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■娘たちの振り返るといるよ(2)

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「ふつうただの見学者はこんな服着ないから、張り切ってこんな服を着てきたのは当然参加者だろうと思われたんだね」
と桐絵。
 
「ど、どうしよう?」
と言って龍虎は焦るが
 
「まあ、龍の実力なら最初の対戦で簡単に負けるだろうから、その後は適当に見学していればいいよ」
と彩佳は言う。
 
「あ、そうだよね。そういうことにしよう」
と龍虎はホッとして言った。
 
なお、龍虎が“女物の和服”を着ていることについては、もう今更なので、彩佳も桐絵も突っ込まない。
 

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やがて彩佳のポケベルにも龍虎のポケベルにも番号が出る。いよいよ大会が始まるようである。桐絵は「彩佳のを見るね」と言うので、龍虎も「そうして。ボクはたぶん1分で負けるし」と言って、自分の番号のテーブルに行った。
 
龍虎がその番号のテーブルの椅子に座っていると、中学生くらいの男子が来た。学生服を着ている。わぁ、強そう。これは本当に1分投了コースだな、と龍虎は思った。
 
「僕が握っていい?」
と相手が訊くので
「よろしくお願いします」
と言う。“握り”は、囲碁自体もしないまま、それで随分彩佳・桐絵・宏恵あたりとやっていたので、やり方は分かる。
 
彼が白石の碁笥に手を入れ、石を握る。
 
それで龍虎は黒石を1個置いた。
 
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これは握った白石の数が偶数か奇数かで先行・後攻を決めるのである。黒石を1個置いたのは、龍虎が石の数を奇数だと予想したことになる。
 
それで彼が石を数えてみると白石は9個だった。それで龍虎が先手となるので黒石の碁笥を取り、中学生が白石の碁笥を取った。
 

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「ではよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
と挨拶して打ち始める。
 
最初龍虎はごく普通に右上隅、17四の小目に打とうと思った。
 
ところがここで龍虎は小目に打とうとして、石を落としてしまった。
 
うっ・・・
 
その石は右上隅16四の星の所に落ちる。
 
むろん・・・囲碁ではいったん置いた石を移動させるのは反則。即負けである。
 
仕方ないので放置して時計を押す。
 
この大会は「1人30秒以内の早打ち」ルールになっている。
 
すると、龍虎の“初手星”を見て、相手の中学生は腕を組んで考えるようにした。普通小学生程度の子であれば、初手はたいてい小目に打つ。それが星に打つということは、こいつは凄い上級者なのでは?とどうも相手は思ってしまった気もした。
 
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30秒ぎりぎりくらいに、相手は反対側の小目に白石を打った。そして時計を押す。
 
龍虎は考えても仕方ないので右手前の星に黒石を打ち、時計を押した。相手はかなり悩んでから時間制限ギリギリに自分の右手前(龍虎からは左上)の小目に白石を打った。
 

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対局は“考えても仕方ない”と思っている龍虎が即打ち、相手の中学生は時間ギリギリまで考えて打つというのを続ける。正直、龍虎は目の前の碁盤に並ぶ石の全体の状況がどうなっているのか、さっぱり分からない。単にローカルな石の並びに適用できる定石を思い出しながら打っているだけである。しかし、ちゃんと定石で打ってくることで相手はこちらを初心者ではないと考え、警戒している気もする。
 
そして7分ほど経った頃、男子中学生はかなり考えてから白石を持ち、打とうとしてから一瞬迷った。ところがその迷った間に時計が30秒経ったことを示すアラームが鳴ってしまう。
 
「しまった」
と中学生は言い、次の瞬間
 
「負けました」
と言って頭を下げた。
 
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龍虎も頭を下げた。そしてお互いに「ありがとうございました」と言い合った。中学生は肩を落として席を立った。
 
「勝っちゃったよ。嘘みたい」
と龍虎は呟き、取り敢えず勝ったことを報告するために本部に向かった。
 

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約8分後、龍虎は新たな対局場所を指定され、そのテーブルに行く。
 
それで座って待っていたのだが・・・
 
相手が来ない!
 
これどうしたらいいの〜〜!?
 
龍虎は席に座ったまま手を挙げた。
 
スタッフの人と思われる和服を着た男性が寄ってきた。
 
「どうしました?」
「相手が来ないのですが」
「おや。えっと何分経ったかな?」
と言って時計を見ている。
 
「既に5分経っているね。では君の不戦勝」
「不戦・・・」
 
「一緒に本部に行って報告しよう」
「はい」
 
そういう訳で龍虎は2回戦は不戦勝になってしまったのである。
 
(後で聞くとお腹を壊してトイレに籠もっていたらしい)
 

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10分後、新たな対局の指示がある。そのテーブルに行くと、向こうは小学2-3年生という感じの女の子である。それが無表情な感じで、強そう〜と龍虎は思う。
 
「どうぞ、そちらが握って下さい」
と彼女は言った。向こうがどう見ても上段者だが、こちらが年上なので譲ったのだろう。
 
「では握りますね」
と龍虎は言って、白石を取る。彼女は黒石を2個置いた。白石を並べると6個だった。それで彼女が先手となる。彼女が黒石の碁笥を取り、龍虎が白石の碁笥を取って対局を始める。
 
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
 
それで彼女は黒石を取ると・・・
 
五の五に打った。
 
何〜〜〜〜!?
 
彼女が時計を押す。30秒がカウントされ始める。次は龍虎が打たなければならない。
 
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しかし・・・・
 
こんなの見たことないよ。これどう次打てばいいの〜?龍虎はどうしていいか分からなかった。時計はどんどん過ぎていく。その時脳内に声が響いた。
 
『天元に打て』
 
天元!?? それどうなる訳???
 
しかし時間が無い。龍虎は白石を持つと、時間ギリギリに天元に打ち、すぐに時計を押した。
 

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今回の対局では龍虎はどこに打てばいいのか、さっぱり分からなかった。どうにも考えるヒントが無いのである。見たことも無い手ばかりが続く。しかし相手の女の子はだいたい10-20秒ほど考えては次の手を打っていく。こちらは脳内に響く声に従って打っていく。
 
盤上の情勢は全く分からない!
 
ところが10分程打った所で、龍虎の手を見て相手の女の子は突然「えっ!?」と言った。
 
何?何?どうしたの??
 
そして彼女はいきなり頭を下げた。
 
「ありません」
 
うっそ〜〜!?
 
全く訳が分からないまま龍虎も頭を下げた。
 
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
と言い合う。
 
彼女は「失敗したぁ!」と言って、更に
 
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「ここの所、本当はハネないといけなかったですよね。うっかりノビてしまったから、緩すぎて、その後、こちらの集団が死んでしまった。でもここの所でお見合いにしてしまうって凄いですね。まさかそんな手があるとは思いませんでした」
 
などと言っている。
 
龍虎はさっぱり分からない!!
 
龍虎も何か言わなきゃいけない気がした。『最後の局面、6六から当てる手』という声がする。それで龍虎は言ってみる。
 
「でも最後の局面、まだここから当てる手がありましたよ」
「え!?」
と言って彼女はしばらく悩んでる。
 
「あ、それだと生きるかも」
「後で再度並べてみるといいかも」
「やってみます。そうか!まだ投了は早かったか!でも思いつかなかった」
 
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そういう訳でこの対局は彼女が勝手に暴走して勝手に投了してしまった様子であった。
 
改めて御礼を言い合って、龍虎は自分の勝利を本部に報告に言った。
 

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感想戦が長かったので、次の対局はほんの2分後であった。しかしここで残っているのが8人しか居ない。つまり次は準々決勝である。そして残りはトーナメント表が黒板に書かれた。それによると次の対戦相手は彩佳だった!その彩佳が驚いてこちらを見ている。ギャラリーの中にいる桐絵も驚いている。ボクもまさか準々決勝まで残るなんて、思いも寄らなかったよぉ。
 
指定されたテーブルに座る。彩佳は腕を組んでこちらを見てる。龍虎は
 
「そちらが握って下さい」
と言った。
 
「では握らせて頂きます」
と言って彩佳は白石を碁笥の中から握って取り出す。龍虎は黒石を2個置いた。白石は8個だった。
 
それで龍虎から打ち始める。
 
右上隅小目に打ち、彩佳は星で応じる。龍虎が左上隅小目に打ち、彩佳はやはり星で応じる。ごく標準的な布石で対局は始まった。
 
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龍虎は脳内に響く声に従って打っていく。彩佳はかなり時間を使って打っていく。準々決勝からは持ち時間が10分ある(使い切ったら30秒の早碁)ので、対局は彩佳が長考し、龍虎は即打つという繰り返しで進んでいった。
 
龍虎はよく分からないのだが、こちらの分が悪いような気がした。やがて15分ほど対局が進んだ所で脳内に響く声は言った。
 
『投了しようか』
『うん』
 
それで龍虎は頭を下げて言った。
 
「負けました」
 
周囲がざわっとした。彩佳は一瞬首を傾げたものの、お辞儀をした。
 
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
 
「でもどうして投了したの?」
と彩佳が訊く。
 
「この石はもう生きれない。それを取られたらもう挽回できない」
と龍虎は脳内に響く声の言う通りに言う。
 
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「ほんとに? 殺せるかどうか凄く微妙な気がしたけど」
「ちょっとやってみる?」
「うん」
 
それで彩佳と龍虎は投了の場面の先を少し打ってみる。
 
「ああ、本当だ。これは私の勝ちだ」
と彩佳は言っている。周囲のギャラリーもやっと納得したようである。
 
「でも凄い。龍、いったいいつの間にこんなに強くなったのの?」
「あははは」
 
ボクこの後、どうしよう?
 
『お前お小遣いで***という囲碁ソフトを買え。それで練習していたら、半年で今日実際に打ったくらいまでは強くなるぞ』
 
と脳内の声がした。
 
マジでこれは彩佳に怪しまれない内に、こっそり練習しなきゃ!
 
『あと千里が囲碁は強い。あいつに九子で打ってもらえ。かなり勉強になる』
 
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千里さんか。
 
でもそれは少しソフトで練習してからにしようかな。。。と龍虎は思った。
 

彩佳は結局この大会で準優勝であった。それで彩佳は主宰者から3級を認定されていた(優勝者は2級)が、龍虎もBEST8に残ったということで5級を認定された。
 
うっそー!?まだボク30級くらいだと思うのに。
 
しかし脳内に響く声は言った。
 
『いや、お前は既に10級くらいの実力はある。お前は勘が良いからあまり考えずに打ってもけっこう相手の急所を責めているんだよ』
 
へ〜〜!
 

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囲碁大会が終わったのは12時前である。それで結局、龍虎・彩佳・桐絵の3人は川南にお昼をおごってもらった。主として桐絵!の希望でココスに入る。
 
「でもマジで龍は凄く強かった。対局では結果的に私が勝ったけど、読みでは龍の方が上回っていた」
と彩佳は言った。
 
「なんかさっきは何かの魂がボクに乗り移っていたみたいなんだよ」
と龍虎は言った。
 
「まじ!?」
 
「だからあれは本当のボクの実力じゃないよ」
と龍虎。
 
「いや、そうかも知れん。いきなりあんなに進化するなんて考えられん」
と桐絵が言う。
 
「龍って、前から思っていたけど、巫女的な性格があるよね」
と桐絵。
「ああ、それは私も感じたことある」
と彩佳。
 
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「龍、将来巫女さんになる?」
「え?でも巫女さんって女の人がするんじゃないの?」
 
と龍虎が言うと桐絵と彩佳は顔を見合わせている。川南が笑っている。
 
「質問です。振袖を着るのは男ですか?女ですか?」
と桐絵が訊く。
「うーんと、振袖着るのは女の人では?」
と龍虎が言う。そして龍虎は遙か昔の記憶の中にある、青い振袖を着た実母(長野夕香)の姿を思い浮かべていた。
 
しかし彩佳が言った。
 
「つまり振袖を着ている龍は女の子なんだな」
 
龍虎は虚を突かれた。(なぜこの程度で虚を突かれるのかは作者にも理解不能である)
 
「あれ〜〜〜!?」
 

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龍虎たちがココスでお昼を食べていた頃、その建物の陰でコートを着て襟を立て、シルクハットをかぶってサングラスをし、マスクをするという、見ただけで通報したくなるような人物が頷くような仕草を度々していた。
 
「龍虎、あの時本来死ぬはずだったのが、神様の気まぐれで45年だけ寿命が延長された。俺はせいぜいお前が52歳前には死んだりしないように見守っておいてやるからな。いつでも振り返れば俺がいることを忘れるなよ」
 
そう怪しげな人物は呟いていた。
 
もっともその人物は
「あいつ男にするにはもったいない美貌だから、女の子に改造して俺の子供を産ませたいなあ」
 
などと危ないことも呟いていた。
 
龍虎の男性器は風前の灯火である。
 
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食事が終わった後は、桐絵と彩佳も東京に出たいということだったので、試合が行われる大田区総合体育館まで全員行った。そこで夏恋と合流するが、桐絵と彩佳は会場近くの梅屋敷駅から京急で品川に出て、あとは山手線で移動したようである。帰りも体育館まで来てもらうことにし、交通費にと言って、川南はふたりに千円札を1枚ずつ渡してあげた(このあたりの軍資金も千里が提供している)。
 

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娘たちの振り返るといるよ(2)

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