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■娘たちの始まり(6)

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ゴールデンウィーク直前、中体連の地区大会があり、龍虎たちの中学の生徒で運動部に入っていない人は、どこかを応援に行くようにという指示があった。それで龍虎や彩佳たちは陸上競技場に行って陸上部の応援をした。
 
龍虎たちの中学はいくつかの種目で優勝する選手が出るなど、けっこう善戦しているようであった。
 
陸上を応援に来ている子は少ないので、選手たちのテントの近くで
「頑張ってぇ!」
などと声をあげて観戦していた。陸上部の人たちから飲み物までもらったりして、なかなか待遇が良かった。
 
お昼近くになって、応援部の人が1人やってきた。
「おお、女子が4人もいる。君たち、チアガールやって」
「は?」
 
ちなみに龍虎たちは4人とも体操服で来ている。
 
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応援部の人からチアリーダーの衣裳を渡されたので、陸上部のテントの中で着換えさせてもらった。むろん龍虎もチアリーダーの衣裳を着るが、そのことを誰も問題にしない。龍虎自身も「ま、いっか」と思っている。
 
それで応援部の人が学生服で「フレー、フレー、QR中」とエールをあげ、更に手を前・横に出しながら校歌を歌う後ろで、龍虎や彩佳たち4人がチアの衣裳で適当に踊った。
 
するとQR中の2年女子が800mで3位からラストスパートで前の2人を抜き優勝したので
「おお!応援の効果あった!」
などと陸上部長さんが喜んでいた。
 

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千里は、スペインのリーグがオフシーズンに入ったのをいいことに、大型免許を合宿で取りに行った。レオパルダには
 
「日本で用事を済ませてくるので半月ほど休みます」
と言って、わざわざ飛行機で帰国した上で、5月2日に自動車学校の合宿コースに入校した。
 
これは後で誰かが千里の日程を調べた時、免許を取るために自動車学校に行っていた時期は海外に居たはずということになり、身代わり受験を疑われたりしてはいけないからである。
 
普通免許(2009.3.30取得:中型創設後・準中型創設前)を持っている場合、第1段階11時間、第2段階15時間、学科1時間である。千里は5月2-7日に第1段階を終えて8日(木)に仮免試験を受けたものの、厳しい検定官で、僅かに減点が多くて落としてしまった。それで9日(金)に再戦して合格した。第2段階はこの日の午後から始まり、9-13日の5日間で終了。14日に卒業試験を受けて合格。自動車学校を無事卒業した。
 
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そして5月15日に千葉県運転免許センターに行き学科試験を受ける。これに合格して、千里は大型免許を取得した。
 
そしてこれで千里の免許はゴールド免許になった。
 

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5月13日に冬子や梨乃たちがマンションの下見に行った時は、千里はちょうど教習時間の合間で、自習室で学科試験のシミュレーションをしていた。梨乃はお部屋を一通り見て、彼女の観点からはほぼ問題無さそうと思った所で千里に掛けてきたらしい。
 
千里は彼女の電話の先の空間を「見た」。
 
物凄く大きなエネルギーに満ちている。ここは「安息の場」としては問題があるが「仕事の場」としてはとてもふさわしいと思った。これまで冬子が住んでいた早稲田のマンションも実質、ローズ+リリーの事務所のようなものだった。ここも住居より仕事場にするのだろう。それなら問題無いと千里は思った。
 
「ここは仕事場だよね?休息の場所じゃないよね?」
 
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梨乃が確認すると冬子たちは休息したい時は政子の実家に行って休み、普段は都区内のマンションで仕事をしていて、色々な人たちと会っているということだった。
 
「うん。それなら問題無い。ここは安息の場にするにはエネルギーが高すぎるんだよ。仕事場としては最高」
 
梨乃はそれも伝え、冬子は感心しているようだった。
 

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何か1本筋がある。
 
「梨乃、そこの近くにお寺か何かある?」
 
それで梨乃が不動産屋さんに尋ねると確かに近くにお寺があるという。
 
「よくない?」
「いや、お寺の筋はそのマンションを通ってないし、そこよりずっと低層階の高さだから、問題無い」
と千里は言った。
 
梨乃が「この階は問題無いと言ってます」と言ったら、冬子たちはここが何階なのか分かるのか?と驚いて訊く。それで梨乃が千里に尋ねると
 
「そこは35階くらいだと思ったけど」
と言った。
 
実際に梨乃たちがいる場所は32階なので冬子たちは
「その人、本物だね!」
と感心したようである。
 

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千里は風水的なものもチェックした。冬子と政子はどちらも1991年生まれの女性で本命卦は乾(けん)で西四命である。冬子を男性命で見る必要があれば本命卦は離(り)になり、東四命でふたりの吉凶が変わってしまうのだが、冬子の場合は自分と同様、若い内に女子になっているので間違い無く女命でよいと考えた。同居する2人が同じ本命卦を持つ場合、とても考えやすい。
 
本命卦が乾の場合、
 

 
東北 天医(大吉)
東_ 五鬼(大凶)
東南 禍害(小凶)
南_ 絶命(最大凶)
西南 延年(中吉)
西_ 生気(最大吉)
西北 伏位(小吉)
北_ 六殺(中凶)
 
となる。実際のこのマンションの間取りを梨乃の電話を通して「見て」みると、玄関は東北にあり大吉である。キッチンのコンロは東に向いており、大凶である。大凶の方位にコンロを置くのが良いのである。コンロの火によって大凶の効果を塞いでくれる。コンロを万一吉方位に置いてしまうと吉の気が入って来ないのでよくない。
 
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「寝室はどの部屋にするの?」
「西側の2つを、冬子さんたちの寝室と客用寝室にしようかって」
「客用寝室はそれでいいけど、冬子たちの寝室は居間の隣の6畳の方がいい」
 
西側は生気でエネルギーが強すぎるのである。それでは安眠出来ない。居間の隣の部屋なら、延年なので休みやすい。その趣旨を伝えると冬子も分かったと言った。それから千里はリビングの方位が絶命になるのが気になった。
 
「リビングの壁にね、本棚とかを置いて、CDをずらーっと並べたりできない?」
 
それで梨乃が言ってみると、冬子はCDは全てmp3にしてパソコンのファイルサーバーに放り込んでいるのでリビングにあっても仕方ないのだと言った。
 
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「いや、だから並べたい。そこには凶方位の作用を塞ぐために、ほとんど動かさないものを置いた方がいいんだよ」
 
それで梨乃が伝えると冬子はそういうことであればCDラックを買ってきて並べると言っていた。これまでは大半を段ボール箱に詰めていたらしい。
 
そのほか、一連のチェックで千里も問題は無いと判断し、その趣旨を伝えると、それで冬子はここを買うことにしたようであった。
 

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5月14日(水)日本バスケットボール協会は7月のアジアカップと8月のウィリアム・ジョーンズ・カップに出場する日本男子代表の候補者26名を発表した。貴司はここに入っていて、千里は発表されるとすぐに「おめでとう。頑張ってね」と電話を掛けた。
 

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5月15日に大型免許を取った千里はすぐに雨宮先生にそのことを報告した。
 
「今どこに居る?」
「免許取り立てで連絡してますので、まだ幕張の運転免許センターです」
「だったら、そのまま幕張メッセに来て」
「はい?」
 
それで試験場まで乗って来たミラでそのまま幕張メッセに行くと
 
「ちょうど良かった。今ライブが終わって機材を積み込んだ所なのよ。このトラック動かして」
と言われる。
 
見ると巨大なトラックが居る。
 
「これ何ですか?」
と千里は念のため訊いた。
 
「ごく普通の15トントラックよ」
「これをここまで運転してきた人は?」
「四つ子を出産したんで病院に行っている」
「臨月なのに運転していたんですか!?」
「本人も自分が妊娠していることに気付いていなかったみたいで」
「妊娠に気付かない人ってたまにいますけど、4つ子でそれはありえないです」
「本人は去年まで男の子で手術しておちんちん取って、ヴァギナを造って女の子になったから、まさか妊娠するとは思っていなかったらしくて」
「はいはい」
 
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千里は首を振った。
 
雨宮先生のことばをまともに取る方が間違っている。
 
「どこまで持って行けばいいんですか?」
「マルセイユまで」
「道路が無いですけど」
「じゃ仕方ないから、横浜のこの住所まで」
と言って地図をもらった。運送会社の営業所のようである。
 
千里は取り敢えず運転席に座ったがカーナビが付いていないようなので、自分の携帯のカーナビ機能を呼び出し、それでナビさせてそちらに向かうことにした。
 

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「醍醐先生が運転してくださるのなら安心です。ハートライダーいつも見てますよ」
と同乗したレコード会社の人が言ったが、大型免許を今取って来たばかりと聞いたら、きっと仰天するだろう。
 
彼の話では、昨日このトラックを運転してきた人は、昨日だけの約束で今日はアサインされていなかったらしい。手配ミスがあったようだ。明日は大阪で公演だが、横浜からは運送会社の人が運んでくれる。ただ、そこまでのドライバーが居なかったということである。8トントラックくらいなら運転できる人はわりと居るのだが、大型免許を持っている人でも15トンはみんな尻込みしたらしく、運送会社に連絡して追加料金を払ってここから運んでもらおうか、などと言っていたところだったが、それではすぐにはドライバーの手配が付かず、結果的に予定時間までに大阪に着けない可能性もあるというので困っていたらしい。
 
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千里は内心首を振っていた。
 
「醍醐先生が近くにおられてよかった」
とレコード会社の人は言っていたが、たぶんこういう予定調和を引き起こすのが自分の運命なのだろうという気もした。
 
ともかくも千里は長さが12mほどもある大型トラックを慎重に運転して横浜まで行き、運送会社の人に引き継いだ。レコード会社の人は
 
「さすが運転がうまいですね!」
 
などと言っていたが、こちらは、冷や汗である。特にこういう長い車を運転する場合、交差点で曲がるのがひじょうに難しい。自分で手に負えない気がしたら、こうちゃんに頼もうと思っていたのだが、何とか最後まで自分で運転出来たので、こうちゃんからは「千里、よくやった」と褒められた。
 
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5月中旬、龍虎たちは遠足に行った。市街地にある学校なので、ひたすら道路を歩き、観音山(標高81m!)に登った。でもさんざん歩いた上で最後にこの登山になったので「きついー!」と言って何度も途中で停まっている子もいた。
 
龍虎・彩佳・宏恵・桐絵の4人はスイスイと登っていく。
 
「桐絵ちゃんは運動得意だからいいとして、龍ちゃんとか運動苦手そうなのに」
と、本人も運動苦手と言いながら、頑張って彩佳たちに付いてきた麻由美が言う。
 
「龍は筋力を使うようなものは苦手だけど、持久力はあるんだよ」
と彩佳が言う。
「龍のお父さんはマラソン選手だったと言ってたね」
と桐絵。
 
「マラソンという程ではないけど陸上部で長距離走っていたらしい。駅伝とかに出たらしいよ」
と龍虎。
 
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これは遺伝子上の父・高岡猛獅のことである。
 
「へー。だったら基本的に運動神経いいのかな」
「まあ筋力が無さ過ぎるから、スポーツの大会とかに出るのは無茶だけどね」
 

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「だけど正直な話さ、私は安心した」
と桐絵は言った。
 
「うん?」
 
「龍が学生服を着て通学してきたらと思うと、私たち、龍と今までみたいに普通に友だちとして付き合っていく自信が実は無かったんだけど」
 
「学生服着たってセーラー服着たって、中身はボクなのに」
 
セーラー服着たってって、やはり着たいのか?と宏恵は突っ込みたくなった。
 
「そうは言っても、やはり見た目って結構心を左右するもんね」
「そう?」
 
「だけど安心したんだよ」
と桐絵は言う。
 
「何に?」
 
「学生服着ていても、龍は女の子にしか見えないから、付き合っていくのに全く壁が無い」
 
そんなことを言うと、彩佳や宏恵だけでなく、麻由美まで頷いている。
 
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「桐絵たちと付き合うのに壁なんて無いよ」
と龍虎。
 
「うん。だから壁が無いんで安心した」
と桐絵は言っていたが、龍虎は意味がよく分かっておらず、首をひねっていた。
 

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娘たちの始まり(6)

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