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■娘たちの始まり(2)

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「この子はそういう訳で戸籍上は『長野龍虎』なのですが、両親は既に亡く、未成年後見人になっている叔母は仕事が無茶苦茶忙しくて、長期間家を留守にすることもあり、それで私たち夫婦が里親として預かっているんですよ。里親なので苗字が違うのですが、その件で小学校の時相談したら、親子で苗字が違うのは様々なトラブルを起こすから、通称・田代龍虎でよいのではないかと言われて、小学校ではそう扱って頂いたんです。これが先日頂いたその小学校の卒業証書です」
 
と言って幸恵はQS小学校の卒業証書を見せた。名義は長野龍虎になっているが、「生徒名・田代龍虎」と添え書きされている。
 
「そういうことでしたら、この学校でもそれに準じて、本名長野龍虎、生徒名田代龍虎でいいですよ」
と同席した校長先生は言った。
 
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「それで性別の取り扱いも先日お伺いした時に申しました通りにお願いできれば」
「すみません。それをまだ担任に伝達しておりませんでした」
と教頭先生が恐縮して言っている。
 
「いや、僕も突然ここの校長に赴任して、色々引き継ぎ事項が多くて、その件を処理できていませんでした。申し訳無い」
と校長先生も謝った。
 
なんでも本来ここの学校の校長になるはずだった人が急死し、突如ここの校長になって欲しいと辞令が出て、(教頭をしていた)前の学校の離任式も経ずにこちらに赴任してきたらしい。
 
「でも龍虎さんは、戸籍上は男性だが、外見が病気の影響もあって女性的なので、着換えなどは個室を使ってもらい、排尿も男の子のようにすることができないのでトイレも女子トイレを使ってもらっても構わないということで、また戸籍名は長野龍虎だが、学籍簿上は田代龍虎ということで」
 
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「すみません。面倒なことお願いして」
「いえ、色々な生徒がいますから、大丈夫ですよ」
 
「本名と生徒名が違うのは外国籍の生徒でもありますよね」
「そうそう。僕が昨年まで居た学校は地域的にそういう子が多くて、通称使用していた子が3学年で6人もいたよ」
「いる所には結構居るもんですね〜」
 

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そういう訳で龍虎の生徒手帳は、入学式の日に渡されたものでは
 
《田代龍虎・女》
 
になっていたのだが、修正してもらうことにした。しかし“修正”されたものは
 
《長野龍虎・女》
 
になっており、担任の先生も
「ごめーん!!」
と言って、2度目の修正でやっと
 
《田代龍虎・男》
になった。
 
彩佳は
「女子の生徒手帳持っていた方がトラブルが少ない気がするけど」
と言っていた。
 
「間違った生徒手帳2つももらっちゃったけど、これ普通に捨てても大丈夫かなあ」
と龍虎が相談すると、彩佳も宏恵も
 
「その《田代龍虎・女》の生徒手帳はぜひ持っておこう」
「なんのために〜〜?」
「私が預かっていてもいいけど」
「それも怖い気がする」
「信用無いな」
 
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なお、担任の先生は
「生徒手帳の名義が戸籍名と違うから、これは公的な書類とかを受け取る場合の身分証明書として使えないと思うんだよ。だから、君、住民基本台帳カードのB型(写真付き)を作っておいた方がいいと思う」
と言った。
 
「あ、そうかも。母に相談しておきます」
 
これがこの秋にパスポートを作る時に役立つこととなる。
 
(マイナンバーカードは2016年1月から発行開始されたので、この時点ではまだ無い)
 

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龍虎は「女子トイレを使ってもいい」と言われたのだが、やはり学生服姿で女子トイレに入るのは本人としても抵抗があったので、男子トイレに入ろうとしてみた。
 
でも即拒否された!
 
「田代さんは女子トイレでいいと思う」
と男子たちからは言われる。
 
「取り敢えず男子トイレは使わないで欲しい」
「うん。女子がいるみたいで緊張する」
 
それで結局、1階玄関そばの多目的トイレ(男女共用)を使うことが多かった。
 
もっともしばしば彩佳たちに「龍、トイレ行こう」と言われて女子トイレに連れ込まれた。そういう時は龍虎も「まいっか」と言ってそちらを使用した。学生服姿の龍虎が女子トイレの列に並んでいても、QT小出身の子も含めて誰も違和感を感じなかった。それは学生服を着ていても、龍虎が女子にしか見えないからである!
 
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体育の時の着換えについては、母は配慮して欲しいと申し入れていたのだが、龍虎は
 
「男子と一緒でいいです」
と言った。
 
龍虎としては、女子トイレはお互い着衣だからそう大きな問題はないけど、女子更衣室は下着姿になるので、自分に下着姿を見られたくないと思う女子がいるはずだと考えたのである。
 
「だって、学生服着た子が、女子更衣室に居たら、事情を知らない人はギョッとしますよ」
と龍虎は言ったのだが、実際には男子更衣室に龍虎がいるのを見て、ギョッとする男子が続出することになる!
 
クラスメイトの男子たちも女子たちも
「女子と一緒に着換えた方がいいのでは?」
と言ったが、龍虎は
「こちらで着換えさせて〜」
と言って、男子更衣室を使用していた。
 
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4月11日(金).
 
龍虎の中学校では、身体測定と新1年生については内科検診・胸部X線間接撮影が行われたが、龍虎は身体測定は1人だけ先行して別に受けた。保健室の先生に測定してもらったが、先生は龍虎がブラジャーをつけ、女の子パンティを穿いているのを見ても何も言わなかった。
 
もっとも、そもそも女子であると思われている可能性もあるよな!と思った。
 
ちなみに龍虎は体育の時間の後で行っているので体操服のままであった。
 
内科検診とX線については病院で受けて来てということになり、昼休みに学校から外出して、病院で受けて来た。
 
龍虎はこれも体側服姿のまま行ったのだが、内科医の先生は龍虎を女子中学生と思っていたようだし、X線も女性の技士がしてくれた。例によって「生理の乱れは無いですか?」と聞かれ、定期的に来ていますと答えておいた。
 
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龍虎は4月最初のバレエ教室に来ていた。
 
「じゃ、中学になった子で身長150cm以上の子はこれからトウシューズを履きましょう」
と教室長先生が言った。
 
が・・・新中学生は、龍虎と井村君の2人だけである。昨年まで教室に居た、同学年女子の鈴菜は「中学生になると勉強が忙しくなるから」ということで3月いっぱいで教室をやめてしまった。
 
「それが今年は女子の新中学生が居ないのですが・・・」
と事務担当の人が言う。
 
「あらぁ・・・」
「今年は新でない中学生も少ないんですよね。新3年生になるはずだった和絵ちゃんが、お父さんの転勤で辞めて、新2年生の予定だった芳絵ちゃんは、ピアノ教室との掛け持ちがスケジュール的に辛くなってこちらを辞めることにしたということで」
 
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スケジュール的より経済的なんじゃないかな〜?バレエはお金掛かるからと龍虎は思った。龍虎が安心してバレエをやっていられるのは上島のおじさんの支援のおかげだ。
 
「ということは今年の中学生は?」
「女子は2年生の蓮花ちゃんだけ。男子は3年生の佐藤君、1年生の井村君と龍虎ちゃん、以上4人です」
 
龍虎は男子で佐藤君と井村君は苗字で呼ばれたのに、なぜボクだけ名前呼びなのだろうと疑問を感じた。
 
「それなら・・・シンデレラは配役が足りないよね?」
「蓮花ちゃんにシンデレラを踊ってもらっても、仙女や母親は小学生の子たちには少し荷が重いです」
「だったら、白鳥湖の方がいいかな?」
 
バレエ関係者はしばしば「白鳥の湖」を「白鳥湖(はくちょうこ)」と呼ぶ。
 
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「それなら、オデット=オディール以外の女子でキャラが立っているのは、王子の母だけなんですよね。だからそれを小6の日出美ちゃんにお願いして」
 
「王子が佐藤君、ロットバルト=家庭教師を井村君、道化を龍ちゃんに踊ってもらえば、あとは4羽の白鳥・2羽の白鳥、スペイン、ナポリ、ハンガリー、マズルカ」
 
「そのあたりは5〜6年生でも何とかなるわよね?」
「なると思います。練習している内に4年生でも出来る子が出てくるかも。4羽は身長の揃っている子4人で」
 
「じゃあ今年は白鳥湖にしましょう」
「そうですね」
 

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「じゃ、結局今年はトウシューズ・デビューは無し?」
 
毎年最初の教室レッスンの日に、トウシューズデビューする子のお祝いをすることにしているのである。
 
すると龍虎にいつもレッスンを付けてくれている先生がチラッと龍虎を見てから言った。
 
「ここは龍虎ちゃんにトウシューズを履いてもらうということで」
「おぉ!」
「そうだった。龍虎ちゃんはトウシューズ履いてもいい」
 
「ボクがトウシューズ履くんですか〜?」
 
「プロのバレリーノはたいてい自分のトウシューズを持っているよね?」
「そうそう。やはり女性の踊り手を支えてあげて踊るには女子の動きをちゃんと理解していないといけない。それでトウシューズ履いて、女性の踊りも練習しているのよね」
 
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「うん。だからプロのバレリーノはたいていブラックスワンもグラン・パ・クラシックも踊れる」
「むしろああいう激しい踊りは男性向きかも」
 
「そうだ!オデットを蓮花ちゃん、オディールを龍虎ちゃんに踊ってもらうというのは?」
という意見が出るが、蓮花本人が言った。
 
「それ絶対逆がいいです。龍虎ちゃん、筋力無いし、私には情緒性が無いし」
「なるほどー!」
「その意見に1票」
「確かに龍虎ちゃんの動きは情緒がある。去年の金平糖も素晴らしかった」
 
龍虎はおそるおそる尋ねる。
「あのぉ。オデットとかオディールとか、踊るのはいいですけど、レオタードでもいいですか?」
 
「オデット・オディールは当然クラシック・チュチュよね」
「むしろクラシック・チュチュは、白鳥湖のために生まれたような衣裳」
 
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すると付いてきている母・幸恵が言った。
「龍、あんたチュチュ着たいよね?遠慮無く着ればいいじゃん」
 
「お母様がそう言うのなら全然問題無いね。じゃオディールが蓮花ちゃんで、オデットを龍虎ちゃんということで」
 
お母ちゃんが言うからって、ボクの意思は〜?
 

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それで結局、どさくさ紛れというか、成り行きでというか、龍虎は石膏で足の型を取られ、それで龍虎の足にピッタリのトウシューズをオーダーで製作してもらえることになった。
 
(最初のトウシューズだけは“年目割”教室持ち:龍虎は6年目になるので教室が6割で龍虎は4割の多分10万円くらいを出せば良い)。
 
「井村君もトウシューズ作る?今年は新中学生が2人しかいないから」
「遠慮します!」
 
井村君は幼稚園の時からやっていて9年目なので作りたいと言えば9割を教室が出してくれるのだが、彼は辞退!した。
 
「ではお祝い、お祝い」
ということで、ケーキとチキンが配られ、急遽主賓になった龍虎の音頭でサイダーも開けて、今年の「トウシューズお祝い」は行われたのであった。
 
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4月13日(日).
 
東京都クラブバスケットボール春季選手権が都内の比較的近隣する2つの高校の体育館を舞台に開催された。これに登録されたばかりの40 minutesも参加した。
 
参加チームは男子は30チームあるので、実は昨日、1回戦と2回戦が既に行われて上位8チームに絞られている。女子は全部で7チームしかないので、今日1回戦のあと、準決勝・決勝である。
 
最初に8時半から女子の1回戦が行われ、40 minutesはいきなり強豪の多摩ちゃんずとぶつけられたものの、快勝!した。
 
多摩ちゃんずは例年東京で優勝争いをしているチームなのだが、千里、星乃、桂華、渚紗、雪子といった日本代表レベルの選手、麻依子、橘花、夕子といったそれに近いクラスの選手が入っていれば、とてもかなわなかった。
 
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10:10からの男子準々決勝を経て、11:50からは準決勝が行われる。相手は千住キャノンといって、“裏関”の常連チームである。江戸娘・多摩ちゃんずという2強の壁を崩せず、いつも3〜4位に甘んじている。向こうはてっきり多摩ちゃんずが上がってくるものと思っていたようで、最初は喜んでいた。
 
が、3分でみんな顔色が青ざめる。
 
全く勝負にならなかった。クァドルプルスコアで40 minutesが勝った。
 

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13:30からの男子準決勝を経て15:10から女子決勝が行われる。相手は江戸娘である。こちらには江戸娘のOGが3名入っている。しかし3人の内スターターで出てきたのが夕子だけであること、ローキューツでさんざん対戦した千里や麻依子に雪子が入っているのを見て、向こうはこちらの実力を明確に認識した。
 
当然最初から全力で来る。
 
こちらも当然全力で対抗する。
 
これが本当に激しい戦いになった。
 
男子の決勝戦が始まるまで暇つぶしに女子の試合でも眺めるかという雰囲気だった観客が騒然とする。
 
40 minutesの選手たちも、この相手にはさすがに1回戦や準決勝のようにはいかない。向こうはこちらの仕掛けをかなりよく読んで対抗してくる。むろん、そう簡単に攻め筋を読ませる雪子ではないので、江戸娘はかなり振り回されるものの、それでも二重三重の構えで何とか対抗していく。
 
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勝負はシーソーゲームになった。
 
ただ、この勝負は技術的には40 minutesが上でも、若さでは江戸娘に分があった。
 
第3ピリオドまでは何とかなったのだが、第4ピリオドで40 minutesの選手の速度が、千里以外はみんな低下していく。しかし江戸娘の選手たちは若くて体力があるので、ここでスピードで優位に立つ。
 
結果的には5点差で江戸娘が勝った。
 
「だめだぁ。若さに負けた!」
と最後座り込んでしまった星乃が言った。
 
「やはり鍛錬だな」
と腕を組んでスコアボードを見つめた橘花が言った。
 
そういう訳でこの初めての大会で40 minutesは準優勝に終わったのであった。
 
なお同時に行われた3位決定戦では、準決勝大敗のショックが残る千住キャノンは連携がうまく噛み合わず、あまり上位に進出したことのなかった Olive Sugarsが勝利して3位の賞状を獲得した。彼女たちは賞状をもらうのは初めてと言って、物凄い喜びようであった。
 
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