広告:オトコの娘コミックアンソロジー- ~強制編~ (ミリオンコミックス75)
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■春金(13)

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(C)Eriko Kawaguchi 2020-12-26
 
ミッションは9/12-13(土日)に実行された。
 
朝、羽田から千里姉のG450が能登空港に飛来する。そのタレントさんと撮影班が予約していたレンタカーに乗り津幡に移動して、アクアゾーン他で写真撮影をした。
 
夕方、彼女たちは青葉たちと能登空港で落ち合った。
 
青葉は脱力する。
 
「先生がプロデュースしておられるんですか?」
 
「撮影も私がしてるわよ。ちなみに私は“仮名(かめい)A”でお願いね」
「なんで仮名(かめい)なんですか?」
 
「お互いに正体は知らなくてもいいということで。この子は“仮名E”こと、近々デビュー予定の葉山セリア。こちら作曲家の大宮万葉。別名金沢ドリル」
 
「大宮万葉先生!お初にお目に掛かります。でもこの人、他人に紹介する度に、私の名前を毎回違うように言うんですよ。羽鳥セシルです、よろしくお願いします」
 
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と彼女は挨拶した。適当な名前を言うのは“Aさん”らしいと青葉も思った。こちらも訂正する。
 
「霊能者の金沢“ドイル”こと、作曲家の大宮万葉です。よろしく、セシルさん」
 

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G450(定員14名)はすぐに能登空港を飛び立った。乗っているのはパイロット以外にこの9人である。
 
■セシル撮影班(4)
 羽鳥セシル、大物プロデューサー“Aさん”(兼撮影担当)、撮影助手を務めているらしい真城聖美・歌美姉妹。
 
■ヒグマ取材班(5)
 神谷内大・皆山幸花・夏野明恵・伊勢真珠・川上青葉
 
セシルは「眺めのいい所に座らせてあげる」と言われてコーパイ席に座らされていたが後から「結構怖かった」と言っていた。迫力満点だったろう。
 
青葉は、パイロットの山村に「お疲れ様です」と挨拶し、真城姉妹には「お久しぶりです」と挨拶しておいた。真城姉妹は
「私たち、仮名“アナ”と“オナ”ですから、本名言わないようにして下さい」
などと言っていた!
 
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どうも全てバーチャルな世界で制作されているようだ。
 
青葉は
「お土産に」
と言って、真城姉妹に、金沢銘菓・中田屋の《きんつば》を2箱渡したが、姉妹は
「これ美味しいですよね!今みんなで食べちゃいましょうよ」
と言って、全員に配っていた。セシルちゃんはこれを食べたのは初めてらしく
 
「すっごい、美味しい。ファンになっちゃう」
と言っていた。
 
金沢銘菓としては柴舟が有名だが、中田屋のきんつばも全国的にファンの多いお菓子である。柴舟だと生姜が苦手という人もあるが、きんつばはあんこなので苦手な人が少ない。
 

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「でもアナ・オナって、阿吽(あうん)か何かから来たんですか?」
と青葉は真城姉妹に尋ねたのだが
 
「お股に穴を開けけたからアナ、女になったからオナだと言われました」
「ひっどーい!」
 
「今この飛行機に乗ってる人でお股に穴が空いてないのは、そちらのプロデューサーさんだけかな?」
 
「すみません。そこまで偉くないです。ディレクターです」
と神谷内さんは言って、2人に名刺を渡していた。
 
「済みません。名刺を切らしていまして」
と真城姉妹は言ったが
 
「お母さんにはお世話になったことありますから」
と神谷内さんは言う。
 
「母からは馬鹿息子姉妹と言われてます」
「こんな美人なのに」
 
「ちなみに、ディレクターさんは、お股に穴を開けたりする気はないです?」
「女房に離婚されるから勘弁して下さい」
 
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などと、やりとりしていたが、よく考えたら“仮名Aさん”もお股に穴は無い!と後で気付いた。
 
(青葉は山村は性転換手術済みと思い込んでいる)
 

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「でも楽しいですよ。セシルちゃん可愛いし」
「可愛い子ですね!」
「すっかり女の子するのにハマってしまって、うまく唆されて今月からは女子制服で学校に行っているらしいですよ」
 
「・・・」
 
青葉は一瞬意味が分からなかった。
 
「まさか男の子?」
「そうですけど」
 
「嘘でしょ!?波動が完璧に女の子ですよ」
「そういう子、たまに居ますよね。ローズ+リリーのケイちゃんとか、あの子に初めて会った小学生の頃から完璧に女の子でしたよ」
 
「あの子見て、私たちも早く女になりたい!って思ったもん」
 
真城姉妹は小学生のケイさんを見ている数少ない1人じゃなかった2人だろうなと青葉は思った。しかしセシルちゃんは男の子!?青葉は自分の席に就いて機内で彼女を探査してみたものの、男の子らしき痕跡が全く無い。体内までサーチしてみると、卵巣や子宮があるように見える。ペニスや睾丸などは見当たらない。この子、男の娘という建前で本当は純粋な女の子なのでは?“パーチャル男の娘”?などと考えたりしていた。もっともこの青葉の“スキャン”については、千里姉のように美事に欺されたこともあるにはある。しかし、もし偽装なら物凄い霊能者が偽装しているとしか思えない。
 
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まあ、そういう“物凄い霊能者”に2人ほど心当たりはあるけどね、と青葉は心の中で呟いた。
 

2時間近いフライトで旭川空港に着陸する。この日は旭川市内のホテルに泊まった。
 
翌日、セシルちゃんたちは旭岳などに撮影に行くと言っていたが、青葉たちは旭山動物園に向かった。ヒグマを飼育している北海道の動物園は、ここと札幌の円山動物園の2ヶ所である(本州に10ヶ所ほどあるが北陸には無い)。
 
予め取材を申し入れていたので、スタッフの方が案内してくれたが、ヒグマは“もうじゅう館”に収納されている。ここには、他にライオン、アムールトラ、アムールヒョウ、ユキヒョウもいる。やはりライオン・トラと並ぶ動物なんだなということで、青葉たちは身が引き締まる思いだった。
 
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(来年くらいには“エゾヒグマ館”として独立する予定)
 
「大きい」
と幸花が声を挙げる。
 
「ツキノワグマを見られました?」
「数日前、富山の動物園でツキノワグマを見ました」
「ヒグマはツキノワグマの倍くらいありますからね」
「ですよね!」
 
「でも、この子“とんこ”はメスだから、まだ小さいんですよ」
「これで小さい方なんですか!」
 
「この子の息子のダイ(2011.1.17生)は札幌の円山動物園にお婿さんに行ったので、もしお時間があったら、息子君にも会ってあげてください」
 
「ダイ君のお父さんは?」
「くまぞうって子だったんですが、6年前(2014.10.16)に亡くなったんですよ」
「あらあ」
「ダイ君にはきょうだいは居なかったんですか?」
「ダイと一緒に生まれたユキちゃんって女の子がいたんですが、2歳の誕生日に亡くなってしまいました」
「あらぁ」
「2人あわせて“大雪”だったんですけどね」
 
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「そういう熟語を分けた双子の命名ってよくありますよね」
 
飛行機に同乗していた真城聖美・歌美姉妹が“聖歌”だよなあ、と青葉は思った。
 

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青葉たちはしばらく“とんこ”の様子を眺めていたが、やがて真珠が言った。
 
「可愛いですね」
「でしょ?私大好きなんですよ」
とスタッフさんが言う。
 
「山の中では会いたくないけど」
と幸花が言うので青葉は言った。
 
「人間と熊や狼は明治以前にはお互いのテリトリーを守って暮らしていたんですけどね。明治以降、人間が熊や狼のテリトリーに入り込みすぎましたね」
 

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旭山動物園を出る。
 
「札幌まで行く?どうする?」
と神谷内さんが訊く。
 
「札幌まで往復どのくらいかかりますかね」
「片道2時間くらいですね」
「今11時だから着いて13時。取材が終わって戻って来て16時」
「行きましょう」
 
それで一行は旭川空港で借りたレンタカーを(青葉が)運転し、札幌の円山動物園に向かった。車内から神谷内さんが電話で取材を申し入れた所、快く応じてもらえた。
 
「わざわざ金沢からいらしたんですか?」
と言ってスタッフさんが笑顔で案内してくれた。
 
ここは旭山動物園から来たダイ、のぼりべつクマ牧場から来たメスの“とわ”(2008.1.14生)の2頭が飼育されており、一般客には毎日前半と後半で交替展示されている。しかし今回はテレビ局の取材ということで、両方見せてもらった。
 
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最初にダイを見る。
 
「でかい!」
と全員声をあげた。
 
「ああ、旭山からいらしたんですね。だったら、お母さんの“とんこ”とお会いになりましたか」
 
「ええ。“とんこ”より一回り大きい感じですね」
「ヒグマはオスとメスでかなり大きさが違いますからね」
「さすがオスは風格がありますね」
「動物世界のチャンピオンのひとつですから」
 
「でもかっこいい!」
と明恵が声をあげている。どうも明恵も真珠もクマが大好きになったようであった。
 
続いてメスの“とわ”も見せてもらったが、こちらは“とんこ”と似たようなサイズという気がした。
 

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青葉たちは円山動物園で2頭のヒグマを見た後、旭川空港にとんぼ返りしたが、機内で夕食を食べながら待機していたら、セシルたちが戻って来たのはもう20時近くだった。日没(17:45)まで撮影をしていたらしい。
 
「明日また撮影という訳ではないんですね?」
「学業絶対優先という契約だから、月曜日学校を休ませる訳にはいかない」
「でも土日はこき使われる訳だ?」
「まあ仕方ないね」
 
それで青葉たちが乗るG450は21時半頃離陸許可をもらって旭川空港を旅立つ。そして23時すぎに羽田空港に到着した。
 

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羽田でセシルやAさんたちと別れる。
 
そしてこの日は『せっかく東京に来るなら』と言われて、大田区内(羽田からはとっても近い)の、あけぼのテレビ本部(§§ミュージック・サテライト)に来てと言われていたので、そちらに移動した。ここに泊めてもらえるということだったが、当然打ち合わせ付きである!
 
美味しい紅茶と軽食を頂いた上で、幸花・明恵・真珠はもう休ませて、青葉と神谷内で、アルト、ケイ、コスモスの“あけぼのテレビ・トップ3”と会談した。
 
「単刀直入に。実は今、あけぼのテレビでは“ローカル番組を全国に”というプロジェクトを進めていまして、まずは関東地域で放送されている、関東不思議探訪をあけぼのテレビで深夜枠に1月遅れで放映させてもらうことで話がまとまった所なんですよ」
とアルト社長は説明した。
 
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「あの番組にはお世話になってます」
と青葉が言う。
 
「大宮先生も、お姉さんの醍醐先生も、昔からよくあの番組には出演なさってますよね」
 
「そうなんですよ。私が設立した、玉依姫神社も頻繁に映してもらっていますし」
と青葉が言うと、後ろで《姫様》が頷いている。
 
「他に、北海道で放送されている『カイ綺譚』、北部九州で放送されている『街道の寄り道』とも交渉を進めている所で」
 
「怪しい番組ぱかりだ!」
と神谷内さんが苦笑しながら言った。
 
「深夜にちょっとトイレに行けなくなるような物語をと」
「防水シートが必要になるかな」
 
などと言ったジョークも交わしたが、神谷内さんは自分だけでは判断できないので持ち帰って検討すると言ったが結構乗り気な感じであった。
 
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あけぼのテレビで放送されると、その分、予算が増やせることになる。ただ、ローカルだからこそ許されていたようなものが、放送倫理的に厳しくなることも予想され、そのあたりの落とし所を見つけるのが課題かなと青葉は思った。
 

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1時間ほどの打ち合わせの後、宿泊室に案内されて休んだが、寝ようとしていたら、電話が掛かってくる。
 
“仮名Aさん”である。
 
「あんた、ちょっと頼みがあるんだけど」
「それではお休みなさい」
「こらー!電話切ると、狩猟免許も持たずに日輪熊を穫って食べたことばらすぞ」
 
「日輪熊という熊は聞いたことありませんが」
「胸にお日様のような丸い発光する毛のある熊よ」
 
「聞いたことのない模様ですね。発光なんてホタルみたい。それで何です?」
 
「私が連れてた羽崎セイラだけどさ」
「羽鳥セシルですか?」
「そうだったっけ?まあいいや。あの子のデビュー曲を書いてくれない?何か可愛いのがいいな」
 
「松本花子でもいいですか?」
「あんたが仕上げ調整してくれるなら、それでもいい」
「あの子の音域は?」
「G2-E♭6」
「そんなに出るんですか!」
「テノール、アルト、ソプラノの曲が歌える。並みの曲ならバスでも歌える。イメージ戦略上、歌わせないけど」
 
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「書きます!」
と青葉は言った。そんな凄い声域を持つ子が歌う曲なら書いてみたい。
 
「ただ、彼女(と言っていいんだろうな。彼ではなく)の歌を録音でもいいですので聞かせて下さい。彼女のイメージを掴みたいので」
 
「OKOK。そちらに送る」
 
と言って、雨宮先生はセシルが歌った"Amazing Grace", "Torna a Surriento", "Gloria" の録音を送ってきてくれた。
 
物凄い迫力である。声が女の子の声だけど、あの子の雰囲気を見ると、きっと小学生の内から女性ホルモンを使用して声変わりを止めていたのだろうと思う。
 
青葉は、この子はアクアの強力なライバルになるかも知れないと思った。
 
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