でもこの人、他人に紹介する度に、私の名前を毎回違うように言うんですよ。羽鳥セシルです、よろしくお願いします」
 
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と恵真は訂正して挨拶した。
 
「霊能者の金沢“ドイル”こと、作曲家の大宮万葉です。よろしく、セシルちゃん」
 

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飛行機の中では、大宮万葉さんが金沢のお菓子といって、“きんつば”を渡してくれたのをアナさん・オナさんが全員に配ったが、美味しいきんつばだった、
 
能登から旭川へのフライトでは
「眺めのいい所に座らせてあげる」
と言われてコーパイ席に座らせられたのだが、ジェットコースター並みの迫力でわりと怖かった。
 
パイロットの山村さんが待機中に買っておいてくれていた松花堂弁当を機内で食べて夕食とした。
 
この日は旭川市内のホテルに泊まった。部屋割は、アナ・オナ姉妹はツイン、Aさんと恵真は各々シングルである。
 
翌日は、北海道でのドライバー役の坂本さんという女性が運転してきたトヨタ・ラウムに乗ってホテルを出る。雪の美術館にお邪魔し、開館前に美しい館内で撮影させてもらった。以前、神奈川県にあったお城のセットの所でも着た豪華なドレスを着て撮影する。
 
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その後、車内で坂本さんが買っておいてくれた朝御飯のお弁当を食べてから、層雲峡まで行く。銀河流星の滝など、層雲峡の景色をバックに撮影をした。ロープーウェイで黒岳にも登り上で撮影する。
 
お昼をやはりお弁当で食べてから、午後、旭川市内に戻り、旭橋、常盤公園、などで撮影した後、旭岳ロープウェイに乗る。午前中に登った黒岳とは反対側から大雪に登ることになる。鏡池などを背景に撮影する。ここで日没となったが、夕日の中で旭岳を背景に撮影は続けられ、日が落ちてからロープーウェイを降り、空港に戻った。
 
今日1日運転手とお弁当の調達などの雑用係をしてくれた坂本さんに御礼を言い、空港内に入る。大宮万葉さんたちと合流する。
 
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離陸許可を待つ間に夕食のお弁当(山村さんが買っておいてくれた)を頂いた。
 
今回の撮影旅行では、外食したのは昨日お昼のムーラン津幡店のみで、それ以外は一貫してお弁当である。基本的に♪♪ハウスのタレントは外食は禁止で、ムーランは特に感染対策がよくできているので例外的に許可されているお店のひとつらしい。
 
でもさすがにハードスケジュールで疲れた!
 

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今年のWリーグは、9月18日から始まった。
 
千里たちのレッド・インパルスは“女王”サンフラワーズと大田区総合体育館で2連戦をしたが、70-66, 80-69 で二連敗でのスタートになってしまった。
 
なお、フランスのLFBは10月14日から始まる予定である。
 
むろん、Wリーグに参加するのは3番、LFBに参加するのは2番である。
 
ただ千里としては、近い内にとうとう自分が1人に統合されそうな気がしていたので、その後、どうしよう?と思っていた。
 
年内は両者のスケジュールは偶然にもぶつからないのだが、1月9日には、LFB, Wリーグの双方の試合があるのである。時間はずれるが、1日2試合は辛いなと思っていた。
 

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