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■娘たちの悪だくみ(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-10-21
 
2013年1月30日、元アイドル歌手の花村唯香が国内の病院で性転換手術を受け、本当の女の子に生まれ変わった。
 
彼女は1992年9月生まれ、つまり千里や桃香たちの2つ下の学年で、性別を隠したまま(本人の弁では訊かれなかったから答えなかっただけ)女の子アイドルとしてデビューしたものの、そんなに売れていた訳ではなかった。
 
ところが2011年秋に「花村唯花は男である」という怪文書が出回り、その件では唯花のライバルとみなされていた歌手のマネージャーが仕組んだことと分かって、そのマネージャーは芸能界から永久追放された。
 
「良かったですね。男だなんてガセネタだということが分かって」
と記者に訊かれた唯花は
 
「え?私男ですけど」
と答えて、この爆弾発言でテレビのワイドショーなどは騒然となる。
 
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それで逆に話題になって彼女の曲が売れに売れる事態となったのだが、さすがにもう女の子アイドルとして売る訳にはいかなくなった。それでその後は彼女にゆかりがあった、スイート・ヴァニラズがプロデュースして、ついでに誤魔化していた年齢も正しいものに訂正した上で、男の娘ポップス歌手に転向したのである。結果的にはセクマイのファンが増えたことで、女の子アイドル時代より売れるようになってしまった。
 
「女装歌手でやっていきたいのか?それとも本当に女になりたいのか?」
と訊かれた彼女は
「できたらちゃんと身体を直して女の子になりたいです」
と答えた。
 
それで、どうせ手術するなら早い方がいいということになり、手術を受けることにしたのである。性転換手術後は6月まで静養のため休業する。
 
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でも恐ろしいことに7-8月にはアルバムの制作と全国ツアーが組まれている!
 
青葉は冬子を通して、彼女の身体のヒーリングを頼まれていた。彼女とは手術前にも何度か面会したが
 
「この業界は話題になっている内にできるだけ売っちゃえという感じだからなかなか怖い」
などと冬子が言っていた。
 
「もう魔法の杖を一振りしたら、女の子になれるとかなら、いいんだけど」
と唯香。
 
「私もそうだったらいいのにってよく思いましたよ。物凄い痛みに耐えないといけないですから」
冬子。
「体験者の話を聞く度に憂鬱になります。結構長時間の手術だし」
と唯香。
 
「お医者さんにもよりますけど、早い人で2時間、長い人で6時間掛かるみたいですね」
青葉。
 
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「すみません。また憂鬱になりました」
「ごめんなさい!」
 

「また性転換したんですかぁ?」
と天津子は呆れるように師匠の姿を見て言った。
 
「男になった時と女になった時で、物の見方とかがガラリと変わるから楽しいよ。性転換の過程は、ほんの15分くらいで痛みも無いしさ。天津子ちゃんも一度性転換してみない?」
 
「結構です」
「ちんちん欲しくない?オナニー楽しいよ」
 
「私は別に男になりたくはないです。それから女子高生(*1)の前でオナニーとか次発言したら去勢しますよ」
 
「それは勘弁して〜。でも天津子ちゃんも男子高校生やってみない?」
「いりません」
 
「虚空も男になったり女になったりしているみたいだけど、あいつは僕が使っている***の法ではないもので性転換しているみたいなんだよね」
 
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(などと羽衣は言っているが、丸山アイは実際には女体偽装・男体偽装の達人である)
 
「・・・虚空さんって17-18年前に死んだのでは?」
と天津子は訊いた。
 
「死んだと思っていた。ところがどうも生きてて、最近活動再開したようだという噂をある所から聞いた。実際、瞬嶽の弟子(菊枝)が虚空と遭遇したらしい」
 
羽衣は自分自身が2011年7月に大船渡で虚空と遭遇していることに気付いていない。
 
「虚空さんって何歳なんです?」
「たぶん200歳くらい。ひょっとすると300歳くらいかも」
「もう人間卒業してません?」
「卒業してるだろうね」
「師匠も人間なのかどうか、かなり怪しいですけど」
「僕は人間だよぉ」
「どうだか」
 
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(*1)この時期(2013年2月)の主要人物の学年
 
1990年度生 大学4年 桃香・千里
1991年度生 大学3年 冬子・政子・若葉・和実・美空
1992年度生 大学2年 玲羅・理歌・絵津子
1993年度生 大学1年 彪志・王子(**)
1994年度生 高校3年 美姫・丸山アイ・フェイ・鹿島信子・ヒロシ
1995年度生 高校2年 天津子
1997年度生 中学3年 青葉
2001年度生 小学5年 龍虎
2002年度生 小学4年 西湖
2003年度生 小学3年 桃川しずか
2004年度生 小学2年 田中蘭
 
(**)王子は絵津子たちと同じ1992年度(1992.7.30)生まれだが、留学したので学年は1年遅れている。更に王子はアメリカの大学に在籍しているので複雑。
 

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2013年2月2-3日。東京都内の2つの会場で、第26回関東クラブバスケットボール選手権大会が開かれた。関東8都県から2チームずつ代表が出てトーナメント形式で大会は行われる。
 
ローキューツは千葉1位で出場し、決勝戦で東京1位の江戸娘と激戦を演じたが最後はソフィアのスリーで1点勝ち。この大会3連覇を飾った。
 

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2013年2月9日。石川県金沢市のいしかわスポーツセンターで、全日本実業団バスケットボール選手権大会が開かれた。
 
この大会は各地域の予選で上位になった男子32チーム、女子16チームが参加して行われる。
 
男子 北海道1 東北1 関東11 北陸2 東海5 近畿7 中国2 四国1 九州2
女子 北海道0 東北2 関東6 北陸0 東海1 近畿4 中国1 四国1 九州1
 
男子では近畿から貴司たちのMM化学が初出場を決めた他、大阪で長年トップを取ってきたAL電機なども参加する。女子で関東からは玲央美たちのKL銀行、黒木不二子らのMS銀行、夢野胡蝶らのBC運輸、松元ツバメらの湘南自動車などが出場している。
 
これらのチームが最初は4チームずつに別れてリーグ戦を行い、各組の1位のみが決勝トーナメントに進出できるのである。
 
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女子では、玲央美たちのKL銀行、早苗たちの山形D銀行、不二子らのMS銀行、九州のクレンズ、の4チームが予選リーグを突破した。
 
そして男子では、貴司たちは初戦で敗れてしまったものの、残り2つを連勝。2勝1敗が3チームになった。そして得失点差で予選リーグを勝ち抜けたのであった。
 
更に準々決勝では昨年準優勝したチームと当たるも、超絶進化している貴司、それにプロチームへの移籍が決まっている藤元らの活躍でこれを1点差勝利。BEST4に進出する快挙を遂げる。しかしさすがにそこまでで、準決勝では関東の強豪に大差で敗れた。
 
一方女子では、準決勝はKL銀行と山形D銀行が勝って、昨年秋の社会人選手権と同じ組み合わせで決勝戦が行われる。そしてKL銀行が圧勝で2連覇を達成した。
 
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MM化学の社長はこの成績に歓び、選手全員と監督・コーチに3万円入りの大入り袋を配った。
 
千里は試合終了後貴司に直接電話を掛けた。
「お疲れ様、よくやったね」
「ありがとう。自分でも頑張った気がする」
「日々の鍛錬の成果だね」
「市川ドラゴンズの人たちには感謝感謝だよ」
「来年は優勝しよう」
「やはり千里はそう来るな」
 
その後貴司が市川ラボに“帰る”とビーフシチューとフライドチキンが作ってあったので、貴司は嬉しくなった。
 

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2013年2月14日(木).
 
深夜22時すぎ、長崎市内の病院で、谷山宏香は自身が産む子供としては5人目となる子供を産み落とした。付き添っていた妹(弟?)の早紀が時計を見ると22:22:22と、きれいに2が並んでいた。
 
「おめでとうございます。男の子ですよ」
と助産婦が言うのに宏香は微笑んだ。
 
「お姉ちゃんありがとう」
と早紀が言う。
 
「あんたはまだ赤ちゃん産むわけにはいかないだろうか、今回までは頑張ったよ」
「ほんとごめんね」
 
「でもこの子も小空も、私が産んだ以上私のものだからね」
と姉は言った。
「うん。その子たちの育て方については、お姉ちゃんの意見を優先する」
と早紀も誓った。
 

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この子は「小歌」と名付けられることになる。昨年4月に宏香が産んだ小空の弟ではあるが、4月生まれと2月生まれなので、同じ学年になる。どちらも産んだのは宏香ではあるが、実際には早紀(後の丸山アイ)の子宮にあった胎芽を宏香の子宮内に移動させたものである。
 
早紀は小空を姉に産んでもらったので、続けては悪いなと思い、最初誰か他の人に頼めないかなと思った。実際、早紀のことが好きな従姉の楠本京華は私に産ませてと言った(ついでに結婚してと言われた)。早紀も彼女なら、と思ったのだが、宏香は「京華ちゃん、未婚でまだ自分の子供も産んだことないのに代理母とかしたらダメ」と言い、年子になってしまうのだが、代理妊娠・出産してくれたのである。
 
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ただ宏香は妊娠したことでお乳が出なくなってしまったので、小空にあげるお乳は代わりに早紀が出してあげた。代理妊娠直前の姉の体内の内分泌状態を自分の身体にコピーしたのである。そういう訳で早紀はまだ女子高校生(男子高校生かも?)なのに毎日搾乳してお乳を谷山家に届けさせていたのである。
 
この子たちが活躍するようになるのは恐らく2020年頃以降であろう。
 
ちなみに小空・小歌の遺伝子上の母はどちらも桃香なのだが、桃香は自分の子供が2人もできているなどとは思いもよらない。
 

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「桃香、実際子供何人くらい居るのさ?」
と桃香はその日、最近付き合っているガールフレンドのひとり、真利奈から訊かれた。
 
「まだ産んだことないよぉ」
「桃香が子供を産む訳ない。桃香は産ませる方でしょ?」
「えっと・・・」
 
「でも私も桃香の赤ちゃん産んでもいいよ」
「そうなのか!?」
「だから正直に答えなよ。3人?5人?8人?」
 
「さすがに8人も産ませた覚えはない!」
 
「だって桃香が貧乏なのは、養育費をたくさん払っているせいだという噂があるよ」
「そんな噂があるの!?」
 

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長崎市内の病院で谷山宏香が小歌を出産したのと同じ日、河合麻依子(旧姓溝口)が旭川市内の病院で女の子を出産した。麻依子は里帰り出産のため年末以降、旭川市近郊の実家に滞在していた。
 
千里と暢子がこの出産には立ち会い、出産後、鳥嶋明里など、L女子高関係者も病院に詰めかけてきた。
 
生まれた子供の名前は希良々(きらら)と付けられた。
 
「そういえば千里と暢子は結婚はどうなってるの?」
と赤ちゃんに授乳しながら麻依子は訊いた。
 
「私は昨年結婚するつもりだったんだけど、突然キャンセルされたから再締結を目指して頑張っている」
と千里。
 
「まるでビジネスの契約の話のようだ」
 
「私は婚約した。今年中に結婚するつもり」
と暢子が言うので
「おめでとう!」
とその場にいるみんなが言った。
 
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「千里の相手は例の100万人の前でキスした人だろうけど、暢子の相手は誰?」
 
100万人になってるし・・・
 
「うん。暢子が誰か男の子と付き合っているというのは高校時代から知られていたけど、誰もその相手を知らなかった」
 
「まあそれは結婚式当日のお楽しみということで」
と暢子は照れながら言っていた。
 
「当日発表なんだ!?」
 

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2月18日、青葉が推薦入試で受験していた高校から合格内定が中学校側に通知された。桃香と千里は電話で青葉を祝福した。
 
「まだ内定で正式の発表は一般入試の合格者と一緒なんだけどね」
「当日発表か」
「変なことしない限りはそのまま合格として発表されるはず」
「変なことというと?」
「何か事件を起こしたとか?」
「まあそういうものかな」
「性転換して男になったとか?」
「それはさすがに嫌だ!」
 
2月23日には第11回シェルカップの男女決勝戦が龍ヶ崎市たつのこアリーナで行われた。ローキューツは例によってBチームでこの大会に参加していたが、僅差で敗れ、準優勝に終わった。
 
打ち上げは千葉市内に戻ってから、Aチームの人でも出られる人は出て、オーナーである千里が乾杯の音頭を取り、賑やかに行われた。
 
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