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■娘たちの悪だくみ(11)

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ここを見たあと食事になる。クラスごとに時間差で見学しているので食事の場所もクラスごとに違う。龍虎たちはアピタのフードコートで食事をした。ここに来たのが13時すぎだったのでお店はわりと空いている。龍虎は彩佳・桐絵・宏恵・優梨・真智と一緒にロッテリアでおしゃべりしながらハンバーガー・セットを食べた。男子たちにはラーメンを食べている子が多かった。
 
「唐突に思ったけど、龍ってまあまあ食べるよね」
「ああ、それは思ったことある。身体が細い子って食も細いこと多いけど、龍は割と食べる」
 
「やはり病気でずっと入院していた頃はあまり食べられなかったよ。病院の食事を全部食べきれなくて、けっこう点滴で栄養を取ってた」
 
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「それって薬の副作用もあるんでしょ?」
「そうそう。食べても吐きそうになるんだよ」
「龍の成長が遅れたのはそれもあるんだろうな」
「退院する頃にはだいぶ食べられるようになっていたし、病院の先生からもしっかり食べるように言われた」
 
「普段晩御飯はどのくらい食べるの?御飯は何杯?」
「御飯は最近頑張って2杯食べられるようになった」
 
「・・・」
 
「御飯茶碗って丼サイズ?」
と真智が訊く。
 
「ううん。このくらい」
と言って、龍虎は両手で大きさを示す。
 
「それかなり小さい気がする」
と優梨。
 
彩佳が笑っている。
「まあ龍が使っている茶碗は、いわゆる姫茶碗のサイズだよ。普通の茶碗の3分の2くらいのサイズかな」
 
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「うーん・・・・」
 
「龍、もっと食べよう。私のポテトあげるから」
「え〜〜?さすがにそこまでは入らない」
「龍、もっと食べないと、おっぱい大きくならないよ」
「・・・・・」
 
龍虎が悩んでいるので優梨と真智は顔を見合わせた。
 
「ひょっとして、おっぱい大きくしたいの?」
「え、えっっと・・・」
 
「龍は今Aカップのブラ着けてるけど、Bカップでもいいんじゃないかと思う」
と彩佳が言う。
 
「龍、そんなに大きくなってんの!?」
「たぶん、そろそろ生理が始まる」
「嘘!?」
 

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食事の後は、この日最後の工場、化粧品会社の工場に行った。ここは食品工場以上に雑菌対策が凄かった。アイスクリーム工場では各自持参の学校の内履きで見学したのだが、ここではまず入口でスリッパに履き替えさせられる。このスリッパも、その後配られたビニール製のコート・帽子・手袋も全て使い捨てらしい。
 
製造工程はアイスクリームと割と似ている。原料を混ぜ合わせてバルクという状態にし、1日置いてから検査の上で瓶詰めの工程に進む。混ぜ合わせる工程も瓶詰めも全て自動である。検査も自動検査機械に通すとともにサンプリングして人間の目でも検査をおこなう。またテスターの人たちが自分の肌に実際に塗って確認していた。
 
ここでは化粧水、乳液、口紅を作っているが、口紅は非常に難しいんですと説明された。材料を高温で充分に混ぜ合わせてバルクを作り、成形用の型に詰めて充填するが、このあと温風を当てながらゆっくりと冷却していく。そうしないと冷却の過程でひび割れや穴ができてしまうからである。できあがった所でキャップをし、箱に詰めフィルムで包むが、途中何ヶ所も検査があり、結構な量の製品が不合格になる。口紅はどうしても歩留まりが低くなってしまうという話であった。様々な条件変化のため、どうかするとロット単位で全部アウトになることもあり、その度に技術者が機械の設定を調整するという。
 
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最後に清浄管理領域から出た後、このメーカーの製品でメイク体験ということになり、女子の希望者から抽選で5名フルメイクしましょうということになる。
 
「私うっかり女子と言いましたけど、もちろん男子でもいいですよ」
と案内してくれている人は言った。
「最近こういうので、女子限定とか男子限定とかいうと、性差別だってお叱りを受けるもので」
などと言ったら
 
「よし。俺も抽選に参加しよう」
と言って金野君も抽選のくじを引いていた。
 

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宏恵、菜美、穂ノ佳、それに男子から参加した金野君が当たりくじを引き当てる。
 
「あと1名行けるのですが、まだ引いてない子はいないかな?」
と案内人さんはキョロキョロしていたが、そこで展示されているアイカラーの色見本を見ていた龍虎に目がいく。
 
「君、このくじ引いた?」
「え?」
と言って振り返る。龍虎は話を聞いていなかったので、何のくじだろう?と思いながら箱の中から1枚引く。
 
「当たり!君が5人目ね。こちらに来て」
と言って連れて行かれる。
 
女子たちの間で素早く視線が交わされる。
 
が、みんな「龍ちゃんのメイクした顔が見たい!」という好奇心いっぱいである。
 
それで座らされた5人はまずは眉を切りそろえられた上で、ウェットティッシュで顔の汗などを拭き取る。そして化粧水→乳液→化粧下地→リキッド・ファンデーション→フェイスパウダーと塗られていく。
 
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龍虎は「これ何〜〜?」と思いながらメイクをされていた。
 
アイカラーを濃淡3色で入れられ、Tゾーンにはホワイト系のパウダーを入れる。アイラインを入れ(ここが目に刺さりそうで怖かった)、アイブロウを丁寧に毛の方向に沿って入れてから、ビューラーで睫毛にカールを付け、マスカラをたくさん!塗る。
 
チークを大きな筆(熊野筆ということだった)で濃淡2色で入れ、口紅はきちんとペンシルで縁取りをした後でリップスティックで塗る。口を開けさせて口角までしっかり塗る。
 
それで完成である。
 
「おお、美しい!」
「1名を除いて美人だ」
 
金野君の顔だけはプロの手に掛かっても、どうにもならなかったのである。女子3人もみんなきれいに仕上がっていたが、特に龍虎の出来が良い。
 
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「龍ちゃん可愛い!」
という声があちこちから出る。
 
「やはり可愛い子がお化粧すると、もっと可愛くなる」
と言われるが、本人は状況を把握しておらず、なんでボクお化粧されちゃったの〜?などと思っている。
 
隣で金野君が
「俺はどうしてもオカマにしか見えない」
と言って笑いを取っていた。
 
それでみんなたくさん写真を撮っていた。
 
「龍ちゃん、もっと可愛い服を着て来ていればよかったのに」
などと言われるが、それでもみんな龍虎と並んで記念写真を撮っていた。
 
メイクをした人はクレンジングを渡されて、その顔のままで帰っていいよといわれたが、菜美は「恥ずかしい〜」と言って、その場でメイクを落としていた。それに対して金野君は「これで母ちゃんをびっくりさせよう」などと言っていた。
 
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「金野君のお母さん、心臓麻痺を起こさなければいいね」
 
ちなみに龍虎はメイクしたままバスに乗って学校まで行き、その顔のままで自宅に戻ったが、その日早めに帰宅していた母は
 
「あら、可愛くなってるね」
と笑顔で言っただけである!
 
「ボクもこれ可愛いかもと思った」
「お化粧の練習する?」
「ハマると怖いから、もう少しおとなになってから練習しようかな」
「うん。それでいいと思うよ〜」
 

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5月16日から東アジア選手権(アジア選手権予選:5位以上で進出)が始まったが、やはりエース龍良を欠く日本はどうにも厳しい戦いとなった。
 
初日の韓国戦には大敗。17日のマカオ戦はさすがに勝ったものの、18日の台湾戦はかなり接戦となった。
 
万一この試合を落とすと決勝トーナメントに行けず、5位決定戦に回るという悲惨なことになる。
 
後半投入された貴司は、みんなが驚くような冴えたプレイで台湾チームの要となっているスモールフォワードを翻弄する。それで10点ビハインドを挽回し、残り30秒で残り1点差とする。
 
そして相手シュートが入るかと思われたのが運良く外にこぼれたのを前山がしっかりリバウンド確保。貴司に送って、貴司が相手選手を3人抜き独走。最後は須川の「細川、撃てぇぇぇ」という声に反応してミドルシュート。
 
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これがブザービーターとなり、1点差逆転勝利した。
 
これで日本は4位以上が確定。アジア選手権に進出することが決まった。貴司はみんなにもみくちゃにされた。
 

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日本女子代表の方は5月8日、第一次合宿の最終日の夕方、12名に絞られた。むろんこれは最終メンバーではなく、現時点でのロースターであり、後で入れ替えは大いにあると監督は言明した。取り敢えず選ばれたのは下記の12名である。昨年の世界選手権のメンバーが微妙であったため、今回は一昨年のアジア選手権のメンバーがコアになっている。
 
PG 5.羽良口英子(1982) 9.武藤博美(1983)
SG 4.三木エレン(1975) 10.花園亜津子(1989)
SF 8.広川妙子(1984) 11.佐藤玲央美(1990) 15.千石一美(1986)
PF 6.横山温美(1983) 12.高梁王子(1992) 14.石川美樹(1986)
C 7.馬田恵子(1985) 13.黒江咲子(1981)
 
主な落選者:吉野美夢(1984), 月野英美(1986), 富美山史織(1981), 早船和子(1982)
 
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実際問題として前回のアジア選手権代表から、千里と月野さんが外れて、石川と千石が入った形である。もっとも今回千里は代表候補24名にも入っていなかった。
 
なお、横山温美だが、2010, 2011, 2012 と3シーズンにわたってスペインのCDバレンシアで活動していたのだが、年齢的な問題(今年は30歳になる)もあり彼女は4月にロースターから落ちてしまった。それで古巣のビューティーマジックに復帰している。
 
バレンシアはグラナダから割と近く、千里はグラナダに行くと聞いて、横山さんのプレイを見る機会があるかな?と思っていたのだが、残念ながら千里と入れ違いになってしまった。
 

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日本代表の一行“10名”とスタッフは5月13日にアメリカに向けて旅立った。
 
代表メンバーの中で、羽良口と高梁はアメリカにいるので現地で合流する。
 
代表一行はアメリカのフェニックスで10日間合宿した上で、スロバキアで合宿、その後リトアニアで「リトアニア国際トーナメント」という大会に出て、スウェーデン・リトアニア・中国の代表チームと戦う予定である。
 

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5月19日(日).
 
龍虎の小学校で運動会が行われた。
 
今年、龍虎は徒競走で初めて男子に混じって走った。事前のタイム測定では微妙だったが、龍虎が男子の方で出たいというので走らせたが、男子として恥ずかしくない速度で走れるようにと、運動の得意な桐絵が付き合ってあげて毎日昼休みに校舎の周りを時間いっぱい走っていた。
 
それで男子6人で100m走って5位から20mほど離された6位でゴールしたが
「このくらいの差でゴールしたのは上出来」
と伊藤君から褒めてもらって、ちょっと嬉しかった。お昼に母と来てくれている春風アルトからも「今年は男子で頑張ったね」と褒められた。
 
ちなみに龍虎は応援合戦ではミニスカを穿かされてボンボンを持ってチアをやっていたが、アルトも
「可愛いじゃん」
などと言っていた。田代幸恵は
「まあ、あの子はああいうのを着せられてしまうのがデフォルトですね」
と言って笑っていた。
 
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「でもチアやってて、凄く動きがいいのは、バレエやってるせいかな」
「だと思いますよ〜。手足がピシッと伸びているから、実際の背丈より大きく見えますよね」
「それで真ん中で踊っているのかな」
「多分そういうことになったんだと思います」
 

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更に午後一番に行われた鼓笛隊では、青い制服に白いショートスカートを穿いてベルリラを打っているのを見られる。
 
「あの子、ほんとにああいう格好をして違和感が無いよね」
とアルト。
「ピアニカを希望したけど、希望者が多いんでベルリラに回されたらしいですよ。本人は第二希望は木琴だったらしいけど、木琴は重たいから男子だけにしますと言われてベルリラに回ったとか」
 
「・・・あの子、男の子ですよね?」
「まあ筋力は女の子並みですし」
「確かに」
「それにスカート穿くのはあの子、女装という意識が無いみたい。日常的な服装の一部と思っているみたいなんですよ」
「なるほどー。単なるファッションとしてスカートも穿きこなしちゃうんだ」
「家の中でもけっこうスカート穿いてますしね」
 
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「女の子になりたい訳ではないんですよね?」
「女の子になったら?とか、女の子みたいに可愛い、とか言われるのは好きみたいです。でも女の子になる気は無いですよ。あの子は自分は男だと思っていますよ」
 

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