広告:ここはグリーン・ウッド (第6巻) (白泉社文庫)
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■娘たちの始まり(12)

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7月1日(火)の夕方、貴司たち男子日本代表のメンバーが韓国遠征を終えて帰国した。次の合宿は7月4日(金)から始まり、9日には中国に渡って武漢(ウーハン)でアジアカップに出場することになっている。
 
千里は1日に成田空港で貴司を迎えた。
 
「今回は貴司が冷凍での対応になっちゃうね」
「その言い方は僕を冷凍するみたいだ」
 
「精子も卵子も冷凍できるのに人間は冷凍できないのが不思議ね」
「SFではけっこう人間の冷凍保存とかあるけどね」
「試しに貴司自身を冷凍してみる?」
「やだ」
 
実は次の体外受精は阿倍子の生理周期に合わせて7月13日に行うのだが、その時期、貴司は武漢(ウーハン)に居るのである。それで貴司の精液はこの2日間の休みの間に採取し、冷凍しておくことになったのである。
 
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「今回は僕の精液と、従兄の武彦君の精液を使わせてもらうことになったから」
「武彦さんは生で行くのね」
「そうそう。彼は大阪まで来てくれる」
「それを私が迎えればいいのね」
「すまん。北海道の親戚はみんな僕の妻は千里だと思っているから」
「私も貴司の妻は私だと思っているけど」
 
「うん、まあそれはまた・・・」
などと貴司は言葉を濁している。
 

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千葉市まで出てから一緒に食事をし、その後、インプで大阪方面に向かう。
 
「貴司は遠征で疲れたでしょ?寝てて。私が運転するから」
「そうしようかな。でも千里もちゃんと休憩取りながら運転してね」
「大丈夫。仮眠しながら運転するから」
「それは危ないよ!」
 
実際貴司はすぐに眠ってしまったので、千里も運転は《こうちゃん》に任せてスペインに転送してもらい、レオパルダの練習に参加した。
 
翌7月2日(水)朝、吹田SAで休憩する。千里も練習後スペインのアパートで1時間ほど仮眠してからこちらに戻してもらっている。
 
「ああ、セックスしたい」
と貴司は言うが
 
「明日精子を採取しないといけないから、それは無理ね」
と千里は言った。あまり辛くさせてもいけないので、今日は敢えてタッチしていない。
 
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トイレに行ってから一緒に朝御飯を食べる。そして車に戻り、キスだけして貴司を会社の前まで送り届けた(千里がそばに居ない限り貴司は射精不能)。千里はそのまま市川町までインプレッサを回送する。
 

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午前中は寝ていて、午後から地下の作曲作業室で仕事をした。
 
夕方、貴司が市川ラボに電車乗り継ぎでやってくる。軽食を用意していたので一緒に食べた後、貴司が2階にあがって市川ドラゴンズのメンバーと練習するので、千里もスペインに転送してもらいレオパルダのメンバーと練習する。
 
貴司は0時頃練習を終えて居室に戻り、シャワーを浴びて、千里が用意してくれていた夜食を食べてから寝る。4時すぎ、千里はスペインでの練習を終えてこちらに転送してもらい、シャワーを浴びて、貴司が寝ているベッドに潜り込み軽く仮眠する。
 
朝(7月3日木曜日)起きると千里がそばで寝ているので、つい千里の手を取って“して”しまいたくなるものの「だーめ」と言って、千里は射精を禁止する。貴司も分かっているので我慢する。
 
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一緒に朝御飯を食べて、甘地駅で貴司を「いってらっしゃい」と言って送り出した。
 

この日は貴司は15時で会社の仕事をあがった後、チームの練習には行かず、明日からの合宿の準備をすることにする。
 
千里が着換えなどを全部用意してインプレッサに乗せてこちらに回送してきていたので、千里に拾ってもらい、取り敢えず豊中市内の公園の駐車場に駐めた。そしてしっかり目隠しをした上で、30分ほどイチャイチャした後で、射精させた。
 
「ほんとに気持ちいい」
と放心状態から回復した後で貴司は言う。
 
「将来、私たちが結婚した後も、射精は月に1度にしようか?」
「いやだ」
「だって凄く気持ち良さそうなんだもん」
「千里がいない時はできないから、その間が凄く辛いんだよ」
「でもそれでバスケに集中できるのかもよ」
「うーん・・・」
「そうだ。20-30個冷凍を作っておいたら本体は除去してもいいかも」
「それは物凄く嫌だ」
 
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30分ほど仮眠した後で、千里がインプを運転して不妊治療をしている産婦人科に行き、貴司が精液を届けてきた。それで冷凍してもらえるはずである。
 

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その後、車は千里中央駅近くの駐車場に駐めて、そのそばのHホテルに入り、一緒にディナーを食べた。
 
「うっかりしてた。A4 Avantを市川に回送しておけば、インプレッサをマンションに駐めることができた」
と貴司が言うが
 
「大丈夫だよ。明日にも取りに来るから。それに貴司んちの駐車枠に別の車が駐まっていることに阿倍子さんが気付いたら、マンションの管理者に通報するかも」
と千里は言う。
 
「阿倍子が駐車場にひとりで来ることはないと思うけどなあ」
「あの人、免許とかも持ってないんだっけ?」
「持ってない。原付も持っていないから、実は身分証明書で困ることもある」
「それは原付でも小特でもいいから取らせた方がいいと思うなあ」
 
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「じゃ取り敢えず駐車代と往復の新幹線代」
と言って、貴司は1万円札を4枚くれた。
 
「じゃ余ったらもらっておくね」
と言って千里も受け取った。
 

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食事の後は、一緒に千里中央駅に行き、北大阪急行(御堂筋線直行)で新大阪駅まで行く。そして新幹線で東京に移動した。道中はずっと今度のアジアカップで対戦するであろう相手国の選手の話をした。
 
「千里よくそんなに情報持ってるね!」
「普通このくらい下調べしておくものだと思うけど」
「でも凄く参考になる。そのあたりのトリックに引っかからないよう気をつけるよ」
 
東京に着いたのは夜10時頃である。予約しているホテルに一緒に入る。宿泊カードには“貴司が”《細川貴司・細川千里》と記入し、自分のカードで払った。貴司が《細川千里》と書いてくれたことで、千里は目が潤う気分だった。
 
それで、その夜はセックスこそしないものの、貴司を何度も逝かせてあげて、貴司は物凄く嬉しがっていた。
 
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「明日があるからここまでね」
と言って0時半頃には寝たものの、名残惜しそうだった。
 

翌7月4日(金)は赤羽駅で「頑張ってきてね」と言って送り出した。もちろん別れ際にキスをした。
 
それで千里は新幹線で大阪に戻ってインプレッサを東京に回送しようと思ったのだが、電話が入る。テレビ局の人である。
 
「醍醐先生、今どちらにおられます?」
「東京都内ですが」
「助かった!実はハートライダーのロケをしていたのですが、実は今前橋でラリーの撮影をしていて試走中に事故が起きて尾崎さんが怪我をなさいまして」
「あらぁ。イルザちゃんは?」
「同乗していませんでした。ひとりで走行なさっていた時の事故なんですよ」
「それは不幸中の幸いというか。尾崎さんのお怪我は?」
 
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「1週間程度の入院で済むそうです。でも今日はラリー本番前で道路が封鎖されているのを利用して撮影をさせてもらっていたので、日程がずらせないんですよ。それで大変申し訳無いのですが、今回だけで恐縮なのですが、小島秋枝(小野寺イルザが演じている役名)の教官役を醍醐先生に代わって頂けないかと思いまして」
 
「走る車はあるんですか?」
「予備を持って来ていたのであります」
「分かりました。行きます」
 

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「千里、だったらインプは俺が大阪から回収してこようか?」
と《こうちゃん》は言ったのだが
 
「これは私がインプを取りに行けないように、運命の歯車が回っている気がする。だから放置しておく。たぶん一週間程度以内に、私は大阪から東京まで車を運転する必要が出るのだと思う」
と千里は答えた。
 
「駐車場代、高くなるけど」
「あそこは1日最大2000円だから、一週間放置しても14,000円だし」
「まあ駐車場代、だいぶ余分にもらっていたな」
「それもあるね〜」
 

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ともかくも千里はすぐに高崎線で大宮に行き新幹線で高崎に移動。高崎駅まで番組スタッフの人が迎えに来てくれていたので、それで現場に入った。番組のプロデューサーは恐縮していたが、小野寺イルザも
「醍醐先生だったら私も安心です」
と言っていた。
 
「イルザちゃんの方が私より上位のライセンス持っているのに!」
 
番組の撮影の都合でイルザはたくさんレースやラリーに出たので、国際C級ライセンスを取得してしまっているのである。
 
「でも醍醐先生の方がうまいです。先生も国際C級お取りになればいいのに」
「なかなか時間無いからね〜」
「ああ、そうかもですね。私は番組の都合でたくさん運転しているけど」
 
そういう訳で千里はこの日はイルザと一緒にラリーコースを特別許可をもらって走行して、それをたくさん撮影した。
 
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千里とイルザのペア、および他に2組の番組からの参加者が、7月5日(土)のレッキ(下見走行)、6日(日)の本番とラリーに実際に参加して、その様子を撮影した。また翌日、7日(月)にはロケおよびスタジオで撮影もおこなった。
 
千里がハートライダーに出演するのは過去に何度もあったので、実際問題として尾崎さんが怪我している事態では、自分が最も適切なピンチヒッターだったかもと千里は思った。ただ、これほど長時間の顔出しは初めてである。大抵はヘルメットをかぶっている状態で出ていて、顔は数回、短時間しか出していない。
 
千里がやっとフリーになったのは、7月7日(月)であった。
 
この日、南国花野子から電話があり、ゴールデンシックスはローズ+リリーのツアー中にCDの売上げが5000枚を越えたので、加藤課長との約束通り、メジャーデビューすることになったということだった。
 
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「7月10日に★★レコードで打合せするんだけど、千里も来る?」
 
「いや、私が行ったら、話がよけい複雑になる気がする。ふたりだけで行ってきた方がいい気がするよ。どっちみち、私と蓮菜も近い内に加藤さんと話し合うことになるだろうけどね」
 
「分かった。じゃ行ってくるね」
 
花野子との電話を終えた後、千里は東京の帝国ホテルのレストランに電話し、7月10日のディナーコースを2人分予約した。
 
「花野子ちゃんたちと会うなら3人分、あるいは4人分では?」
と《りくちゃん》が言う。4人というのは蓮菜も入れた数である。
 
「たぶん2人でいい」
と千里は言った。
 
「7月10日は貴司君はまだ中国だし」
 
「誰か1人とディナーを食べることになりそうな気がするんだよ」
 
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「大裳、分かる?」
「いや、私にも分からない」
 
「でも千里のその手の予感って、本当に当たるもんな」
と《せいちゃん》が言っていた。
 

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7月9日には日本男子代表の一行が中国に旅立ったので、千里は成田で見送りをした。むろんギャラリーの中からの見送りなのでキスもしていなければ、言葉も交わしていない。視線で『頑張ってね』『頑張ってくる』と会話しただけである。
 

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7月10日は平日(木曜日)なのでグラナダでも練習があるのだが、今日はゴールデンシックスの打合せの日である。途中で呼び出される可能性もあるし、そうでなくてもたぶん“彼女”から連絡がある。それで千里は
 
「すみませーん。今日は練習休んでいいですか?」
とキャプテンに訊いた。キャプテンは
「バレ。君はむしろ休みが少なすぎる」
と言った。
 
「特に女子は生理の日は休んでいいのに」
「みんな月に7日くらいは生理で休んでいる」
「それ少し多くないですか!?」
「私、毎週生理あるよ〜」
「それ卵巣が8つくらいありません?」
 
そういう訳で、この日は休むことにした。スペインでの練習時間帯はたぶん日本の芸能界では、普通の作業時間である。
 
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それで葛西のマンションで楽譜の整理をしながら待機していたら、16時過ぎくらいに電話が掛かってくる。冬子(ケイ)である。千里が電話を取ると冬子は
 
「おはようございます、醍醐春海さん」
と言った。千里は“やっと気付いたか”と苦笑いして
 
「おはようございます、水沢歌月さん」
と答えた。
 
もっともこないだの『ハートライダー』の撮影したのが放送に流れたら、いやでも気付くだろうけどね!
 
それで冬子が少し話したいというので、日比谷駅で待ち合わせることにした。
 
「ところで歌月さん、どんな服着てる?」
「ペールピンクのビジネススーツだけど」
「だったら問題無いな」
「ん?」
 
 
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娘たちの始まり(12)

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