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■娘たちの振り返るといるよ(4)

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貴司はその日の内に市川に行ってみることにした。
 
千里(せんり)の自宅に戻った後、21時頃まで仮眠してからAUDI A4 Avantに乗って千里ICから中央環状線に乗り、中国豊中ICで中国道に移る。そして福崎から播但連絡道に行って、市川南で降り、地図を書いてもらった体育館に到着したのは、22時すぎであった。
 
音は聞こえないが灯りはついている。それで貴司は玄関を入り、階段を登って2階に行く。そしてフロアの入口のドア(気密ドアになっている)を開けた。
 
「ニーハオ」
と近くに居た人が声を掛けてきたので、貴司は
 
「あ、えっと・・・ニイハオ」
と片言の中国語で応じる。
 
「ああ、あんた日本人?」
「はい。あのぉ。女装ビーツの白鳥さんから紹介状を書いて頂いたのですが」
と言って、彼女が書いてくれた巻物!?を渡す。
 
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「へー。君もバスケットやるの?」
「はい」
「今フリー?」
 
「いえ。大阪の実業団のMM化学という所に所属しているのですが、もしよろしかったらこちらの練習にも参加させてもらえないかと」
 
「君、日本代表なの?僕らで相手になるかな」
と別の人が来て白鳥さんの手紙を見ながら言う。
 
「まあ、どのくらいの実力か試してみればいいね」
と年長っぽく、ひとりだけ別の色のユニフォームを付けている人が言った。この人が監督らしかった。
 

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そこには監督以外に8人の選手がいた。貴司はその中の4番を付けている人と最初に手合わせした。
 
全くかなわなかった。
 
この人強ぇ〜〜〜!
 
次に5番を付けている人とやる。4番の人と顔が似ているので兄弟かなと思った。
 
勝てない!
 
6番を付けている女性、7番を付けている女性とやるが彼女たちを全く抜けない。女性でこんなに強いって・・・明らかに千里より強い。つまり日本代表以上じゃん!
 
8番、9番を付けた男性とやる。8番の人には全く勝てなかったが、9番の人には何とか2回勝てた。それでも2勝4敗である。10番を付けた男性が出てくる。彼には何とか4勝2敗になった。
 
「ふむ。清川より下、万奈より上か。だったら、君が新しい10番」
と監督が言った。
 
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「へ?」
「万奈は11番に変更。11番の青池は12番に変更」
 
「OK」
と言って10番を付けていた男性が自分のユニフォームを脱いで貴司に渡した。
 
「ありがとうございます」
 
それで11番を付けていた青池と呼ばれた女性?が自分の着ていたユニフォームを脱いで万奈さんに渡す。そして青池さんは倉庫に行って12番のユニフォームを持って来て着た。
 
「これで我が市川ドラゴンズは9名となった」
と4番を付けた南田歓喜(なんだかんき)さんという人が言った。5番の人はその人の弟で南田鵜波(なんだうぱ)さんらしい。どちらも変わった名前だなと貴司は思った。
 
「ちなみに君が青池にも勝てなかったら不合格だった」
などと監督が言っている。
 
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「まあ思っていたよりは少し強いね」
とその青池さん。この人は一見女性に見えたのだが、話し方が中性的である。男性と思えば男性にも見える。声も女性の声に聞こえるのだが、男性の声と思えば男性の声に聞こえなくもない。
 
「うちは12人になるまでは受け入れる。それを越えたら一番弱い人がマネージャーに降格」
 
ひぇ〜〜〜!
 
「日々の勝負で順位はどんどん入れ替わるから、細川君も4番の番号を取れるように頑張ること」
 
「分かりました!」
 
「ところで君、男性だっけ?女性だっけ?」
と監督が尋ねた。
 
「えっと・・・」
と貴司がどう答えるか考えていたら、青池さんが貴司の身体の胸部分とお股に触った。
 
「おっぱいある。ちんちん無い」
「じゃ女性か」
「現在一時的にそうなっているかも」
「その内男になるの?」
「なりたいです」
 
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「でもまあ今は女だったら、ウォーミングアップのジョギングは5kmでいいよ」
「5km?」
「男性には30kmを課している」
 
うっそー!?
 
「まあ時々30kmのジョギングでダウンして練習できないままリタイアしてしまう人もいる」
「あはは」
「君、女でよかったね。まださすがに5kmでリタイアした人はいない」
 
「頑張ります」
 
無茶苦茶ハードじゃんと貴司は思ったが、それだけ鍛えられるということかも知れないと思い直す。5kmくらいは何とかなるだろう。さすがに30km走った後のバスケ練習は無茶な気がするけど!(そもそも30km走る自信が無い!)
 
なお貴司が全くかなわなかった2人の女性は前橋さんと七瀬さん、8番の男性は九重さんといった。
 
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こうして、貴司の市川町通いは始まったのであった。
 

この時期、MM化学のバスケ部員は15時で仕事を免除になり、だいたい15時半から18時半まで練習していたので、貴司はそのあと自宅に戻り、1時間仮眠して20時頃に家を出て市川に向かった。この時間だとラッシュに掛からないので1時間で到達できる。そして着いたらまずはジョギングをした。
 
この日々のジョギング(町のメインストリート往復)には、前橋・七瀬・青池の3人が付き合ってくれた。青池さんは一応女性扱いのようである。
 
練習はだいたい(約30分のジョギングの後小休憩して)22時から始まり0時すぎに終了したが、貴司はA4 Avantの車内で1-2時間仮眠してから帰っていたので、千里(せんり)に辿り着くのはだいたい午前3-4時になった。それから3-4時間睡眠を取って7時半頃に会社に出るのである。
 
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(結局合計では6時間ほど寝ている計算になる)
 
しかし30kmのジョギングってどんなに頑張っても3時間は掛かりそうな気がする。それなら男性メンバーは18時頃から練習開始しているのだろうか?つまり会社が終わってすぐジョギングを始めるのかも知れない。
 

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ところで、この生活パターンでは、貴司は阿倍子と会う時間がほぼ無い!
 
びゃくちゃん(白鳥)・こうちゃん(市川ドラゴンズの監督!)の主たる目的はそちらなのだが、貴司本人としても、阿倍子とデートすれば自分に男性器が無いことがバレそうなので、あまり顔を合わせたくない気分だったのである。
 

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2012年10月9日、
 
千里は裁判所からの通知を受け取った。
 
《申立人の性別の取り扱いを男から女に変更する》
 
それを見て、千里は涙を流し、その通知書を胸に抱きしめた。
 
「千里、何かあったの?」
と桃香が訊くので、通知書を見せる。
 
「おお!とうとう千里もちゃんと女になったな。よし祝杯をあげよう」
「そうだね」
「みんなも呼んでパーティーを」
「やめて〜〜〜!」
 
と千里は言ったものの、桃香が大学の友人たちに電話を掛けて、みんな食糧持参で集まってきてくれた。
 
同じ数物科の岡原朱音、水上玲奈、田代真帆、山崎友紀、春日美緒、紙屋清紀(女装)、生物科の田崎香奈、苫篠優子、三村聡美、中森亜矢、佐伯由梨亜。
 
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要するにいつもの“女子会”のメンツである!
 
2DKのアパートにこの人数で集まるとかなり狭いのだが、それでもここでお祝い会をしようということになったのは《飲み過ぎてダウンしてもいい》ようにするためである。
 

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ケチな桃香が清紀に「お金出すから」と言って一番絞りを1箱(24缶)買ってきてもらったのだが、実際には清紀は2箱買ってきた。
 
「1箱は私のおごりね〜」
と美緒が言っていた。
 
更に友紀がサントリーの角瓶、優子が月桂冠1.8Lを持ち込んでいる。
 
最初朱音が音頭を取ってビールで乾杯し、牛肉と豚肉にホルモンまで入れて5kgほどお肉を買ってきてもらったものをホットプレートでどんどん焼く。
 
「よし。次は清紀が性転換する番だ」
「僕は別に女の子にはなりたくない」
「そう言ってますが、どうする美緒?」
「やはり今夜お酒でダウンした所を寝ている内に病院に運び込んで、切ってしまえばよい」
「よし。それでは今夜は清紀が男である最後の夜だな」
「勘弁して〜」
「明日からはもう立ちションできなくなるから、今夜の内に満喫しておくように」
 
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最初の内はみんなで千里、次いで清紀をからかっていたものの、次第に混沌とした世界になり、このところ大学院の入試代わりのレポート作成で睡眠不足の桃香が最初にダウン。お酒に弱い由梨亜がダウン。3番目にダウンしたのが清紀で
 
「万が一にも性転換されないようにずっと起きてると言ってたくせに」
「ほんとに病院に運び込んで性転換したろか?」
「切り取ったちんちんもここで焼肉にして食べちゃおう」
 
などと言われていた。
 
「手術代金は?」
「本人のクレカで払っておけばいい」
「来月の請求書見て仰天するかな?」
「リボ払いにしておけばいいよ」
「それって払い終わるのは20年後だったりして」
 

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この日最後まで起きていたのは千里と美緒で(この2人は異常にお酒に強い)、美緒はみんなが寝ているのを見て、昨日貴司がここに来たことを語った。
 
「あいつ来たの?」
「千里がショックで将来を見失って取り敢えず大学院に進学することにしたと言ったら、向こうもかなりショックを受けていたみたいだった」
「・・・」
「だからさ、これはまだ脈がある。あの男、まだ千里のことが好きだと見た。千里頑張りなよ。まだ取り返せるよ」
 
「・・・・・」
 
「昨日来たのも、千里とセックスしたかったのかもね」
「まさか?」
「だって別れた女とのセックスって、後腐れ無くていいじゃん」
「そういうもん?」
 
「私は別れた男から誘われたら即OKするが」
「うーん。。。そういう発想は無かった」
 
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「男ってそういうもんじゃない?」
「いや、美緒の発想はあいつの発想と似ている気がする」
「千里も清紀とセックスすればいいのに。私は別に気にしないよ」
 
「いや、あの子はちんちん無い子には興味ないはず」
「そうなんだよね〜。だから自由にしていいって言うのにしてくれないんだもん」
 
その後、美緒は自分をダシにしながら千里の心をメンテするかのように、色々千里の心の中に溜まっているものを吐き出させ、千里は涙を流しながら色々なことを語った。
 
「お土産をリクエストしてきたの?図々しい奴だ!」
と千里はアジアカップの時に貴司の求めに応じて色々差し入れしたことを聞いて呆れるように言った。
 
この日は千里が主たる語り手で、美緒は概ね聞き手に徹してくれた。彼女は最初に「まだ取り返せる」と言った他は、何もアドバイスはしなかったものの、この夜の美緒との3時間ほどにわたる会話で千里は随分気持ちが楽になった気がした。そしてまた活力が湧いてくる気分だった。
 
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10月13-14日。
 
貴司は今週毎日通っていた市川ドラゴンズでの練習のお陰でプレイがかなり進化しており、その貴司の活躍でMM化学は順位決定戦で5位になり、来年2月に金沢市で行われる全日本実業団選手権に進出した。
 
「細川、凄い進化。何があったの?」
と藤元主将から言われた。
 
「実はMM化学の練習が終わった後、個人的に夜中まで練習してるんですよ。ジョギングも毎日5kmやってるし」
「凄いな」
 
「ところでお薬とかやってないよね?」
と藤元が小さい声で訊いた。
 
貴司はビクッとしたが、キャプテンが言っているのがホルモン剤ではなく興奮剤の類いのことを言っているのにすぐ気付く。
 
「そんなのやってませんよ〜。まだ人間やめたくないから」
「だったらいいけど」
 
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人間はやめてないけど、男はやめさせられてしまっている気がするなあと思う。
 
「彼女との仲は良好?」
「あ、はい」
と言って焦る。実はもう半月以上阿倍子と会ってないのである。
 
「吉子がさ、今度4人で食事でもしようよと言っていたよ」
 
あ・・・。藤元さんが言う“彼女”って千里のことか!
 
藤元主将の奥さんは、千里の従姉なのである。たぶん奥さんは自分が千里と婚約解消したことを知らないんだ。
 
「そうですね。少し落ち着いてから」
と貴司は答えておいた。
 
 
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