広告:プリティフェイス 3 (ジャンプコミックス)
[携帯Top] [文字サイズ]

■娘たちの振り返るといるよ(13)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

(C)Eriko Kawaguchi 2018-10-20
 
夕方、貴司を起こして服を着させ、広島駅まで一緒に行き、甘地に行くのを見送った。千里自身は常総ラボに移動してもらっていた《てんちゃん》と位置交換をしてもらい、この日は夜遅くまで《すーちゃん》に返球係やパスの相手をしてもらって自主練習をした。
 
「3日やってないと、なまってるな」
と千里は呟くが
 
「まあ忙しすぎたね」
と《すーちゃん》は言っていた。
 
千里は貴司が市川での練習を終えた頃、0時頃に常総での練習を終え、広島のホテルに戻してもらった。シャワーを浴びてぐっすりと眠った。
 

↓ ↑ Bottom Top

27日のお昼は鯛飯、28日のお昼はトンカツを食べた。この2日間はいづれも18時前に試合が終わったので、貴司はいつもの連絡で移動した。
 
そして貴司が市川で練習している間、千里は《てんちゃん》との入れ替わりで常総ラボで練習したので、《てんちゃん》はその間、夕方から夜中までホテルのベッドですやすやと眠っていた。
 
なお、貴司は毎日、姫路に向かう途中で女のような身体になり、広島に戻る途中で男の身体に戻っていた。そして男の身体で日中千里と過ごしていると千里はわざわざ、自分の身体をくっつけたり、貴司のあそこ付近に触ってみたり人目が無い時は抱き合ってキスしたりする。おかげで貴司はあそこが立ってしまうのだが、千里は絶対に逝かせてくれず、ひたすら生殺しである。貴司は脳内の血圧があがって、このままスイートデスしそうという気さえした。
 
↓ ↑ Bottom Top

実際には《こうちゃん》は自分たちの《いたづら》が千里にバレないようにするためもあるが、それより彼はマゾヒストなので、貴司が苦しむように、わざと男性器を戻していたのである。一方、千里は貴司を“再略奪”するため沢山ボディタッチをしたりして誘惑する。それで貴司は自分の性欲に苦しむハメになっていた。
 

↓ ↑ Bottom Top

広島での最終日29日の朝、甘地から戻ってきた貴司と一緒にマクドナルドで朝御飯を食べた時、千里は尋ねた。
 
「だけどさ、貴司なんで千里(せんり)から毎日AUDIで市川町まで往復してんの?」
「え?なんでって?」
 
「ちょっと計算してみたけど」
と言って千里は計算した紙を見せる。
 
「千里(せんり)のマンションから甘地まで往復160kmだから夜間でライトも使うし燃費10km/Lとするとガソリンを16L使う。今ハイオクはリッター160円くらいだから2560円。これに高速代が往復2160円で合計4720円」
 
千里にしては、しっかり計算しているなと貴司は思った。
 
(実は《きーちゃん》が計算して千里の筆跡で書いてくれたもの。《びゃくちゃん》以外の女性眷属は全員千里の筆跡が使える)
 
↓ ↑ Bottom Top

「一方ね」
と言って千里は別の紙を見せる。
 
「うん」
 
「(練習場のある)桃山台を18:40に出る北急(きたきゅう)に乗ると、大阪から姫路まで新快速で移動して播但線に乗り継いで、甘地駅に20:53に到着する」
 
「新快速!?」
 
「貴司、新幹線に乗る発想しか無かったでしょ?」
 
(実は千里もそうである。《きーちゃん》に指摘されるまで千里も気付かなかった。実は車で通うことを唆した《びゃくちゃん》も気付かなかったと言って謝っていた)
 
「新快速でそんなに早く着くの?」
「新幹線なら1時間43分、新快速なら2時間13分。新幹線なら3860円、新快速なら2230円」
「いや、桃山台−梅田間は通勤用の定期券が使えるから、この340円が要らない。1890円でいける」
 
↓ ↑ Bottom Top


「じゃそれで。しかも列車の中で寝て行ける」
「確かに。僕が移動する時間帯なら座れる確率は結構高いし、僕は立ったままでも眠れるよ」
 
「それ都会に住む人の基本能力だよね。帰りはそのまま市川ラボで泊まって、6:01の播但線に乗って姫路から新快速で大阪に来て、地下鉄に乗り継げば心斎橋到着は7:58」
 
「凄い」
 
「車で往復すれば4720円の所を鉄道を使えば3780円。約1000円安い。貴司、車で通うのやめて、電車にしなよ。その方が安いし、乗っている間は寝ていられるのが大きいよ。それに私、練習で疲れているのに運転して事故でも起こしたらと思うと心配」
 
千里が本気で心配しているのを見て貴司は感動した。そして言った。
 
「そうしようかな・・・」
 
↓ ↑ Bottom Top

しかし貴司は気付いた。
 
「でも待って。それだと僕、マンションに全く帰られないんだけど!?」
「週末は練習お休みなんだから、その時、マンションには帰ればいいね」
「あははは」
「洗濯物は市川ラボに置いてある洗濯機・乾燥機で洗えばいいよ」
 
「置いてあった!」
「ではそれで」
 

↓ ↑ Bottom Top

この日、ふたりでウィンターカップの男子決勝を見たあと帰ることにする。この日はお昼で大会は終わったので、ふたりで一緒に宮島に行くことにした。
 
広島グリーンアリーナそばの紙屋町西で広電に乗り、そのままのんびりと1時間ほどの行程で宮島口まで行く。広電はほんとにのんびりと走るので急ぐ人はJRに乗り換えた方がいいのだが、この日ふたりはゆっくりと沿線の風景を楽しんだ。
 
宮島に渡って一緒に厳島神社に参拝した。
 
「千里は何お願いしたの?」
「貴司がさっさと阿倍子さんと別れて私に再プロポーズしてくれますように」
「うっ・・・」
「貴司は?」
「オールジャパンに行けますように」
「まあ貴司としては上出来だね」
 
↓ ↑ Bottom Top


帰り道はもみじ饅頭を売っているお店が大量に並んでいる界隈を通る。
 
「お土産のもみじ饅頭どうしようか?今買っても硬くなっちゃうし」
「仕事始めは何日だっけ?」
「暦通りなら4日なんだけど、4日に出たら即5−6日が休みでしょ?社長がいっそその日も休みにしようよと言ったから、うちの会社は7日始まり」
 
「いい社長さんだ」
「だから今日買ってもけっこう日数が経っちゃうんだよね」
 
「私が広島の友だちに頼んで、7日に到着するように会社宛に送ってもらうよ」
「わあ。だったらそうしてもらおうかな」
「うん。何個必要?」
「会社に20個入りを3個、チームに1個かな」
「余裕を見て、4個・2個にする?」
「そうだね」
 
↓ ↑ Bottom Top

それで千里に1万円札を渡しておいた。
 

島内でけっこうゆっくりと時間を過ごした後、宮島口に戻って食事処で早めの晩御飯を食べたが、千里は2009年に日食を見に行った時、この近くの料亭で「私は男です」と主張する仲居さんと楽しく会話をしたなぁと思い出していた。
 
ところがこのお店で頼んだ牡蠣御膳を運んで来たのがその時の仲居さんだったので仰天する。
 
「あ!男だと主張した人だ」
「あら、あなたも40歳の男だと言ってた人だ」
 
ふたりは思わず握手した。
 
貴司が、なんだなんだ?という感じで戸惑っている。
 
「相変わらず毎日オナニーしてますか?」
と千里が訊くと
 
「当然です。朝立ちしますから、そのままオナニーします。あなたは男のまま?」
と元仲居さん。
 
↓ ↑ Bottom Top

「それが性転換手術したので女になってしまいました」
と千里。
「ああ、あなたは女になった方がいいと思ってましたよ」
 
「ちんちん無くなっちゃったのが寂しいですけどね。立ちションしようとして、あっ無い!と思います」
 
貴司は困惑したような顔をしている。
 

↓ ↑ Bottom Top

「ちんちんはあると便利ですから」
と仲居さん。
 
「でもそれでこの人とレスビアン婚したんです」
と千里は言う。
 
「へ?そちらは女性?」
「そうなんですよ。男装好きでまるで男みたいな格好してますけど、ちんちんはありませんから」
などと千里が言うので貴司は額に手をやって悩んでいる。
 
「でも結婚したんですか?おめでとうございます。そういえばお揃いの指輪してますね。でもそれ、金じゃないみたい」
「よく分かりますね。ステンレスなんですよ」
 
「面白い素材だ」
 
「丈夫で腐食にも強いのがいい点なんですけどね〜。ただし凄く硬いからサイズ直しは不可能だし、太って外れなくなったら指を切断するか1500度の高温で融かすか以外、外す方法が無い」
 
↓ ↑ Bottom Top

「それは怖い。ファンタジーとかには離婚できないように、填めると身体と一体化してしまう指輪とか出てきますけどね」
「ああ。浮気防止にはいいですね」
 
などと千里が言っているので、貴司は嫌そうな顔をしている。
 
「そうだ。プレゼントあげますよ」
と言って、彼女はシャモジを持って来てくれた。これも宮島名物である。
 
「わぁ、ありがとうございます」
「あの時は私も楽しかったですから」
と彼女は笑顔で言っていた。
 

↓ ↑ Bottom Top

JR宮島口駅で、千里は東京まで、貴司は甘地までの切符を買う。それで広島方面の電車に乗り、千里が2009年の時の出来事を話すと貴司は大笑いしていた。
 
http://femine.net/j.pl/college/45/_hr011
 
なお、雨宮先生・上島先生の素性は貴司にも明かしていない。単に女装好きの中年男性とそのお友だちの普通の男性とだけ言った。貴司はその2人は愛人関係なのだろうと想像したようである。
 
姫路駅で貴司だけ降りるので、座席で10秒くらいキスして別れた。貴司は千里の乗る新幹線が発車するのを見送ってくれたが、その新幹線が見えなくなったころ、貴司はまた女のような身体に戻ってしまい、ため息をつくことになる。
 
↓ ↑ Bottom Top

貴司の男性器はこの後、1月下旬に千里と会うまで消滅したままだった。
 

一方千里は東京までは行かず、新大阪で途中下車して、いったん千里(せんり)のマンションに行った。お肉などの食材をたくさん買ってきて、カレーやシチューを作る。お米も切れていたので再度行って買ってきてライサーに入れた。
 
お肉はカレー・シチューに使った以外は使いやすい量単位でまとめ日付を書いて冷凍する。そしてカレー・シチューが冷めるまでの間に掃除と洗濯をした。
 
「しかしここには阿倍子さんの痕跡が全く無いな」
と千里は呟いた。
 
実際問題として阿倍子は貴司からこのマンションの鍵を1個預かってはいるものの、まだ1度もこのマンションを訪れたことがない。貴司と阿倍子は実際には阿倍子の家(神戸市)でしか会っていないのである。
 
↓ ↑ Bottom Top

ある程度の掃除が終わった後は、自分でも御飯を食べ、シチューとカレーをジップロックに入れて日付を書き冷凍した。
 
そしてマンションのベッドでぐっすりと寝た!
 

↓ ↑ Bottom Top

翌日は爽快に目が覚めたので、朝御飯を食べ、ベッドに布団乾燥機を掛け、乾燥の終わった洗濯物をタンスにしまい、また常総ラボに居る《てんちゃん》と位置交換してもらい、午前中たっぷりと汗を流した。《てんちゃん》は昨日千里が広島から新大阪まで来た切符の残り区間を使って東京に戻る。
 
千里本人は練習が終わった後は、常総ラボで常備している食糧でお昼を食べてから、ZZR-1400に跨がって葛西に帰還した。
 
午後は仮眠していたのだが、夕方、黒いイブニングドレスを着、濃厚メイクした上で、タクシーに乗り、東京の新国立劇場(渋谷区だが新宿駅から歩いて20分くらいの距離である。実際には京王の初台駅の近く)まで行った。招待状を見せて中に入る。
 
↓ ↑ Bottom Top

この日は歌謡界で最も大きな賞であるRC大賞の授賞式が行われることになっていた。千里は名目上は堂本正登『七日半ライダー』(金賞)の作曲者としてここに招かれていて、同じテーブルに堂本および彼の事務所社長が来ているので彼らと握手して言葉を交わした。
 
しかし実は今年、千里は東郷誠一名義で書いた春川典子『ふたりの七夕』がRC大賞を受賞している。
 
正確にはこのCDは『竿灯祭りの夜/ふたりの七夕』の両A面で『竿灯祭りの夜』は東堂千一夜先生の作品、『ふたりの七夕』が東郷誠一名義である。東郷先生はこの手の賞の常連だが、春川典子にとっても東堂先生にとっても久しぶりのヒット曲であった。
 

↓ ↑ Bottom Top

春川は超豪華な振袖を着ていたが、東郷先生は千里に声を掛けて
 
「こちらの醍醐春海君が、本当の『ふたりの七夕』の作曲者だから」
と言って、春川典子と千里を握手させた。
 
「実は去年の金賞受賞曲・山村星歌の『みずいろの片思い』も彼女の作品」
 
と東郷先生は堂々と言うので、春川は感心していたが、傍に居る東堂先生は少々呆れている感じではあった。東郷先生は自分がゴーストライターを多数使っていることを全く隠す気が無い。
 
やがてON AIRのランプが付き、授賞式が行われるが、堂本の歌唱中にはハートライダーのドラマのシーンがずっと映っていた。その中に千里が特製のMD90/110改に乗って北海道の雪原を走るシーンも一瞬入っており、思わず笑みが漏れた。
 
↓ ↑ Bottom Top

(実際の横須賀−網走往復の敢行後、雨宮先生から『あんたが生きて帰ってきたから、映像公開するから』と言われ、再度北海道に(飛行機で)渡って撮影した時の映像である。ハートライダーの実際の出演者で撮影する予定だったが、北海道の雪上を走る自信のある出演者がいなかったので、結局千里が走らせ、その映像をテレビで見た少女Y(桜木八雲)が千里に連絡してきて、千里はそのバイクを彼女に譲ることになった)
 

↓ ↑ Bottom Top

↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 
娘たちの振り返るといるよ(13)

広告:性転換―53歳で女性になった大学教授-文春文庫-ディアドラ・N-マクロスキー