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■娘たちの卒業(7)

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3月11日からバスケット協会の新年度のチーム登録・選手登録が始まったので、比較的時間の余裕がある後藤真知が登録作業をしてくれた。彼女の職業は現在《自宅警備員》らしい。この時期彼女には随分 40 minutes の事務的な作業をしてもらっており、事実上のマネージャーの役割を果たしてくれた。その件で彼女が結構色々飛び回っているので、お金にならない仕事ではあっても、引き籠もりよりはマシと、お母さんは結構ホッとしていたらしい。
 
3月21-23日の連休、第40回記念全日本クラブバスケットボール選手権大会が、愛知県のパークアリーナ小牧および一宮体育館で行われた。この大会には千里自身が忙しいので、ローキューツにしがらみの無い人物として、静岡在住の雨宮派の作曲家・福田瑠美さんにオーナー代行として行ってもらった。
 
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千里自身は3月22日夕方(日本時間23日2:00-4:00)に試合があるので、あまり時間が取れなかったのである。
 
この時期のローキューツはまた戦力が入れ替わりつつあったのだが、森下誠美や風谷翠花ら、そして雪子が抜けた後に正PGとなった原口紫らの活躍で優勝する。2012年以来の3連覇達成であった。
 
しかし誠美はこの大会をもってローキューツを退団する意向を表明した。
 
「Wリーグに行くの?」
と副主将の原口揚羽が尋ねたのだが、誠美は
 
「ちょっとアメリカに行ってくる」
と言った。
 
「性転換手術受けるの?」
という声には
「違うよ」
と笑って答える。
 
「ちんちん取らなくていいの?」
「大丈夫。こないだハサミで切り落としたから」
「痛そう」
 
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「もしかしてWNBA?」
「まさか。実績も無いのに入れてくれないよ。ぶらりと1年くらいあちこち見てくる」
「お金は?」
「バイトしながらかな」
「おっ」
 

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千里はこの話を福田さんから聞き、《きーちゃん》に相談した。
 
「あの子、しっかりしているようで抜けてるからちょっと心配」
と千里が言うと
「私の友だちでアメリカに住んでいて、今フリーの子がいるから、付いているように言おうか?」
「じゃ、私のパワーを分けてあげるから、私的に使っても良いことにしてそれを報酬代わりと言うことにして頼んでくれない?」
 
と言って千里は梵字を半紙に書いたものを渡す。
 
「これ利用限度が付いてる!」
「そりゃ制限無く持って行かれたらたまらない。緊急時は応相談」
「OKOK」
 
それで《きーちゃん》が誠美のガードを依頼したのが、後に千里分裂時に千里3の手足となってくれた《えっちゃん》(絵姫/Ellie)であった。
 
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2014年3月21日(金).
 
高野山★★院で瞬嶽の一周忌法要が行われた。
 
午後からの法要を前に青葉が忙しく準備作業をしていたら、バッタリと作務衣姿の千里と遭遇する。
 
「ちー姉、ここで何してるの?」
と青葉が驚いて訊くと
 
「呼ばれたから来た」
と千里は言った。そしてちょうどそこに瞬醒が通り掛かり
 
「瞬葉ちゃん、瞬里ちゃん、ちょっとお花を移動させるの手伝って」
と言うので、
「はいはい」
と言って、ふたりで花の移動を手伝った。
 
「瞬里って何?」
と青葉が千里に訊くと
 
「2011年に、青葉の家族の葬儀の後、瞬嶽さんを私がここまで送って来たら、瞬嶽さん、私のこと気に入ったみたいで、名前やると言われてもらっちゃったのよね。気まぐれじゃない?」
と千里は言う。
 
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「印可ももらってたの?」
「まさか。私、般若心経も分からないよ」
と言う千里に、青葉は腕を組んで考えた。
 

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法要の時は、千里は瞬嶽の最高水準の直弟子だけが着ることのできる特別色の法衣と袈裟を身につけていた。“瞬”の字を、瞬嶽から直接頂いている弟子で存命なのは全部で15人しか居ない(14人と思っていたが、千里が直接もらっていることが判明したので、千里を入れて15人である)。この15人だけがこの特別色の法衣を身につけている。
 
もっとも青葉も菊枝も、その15人の中では下っ端なので、祭壇の前に並ぶ7人には加わらず、一般席の最前列に並んで座っていた。ここに座る弟子たちは導師の瞬嶺さんが読んでいるお経に唱和しているが、千里はそこにも座らず壁の所に立って無言で合掌だけしている。
 
お経の切れ目の所でトイレに行くかのようにして席を立ち、千里の傍に寄る。
 
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「座らないの?」
と小声で訊くと
「だって私お経なんて分からないから唱和とかもできないもん」
という答えだった。
 
確かにちー姉がお経あげている所なんて見たことないよなあと青葉は思った。
 
「私はだからこの法要では小間使いで」
 
実際見ていると、経本を渡したり、焼香台を並べるのを手伝ったり、雑用をこなしているようである。
 
最高位の弟子の証である法衣を着ているのに!
 

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法要が終わった後の、会食では、青葉・千里・菊枝をはじめとする女性の弟子や、若い弟子などが忙しく動き回った。
 
「虚空さん来てたね」
と菊枝がお茶を湯呑みに注ぎながら厳しい顔で千里に言った。
「あの人も明るいですね〜」
と千里は湯呑みをお盆の上に並べながら、笑顔で答えた。
 
それを聞いていた青葉は「こくう」って誰だろう?と思った。
 
「瞬嶽さん本人も焼香しましたね」
と千里が言うと
「ああ、してたね」
と菊枝も言って笑顔になった。
 
「あ、それは私も気付いた」
と青葉も言った。
 
「師匠は葬儀の時も焼香してたよ」
と菊枝。
「自分が死んだことに気付いてないのでは?」
と千里。
「うーん。ちゃんと送った筈だけどなあ」
と菊枝は言った。
 
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3月24日(月).
 
この日、龍虎たちのQS小学校では卒業式が行われ、龍虎たち6年生は卒業していくことになる。卒業式で着る服は基本的に自由なのだが、この学校では伝統的に多くの子が4月から進学する中学の制服を着る。
 
公立中学に進学する子が多いが、一部私立に行く子もあり
「この服、可愛い」
などと言われていた。
 
さて、龍虎であるが、他の多くの子と同様に地域の市立中学・QR中学に進学するので、男子制服である学生服を着てきている。
 
「龍ちゃん、だいぶ背が伸びたね」
と一部の女子たちから言われている。
 
「うん。この制服の採寸をした時から4cmくらい伸びてる」
「すごーい」
 
「でもこの学生服、胸の所が大きい気がする」
「既製服ではそもそもボクのサイズのが無いし、採寸して作ってもらったんだよ」
「ああ。そうだよね。そんなに胸があったら既製服は入らないよね」
 
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「龍、ちょっとその学ラン脱いでごらんよ」
と彩佳が言う。
「うん」
 
「あれ?」
「もしかして下に着ているのはブラウス?」
「男物のワイシャツは入らなかった」
「だって龍はけっこうおっぱいあるもん」
「それに下にブラジャーしてるんだ!」
「うん、まあ」
「龍ちゃん、セーラー服着れば良かったのに」
「だってボク男の子だし」
「それは戸籍上だけでしょ?実際はほぼ女の子だよね?」
 

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そんなことを言っていたら増田先生が入って来て、みんなに座るように言い、今日の卒業式について説明を始める。しかしその途中で、先生は龍虎が学生服を着ていることに気付いてしまった。
 
「田代さん、何の冗談?」
「え、えっと・・・」
 
「服装は自由ではあるけど、女子が男子制服を着ちゃいけないよ。まさかそれで出るつもりじゃないよね?」
と先生。
 
「ボク男子ですけど」
と龍虎は言うが
「田代さん、男の子になりたい女の子だっけ?」
などと言われる。
 
「もし男の子になりたいのなら、中学のほうと交渉する余地はあるけど、今は女の子なんだから、ちゃんと女子の制服を着てもらえないかなあ」
 

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教室内はざわめいている。
 
その時、宏恵が言った。
「龍、コスプレタイムは終わりだよ。ちゃんと普通の女子制服に着替えておいでよ」
「女子制服と言っても」
「あ、そうか。さっき私が預かっていたよね。はい、返すね」
と言って宏恵は紙袋を龍虎に手渡した。
 
「へ?」
 
と言って龍虎は反射的に宏恵から紙袋を受け取ってしまった。中には確かに中学の女子制服が入っているようである。すると彩佳もまるで思い出したかのように
 
「あ、そうだ。龍のリボンは私が預かっていたんだった」
と言って、リボンの入っている箱をその紙袋の上に乗せた。
 
「さ、早く着換えておいで」
と言って彩佳と宏恵は龍虎を押し出してしまう。
 
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「田代さん、隣の教材準備室で着換えていいから」
と先生。
「分かりました」
 

それで龍虎は首をひねりながらも6年1組の隣にある教材準備室に入り、学生服と学生ズボンを脱ぐ。そして宏恵から渡された紙袋に入っていたスカートとセーラー服を着て、彩佳から渡されたリボンを結ぼうとしたが・・・
 
結び方が分からない!
 
それで取り敢えず学生服上下を紙袋に入れて教室に戻る。
 
「可愛い!」
という声が教室のあちこちから起きた。
 
「龍、リボンは?」
「ごめん。結び方が分からなかった」
「私がやってあげるよ」
 
と言って彩佳が結んでくれた。
 
「田代さんは入学式までにリボンの結び方練習しようね」
と先生が言った。
 
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それで卒業式とその後の謝恩会(兼昼食)の説明が続いて行った。
 

いよいよ卒業式に行くのに、先生が先導して全員体育館に向かう。龍虎は宏恵に小声で訊いた。
 
「この制服、誰の?」
「私の。私、姉貴のお下がりをもらったけど2着あるから、多分こういうことになるだろうと思ってもう1着も持って来たんだよ」
「わぁ・・・」
 
「そのリボンはこないだ龍から頼まれたリボンね」
と彩佳。
 
「ありがとう」
 
「結局、龍ちゃん、女子として中学に進学するの?」
と麻耶が訊いた。
 
「男子だよぉ」
と龍虎。
 
「だから龍は今日で女子小学生を卒業して、4月からは男子中学生かな」
と彩佳は言ったが
 
「それ絶対無理。きっと龍ちゃんは女子中学生になるよ」
と佐苗が言った。
 
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体育館に入ると、龍虎はみんなと別れてピアノの所に行く。この時、保護者席に来ていた、田代幸恵・長野支香・志水照絵の3人と目が合い、幸恵があれ?という顔をしたが、支香も照絵も笑顔でこちらを見ていた。
 
まあいいや!
 
龍虎のピアノ演奏で全体で『君が代』を歌い、式典は始まった。
 
龍虎もピアノのふたを閉じて立ち上がり、自分の席に戻った。
 
ひとりひとり担任の先生から名前を呼ばれて壇上にあがり、校長から1人1人卒業証書を受け取る。龍虎も増田先生から
 
「田代龍虎さん」
と呼ばれて
「はい」
と返事して、セーラー服姿で壇上にあがり、卒業証書を受け取った。支香が近くまで寄ってきて写真を撮っていた。
 
つまりセーラー服を着た卒業式の写真が残ることになる。
 
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ちなみに、どの先生も男子児童は「君」、女子児童は「さん」を付けて呼んでいたようである!
 

全員に卒業証書が渡された後、6年間皆勤した子(2名)、図書館で多くの本を借りて読んだ子(2名:多読賞)、それに県大会で4位入賞したコーラス部、県大会で3位になったミニバスチームの子たちが輝き賞として表彰された。(輝き賞は在校生も表彰対象)
 
コーラス部の表彰には龍虎も
「田代さんもいらっしゃい」
と顧問の先生に言われて一緒に壇にのぼり、校長からひとりずつ輝き賞のメダルを掛けてもらった。ボク、クリスマス会に出ただけなのにいいのかなあ、と思ったが「今年の活動に無くてはならなかった人」と先生からは言われた。クリスマス会直前に転校になってしまった鉄田さんには同じメダルを送ってあげるそうである。
 
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その後は校長の式辞、来賓の人たちの祝辞、祝電披露、記念品授与と続き、在校生の送辞、卒業生の答辞を全員参加で交換する。その後、5年生が席を立って鼓笛隊の編成で『ボギー大佐』と『桜の栞』を演奏した。その後、5年生の女子がピアノの所に座り、全体で校歌を歌い、式は終了した。
 

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その後、卒業生は退場し、各教室で担任の先生からあらためて卒業証書を渡された。そして解散する。多くの子はこの後の謝恩会にも出るが出ない子もある。多くの子は4月からはQR中学に行くが、何人か私立や、国立大学の付属に行く子もある。このメンツが揃うのはこれが最後になるだろう。増田先生は
 
「ここで解散した後、10分後に伝達したいことがあって『みんな戻って』と連絡してもたぶん都合が悪くて集まれない子もある。人と人の出会いは一期一会なんですよ」
と言っていた。先生が言った“いちごいちえ”ということばの意味は分からなかったものの。何となく別れというものの持つ意味、そして出会いというものの大事さも分かる気がした。
 
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ボク自身、志水のお父さん・お母さんとの出会い、田代のお父さん・お母さんとの出会い、そして千里さんや川南さんたちとの出会いもきっと“いちごいちえ”なのだろう。
 

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娘たちの卒業(7)

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