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■娘たちの悪だくみ(4)

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2013年3月21日(木).
 
千里は《こうちゃん》からの報せで高野山の奥の、瞬嶽が長年泊まり込んでいる庵を訪れた。
 
遺体は穏やかな表情であった。千里が涙を浮かべて合掌していると
「ああ、そちらが早かったか」
と後ろから声を掛ける者がいる。
 
みるとセーラー服(さすがに冬服)姿の女子高生である。
 
「もしかして虚空さん?」
「そうか。この顔では初対面か」
「顔の変化は四十面相のクリークと同じ原理?」
「企業秘密」
 
虚空も瞬嶽の遺体に向かって合掌している。
 
「ボクは明治時代に生まれた時、光ちゃんと近所でさ。超能力ごっこして遊んでいたんだよ」
 
「悪い遊び仲間なんですね」
「そうそう。当時ボクは耳が聞こえなくて、光ちゃんは目が見えなかったから、実際問題としてESP(超感覚的知覚)で意志を伝え合うしかなかった」
 
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「瞬嶽さんは目が見えないなんて信じられないくらい周囲のものをしっかり把握していました」
「活版印刷された本なら、表面の凹凸で普通に読んでたしね」
 
「たくさん“おいた”したんでしょ?」
「そうそう。本当にあれは楽しかったよ」
 

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千里と虚空はしばし瞬嶽の昔話をした。主として虚空が彼の思い出を語り、千里は聞き手に回った。
 
「じゃボクたちで埋葬してあげようか?」
「そうですね。ここは私たちみたいな人以外は、春になるまで誰も来られないでしょうし」
 
それでふたりは庵の床を上げ、その地面を掘って瞬嶽の遺体を埋葬した。虚空が何やらお経を唱えていたが千里は分からなかった。
 
「ここ寒いから遺体は春まで傷まないかも」
「かもね〜」
 
それでふたりは遺体を埋めた上に石を置き、その石に虚空が筆で金墨汁を使い、《長谷川瞬嶽 2013.3.21》と書いた。
 
そして庵の床を戻した。
 

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「どうやって降りる?」
「私は飛んで降ります」
「ボクは普通に歩いて降りる」
 
「じゃまたどこかで」
「うん。またすぐ会うと思うけど」
 
それで虚空は本当に“かんじき”を付けたローファーで2m近くありそうな積雪の上を歩いて降りて行くので、千里は《こうちゃん》に乗せてもらって空路で下山した。
 

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ふたりが去ってから30分後、遺体を埋めた床の上に瞬嶽の“気”が集まってきて、やがてそれは人の形になった。
 
「あれ〜?僕はどうしてたんだろう?」
と呟くと
「遅くなっちゃった。回峰に出なくちゃ」
と言って、“瞬嶽”は庵を出て、いつもの回峰路を歩き始めた。
 
「なんか今日は足取りが軽い気がする。たくさん寝たせいかな?」
などと彼は呟いていた。
 

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2013年3月22日(金).
 
青葉は通っていた◎◎中学校を卒業した。大船渡で過ごした中学1年生の1年間は男なのか女なのか何ともハンパな扱いをうけていだ、高岡に転校してきてからの2年間はほぼ完全に女子生徒と扱ってもらえて、青葉の心はとても充実していた。それに今は肉体的にも完全に女子になることができた。
 
青葉は涙を流しながら、校歌を、仰げば尊しを、歌っていた。
 

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同じ3月22日、千里と桃香はC大学の卒業式に出席した。ふたりは4月からそのまま同大学の大学院に進学するものの、とりあえず学部は卒業である。
 
さて近年、大学の卒業式で女子には袴を穿く人が増えている。その場合、上に合わせる和服は、本来は色無地か、あるいは矢絣や小紋などが合う。基本的にはセットでレンタルするのが良い。
 
ところが最近、成人式の時に作った振袖に袴を追加して着る女子がかなり増えている。だが、これは第一礼装の振袖と本来作業着である袴を組み合わせるというルール違反の着方である。しかしあまりにもそういう着方をする人が増えてきたことから、容認する人も増えてきている。
 
しかし!
 
千里や桃香、朱音や玲奈たち“振袖会”のメンツは
 
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「卒業式は振袖を着よう」
と申し合わせたのである。実際問題として、振袖を着た写真と、それに袴を加えた写真を見比べてみると
「長い袖が袴とアンバランス」
という意見が多かった。
「せっかくの豪華な振袖の柄が、袴で見えなくなるのがもったいない」
という意見もあった。
 
それでこのグループは振袖のみで卒業式に出ようということにしたのである。
 

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それで千里も桃香も、成人式の時に作ったいちばん豪華な振袖を着て卒業式に出てきた。朱音も母に買ってもらった豪華な振袖を着ている。更に美緒にうまく乗せられて、清紀まで振袖(美緒が成人式の翌年に買ったインクジェット染め)を着て卒業式に出てきた。
 
「清紀、結局女子として就職するんだっけ?」
「まさか。どうせ大学院に進学して、就職は5年後だから、それまでに就職先は考える」
「ドクターまで行くんだ!」
「すごーい」
 
「もしそのまま大学の先生になったら、女装の教授として全国的に有名になるかも」
「いや、そういうストーリーは勘弁して欲しい」
 
ともかくもこのグループはひときわ目立っていた。
 

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「でもみんな入学式の時は何着たの?」
という質問がある。
 
「どうだったっけ?確かトレーナーとコットンパンツだったかな」
と桃香が言うと
「青いセーターとブラックジーンズだよ」
と千里が言う。
 
「そんなんだっけ?」
「ほれ、これが証拠写真」
と言って千里が携帯を開いて写真を見せると
 
「おぉ!桃香らしい」
「ほとんど男だ」
といった声があがった。
 
「なんでそんな写真があるの〜〜〜?」
と桃香。
 
「千里は何着たの?」
 
「うーん。。。イオンで買った1万円の紳士用スーツじゃないかなぁ」
と千里が言うと
「それだけは嘘だ」
という声。
 
「千里が男性用スーツなんて持っている訳が無い」
「そもそも千里に男性用スーツは入らない」
といった多数の声。
 
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すると昨年からこの振袖会に参加していた聡美H(東石聡美)が
「これが証拠写真だ」
と言って、自分のAquos phoneで写真を呼び出した。
 
「レディススーツ着てるやん」
「可愛い柄だ」
 
「うっそー!?なんでそんな写真があるの〜〜?」
と千里。
 
「つまり千里は、入学当初からふつうに女の子だったんだな」
とみんなの意見。
 
「やはり1年生の時にしばしば男装していた理由が分からん」
と言われていた。
 

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同じ3月22日。熊谷市のQS小学校でも卒業式が行われていた。
 
龍虎は卒業生ではなく在校生の5年生なのだが、この卒業式では5年生の鼓笛隊が、卒業生を送る音楽を演奏する。それで5年生全員、鼓笛隊の制服を着て、各自の担当楽器を持ち、体育館の中を歩きながら演奏した。
 
演奏曲目は最終的に『銀河鉄道999』と『Yell』(いきものがかり)になった。
 
鼓笛隊の制服は、ドラムメジャーが赤い制服に白い立派なシャコ(shako:円筒状の帽子)をかぶり、サブメジャーとカラーガードがオレンジの制服を着て小型のシャコをかぶる以外は、青い制服に白いボトムで、白いベレー帽をかぶる。
 
ボトムはドラムメジャー以外全員白で、男子はショートパンツ、女子はショートスカートである。
 
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そして・・・龍虎は青い制服に白いショートスカートを穿いてベルリラを叩いていた。
 
なぜボク、スカートになっちゃったの〜?と思っているが、龍虎以外は誰も彼がスカートを穿いていることに疑問を感じていない。
 

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龍虎は楽器の担当として第1希望ピアニカ、第2希望木琴、第3希望トランペットと書いて提出した。しかし増田先生から呼ばれて言われた。
 
「ピアニカの希望者が凄く多くてね。それとトランペットも吹奏楽部でペットを吹いている女子が2名いるからその子たちにやらせたいのよ」
「はあ」
「それで田代さん、第2希望は木琴と書いているけど、木琴は男子にやらせたいし、あれかなり重いから身体の小さな田代さんには厳しいと思うの」
 
あれ〜。なんか話がよく分からない所があるぞと龍虎は思っていた。
 
「それでベルリラの子が今2人しか居なくて、ピアニカ弾ける子の中で2人そちらに回ってもらえないかと思って。ベルリラ叩いたことない?」
 
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「一度遊びで叩いたことはありますけど」
「やはりキーボード弾ける子はベルリラ行けるよね?」
「それは行けると思いますよ」
「だったら、あなたベルリラしてくれない?」
「いいですよ」
と答えながら、龍虎はベルリラって女子だけじゃなかったんだっけ?と考えていた。でも楽器のできる人の人数の関係で調整すると言っていたから、男子でベルリラでもいいのかな?と思い直した。
 

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それで龍虎は練習の時、そして前日の予行練習の時も(普通の服装で)ベルリラを叩きながら行進した。
 
そして卒業式当日になって衣裳を着けてということになった時、ベルリラチームのリーダーである舞子ちゃんは、
「はい、この制服に着替えてね」
と言って、他の3人のベルリラ担当に制服を渡す。
 
それで龍虎はあまり深く考えないまま、上着を脱いで青い制服を着、またズボンを脱いで制服の白いボトムを履こうとして・・・
 
それがショートスカートであることに気付く。
 
「舞子ちゃん、これスカートなんだけど」
「女子は全員スカートだよ」
「え?でもボク男子だけど」
 
すると舞子は言った。
「ベルリラは女子の担当。龍ちゃんはベルリラ担当。故に龍ちゃんは女子」
 
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「おお、凄い三段論法!」
と同じくベルリラ担当の真智が言った。
 
「それでも万一男子だと主張するなら、女子の更衣室にいるのを痴漢として突き出す」
ともうひとりのベルリラ担当の菜絵。
 
「え!?ここ女子の更衣室だっけ?」
 
龍虎はそのことはなーんにも考えていなくて「ベルリラ担当集まって」と言われてそこに集まり「着換えに行くよ」と言われてこの教室に入っただけである。
 
なぜそのことを何も考えていなかったのかは、作者にも分からない。
 
「とにかく時間が無いから、そのスカート穿いてよ」
「あ、うん」
 
それで龍虎は青い制服に白いショートスカートを穿き、ベルリラを持って演奏しているという訳である。
 
そして、なぜこうなっちゃったのかなぁ?と龍虎は考えていた。
 
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そして龍虎はこの後1年間、鼓笛隊をする度にスカートを穿くことになることに、いまだ気付いていない!
 

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3月25日(月)、天津子と桃源、天機の3人は、羽衣の呼び出しで北海道のある山の頂上に集まった。
 
「師匠、いったい何を始めるんですか?」
「どうも瞬嶽が亡くなったようなんだ」
「とうとうですか!」
 
「だからこれで日本の霊能者のトップは俺になった」
などと喪服のような黒い服を着た羽衣は言っている。
 
「だから祝杯を挙げようと思ってさ」
「なぜこんな場所で」
「北海道の最高峰で本州方面に視界が効くから。奈良に向かって祝杯を掲げる」
 
それで羽衣は弟子たちにグラスを配り、氷を入れウィスキーを注いだ。
 
「師匠、昇陽(天津子)は未成年です」
「硬いこと言うな」
「Royal Challenge? 見たことないウィスキーだ」
「インドのウィスキーなんだよ。俺と瞬嶽とドイツのミュンツァーとインドの**とで、よくこれを飲み交わしたもんだ」
 
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「師匠泣いてます?」
「俺がトップになったうれし涙だ」
 
弟子たち3人は顔を見合わせた。
 
「乾杯!」
と言って羽衣がグラスを掲げ、弟子たちもグラスを合わせてRCを飲んだ。
 
おつまみの羊の丸焼き!?を食べながら瞬嶽の想い出を語り合ったが、羽衣が涙を流しているのを弟子達は静かに見守った。
 

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3月29日、瞬嶽の5人の弟子、瞬嶺、瞬高、瞬醒、菊枝(瞬花)、青葉(瞬葉)は、瞬嶽が亡くなったのではと話し、冬山登山の装備をつけて、雪や氷を掻き分けながら半日掛けて山を登り、瞬嶽の庵に到達した。
 
そこには長年見慣れた瞬嶽の姿があったものの、それが霊体のみで肉体を伴っていないことに気付く。
 
瞬嶽の霊体は5人の弟子としばし話をした上で、彼らに送ってもらって天国に旅立っていった。5人は瞬嶽が生前から自分の墓石にしようと立てていたらしい大きな自然石に
 
《長谷川瞬嶽(俗名光太郎)明治十九年六月三日生・平成二十五年三月二十一日没》
 
と記した。瞬嶽の葬儀はあらためて★★院でおこなうことにした。
 

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2013年3月30日(土).
 
この日は市川ドラゴンズの練習はお休みなので、MM化学の練習が桃山台の体育館で終わった後、貴司は久しぶりに千里(せんり)のマンションに帰った。
 
エントランスを通り33階にエレベータであがって、ドアを開けたら、台所のシンクの所で洗い物をしている人の姿がある。
 
貴司はてっきり千里と思い
「あれ?来てたの?」
と尋ねた。
 
ところが彼女が振り向いたら、千里ではなかった。
 
「お帰りなさい、貴司さん」
「阿倍子さん!?」
 
「私、あなたの婚約者だから、ここに居ていいよね?」
「え、えーっと」
 
「私住む所無くなっちゃって。取り敢えず身の回りの荷物だけ持ってここに来ちゃった」
と彼女は言った。
 
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貴司はどう返事していいのか分からないまま、阿倍子の顔を見つめる。
 
「荷物がまだたくさんあるけど、明日までに退去しないといけないの。貴司さん手伝ってくれない?」
 
貴司は腕を組んで悩んだまま阿倍子を見ていた。
 
 
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娘たちの悪だくみ(4)

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