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■娘たちの始まり(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-12-02
 
2014年6月19-22日に北見市で第67回北海道高等学校バスケットボール選手権大会が開かれ、旭川N高校は準優勝で2011年以来3年ぶりのインターハイ出場を決めた。
 
この大会で大活躍した1年生の福井英美は、リバウンド女王・得点女王を獲得してその存在感をアピールした。
 

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6月16日(月).
 
貴司たちは6回目の体外受精をおこなった。今回は残っている3個の冷凍受精卵を全て解凍した。するとWHの1個だけが生きていたので、それを投入した。
 
今回も卵子採取・精液採取はおこなわれなかった。
 
貴司がまた「もう我慢できないよう」と情けない声で電話してきたので
 
「睾丸除去しちゃう?そしたら性欲も弱くなって、だいぶ過ごしやすくなると思うけど」
と言っておいた。
 
「それは嫌だよぉ」
「無い方が楽になるのに」
「まだ男やめたくないし」
「その内、男やめたいのかと思ってたけど」
「せめてあと30年くらいは男でいたい」
「睾丸無くなっても、私と結婚してくれるのなら、毎晩いじってあげるよ」
「・・・・」
 
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「今一瞬迷った?」
「迷ってない、迷ってない」
 

6月10日から14日まで、17日から21日までは、男子代表候補の合宿がNTCで行われた。実は体外受精はこの合宿の合間を縫っておこなった。貴司たちは24日から7月1日までは韓国遠征もすることになっている。
 
貴司は短期間で合宿が連続するので、15-16日は体外受精の立ち会いのためいったん大阪に戻ったものの、22-23日は大阪には戻らないことにして、最初は都内のホテルに泊まろうかと思った。
 
しかし千里が
「常総で私と一緒に練習しない?」
と誘った。
 
「するする!」
と貴司は嬉しそうに答えた。
 
私と一緒に過ごせるのが嬉しいのか、バスケットができるのが嬉しいのかは微妙だなと千里は思った。
 
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それで貴司が21日夕方に合宿を終えると、千里はインプレッサでNTCの選手村の前まで迎えに行った。本来は部外者は門の中に入れないのだが、千里はここには顔パスで入れてしまう。
 
ちょうど代表合宿をしている最中の女子代表の玲央美が見とがめて
 
「千里、こんな所で何してる?女子の合宿には参加しないの?」
と声を掛けてきた。
「召集されてないもんね〜。レオちゃんたち頑張ってね」
と答えておいた。
 
女子代表は下記の日程で合宿をしているが千里は召集されていない。
 
2014.06.05-15 日本女子代表Aチーム第1次合宿
2014.06.19-7.06 日本女子代表Aチーム第2次合宿
 
今年は女子は世界選手権とアジア競技大会の日程がぶつかるので2チーム編成しているが、千里は現在の強化部のスタッフには忘れられていることもあり、どちらにも参加していない。
 
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千里はこの時期多くの協会関係者からは“行方不明”とみなされていて(協会からスペインに派遣されていて毎月支援費までもらっているのに!)この年の11月に篠原さんが千里と偶然遭遇するまで、日本代表から離れていた。
 
「今回、羽良口さんもきみちゃん(高梁王子)も召集されてないんだね」
「どうも国内にいる選手だけで組織しようということらしい」
「なんで〜?」
「協会自体が混乱の極致で、外部と交渉出来るような体制にない気がする」
「それは物凄く問題だな」
 
「千里は結局スペインのチームにまだいるんだよね?」
「うん。日本バスケ協会の強化部スタッフがごっそり入れ替わっていて、私の位置づけが曖昧になっているけど、身分的にはレオパルダの正式な選手」
 
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と言って千里は4月に更新された選手証を玲央美に見せた。
 
実は3月で強化派遣は終了したはずなのに、その後も毎月協会からの送金が行われているのである。それを言うと、玲央美も
 
「日本バスケ協会はホントにもう組織としての体を為してない」
と怒ったような表情で言った。
 
「日本では登録無し?」
「登録したよ〜。40 minutesというクラブチームを作った。竹宮星乃とか、橋田桂華もいるよ〜」
「それは凄い。登録の都道府県は?」
「東京都」
「おぉ!」
「クラブと実業団だから、なかなか戦えないけどね」
「あ!もしかして東京都夏季選手権に出る?」
「うん。明日の試合には出るよ」
「私は出られない」
と玲央美。
 
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「合宿頑張ってね。秋季選手権では対戦出来るかな」
 
「多分。だったら、秋季選手権を楽しみにしている」
 
それで玲央美とは握手した。
 

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荷物をまとめてきた貴司を乗せ、腕を組んでいる玲央美に手を振り車を出す。そして常総ラボに行く。着いたらまず3時間練習する!
 
「千里また強くなってる。もう追い越されそう」
「貴司、日本女子代表から落ちないようにするには私には軽く勝てなきゃ」
「別に女子代表になりたくはないけど、男子代表に留まれるよう頑張る」
 
練習が終わった後は、シャワーを浴びてから、常総ラボの休憩室で布団を敷き、一緒に寝た。貴司は物凄く嬉しそうな顔をしていた。
 
「1cm開けで並んで寝ていいよね?」
「タッチ無しでね」
「もちろんもちろん」
 
とは言っているが、千里が先に眠ってしまったふりをしていると、千里の手を勝手にとって、快楽をむさぼっていた。翌朝、貴司がスッキリしたような顔をしているのを見て、千里は笑いをこらえていた。
 
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「あ、そうそう。これ誕生日プレゼント」
と言って千里は包みを渡した。
 
「ありがとう!嬉しい!」
と言って開けているが困惑したような表情。
 
「これ何?」
「去勢ペンチ。これで睾丸を潰して去勢出来るんだよ。まあ家畜用だけどね」
「僕は家畜なの〜?」
「人間でも行けると思うけど。してあげようか?」
「嫌だ。それに潰されたら気絶する気がする」
 
「痛みは一瞬だよ。去勢したら貴司きっとバスケに集中出来るようになってもっと強くなるよ」
「睾丸は無くしたくない」
 
「あ。そうそう。こちらもおまけであげるね」
と言って、別の包みも渡す。
 
「おぉ!Lumixだ」
「貴司、こないだからコンデジが調子悪いと言ってたからと思って」
「うん。打合せの資料とか撮影するのに、スマホじゃうまく撮れない時もあってミラーレスにも心が動いていたけど、何が良いのか検討する時間が無くて」
「私もよく分からないからお店の人に売れ筋を聞いて買った。気に入ってもらえるかどうかは分からないけど」
 
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「基本的には写真が写れば問題無い」
「まあネックレスの御礼も兼ねて」
「ありがとう」
 

22日は千里は40 minutesのメンバーとして東京都夏季選手権に出場する。貴司も見たいと言ったので・・・・
 
女装させて連れて行った!
 
「なんでここに僕の身体に合う女物の服や下着があるの〜?」
「男は細かいこと気にしない。ちなみにサービスで無痛の性転換してあげていいけど」
「遠慮する!」
 
それでも足の毛をきれいに剃ってあげたら、何だかうっとりした目で見ている。まあ、これは自分で自分の足に欲情してしまう人もいるみたいだしね〜。
 
パンティとブラジャー(ブラジャーは貴司の所有物C100を市川ラボから持って来ていた)を付けさせ、女物の服を着せて、ばっちりメイクまでさせると、結構な美人になる。視線が女の視線に切り替わっている。やはり1年間女のような身体で過ごしたせいでこんなに順応するのかな??
 
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ここで貴司を女装させたのは、貴司が千里との婚約を破棄して別の女性と結婚したことを40 minutesのメンバーは知っているので、素顔のまま連れて行く訳にはいかなかったからである。しかも用心して、貴司をひとつ前の駅で降ろして、そこから電車で会場に入ってもらった。
 

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この日朝一番に女子の準決勝が行われる。千里たちの相手はW大学である。伊香秋子や中久監督が驚いたように千里や橘花・麻依子・暢子などを見ていた。
 
試合は接戦で進む。4月の春季クラブ選手権の江戸娘戦と同様、技術ではこちらがやや上なのだが、体力では向こうが遙かに上である。
 
しかしこの日は千里が貴司に見られているというのもあり、無茶苦茶頑張ったし、春季選手権で体力の無さを痛感した星乃・桂華・橘花などが毎日8kmのジョギングをこなすなどして体力を付けてきていたこともあり、最後まで予断を許さない戦いとなった。
 
そして終了間際、かなり遠距離からの千里のスリーが決まり、40 minutesは1点差で勝利。決勝に進出した。
 
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「君たち、全く衰えてないね。どこで練習してるの?」
と中久監督は訊いた。
 
「週に1回江東区の公共体育館で練習してるんですよ」
「それだけでは足りないでしょ。うちの体育館にきて、うちの学生たちと一緒に練習してもいいよ」
 
「それはありがたいです。行きたいかも」
「来る人は連絡して。入館証を発行するから」
「ありがとうございます。だったら、麻依子連絡頼んでいい?」
「秋子ちゃんに連絡すればいいかな?」
「はい。じゃメールアドレス交換しておきましょう」
 
伊香秋子は札幌P高校の出身で、旭川L女子校の麻依子とは旧知である。
 

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そして午後からの決勝戦の相手はジョイフルゴールドである。準決勝では江戸娘にダブルスコアで勝ってあがってきている。
 
ここで王子はアメリカの大学に通っているので、普段は日本に居ないし、玲央美は日本代表で合宿中である。それで中心選手の2人が不在である。
 
それでもジョイフルゴールドは強い強い。
 
実質プロチームなので、そこら辺のクラブチームや実業団チームとはレベルが違う。
 
完敗であった。
 
「負けたぁ」
「しかしここまで完膚無きまで叩きのめされると気持ちいい」
 
ということでこの大会、40 minutesはまた準優勝に終わったのである。もっともジョイフルゴールド側も
 
「今日の試合で唯一マジになった」
と副主将の母賀ローザが言っていた(主将は玲央美)。
 
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なお、この大会は国体東京都代表の選考会も兼ねていたので、40 minutesから麻依子、橘花、星乃、夕子の4人が代表に選ばれた。他の8人はジョイフルゴールドからの選出である。この2チームのレベルがあまりにも高すぎて、他のチームからは1人も入らなかった。40 minutesでは、桂華・渚紗・暢子などもいるものの、準優勝に終わったので、4人までに抑えられたようだ。
 

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もっとも暢子は昨年北海道代表に選抜されているので、ジプシー選手除外規定のため、今年と来年は東京から国体に出場できない。
 
「千里もジプシー規定に引っかかるんだっけ?」
「私は国体の成人女子には出たことないよ〜」
 
実際問題として夏季はたいてい日本代表をしていたので、国体予選と日程がぶつかり、選考会にも出ていないのである。
 
「成人男子には出てないよね?」
「まさか」
 
「だったら参加資格あったのでは?」
「私、住所が千葉市だし」
 
「・・・・・」
 
「なぜ大学を出たところで東京に引っ越さん?」
 
大学を卒業したタイミングで他都道府県に移動した場合は、ジプシー除外規定の例外で、その年から即新しい住所のある都道府県で国体代表になれる。
 
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「だって私、千葉市のC大の院生だもん」
「千里が大学に通っている所など見たことないのだが」
 
大学院を出た場合は例外規定の対象にならないので、(大学院でも国体代表になっていた場合)大学院の卒業者は2年間どちらの都道府県からも出場できなくなる。
 

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試合が終わった後は恒例の打ち上げを17時頃までやって解散する。この時刻で解散するのは、何と言ってもメンバーの中に数人、主婦もいるからである。独身のメンバーは二次会をするようだったが、千里は「バイトがあるから帰るね〜」と言って離脱。インプレッサに乗って神保町まで行き、そこで古本屋さんを巡りながら待機していた貴司を拾って常総ラボに戻った。
 
「でも貴司お化粧すると美人だなあ。このままどこかレストランで食事でもする?」
「いやだ。もうお化粧落としていい?」
「今日はトイレはどうしたの?」
「この格好では男子トイレに入れないから女子トイレ使ってたけど、行列に並ぶの恥ずかしかった」
 
「今夜はそのままで過ごしていいよ」
「勘弁して〜」
「でも女の服で男の顔になると途中でトイレに行きたくなった時、困るよね?」
 
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そういう訳で常総ラボに着くまで女装のまま、メイクしたままだった。ラボでクレンジングをもらってメイクを落とすとホッとしたようだ。最初にトイレ(ここのトイレは男女共用)に行って来た後、トレーニングウェアに着換えて練習した。
 
夜遅くまで練習するが、千里が大会の余韻で物凄く気合いが入っているので、貴司が「今日は負けそう」などと言っていた。
 
「貴司、私に勝てなかったら、私が貴司の代わりに男子代表になるからね」
「男子代表って、千里、女子なのに」
「その時は、貴司のちんちんを切り取って私にくっつけるから」
「無茶な」
「先に切り取るだけ切っておこうか?」
「やめて〜」
 
0時すぎまで練習して寝たが、千里は大会の後の激しい練習で完全に熟睡していた。貴司が朝起きた時にスッキリした顔をしているのは気にしないことにした。
 
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23日も丸一日練習したが、この日は、女装ビーツの白鳥(びゃくちゃん)と林(こうちゃん)も加わって2対2での練習もたくさんした。しかし貴司は林には全く勝てないので、必死の表情で対抗していた。
 
もっとも、こうちゃんは2〜3割の力しか出していない。
 
「林さんは日本代表の誰よりも強い」
「まあ僕は日本国籍は無いからね」
「そうなんですか?でも本当に強い」
「細川君も、一昨年の頃からは、かなり強くなっているよ」
 
23日の夜は10時で練習を切り上げて早めに寝た。24日は貴司は成田集合だったのでまだほとんど寝ている状態のままインプレッサに乗せて、送っていった。男子日本代表のメンツは貴司と千里が結婚したと思っているので堂々と姿を見せることができる。
 
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「機内のおやつにでもしてください」
と言って、チームにお菓子を差し入れたが、搭乗前に全部無くなったらしい。
 

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娘たちの始まり(9)

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