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解散後、龍虎は数人の女子から訊かれた。
「龍ちゃん、結局中学はどちらの制服で通うの?」
「ごめーん。男子制服で通うつもり」
「ああ、そちらに行くか?」
「龍ちゃん、自分は男の子だと言ってたもんね」
「だったら、おちんちん取り付ける手術するの?」
「うーん。手術まではしないかな。おちんちんが自然に大きくなるのを待つ」
「そうか。過去に2度伸びてきたのを短く切ったと言ってたけど、今度は放置するのね?」
うーん。伸びてきたから切ったって何の話だ?
「だったら龍ちゃんの女の子としての最後の日の記念写真撮ろう」
ということになり、龍虎はセーラー服姿で、クラスメイトたちとたくさん記念写真を撮った。
お昼を兼ねた謝恩会では、龍虎の3人の保護者がセーラー服姿の龍虎の隣に座る。龍虎は彩佳および保護者と向かい、桐絵および保護者と隣、宏恵および保護者と斜め向かいである。宏恵は制服を貸したことはうちのお母ちゃんには言わないでと言っていたので龍虎も彩佳たちも何も言わなかった。
謝恩会が終わった後、この4人とその保護者で一緒に町に出てあらためてお茶を飲んだ。そして、支香が
「記念品」
と言って、お揃いの桜のブローチを4つ配った。
「高そうなんですけど」
という声もあるが
「支香おばちゃんは割と経済的な余裕があるから、値段は気にしないで」
と龍虎は言った。
「じゃ、もらっておこう」
と言って全員受け取り、セーラー服に付ける。そのブローチを付けた状態で4人セーラー服で並んで記念写真も撮った。
「そういえば龍ちゃんと、この3人の関係は?」
と質問があるので龍虎が説明しようとしたが、幸恵がそれを遮って言った。
「照絵さんは龍虎を産んだ母、支香さんは龍虎の卵子を提供した母、そして私は龍虎の精子を提供した母」
「不妊治療の結果ですか?」
と桐絵の母。
「最近はそういうの複雑ね!」
と宏恵の母が言ったが
「待って。精子を提供したのなら父では?」
と桐絵の母が気付いたように言う。
「あ、私、生まれた時は男だったんですよ」
と幸恵が言うと
「うっそー!?」
と声があがっていた。真相を知っている彩佳の母が苦しそうにしていた。
しかし彩佳の母が苦しそうにしていたことで、桐絵の母も宏恵の母も、冗談なのだろうと判断したようである。宏恵も桐絵もあとで帰宅してから各々の母に尋ねられて
「幸恵さんが龍の育ての母だよ」
と答え、それで2人とも納得したようであった。
「それに龍の本当のお母さん・お父さんはもう亡くなっているんだよ」
と言うと、各々の母は
「そうだったの?色々苦労しているんだね」
と言った。
むろん桐絵と宏恵は正確なことは知らないのだが、状況が複雑すぎるようだし、そのあたりに言及するのは龍虎を傷つけるのではと思い、その問題について尋ねたことが無い。ただお互い仲良しであればいいと思っている。
ただふたりとも、龍虎が中学に学生服で通ってきた場合、今までのような友情を維持していく自信が、この時点では無かった。
一方彩佳は龍虎を春休みの間に《私物化》する計画を立て、龍虎の両親が出ている日を狙って龍虎の家に行き、自主的に裸になり龍虎も裸にして押し倒す!所までは成功したものの、龍虎のおちんちんは刺激しても肌の中に埋没したままだし、射精も起きなかったので、“昼這い計画”は空振りに終わった。
でもしっかりキスは奪った。
「身長だいぶ伸びたよ。おちんちん育てようよ」
「今月いっぱいまでは女性ホルモン飲む。その後やめておちんちん育てる」
「どうやって育てるの?男性ホルモン飲む?」
「それは嫌だ。頑張ってオナニーしてみる」
ふーん。つまり“男になる”つもりは無い訳か。
「オナニー出来ないのでは?それ握れないでしょ?」
と彩佳は鋭い指摘をする。
「だから女の子式のオナニーするんだよ」
「なるほどー。でも女の子式のオナニーしてたら、益々女の子の気分になったりして」
「うーん。。。」
「いっそ性転換手術を受けて女の子になったら?龍、たぶんこの状態からはかなり簡単な手術で女の子になれるよ」
少なくともおちんちんを「切る」必要はないはずだと彩佳は思った。だって既に存在しないんだもん!
「ボク、女の子にはなりたくないよぉ」
「既に女の子になっていると思うけど」
「いっそ貴司、少し男性ホルモンとか摂る?」
と千里は言った。
阿倍子は冷凍していた受精卵で23日に3度目の体外受精を試みたのだが、受精卵は着床しなかった。医者は卵子が弱いのと精子が弱いのの両方に原因があると言っているらしい。
「男性ホルモンなんて摂ったらドーピングだよ」
「面倒くさいね〜。いっそ女性ホルモン摂る?」
「そしたら、ますます精子が弱くなる」
「貴司の卵子を使えばいいのに」
「え〜〜?」
「私が代わりに精子出してあげるから」
「無茶な」
「冷凍受精卵が無くなったから、次回はあらたに卵子を採取しなければならない。それでうちのお父ちゃんの精子、阿倍子のお母さんの卵子も試してみる」
と貴司は言ったが
「それはまた確率が低すぎる方法だと思うけど」
と千里は言った。
2014年3月29日(土).
スペインLFBの第22ラウンド(最終ラウンド)の試合が終わり、千里たちのレオパルダ・デ・グラナダはリーグ戦6位で、セミファイナル進出を逃した。また9位以上なので2部との入れ替え戦に出る必要も無い。
ということでレオパルダのシーズンはこれで終了した。
なお、LFBという場合、フランスの女子リーグとスペインの女子リーグは略称では同名になる。
Espania LFB = Liga Feminina de Baloncesto
France_ LFB = Ligue feminine de basketball
スペインの男子リーグはACBだが現在スポンサー企業の名前を冠して2011年以降は Liga Endesa という名前になっている。Endesaはスペインの大手電力会社である。ACBの下にはLEB ORO(金リーグ), LEB Plata(銀リーグ), EBA という下位リーグがある。以前は銀の下にLEB Bronce(銅リーグ)というのもあった。このスペインのシステムは、日本のBリーグを作る時にお手本にされたとも言われる。
ACB = Asociacion de Clubes de Baloncesto
LEB = Liga Espanyola de Baloncesto (バスケットボール・スペインリーグ)
EBA = Liga Espanyola de Baloncesto Aficionado (アマチュア・バスケットボール・スペインリーグ)
3月31日(月).
青葉は
「頼みがあるから、巫女服を持って東京に出てきて」
と言われた。
わざわざ巫女服と指定したということは、何か霊的な相談なのかと思い、緊張して出て行ったのだが、冬子は自分のカローラフィールダーに政子と青葉を乗せると、千葉市内の、例の玉依姫神社に行った。
青葉が驚いていると、
「10月に青葉が私をヒーリングしてくれた時に書いた『女神の丘』のPVを作りたいんだよ。うまい具合にここの丘の上に女神様を祭っている神社があると聞いてさ、管理している神社から所有者に問い合わせてもらったら撮影はOKということだったから」
と冬子は説明した。
「えっと。ここは私が建立した神社なのですが」
「えーーー!?」
すると氷川さんが言った。
「所有者がおられるなら、ちょうどいいですね。ご本人にここで舞でも舞ってもらって、その前でマリさん・ケイさんが歌えば最高の演出です」
それで結局青葉が神社の前で扇を持って巫女姿で舞を舞う中、ケイとマリが振袖姿で歌う、という演出で、楽曲のPVを撮影したのであった。
なお、この曲のテレビで流したCFの方は、長崎県の烏帽子岳という所で小高い丘の上に自転車を置き、長崎ローカルの俳優さん男女が楽しく語り合うという、葉祥明っぽいインスタレーションのビデオになっていた。
4月1日(火).
ローズ+リリーのケイが「ローズクォーツ卒業問題」について記者会見をした。最初に多数の音楽関係者のコメントをビデオで流す。
上島雷太、雨宮三森、サウザンズの樟南、スカイヤーズのYamYam、スイート・ヴァニラズのElise、若山鶴音、AYAのゆみ、XANFUSの光帆、KARIONのいづみ、渡部賢一。これらの人が皆「ケイちゃん、ローズクォーツとローズ+リリーの兼任は限界だからローズクォーツからは脱退した方がいい」と発言した。
それらのメッセージが全部流れた後、ケイは笑顔で言った。
「お集まり頂きありがとうございます。それで本日の記者会見の内容ですが、これをわざわざ4月1日という日付で開いたというので、趣旨をご理解頂きたいのですが」
とケイが言うと、爆笑が起きた。
この段階でほとんどの記者が、今流れたビデオがエイプリルフールだったのだろうと思ったのである。この背景には1年前の4月1日に、ももいろクローバーZの高城れにが、さんざん他のメンバーから「居なくなっちゃうのね。悲しい」というコメントを言わせ、多くのファンに「え〜?れにちゃん卒業しちゃうの?」と思わせた所で
「うそだよーん」
とやったのを思い起こさせた。
ここまでの進行は昨年のももクロのビデオと全く同じである。
「やはりケイさん、卒業しないんですね?」
と質問があった。
「私もマリも大学は卒業しましたが、私はローズクォーツからは離れません」
とケイ。
「ケイは多分あと5年はローズクォーツのボーカルを続けると思います」
と★★レコードの町添さんまで発言した。
その上でケイは、自分はローズクォーツを辞めないが、多忙でなかなか思うように活動できず、他のメンバーに迷惑を掛けているので、旧友でもあるオズマ・ドリームの2人に、代理ボーカルをしてもらうことになった、と言って、彼女たちを紹介した。
またローズクォーツのツアーが行われることも発表されたが
「全国ツアーのボーカルはどなたが務められるのでしょう?」
という質問に対して
「オズマ・ドリームのおふたりにお願いしました」
とケイは答えた。
「ケイさんは出られないのですね?」
「私は同時期にローズ+リリーのツアーもやるので両方は無理です」
「同時期にKARIONのツアーもあると思うのですが、そちらには出られますか?」
という質問には
「KARIONは別に関係無いと思いますが」
とケイはにこやかに答えた。
この日の記者会見についてネットの意見。
「凄く分かりにくい記者会見だったけど、要するにケイはローズクォーツを辞めるんだよな?」
「うん。そういうことだと思う。録画して再度見てみたけど、最初に『この会見を4月1日という日付で開いたというので趣旨をご理解頂きたい』と発言している。つまり今から自分が言うことは、嘘だよ、という意味」
「ローズクォーツを辞めません、というのが嘘な訳だ?」
「それで代わりにオズマドリームがローズクォーツのボーカルになる訳だろ?」
「そういうこと。ツアーにケイは出ないと言っているのだから、これは辞任したという意味に他ならない。辞めないのならケイが歌えるように、ツアーの日程をずらすだろ?」
そういう訳でネット民たちは正しい結論に到達したし、翌日これを取り上げたテレビのワイドショーなども、かなり悩んだ上でネットの議論なども参考にし、やはり同様の結論に到達したようである。スポーツ新聞などは社によって意見が別れたが、いったん「ケイはローズクォーツを継続」と報じた新聞も翌日には訂正記事を出した。
そういう訳で、2014年4月1日をもって、ケイはローズクォーツを卒業したのである。
しかし中にはケイの「ローズクォーツは辞めません」ということばを額面通りに取ってしまった“にぶい”人たちも少数いた。
その中に、ローズクォーツの事務所社長である須藤美智子や、ローズクォーツのリーダーであるマキなどがいた!
(この記者会見は、1月に○○プロからUTPに送り込まれてきた大宮伸幸副社長がローズクォーツの実質的リーダーであるタカと組んで仕掛けたものである)
4月1日(火).
龍虎はつい習慣で机の引き出しを開け、女性ホルモン剤を入れている“辞書の箱”を取り出そうとしたが、その手を止めた。
「女性ホルモン剤はもう卒業。今日からボクは男の子」
と自分に言い聞かせるように言った。
それでため息をついてベッドに寝転がったが、
「女の子っぽい服を着たりするのも卒業しないといけないのかなあ」
などと独り言を言った後、さっと起き上がるとタンスを開けて可愛いスカートを取り出した。
「たまにはこういうの穿いてもいいよね?」
などと言って着換える。
それでしばらくフルートを吹いていたら、突然部屋のドアが開く。
ギクッとして「お母ちゃん?」と言ってそちらを見ると、彩佳・桐絵・宏恵・佐苗・麻耶である。
「きゃっ」
と言って座り込んで手をスカートの所に隠すように置いたが
「おお、可愛いスカート穿いてる!」
と言われる。
「龍、小学校卒業記念に一緒に伊香保温泉に行こう。サービス券もらったんだよ。往復の電車のクーポン付き」
と彩佳が言う。
「温泉って・・・」
「もちろん、龍は女湯に入るよね?」
「え〜〜〜?」
「ちんちん無いし、おっぱいあるんだから、男湯に入れる訳ないもんね」
「ど、どうしよう?」
「迷う選択肢は無いはずだが」
と桐絵は言った。