[携帯Top] [文字サイズ]
■春金(10)
[*
前p 0
目次 #
次p]
§§ミュージックは、昨年制作して年末に放送した大型時代劇『THE 源平記』に続く第2弾として、今年は『とりかへばや物語』を制作すると発表した。主な配役として下記が発表された。
姫君(中納言→右大将)・若君(尚侍) アクア(二役)
左大臣 川崎ゆりこ
姫君の母 桜野レイア
若君の母 桜木ワルツ
大殿(左大臣・右大臣の父)紅川勘四郎(特別出演)
中納言の腹心 佐藤ゆか・南田容子
尚侍の腹心 高島瑞絵・山口暢香
右大臣 山下ルンバ
一の君(先帝の妻)秋風コスモス
二の君(梅壺女御)花咲ロンド
三の君(源大将の妻)七尾ロマン(新人)
四の君(中納言の妻)東雲はるこ
四の君の母 日野ソナタ
四の君の乳母子 町田朱美
麗景殿の女御 松梨詩恩(友情出演)
麗景殿の女御の妹 今井葉月
源大将 大崎志乃舞
宰相中将→権中納言 白鳥リズム
若君の乳母 原町カペラ
東宮 品川ありさ
東宮の宣旨 石川ポルカ
先帝(東宮の父)春風アルト(特別出演)
今上(先帝の弟)姫路スピカ
吉野宮(先帝・今上の兄)西宮ネオン
吉野の一の君 高崎ひろか
吉野の二の君 恋珠ルビー(新人)
その他、信濃町ミューズ・信濃町ガールズのメンバーが総出演する。また、多数のエキストラが出演するが、コロナ流行の中、エキストラの人数は昨年の半数に抑えられている。また厳しい健康管理が行われることになった。出演の3日前からホテルに拘束し、外部との接触・出演者同士の接触を禁止して、毎日検温し、撮影当日は簡易検査キットにより陰性であることを確認してから2日間の撮影に臨む。むろんギャラは5日分(5万円)払う。
「やはりアクアを女装させることが目的化している」
というのはネットの多くの意見であった。
「アクアがもし本当は女なら、男装して男役の若君を演じて、更に女の振りをすることになるし、アクアが万一男だとしたら、女装して女役の姫君を演じて、更に男の振りをすることになる」
「すまん。意味が分からん」
「俺も言ってる内に分からなくなった」
放送は昨年同様12月30日で放送局も昨年と同じΛΛテレビであるが、あけぼのテレビでも1/4-2/4の間、タイムシフト視聴ができる(特例チケット1000円が必要:一度購入すれば何度でも視聴できる。本放送時は流さない。該当時間、あけぼのテレビは放送休止!社員も休んで翌日のカウントダウン番組に備える)
「あけぼのテレビはサイマル放送しないんだ?」
「多分、あけぼのテレビで放送すれば回線がダウンすると思う」
「確かに」
「いや、ΛΛテレビが放映権料1億円払ったという噂がある」
「1億円でも制作費は全然カバーできないよね」
「まあ10億かかるだろうな」
実際には放送局は放映権料など払っていない。逆に§§ミュージックが放送料をΛΛテレビに払っている。ただし、今年ΛΛテレビは格安の放送料を提示して「ぜひ地上波で」とコスモスに言ってきた。放送局側としては、直接的な利益は小さくても、視聴率の実績が欲しいのである。アクアやラピスラズリが出る番組なら、物凄い視聴率を稼げる。
この番組は松芝電機の単独提供で、スポンサー料は昨年同様、§§ミュージックに直接支払われる。つまり、放送局には全くリスクが無い。掛かった制作費は、あけぼのテレビの特例視聴料、2月に発売するDVDなどの売上で回収する方式だが、昨年の源平記は最終的に3億円の黒になっている。今年も黒になるかは何とも言えない。
その日青葉が北陸霊界探訪の編集室に行くと幸花が
「ね、ね、これどう思う?」
と話しかけて来た。
「何?」
「こないだ青葉、熊出現のニュース読んでたけどさ、その熊について妙な噂が流れているのよ」
「へ?」
幸花が言うには、最近多数の熊目撃情報があるのだが、その中で見た熊の大きさが異様に大きなものが混じっているらしい。
「普通ツキノワグマって成獣でも1.5mくらいでしょ?ところが3mくらいのを見たという情報があってさ」
「ひょっとして、ヒグマがいるとか?」
「私もそう思いました」
と言っているのは今日もここに遊びに来ている真珠である。今日は相棒(?)の明恵は来ていない。
「役場の人とか警察に事情を聞かれて、3mくらいだったと言ったけど、そんな大きなツキノワグマが居るわけ無いと言われて、結局1.5m程度という報告にされてしまったらしいんだけどね」
と幸花。
「誰かがペットとして飼ってたヒグマを、飼いきれなくなって放しちゃったとかいうことありません?」
と真珠。
「それは可能性あるけど、万一そういうことがあったとしたら、できるだけ早く捕獲して、動物園とかで管理してもらわないと、人的な被害が出てからでは遅いね」
と青葉は言う。
「それでさ、その大きな熊を見たという情報があった所の位置を地図上にプロットしてみたのよ」
と言って幸花が地図を青葉に見せる。
「範囲が広いね」
と青葉は言った。
「私も困惑している」
と幸花も言う。
幸花が作った地図では、その“巨大な熊”の出現場所は、南は国道157号の手取湖付近から、北は能登半島の輪島市、東は新潟県の糸魚川市まで及んでいる。もっとも〒〒テレビの北陸霊界探訪のアカウントをフォローしている人しか幸花の呼びかけには応じなかったろうから、北陸霊界探訪が放送されていない新潟県で、もっと東側でも目撃されている可能性はある。
「ヒグマの移動範囲ってこんなに広くないですよね?」
と真珠が言うが
「いや、ヒグマは1年間に300-400km平気で移動する」
と青葉は言う。
「そんなに動くの?」
「例の三毛別事件を起こしたヒグマは、苫前で射殺される以前に、100kmくらい離れた、天塩町や旭川でも女性を喰っている」
「じゃ、これ同じ個体である可能性もある訳か」
と幸花は言ったが、
「でも青葉さん、これとかはどうです?」
と真珠が言う。
「8月24日に輪島市で目撃されて、翌日の25日には宇奈月温泉で目撃されてるんですよ。多少は日付の勘違いもあるかも知れないけど」
「それは1日の移動距離としては、さすがに遠いね」
と青葉も答えた。
「だったら、私たちが考えていた別の仮説があり得るよね」
と幸花が嬉しそうに言う。
青葉は嫌な予感がしたが、幸花に
「別の仮説って?」
と聞いてあげた。
「これは熊のお化けだという仮説だよ」
「うーん・・・」
「そうなれば、北陸霊界探訪の出番だよ」
と幸花は本当に嬉しそうだ。
「お化けなら何とかなるけど、本物のヒグマに遭遇したらヤバすぎるよ」
と青葉は言った。
さて、一般に有料放送では、次のような形式のチケットを販売することが多い。
PPV (Pay Per View) その番組だけを視聴できるチケット。
PPD (Pay Per Day) チケットを購入したら1日見られるもの。
PPM (Pay Per Month) チケットを購入したら1ヶ月間見られるもの。
PPS (Pay Per Series) 特定のシリーズ番組を指定して毎回見られるもの。
あけぼのテレビの場合、他局のPPMに相当する“定額会員”をタイムシフト視聴無しのベーシック会員で1000円、タイムシフト視聴可能なプレミアム会員で一般3000円、22歳未満2000円(但し学年方式 (*4))という低価格に設定したため、PPD, PPS などを設定する意味が無くなってしまい、現在、定額会員か、PPV(100-300円)かというシステムになっている。
PPSを作ろうとしても、200円×13回で2600円となり、3ヶ月間定額会員になった場合の3000円と大差無い。それなら会員になってしまえば、全ての通常番組を見ることができるから、その方がお得なのである。
(*4)最初「学生料金」にしようと考えたが、“学生”を証明する方法が困難ということから、年齢制にした。
定額会員は基本的には全ての通常のPPV番組が視聴できるが、それで視聴できない特例番組が存在する。基本的には高額のPPV番組であり、初めて実施したのが2020.8.23のアクアのネットライブである。この時は実験的な意味合いもあり1500円という価格を設定したが、∞∞プロの鈴木社長は『アクアで1500円はあまりにも安すぎる。回線がパンクしなかったのは奇跡だよ』と言って、2020.9.22のハイライトセブンスターズのネットライブでは生ライブと同額の8800円という値段設定にした。これも大きな成功を収め、その後、音楽ライブの特別視聴料金は3000-8000円程度と、生ライブと同程度の額が相場になっていく。
特に会場に大量の視聴者を映したモニターおよび事前に募集した書き割りと、“視聴者の声を伝える”スピーカーを並べる“あけぼのテレビ方式”では、視聴している観客から会場へのフィードバックがあるので、演奏している側も観客の前で演奏している気分になれるし、視聴者も生ライブに参加しているのに近い感覚があり、生ライブと同額でもほとんど不満の声は無かった。
年内のあけぼのテレビのネットライブはこれ以降、次のような日程で実施された。
§§ミュージック関係
2020.10.25(日) 品川ありさ from 織姫
2020.11.23(月祝) 高崎ひろか from 牽牛
2020.12.06(日) 姫路スピカ from 小浜
それ以外
2020.10.11(日) スパイスミッション from 深川
2020.11.08(日) UFO from 深川
2020.12.13(日) ゴールデンシックス from 深川
会場はその後、§§ミュージック関係は織姫か牽牛、他事務所のアーティストは深川アリーナを使用するのが定着していく。
3月の時点で、あけぼのテレビは当初10万回線程度でスタートするつもりだったが、会員を募集したらいきなり100万人の登録があった。それで3月30日の開局までに100万回線が使用できる状態でスタートした。TKRの親会社トリプルスターの全面的な協力が得られたおかげで回線数を確保できた。またサンシャイン映像制作の則竹部長のコネで、SF音楽学院の元校長・八重美城(みき)さんの関わりから映像関係の技術者やネット関係の技術者をかなり確保できたのも大きかった(姉妹校のSFコンピュータ学院の卒業生や元講師が多い)。
接続回線数については、8月までに300万回線まで増強したし、更に年末までに400万回線まで増強する予定である。それとあわせて、視聴数が高そうな番組(基本的にはネットライブ)については、8月に★★チャンネル、10月にはЮЮネットとも同時配信できるシステムを整え、年末には3ネット合わせてテレビ600万回線・ラジオ300万回線の接続が可能な状態まで整備されることになる。
[*
前p 0
目次 #
次p]
春金(10)