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■娘たちの始まり(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-11-30
 
2014年3月18日(水).
 
遠上笑美子(とおかみえみこ)という新人歌手が★★レコードからデビューした。この名前はむろん神道のトホカミエミタメ(遠神笑給)から来ている。小さい頃姉が読んでいた漫画の中にあったことばで凄く印象に残っていたからと本人は言っていたが、その姉というのは、実はAYAのゆみであった。
 
ゆみ(本名:水森優美香)と遠上笑美子(本名非公開だが水森世都子)は実は義理の姉妹(*1)なのだが、この時点ではそのことは伏せてある。有名歌手の妹ということで話題になるのは不本意だから純粋に歌で姉と勝負したいと本人が言い、所属するζζプロの観世社長も同意したのである。
 

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(*1)世都子は優美香の母の再婚相手Aが別の女性との間に作った娘。世都子の母はAの「第2の妻」のような状態だったらしいが、亡くなったのでAは世都子を自分の戸籍に入籍した。優美香の母も、世都子の母には対抗心があったものの、世都子自身のことは可愛がってくれた。従って2人はどちらもAの戸籍に入っているのに血は繋がっていない。それでも2人はとても仲が良かった。
 

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デビュー曲はニジノユウキ(松原珠妃の別名)の『雨傘』と、葵照子・醍醐春海の『魔法のマーマレード』をカップリングしたものであった。この『魔法のマーマレード』は元々昨年秋にKARIONが出したアルバム『三角錐』に収録されていた曲だが、本人がひじょうに気に入り、ぜひ歌わせて欲しいと言ったので観世社長が、KARIONの事務所社長・畠山さんと交渉し、了承されたのである。
 
この楽曲については、ζζプロから作曲者の千里の所にも電話が掛かってきて、使わせてもらいたいと言われた。この曲はそもそもKARIONよりは誰かアイドルにでも歌わせたいと思っていたので「どうぞどうぞ、歓迎です」と言う。それでこちらで笑美子ちゃん用に編曲しますよと言って、彼女の音域を確認の上、移調して提供した。編曲は自由に改変していいですと言っておいたのだが、こちらで提供したCubaseのデータをそのまま発売音源に流用していた!
 
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2014年4月2日(水). KARIONは22枚目のCD『四つの鐘』を発売した。このCDの発売にあたっては、事前にそのタイトル等が一切明かされないという異例の状態のまま、当日朝から大量にテレビやネットにCF/PVが流されたのだが、蘭子が初めてメディアに露出して4人で歌唱している映像が流れた。それで今年の正月の08年組特集の時に、蘭子が最初からKARIONのメンバーであったことを公開し、その後、ネットの議論が半月掛けて、蘭子=ケイであるという結論に到達したのを追認したのである。
 
4月4日には過去に公開された全ての楽曲のPVとジャケ写が4人版に差し替えられたが、その中身を見ると新たに撮影されたものではなく、その楽曲の当時に撮影されたものばかりであった。つまり、毎回ちゃんと4人版も撮影していたのに、これまでは敢えて3人版の方を公開していたのである。
 
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4月7日(月).
 
その日の夕食の時、龍虎はあらためて母から尋ねられた。
 
「結局、あんた中学にはどっちの制服で通うの?」
「男子制服で通うよ。だってボク男の子だもん」
と龍虎は答えた。
 
そして明日着ていく男子制服を壁に掛けた上で、可愛い女の子パジャマを着て龍虎は眠った。
 

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深夜、熟睡している龍虎の部屋に侵入する者がある。その者は壁に掛かっている学生服とズボンのハンガーを取ると、代わりにセーラー服上下のハンガーをそこに掛けた。
 

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4月8日(火).
 
龍虎は爽快に目が覚めた。起き上がって壁にセーラー服が掛かっているのを見ても動じない。トイレに行ってから顔を洗い、平然として下着を交換し、ブラウスを着た上で、そのセーラー服を着ると、居間に出て行く。
 
「あんた、結局女子制服で通うの?」
「まさか。男子制服で通うよ」
「でも女子制服着ているじゃん」
「うん、これは問題無い」
 

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それで龍虎はセーラー服のまま「行ってきまーす」と言って家を出た。そして近所の彩佳の家に行く。
 
「おはようございまーす」
「あら、龍ちゃん、お早う」
と彩佳の母が明るく迎えてくれる。
 
「ね、ね、ふたり並んだ所写真に撮らせて」
と彩佳の母が言うのでセーラー服姿で並んで写真を撮ってもらう。
 
それから龍虎は彩佳の部屋に行き
「じゃ着換えるね」
と言った。
 
「そのままでもいいと思うのに」
「だって今日からボクは男子中学生だもん」
「それ絶対無理がある」
と彩佳は言うものの、龍虎は着てきたセーラー服の上下を脱いでしまう。
 
そして“彩佳の家に置いていた”学生服の上下を身に付けた。
 
「女子中学生の男装にしか見えん」
「うーん。それは割と真実をついているかも」
「ふむふむ」
 
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それで龍虎は学生服姿で(セーラー服を着た)彩佳と一緒に居間に行き、彩佳の母に挨拶した上で、一緒に学校に向かった。彩佳の母は龍虎が学生服を着ているのを見ても、にこやかに送り出してくれた。
 

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「要するにさ」
と龍虎は彩佳に言った。
 
「ボクが何かのセレモニーとかイベントで、男物の服を着ようと思って用意しておくと、絶対にその服は朝起きると無いんだよな」
 
「要するに隠している人がいる訳ね」
「だから、今回はダミーの学生服を壁に掛けておいた」
「それが朝にはちゃんと女子制服に交換されている訳だ」
 
「まあそういう訳で本物は彩佳に預かっていてもらった訳で」
「まあいいけどね」
と言ってから彩佳は尋ねる。
 
「それって、龍のお母さんかお父さんがしてる訳?」
「まさか」
「川南さんたち?」
「川南さんはボクにやたらと女装させたがるけど、不法侵入まではしない」
 
「じゃ誰?」
「まあ想像は付くけど、敢えて名前は言わないよ」
と龍虎は口に出して言ってから
『ね、こうちゃんさん』
と遙か空の向こうを見るように思念した。
 
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龍虎が学生服を着て歩いているのを見て『やられた!』と思っていた《こうちゃん》は名前まで呼ばれて“ギクッ”とした。
 

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中学校に彩佳と一緒に出て行くと、龍虎はみんなから言われた。
 
「結局、学生服で通うの?」
「うん。そう言ってたじゃん」
 
「ああ、賭けに負けた!」
などと言っている男子もいる。
「田代は絶対セーラー服で出てくると思っていたのに」
 
「だけどさあ」
とひとりの女子が言う。
 
「龍ちゃん、学生服着てても、女子が男装しているようにしか見えないんだけど」
 
「さっき私もそう言った所」
と彩佳は言った。
 

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クラス分け表で龍虎は1年3組だった。彩佳・宏恵・桐絵も一緒である。
 
「一緒になれて良かったね〜」
と4人で言い合った。
 
体育館に行き、クラスごと出席番号順に並ぶ。それで担任の先生が名簿を見ながら、各生徒が胸に付けている名札と照合していたのだが、龍虎の所でピタリと停まる。
 
「君ふざけてんの?」
「えっと、何か?」
「学ランとか着てきて、何考えてんの?すぐセーラー服に着替えてきなさい」
と1年3組担任の芦原先生が言った。
 
「ボク男の子ですー」
と龍虎が言うと
「冗談もいい加減にしないと怒るよ。声だって女の子じゃん」
 
確かにQS小学出身の男子で声変わりしていないのは龍虎だけである。
 
「龍、女子制服に着替える?」
と少し後ろの方から彩佳が声を掛けるが、龍虎の隣に並んでいた辻口佐和美が言う。
 
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「先生、田代さんはよく性別間違われますけど、間違い無く男子です」
「え、そうなの?でも声は?」
「まだ声変わり来てないんですよね。田代さん、小さい頃に病気したんで、発達も遅いんですよ。身長とかも去年は小学校3年生並みだったんですが、何とか小学6年生女子くらいの身長にはなりましたね」
 
「ああ、病気だったのね。ごめんねー」
「もっとも本当は本人は女子制服を着たいみたいですけど」
と佐和美は付け加えた。
 
「え?そうなの?もしそちらがいいのなら、後で相談してね」
と芦原先生は言った。
 

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やがて入学式が始まる。
 
音楽の先生?のピアノ伴奏で、君が代の斉唱をする。その後、校長が壇上に昇り、各組の担任から生徒の氏名が「あおき・たくま君」「いとう・やよいさん」などと読み上げられていくので、呼ばれた生徒はその場で「はい」と返事する。
 
男子は「君」付け、女子は「さん」付けで呼ばれているようだ。
 
龍虎は例によって「田代龍虎さん」と女子と同様の呼び方で呼ばれた!
 
しかし「さん」付けで呼ばれた龍虎が女の子のような声で「はい」と返事するので全く違和感が無かった!
 
全員の生徒氏名が呼ばれた所で校長が
「以上182名の入学を許可する」
と言った。そしてそのまま校長の式辞が読み上げられる。
 
その後、教育長の告辞、来賓の祝辞、PTA会長の挨拶、生徒会会長の歓迎の言葉、と続き新入生代表の「決意の言葉」はQS小学・児童会長を務めた加納君が読み上げた。
 
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その後、校歌紹介ということで、コーラス部の人たちがステージに昇り、ピアノ伴奏とともに1コーラス歌った。それで次は新入生も一緒にということで、体育館に掲げてある大きな額に書かれた校歌をみんなで歌って、これで式は終了となった。
 

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その後、各クラスに入る。まずは担任の先生が黒板に名前を板書して自己紹介したあと、1人ずつ名前と出身小学(基本的にはQS小とQT小しかいない)、それに「一言(ひとこと)」ということで、出席番号順(机の席も今日はその順になっている)に回していく。
 
龍虎は
「QS小学校出身の田代龍虎です。ピアノとヴァイオリンを習っています」
と自己紹介したが
「龍ちゃんはバレエも習っています」
という声がQS小出身の女子たちから掛かる。
 
「すごーい。才媛だ」
という声が掛かる。そして
 
「でもどうして学生服なの〜?」
という質問もある。
 
「えっと男子なので」
と龍虎は答えるが
 
「冗談でしょ」
という反応。それで芦原先生が言う。
 
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「君の性別だけど、学籍簿を見たら、やはり性別:女になっているんだけど」
 
「何かの間違いではないかと」
「君が男性だという何か証明書を出してもらえない?それがあれば訂正するけど」
 
するとあちこちから声が掛かる。
「龍ちゃん、せっかく女子として登録されているなら、このまま女子中学生になりなよ」
 
「母から連絡させてもらっていいですか?」
と龍虎が言うと
 
「うん。それでお母さんと少し話し合おうか」
と先生は言った。
 
こういう時、“田代龍虎”というのが法的に存在していないのは話が面倒である。
 

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同じ日、XT中学の入学式にセーラー服姿で出席した田中成美は小学校の友人たちから言われた。
 
「田中さん、中学は女子として通学するの?」
「うん。教育委員会の許可もらった」
「よかったね〜」
「でも私、基本は男の子だから」
「ああ、それは何となく分かっているつもり」
 
「田中さんって、身体は女の子になっても、心は男の子だよね」
「そうそう。でも女子トイレとか女子更衣室とか使わせてね」
「田中さんなら構わないと思うよ〜」
と友人たちは言った。
 
「田中さん、男の子にも女の子にも恋愛的な興味は無いって言ってたね」
「うん。ただ男の子でも女の子でもない人には若干の興味がある」
「というと、男装女子とか女装男子とか」
「むしろ男性器も女性器も無い人かな。男の子のあそこ見ても女の子のあそこ見ても、萎えちゃう」
「その萎えるものを取ってしまったのでは?」
「まあそうだけどね。私もそういう形になるのが理想だったけど、暫定的に女の子の形に変えちゃった。男の子の身体でいるのは嫌だったから」
 
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「私成美ちゃんのあそこ見ちゃった。普通に女の子の形になってた」
と言う子が数人いる。
 
「じゃ天使みたいなのが理想?」
「ああ、天使がいたら好きになるかも」
 

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「では現時点では男性器も女性器も無いに等しい訳ですか」
と芦原先生は言った。
 
「暫定的にそういう状態になっていますが、これは病気の治療の副作用なんですよ。病院の先生によると男性器は少しずつは発達していくはずだと」
と龍虎の母は言った。
 
「いや、男性器も女性器も無いなら、失礼ですが、天使みたいなものかなと思いました」
と校長先生。
 
「そうですね。どちらも無いのが天使、どちらもあるのが悪魔とも言いますね」
 
と幸恵はにこやかに言ったが、内心あの子はむしろ悪魔的な魅力を持っているよな、などと考える。きっと20歳頃までには芸能デビューしてしまうのだろう。
 
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