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■娘たちの振り返るといるよ(16)

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1月19日(土).
 
千里はネイビーのドレスとベージュの羽織、逆配色でベージュのドレスに紺の羽織、3cmヒールのベージュのパンプス、黒のパンプス、それに真珠のネックレス(6mm/5mm)を持ち、羽田から新千歳行きの飛行機に乗った。
 
このドレスや先日のRC大賞の授賞式で着たフォーマルなどは全部三越でオーダーして作ったものである。身長が(普通の女性よりは)高い千里の場合、既製服では丈が短くなりすぎるし、それより袖が通らないのである。和服の場合はけっこう既製品でもいけるのだが、洋装の場合はかなり苦労していた。なおオーダーの際は必ず腕の太さを測ってもらう。これを標準サイズで作られるとマジで腕が通らない服になってしまう。
 
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身長180cmの玲央美などもフォーマルやアフタヌーンドレスなどは全部オーダーだと言っていた。彼女の場合は、既製服では絶対無理だろう。
 
「女装用品売ってる店にあった服も袖が通らなかったんだよ」
 
と彼女は言っていたが、彼女ならそうだろう。千里の腕でさえ、男子日本代表である貴司より太いが、玲央美の腕は千里より遙かに太い。
 
真珠のネックレスは今日は6mmサイズのもの(購入価格12万円)と5mmのもの(購入価格3万円)を持って来た。先日の授賞式の時は8.5mmサイズのもの(購入価格150万円)をつけていたが、結婚式というのは、とにかく花嫁より目立つものは着けてはいけないので神経を使う。取り敢えず2ランク持って行ったのである。
 
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式を挙げる予定のホテル近くにあるファミレスで、保志絵・理歌・淑子の3人と落ち合う。望信は仕事で明日の朝こちらに来るということであったが、その方が気楽だと思った。今の自分と貴司の微妙な関係を説明するのはひじょうに難しい。
 
「服装で迷ったので見て欲しいんですが」
と言って持って来たドレス・羽織のコーディネイト2種類を見せる。
 
「若いし明るいのがいいと思うよ。このベージュのドレスの方がいいんじゃないかな。羽織もベージュのにしよう」
と保志絵が言う。
 
つまりベージュ同士の組み合わせになる。
 
「私はピンクのドレスにダメ出しされて、ライトブルーのドレスになった」
と理歌は言う。
 
「そのあたり難しいよね〜」
 
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靴もベージュのパンプスでいいだろうと言われた。
 
「本当は5cmヒールくらいがいいんでしょうけど、背が高くなりすぎると思って3cmヒールを持って来たのですが」
 
「うん、それでいいと思う」
 
真珠のネックレスは2つとも見せたが
「こっちが立派だからこちらにしよう」
と言われ6mmパールの方を着けることにした。
 
「これどちらも本真珠だ」
と淑子が言っている。
 
「貝真珠のもありますよ。これ800円で買ったものですが」
と言って千里は念のため持って来ていたもうひとつのネックレスを見せる。
 
「800円は凄い!」
「私の友人(桃香)など100円の貝真珠ネックレスを持ってますけど」
「100円〜〜〜!?それプラスチックじゃなくて?」
「ええ。見せてもらいましたが、確かに貝パールでした」
「それはまた凄いね」
 
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「それでね、千里ちゃん」
「はい」
 
「取り敢えずこの指輪をあげる」
と言って、保志絵は青いジュエリーケースを取り出した。
 
「何でしょう?」
と千里は緊張して尋ねる。
 
保志絵がケースの蓋を開けると白金色の指輪が輝いている。石は付いていない。
 
「まるで結婚指輪のように見えます」
 
「これは私が千里ちゃんのために作った」
と言ったのは淑子であった。
 
千里は驚いて淑子を見る。
 
「今貴司と千里ちゃんの関係が微妙であるのはできるだけ理解しているつもり。だから貴司が作った結婚指輪は今は受け取れないという気持ちも分かる。だけど千里ちゃんは私の孫の嫁だから。私の孫嫁の証として、これを受け取ってくれないかな。このお金は私の年金から出した」
 
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千里は涙が出てきてしまった。
 
保志絵が自分に指輪を渡そうとしたのなら、あくまで辞退していたところだが、淑子さんからの贈り物というのでは、断れないじゃん!
 
「分かりました。頂きます」
と千里が言うと
「あ、私が贈るから私が填めてあげるよ」
と言って、淑子が千里の左手薬指にそのプラチナの指輪を填めてくれた。
 
ステンレスの指輪も入るには入ったが、ややきつめであった。こちらは充分なゆとりがある。
 
「ありがとうございます。でもサイズぴったし」
「うん。貴司が作った結婚指輪を持ち込んで、同じサイズで作ってもらったからね」
「なるほどー!」
 

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「そうだ。指輪を頂いた御礼に、この3人にだけ特別公開」
と言って、千里は自分の携帯を開くと、フォトフォルダーを開いて、その中の1枚の写真を見せる。
 
3人とも吹き出した。
 
貴司が“あられもない”格好で寝ている写真である。12月26日にホテルで休憩した時に撮影しておいたものだ。
 
「着実に略奪作戦を進めていますから」
と千里が言うと
 
「もう既にほとんど取り返している気がする」
と理歌は言った。
 
「あら?」
と言って保志絵は写真を拡大してスクロールし、貴司の左手の所を見ている。
 
「これもしかして、千里ちゃんが贈ったクロノグラフ?」
「そうなんです。結局、貴司さん、それをずっと着けているみたいで」
「へー!」
 
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理歌は腕を組んでいる。
 
「だったら、やはりこの婚約は破棄されていない」
と保志絵は言った。
 

翌1月20日。
 
朝から望信がやってきたが、望信は千里の祝賀会への出席は全く問題無いと言った。
 
「色々聞いたけど、双方が渡した結納金は、現時点でお互いに相手が受け取ったままの状態。今朝貴司と電話で話したのだけど、貴司は千里ちゃんから贈られたクロノグラフを試合中とお風呂に入る時以外はいつも着けているらしい。それは貴司が千里ちゃんを自分の妻と認識していることだと、僕は解釈した。だから、千里ちゃんは現時点でも貴司の婚約者のままだと思う」
 
「千里姉さん、もう“元婚約者”と名乗るのはやめて“婚約者”を堂々と主張しようよ」
と理歌。
「そうしようかな」
と千里。
 
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「それに7月以降も貴司と千里ちゃんは度々会っているし、12月22日から29日まではずっと一緒だったって?」
と望信は言う。
 
「まあそんな感じです。貴司さんにとっては、今は阿倍子さんが本命で、私は浮気相手なのかもしれませんけど」
と千里。
 
「でもそういう状態って過去にも何度かあったよね?」
と保志絵が言う。
 
「まあ何度“も”ありましたね」
と千里は苦笑する。
 
「そうそう。何回もあることが兄貴の問題点」
と理歌が投げ遣り気味に言う。
 
「それと今年の貴司の年賀状も千里さんの字だった」
と淑子が言う。
 
「まあ毎年のことですし」
と千里。
 
「それで僕も、だったら、千里ちゃんをお前の奥さんとして結婚式に出してもいいよね?と電話で貴司に再確認したら、何かごにゃごにゃ言ってたけど、YESかNOかと言われたらYESだと貴司も言った」
 
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「そうですか」
と言って千里は少し涙腺が潤う思いだった。
 
「ということだから、今日は堂々と“細川千里”として出てよ」
とお父さん。
 
「分かりました。ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
と千里は言った。
 
「はい、よろしくね」
と保志絵も笑顔で答えた。
 

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午前中にホテル内の神殿で結婚式が挙げられたが、ここは狭いので千里たち、いとこは遠慮して、おじ・おばだけが列席した。
 
12:00から祝賀会が始まる。
 
ここには新郎新婦の友人のほか、新郎の親戚と新婦の親戚がいる。新婦の親戚は新婦の母の細川系と、新婦の父の布施系がいるわけだが、千里は細川系の親戚とはみな顔見知りなので、
 
「あら、今回は貴司さんは欠席?」
とか
「そちら赤ちゃんはまだ?」
などと言われ、年の比較的近い西紀ちゃん(4学年上だが既に2児のママ)や中高生の杏梨・桜花姉妹などとは、理歌とともに、かなり長時間おしゃべりをしていた。
 
思えば千里は高校3年生の時以来ずっと親戚の集まりに貴司の妻として出席しているのである。昨日淑子からもらった時は、ほんとにこれ着けてていいのかなぁと不安だった白金色のマリッジリングも、当然着けていていいという気分になってきた。
 
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1月21日(月).
 
貴司は桃山台でのMM化学の練習を終えてから取り敢えずトイレに行った。ちんちんが無いのにも随分慣れてきはしたものの、少しため息を付く。
 
貴司は“事情あって”他の選手と一緒には着換えられないので、汗を掻いたままのジャージで、そのままみんなに
「お疲れ様」と言って、体育館を出る。
 
ところが体育館を出た所に千里がいるのでびっくりする。
 
「お、今日は奥さんがお出迎えか」
と近くに居たチームメイトたちから言われる。
 
「奥さん、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとうございます」
と千里はにこやかに応じる。
 
「今日は私が貴司を市川町まで送っていくよ。後部座席で寝てて」
「うん」
 
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千里はA4 Avantを持って来ていた。千里に言われたように後部座席に乗り込むと札幌のホテルの名前が入った袋がある。
 
「あ、美沙ちゃんの結婚式のか」
「そうそう。引き出物のケーキを持って来た」
「ありがとう」
「そこに貴司の分の領収書も入っているから」
「ああ。僕の名前でも受付したのね」
「うん。会費は私が立て替えておいたから後で精算」
「了解」
「お料理は理歌ちゃんが貴司の分まで食べていたから」
「OKOK」
 
「貴司汗掻いたままみたい。外は暗いし、着換えるといいよ」
 
と千里は言うが、千里に女のようになっている身体は見られたくない。でも遠慮するのも変なので、貴司は運転席の真後ろに行き、千里から見られないようにして服を脱いだ。
 
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すると身体が男に戻っている!
 
これってもしかして千里と会うと男に戻って、千里から離れると女になるの!?
 

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運転しながら唐突に千里が言った。
 
「あれ?貴司もしかしてブラジャーしてる?」
 
嘘!?この角度で見えるのか?
 
「あ、うん。してると身体が引き締められる感じでいいんだよ」
「まあいいよ。阿倍子さんのブラじゃないのね?」
「他の人のブラを着ける趣味は無いよ!」
「私のブラは着けてるくせに」
「うっ・・・」
 
「まあ阿倍子さんのでなければいいや。自分で買ったの?」
「うん。スポーツブラの方がいいみたいだから、スポーツ用品店で買った」
「へー。まあ自分で買うには無害だからいいよ」
「うん」
 
「でも貴司、何サイズのブラつけてんの?」
「えっと・・・C100かな」
「すごーい!そんなサイズのが存在するんだ?。貴司、私のブラサイズは知っているよね?」
「え?D70だよね?」
「おぉ、さすがいつも私のブラをくすねているだけのことはある」
「えっと・・・」
「阿倍子さんのサイズは?」
「え?」
貴司は考えてみたが、そもそも阿倍子の下着姿なども見たことがない。
 
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「ごめーん。分からないや」
「彼女のブラはくすねてないの?」
「そんなことしないよ!」
「ふーん・・・」
 
千里はその答えを聞いて少し楽しい気分だった。
 

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千里は寝ておくといいと言っていたのだが、貴司は結局市川に着くまでの間、ずっと千里とおしゃべりをしていた。
 
市川ラボでは
「外は寒いから体育館で見学するか、僕の居室で待ってて」
と言うと
「じゃ居室で待っている」
ということだった。
 
それで千里を居室に置いて体育館のある2階に登ろうとしたら、唐突に身体が女体化する。
 
うっ・・・。
 
結局慌ててトイレ(むろん女子トイレ)に飛び込み、スポーツブラを着けた。
 
この市川ラボでは貴司は女子選手ということになっているので、男子トイレを使おうとすると叱られる。そもそも男子トイレは個室が1つしか無いので、個室でしかおしっこできない貴司は女子トイレを使った方が合理的でもある。
 
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なおこの日貴司は練習中はずっと女体だったが、練習が終わり、居室に戻ると男の身体になっていた。千里が
「お疲れ様」
と言って笑顔で迎えてくれるのでドキッとする。
 
千里はベッドで仮眠していたようである。
 
貴司はシャワーを浴び、着換えてから、ベッドに並んで座りおしゃべりをする。千里はけっこう貴司に触ってくる。しかし千里は絶対に貴司を逝かせてくれないし、それどころかなぜか勃起もしないので、また悶々とすることになる。勃起しないので千里は「あれ〜。このくらいでは気持ち良くない?」などと言って、かなり激しく触る。おかげで脳の血管が切れそうな気分になる。
 
(勃起しないのは、理歌と玲羅が掛けた呪いによる)
 
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結局悶々としたまま3時頃に疲れ果てて眠ったが、起きたら千里が添い寝してくれていたので、感激した。
 
千里は冷蔵庫に入っている食材で朝御飯を作ってくれたので一緒に食べる。そしてまたA4 Avantで大阪まで送ってもらった。千里が「まだ寝不足の筈だから寝ていた方がいい」というので、帰りの車の中では貴司はずっと寝ていた。
 
貴司の身体は千里の車に乗っていた間はずっと男のままだったが、千里が会社の近くでおろしてくれ、その車を見送って、その姿が小さくなり、見えなくなった頃、貴司はまた女体に戻った。貴司はため息をついて会社の(男子)トイレの個室でスポーツブラを着けた。
 
こうして婚約破棄後2度目のデートは終了した。次のデート予定は2月17日である。
 
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娘たちの振り返るといるよ(16)

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