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■娘たちの始まり(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-12-01
 
龍虎のトウシューズは4月下旬に出来てきた。
 
「ピッタリね」
と日出美が言う。
 
「まあピッタリでないと困るよね」
と先生。
 
「途中1回だけ微調整した。2度目は既にピッタリだった」
と龍虎は言う。
 
石膏で型を取っていても、足の「やわらかさ」は個人差があるので、1度ではうまく合わない。どうかすると3〜4回の調整が必要なのだが、龍虎は1回調整しただけで、きれいにフィットした。トウシューズは既製品ではなかなか合うものを見つけきれないバレエ学習者が多いので、この教室は初回いきなりオーダーで作るという方針を採っている。すると次に買う時はそのサイズをベースに既製品でも結構いけることが多いのである。むろん費用を厭わなければ次回もオーダーしてよい。オーダーのトウシューズは30-50万円ほどするが、バレエ学習者には元々裕福な家庭の娘が多い。なお既製品なら数千円からある。
 
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トウシューズはきついからといって幅広のものを選択することはできない。幅が広すぎるトウシューズは、体重が爪先だけに掛かることになり、足の先が痛くなる。トウシューズの役割はその全体で体重を支えることなのである。
 

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龍虎は結局このオーダーで作ってもらったトウシューズと同じサイズのものを個人的に費用を出してもう1足作ってもらい、片方は自宅で普段から履いておくようにした。これで早くトウシューズに慣れることができるのである。完全に足に合わせて作られているので履いていても全く痛くない。普通の靴より快適なくらいである。
 
「トウシューズに慣れるのの他にスカートに慣れる必要無い?」
と母から言われたが
「ボク、スカートは日常的に穿いている気がする」
と龍虎が言うと
「確かにそうだ!」
と言われた。
 
トウシューズでつま先立つことを「ポワント」というが、さすがにいきなりこれができる人は居ない。段階的にルルベ(Releve)を上げて訓練していく。
 
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0/4 A terre 踵が床に着いている状態。
1/4 les quart de pointes 4分の1上がった状態。
2/4 Demi-pointe 半分上げて指の腹で立った状態。
3/4 les trois-quart de pointes 指の付け根と膝が一直線になる状態。
4/4 sur les pointes 完全な爪先立ち。
 
龍虎はこれまでバレエシューズで、本来はトウシューズで踊るような踊りを多数こなしてきているので、ドゥミ・ポワントは全然問題無くできていた。それでトロワカールを5月中はひたすら練習した。
 
「足の筋肉が疲れる〜」
「それお風呂とかで暖めてしっかりメンテしてね。筋を痛めたら立てなくなるから」
 

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さて、2014年の春から夏に掛けてKARIONのメンバー4人の内の3人がお引っ越しをしている。
 
最初、4月3日に和泉が神田の賃貸マンションから、すぐ近くの分譲マンションに引っ越した。今まで住んでいた所が取り壊して建て替えになるということで、そのタイミングでの移動だった。お陰で敷金が全額返ってきたし、防音工事した部屋も原状回復させず放置で良いと言われた。
 
美空は国分寺駅から徒歩1分!というワンルームマンションに引っ越した。彼女は遅刻魔なので、実家から出てくるとどうしても1時間半掛かっていた所がここからなら中央特快で20分で新宿駅に着くので、家から事務所まで30分で来られるはずである。しかし美空は
「これで1時間余分に寝られる!」
と発言して、畠山社長にギロリと睨まれていた!
 
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ちなみに引越は「大して荷物もないし」ということで、お父さんが軽トラで運んでくれた、と本人は言っていたのだが、あとで実際に美空の部屋に行ってみて、冬子たちは仰天した。
 
小風は実家住まいだが、引っ越さなかった。
 
そして冬子の引越の話は、和泉の引越のお祝いをしていた時に唐突に出てきた。和泉が買ったマンションが6000万円というので、そのくらいなら冬も買っていいんじゃない?と政子が言い出したのに対して冬子は
「探す時間が無いよぉ」
と言った。
 
すると政子と美空が
「私たちで探してあげるよ」
と言ったのである。
 
その組み合わせに冬子は大いに不安を感じた。
 

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この時期、ローズ+リリーもKARIONもツアーをやっていたのだが、ローズ+リリーの公演には毎回ゴールデンシックスのカノンとリノンが出演していた。本割りが終わった後アンコールになった時、幕が上がってマリとケイが出てくるかと思ったら、出てきたのはカノンとリノンで、勝手に自分たちの持ち歌を歌い出すという趣旨である(こういう演出は過去にももクロのライブなどで行われたことがある)。そこにマリとケイが出ていき
 
「ちょっとちょっと君たちは誰?」
と言う。するとカノンとリノンは
 
「私たちはゴールデンシックスだ。私たちはローズ+リリーに挑戦するぞ」
と言う。
 
それでカノンとケイ、またはリノンとマリでカラオケ対決をして、勝った方がアンコールで2曲歌う権利を得るということになっている。
 
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この勝負はガチである。
 
カラオケの採点システムは一切調整されない。
 
しかしカノンとケイ、リノンとマリの対決では、1度もカノン・リノンは勝てなかった。なお、リノンとケイで対決したこともあるが、カノンとマリは対決しないというのが“おとなの事情”である。
 

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仙台公演(5.11)の後で、ローズ+リリーとKARIONのスタッフの合同打ち上げをしようとしていた時、ちょうど近くにカノンとリノンがいた。ふたりは今から車を交替で運転して東京に戻ると言っていたが、★★レコードの氷川さんが止めた。
 
「疲れているのに今から自分たちで車を運転するのは危ないよ。車は★★レコードのスタッフに回送させるから、君たち今夜はホテルに泊まって明日の朝の新幹線で帰るといいよ。ホテル代も新幹線代もうちで出すよ」
 
それでふたりは冬子や美空の誘いで、打ち上げに参加することになったのである。
 
この打ち上げでは、その後、重要なキーとなるような話題も出ていたのだが、打ち上げも中盤になった頃、政子と美空が唐突に
「そうだ。冬のマンション見つけたよ」
と言った。
 
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見つけた後で、ふたりで焼肉を食べに行き、うっかり冬子に伝えるのを忘れていたらしい。
 
「場所は?」
「恵比寿駅の近く。築5年。歩いて8分。私たちが歩いての実測値」
「広さは?」
「4LDK+2S, 42坪。音源製作で遅くなった時に私たちが泊まれる部屋も確保出来る」
「それはいいけど、その広さならかなり高いでしょ?」
「新築時は2億円だったって」
「さすが・・・」
「それが中古で1億7千万円」
「それでも高い」
という声もあったのだが、リノンが
 
「いや、その場所でその広さなら、しますよ。むしろ安いかも」
と言った。すると美空が
 
「おお、専門家」
と言う。
 
「専門家?」
「ああ、リノンは###不動産に務めてるんですよ」
「あ、この物件も###不動産」
「おぉ!」
 
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「美空さん、今度良かったらそこに私も連れてってください」
とリノンが言う。
 
「そうだね。専門家の目で確認してもらった方がいいかも」
と美空。
 
「同じ###不動産なら、それ仕事として出て来られるのでは?」
「どうでしょう。どっちみち聞いてみます」
 
「でも、梨乃ちゃん、他の人がいるからと言って『美空さん』なんて言わないで。敬語もやめて。気持ち悪い」
と美空は言った。
 
「じゃ、いつものように、みーちゃんで」
 
「あれ?知り合いですか?」
と氷川さんが訊く。
 
「そそ。もう8年近い付き合い」
と美空。
「へー!」
 
「いや、みーちゃんの従姉が私やカノンの親友なんです」
「ああ!そうだったんだ?」
 
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それで冬子と政子に美空、それにリノン(矢嶋梨乃)で、5月13日にそのマンションを見に行ってみることになったのである。リノンは結局、有休を取って同行することにした。勤務中に行けば中立的な立場に立てないからである。
 

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この席でKARIONの常連作詞家、櫛紀香さんが尋ねた。
 
「ローズ+リリーさんは、新しいアルバムはいつ頃出すんですか?」
 
「夏頃出すつもり。一応曲の選定は終わってアレンジもだいたい固めたんだけどね。ツアーが終わってから制作に入る」
と私は答える。
 
新しいアルバムのタイトルは『雪月花』にすることを昨年『Flower Garden』を発売した時に発表している。構想としては『Flower Garden』の製作に入る前から、次はこれと考え、敢えて『Flower Garden』に入れずにキープしておいた曲などもあった。
 
しかし昨年と違って今年冬子は忙しく、なかなかそちらの製作のための作業に入れずに居た。
 
「去年みたいに何ヶ月も掛けて収録ってのはやはり無理だよねー」
と政子が言う。
 
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「うん。今年は忙しい。去年の前半はアルバム制作以外、ほとんど何もしてなかったからね」
 
「楽曲は、ほとんどマリ&ケイ?」
「上島先生から1曲頂いている。あとこないだのパーティーで東堂千一夜先生が僕にも書かせてよと言っていたので、1曲頂くことになりそう。他はマリ&ケイになるかな」
 
「すると12曲入りのアルバムとして10曲がマリ&ケイか」
「うん。そんな感じになるかも」
 
と冬子は言いながらも、けっこうきついなと内心思っていた。楽曲数としては揃えてあるのだが、昨年の『Flower Garden』ほどのレベルではない。しかし活動開始した以上、あまりアルバムの間隔を開ける訳にもいかないし。
 

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ケイの引越の下見の件が打ち上げの席で出たので、翌日梨乃から千里に電話が掛かってきた。
 
「ああ。ローズ+リリーのケイが引っ越すのか」
「千里もお友だちなんでしょ?」
「そそ。クロスロードという集まりでのお付き合い。梨乃も入る?条件は女湯に入れることというのだけ」
「まあ確かに女湯に入れるけど」
 
「天然女性と、性転換して女になった人と、性転換してないけど女体偽装している人がいる」
「女体偽装で女湯に入るのは犯罪のような気がする」
「一応貸し切るけどね」
「それならいいか」
 
「他のメンツは、美容師さんと、ソフト技術者と、メイド喫茶のメイドと」
「バリエーションに富んでるね!」
「まあね」
 
「それで私は風水とか分からないからさ、千里、見てもらえない?」
「いいよ〜。私はその日行けないから、現場から電話して」
「電話がいいの?」
「うん。電話を通して現場の空気が読めるんだよ」
「なるほど〜」
 
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ところでこの仙台公演の打ち上げの時、青葉が作った神社に招き猫を起きたいという話が美空と政子からあがった。
 
「神社のオーナーに許可を取らないと勝手には置けないよ」
と言うと
「私が連絡しとくよ」
と政子は言った。青葉はこの日の公演に出演していたのだが、学校があるので打ち上げには出席せずに既に帰っていたのである。
 
そして翌5月12日(月)、青葉が自宅で勉強していたら政子から電話が掛かってくる。
 
「昨日はお疲れ様でした」
「そちらもお疲れ〜」
 
「それでね、青葉の名前を決めてあげたよ」
と政子は言った。
 
「は?」
「私が岡崎天音になるから、青葉は大宮万葉ね」
「何ですか?それは」
「じゃ、後で歌詞を送るからよろしくー」
「あ、はい」
 
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ということで青葉はさっぱり訳が分からないまま電話を切った。その夜9時頃に政子からFAXがあり何かの歌詞が書かれていて“岡崎天音作詞・大宮万葉作曲『黄金の琵琶』カリオン”と書かれていた。
 
要するに、この詩に曲を付けてね、ということのようである。青葉は首を振って曲を付け始めた。
 
この時点で青葉は招き猫のことなど、全く聞いていない!
 
でも政子は招き猫の設置の許可を青葉から取ったつもりになっている。それで招き猫制作の件は、政子から製造元に依頼され、作業が進むことになった。
 

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5月中旬、龍虎の両親が居ない日を狙って、龍虎の家に来た彩佳は「メディカルチェック」と称して龍虎を裸に剥き身体をチェックした。
 
「胸は少し縮んだ気がする」
「やはり女性ホルモン飲むのやめた影響だと思う」
「ちんちんの長さが0cmくらいになっている」
「少し伸びたでしょ?」
「3月の時点ではマイナス5mmくらいだったから、これ伸びたと思う」
「男の子の身体に変わっていくのは寂しいけど仕方ない」
 
「・・・龍、やはり去勢しようよ」
「嫌だ」
 

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龍虎は父から言われた。
 
「もしかしてお前、女性ホルモン飲まなくなったの?」
「あれは身長を伸ばすために飲んでたんだよ。155cm近くまで来たから、取り敢えず、これでいいことにする」
「ちんちん大きくするの?」
「縮めすぎたから回復させる」
「このクリームやるから毎日寝る前に塗るといい」
「男性ホルモン?」
「塗り薬だからローカルに利く。身体の他の部分には影響無い。お父さんも中学の頃これでちんちんを5mmくらいから2cmくらいまで伸ばしたけど、身体の他の部分は全然男性化しなかったぞ」
 
「・・・使ってみようかな」
 
「塗るときは指が男性化しないように使い捨て手袋して」
「それ怖いね!」
「睾丸にも塗ると大きくなるかも」
「睾丸はあまり大きくしたくない」
「いっそ取っちゃう?中学生でも去勢してくれる病院知ってるけど」
「それは取りたくないんだよね。働いては欲しくないけど」
 
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「もし万が一にも声変わりしたくないなら、念のためエストロゲンを週に1錠くらいの微量飲むといいかも。体内を女性ホルモン優位に保っておけば声変わりは来ないよ」
と父は言う。
 
「そうしようかな」
と龍虎は素直に言った。
 

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