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■娘たちの悪だくみ(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-10-27
 
4月21日(日)に瞬嶽の葬儀に出た青葉は、その後東京に移動した。
 
実は冬子(ケイ)から秘密のお仕事を頼まれていたのである。冬子がここしばらく“ローズクォーツ・グランドオーケストラ”に関する作業で土日が完全にふさがっているため、申し訳無いが平日に来て欲しいという依頼だった。
 
霊的なお仕事は基本的に断るという方針を定めたばかりなのに、学校を休んでまで東京に行くという話に朋子がかなり渋ったものの、色々お世話になっている冬子さんからの話ということで最終的には認めてくれた。冬子との約束は23-24日(火水)だったので、青葉は最初日曜日に葬儀に出た後、いったん高岡に戻って月曜日は学校に行ってからまた火曜日東京に出ていくつもりだったが、それではきつすぎるということで、月曜日も休んで東京直行することになった。
 
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冬子からの依頼は耳の聞こえない作曲家で元歌手の田中鈴厨子(すずくりこ)に歌を歌わせようという話で、本人が歌う歌の音の高さをリアルタイムで視覚化し、その表示で音程を確認しながら歌うということをやろうとしていた。
 
ただその際、本人が少しでも聞こえたらかなり助けになると思われたので、それを青葉のヒーリングで何とかならないかという話だったのである。青葉は田中を診てみて、改善の余地があると判断。しばらく定期的に青葉のセッションを受けることになった。
 
さて、この東京行きの際、最近“合唱軽音部”でサックスを吹くことになり練習しているということを言うと、「サックス、自分のを1個買っちゃいなよ」とうまく乗せられる。それでたまたま冬子のマンションに来ていたサックス奏者の宝珠七星さんと一緒に買いに行き、ピンク色のサックス Yanagisawa A-9937PGP(145万円)を買ってしまった。更に冬子と政子からは彼女らが以前使っていたというヴァイオリンとフルートをもらったし、田中さんからは大量のCDまで頂いて、青葉は凄い荷物を手に持って高岡に帰ることになった(越後湯沢での乗り換えの時は知り合いが居ないのをいいことに海坊主に持たせた)。
 
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2013年4月24日(水).
 
青葉が東京に来た2日目。
 
ローズ+リリーは14枚目のシングル『100%ピュアガール/疾走/あの夏の日』を発売した(トリプルA面)。この『疾走』はワンティス最後の作品として知られたいたが、ワンティスのメンバーは多数のファンからのリリース要請に沈黙を貫いていた。それが突如ローズ+リリーの歌唱でリリースされたことに驚きの声があがったが、リリース当日『疾走』のクレジットが、長野夕香作詞・上島雷太作曲になっていたことに、戸惑いの声があがった。
 
この『疾走』は自動車事故で亡くなった高岡猛獅の遺作と思われていたからである。
 
この問題について上島と雨宮は27日に記者会見して、実はワンティスの曲で高岡猛獅作詞とされていた曲の大半が実際には長野夕香が作詞したものであることを明らかにした。
 
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「それでは作詞印税は実際には夕香さんのご遺族に支払われていたのでしょうか?」
「いえ、高岡の遺族に支払われています」
「では夕香さんのご遺族には?」
「何も支払われていません。それで実は僕が自分が受け取った作曲印税を代わりに夕香さんのご遺族に渡していました」
と上島は発言した。
 

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これについてネットでは高岡の遺族に批判が集中する。そして4月30日、高岡の父は地元のテレビ局に弁護士を伴って出演し、会見して述べた。
 
・ワンティスの作品が息子の詩では無かったというのは全く知らなかった。
 
・息子が、そして亡くなった後で自分が不当に受け取った印税・著作権使用料を自分が弁済できる範囲で弁済したい。夕香さんのご遺族と話し合ったが、それを今自分が受け取るより、震災で被害を受けた人たちのために役立てて欲しいと言われた。それで現時点で所有している全ての有価証券を売却し、また現在所有している不動産も全て売却し、全ての預貯金と合わせて、東日本大震災からの復旧に役立ててくれる団体に寄付したい。
 
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このお父さんの会見で、ネットの空気は一転した。
 
これまで批判していた人たちが皆、お父さんを「潔い!」と評価。そして全ての資産を売却したら、即生活に困るのではないかといって、お父さんの生活費の足しにといって、多数お金を送ってくる人たちがあった。
 
これに対してお父さんは再度会見し、そのお金を自分は受け取る筋合いがないので、送ってこられたお金も合わせて復旧に役立ててくれる団体に寄付したいので、了承して欲しいと述べた。
 

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テレビ局や雑誌が、そのような作者偽装のおこなわれた経緯について追及した。
 
事件の中心人物と思われるワンティスの元事務所社長は昨年末に亡くなっており、当時のスタッフ数人に取材が行われたものの、皆そういうのは知らないと主張した。社長のワンマン事務所であったため、誰も細かい部分にはタッチしていなかったものと思われた。社長は多数の愛人がいたものの結婚はしていなかった。それで過去に愛人だった人をかなり探し出して取材を試みたものの、参考になりそうな情報を持っている人は見つからなかった。
 
当時のレコード会社担当者にも取材が行われた。
 
ワンティスの後半の担当者であった、★★レコードの加藤銀河課長は、記者会見して、自分も偽装のことは全く知らなかったと述べた。普段は好人物としてマスコミ受けのよい加藤氏が、厳しい追及にあい、ほとほと困っていたが、加藤氏は自分が無知だったことにも責任があると言い、向こう1年間の減給、ボーナスの返上を上司に申し出たことを明らかにした。
 
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これに対して上島と雨宮は再度会見し、偽装が始まったのは加藤がワンティスのマネージャーになる前であったと表明。加藤には責任が無いと言明した。
 
★★レコードは最終的に加藤課長、町添制作部長、松前社長の減給6ヶ月の処分を発表した。そして3人は今年夏のボーナスを自主返上すると述べた。
 
ネットでは概ね妥当な処分だとする意見が多かった。
 

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それで最終的にやり玉にあがったのは、ワンティスの初代マネージャーであった太荷馬武(元★★レコード制作部次長)である。
 
太荷馬武は東京に出てきて記者会見に応じ、偽装のことは知っていたが、自分が指示したものではなく、いつの間にかそういうことになっていただけで、どういう経緯でそのようなことになったかは知らないと主張した。
 
「当時のワンティスのメンバーが、社長はレコード会社の担当から言われて高岡さんの名前でないと売れないから、高岡さんの名前でリリースさせてくれと言われたと言っているのですが」
 
「決して私はそのようなことは言っておりません。ただ、印税の配分などのために、名義を変えるのは、わりとよくあることなので本人たちがいいのであれば、それでいいのだろうと思っていました」
 
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「よくあることなんですか?」
と問われて、太荷は今のは失言だったかなと反省した。
 
「そのような事例は聞いております」
「太荷さんが担当したアーティストで、他にもそういう偽装はありましたか?」
「すみません。各アーティストの事情は守秘義務がありますのでお答えできません」
 
太荷の端切れが悪いので、マスコミはかなり彼を追及し、結果的に彼はかなり悪役になってしまった感があった。
 

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彼は現在の会社(CDプレス工場)で営業の仕事をしていたのだが、すっかり悪役イメージになったため、これでは営業ができないとして、辞表を提出した。しかし彼の会社の社長は慰留する。
 
「太荷さんの人柄は僕は分かっているつもり。積極的に不正に関与するような人ではないよ。でも確かに営業の仕事はつらいかもね。だったら、しばらく台湾工場のほうの仕事をしてくれない?ほとぼりが冷めるまで」
 
「ありがとうございます」
「君、中国語できたっけ?」
「北京語なら何とか」
「台湾は北京語圏だから大丈夫だね」
「分からなかったら勉強します」
「うん。よろしく」
 
それで太荷は取り敢えず年内は台湾に赴任することになったのである。
 
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太荷が台湾に行くためにセントレアに来て歩いていたら
 
「太荷君」
と呼び止める人がある。サングラスとマスクで顔を隠している。思わず空港でそんな格好していたら職務質問されるぞと思った。
 
「何ですか?村上専務」
「その名前を大きな声で言わないで!」
 

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それで結局空港内の食堂に入る。何でも好きなものを頼んでと言われたので、ここは高いものを取った方が村上は満足するだろうと考え、ひつまぶしを頼む。専務はひつまぶしの特上を2つ取った。
 
やがて料理が来たので食べながら話す。
 
「なぜ君、ワンティスの偽装の件は僕と事務所社長の話し合いで決めたものだと言わなかったの?」
と専務は太荷に尋ねた。
 
太荷は少しため息をついて言った。
「専務は守秘義務というものをご存知だと思うのですが」
 
「・・・・」
 
「私は仕事をしている間に知り得たものごとは、裁判などで証言する必要があるような場合以外では、決して誰にも話しません」
 
村上専務はしばらく考えていた。
「どうだろう?2000万円で」
 
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太荷は苦笑した。
「申し上げましたように、私は守秘義務を守ります。お気遣いは無用です」
 
「すまん」
と村上専務は太荷に頭を下げた。
 
「もし君がこの件で失職したりした場合は、必ずどこか仕事を世話するから」
 
「大丈夫ですよ。職安に行きますから」
と太荷は明るい表情で答えた。
 
太荷は2012年1月に現在の会社に就職してから頑張って働き、養育費の支払いの傍ら、例の事件で松前に肩代わりしてもらったお金の内既に3割ほどは返済を済ませている。この1年3ヶ月の充実した仕事が今は彼の心を支えていた。
 

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その日、龍虎たち6年生一同は体育館に集められ、修学旅行について説明を受けた。この日は教頭先生が全体的な説明をする。
 
「日程は1泊2日で行き先は群馬栃木です。行程はだいたいバスで、1クラス1台を使用します。途中1ヶ所だけ鉄道での移動がありますので、迷子を出したりしないように、班ごとの行動を守って下さい。班分けは各担任からお話があると思います」
 
その他、持ち物やお小遣いなどに関する注意もある。携帯は連絡用に持ってきていいが、ゲームでの使用は禁止と言われた。ゲーム機の持参も禁止である。カメラは高額なものでなければOKと言われた。音楽プレイヤー・ヘッドホンは注意事項などの聞き漏らしが発生しやすいので禁止ということだった。お小遣いは昼食代を含めて6000円以内と言われた。
 
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20分くらい説明があった上で
 
「女子のみなさんだけに注意があります。男子のみなさんは教室に帰って自習していて下さい」
と増田先生が言った。
 
それで男子は立ち上がり、ざわざわと会話などしながら体育館を出て行く。
 
龍虎も立って出て行こうとしたのだが、増田先生から声を掛けられる。
 
「田代さん、何やってんの?あなたは座ってて」
「はい?」
 
それで龍虎は取り敢えず座る。彩佳が
「龍、こっちおいで」
と言うので、彩佳の隣に移動した。
「何でボク停められたの?」
と龍虎が小声で訊く。
 
「多分龍には必要な話」
 
龍虎は首を傾げた。
 

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龍虎はよく分からないまま佐藤先生の話を聞いていた。教頭先生も、2組の広橋先生と3組の竹川先生(いづれも男性)は退出して、ここには保健室の佐藤先生、1組担任の増田先生(女性)の他は(龍虎の他は)女子生徒ばかりである。
 
説明の内容は「女子ならではの身の危険」に関するお話をした上で、絶対に1人では行動しないように。トイレに行く時なども必ず友だちと誘い合って2人以上で行くようにと言われた。
 
「龍は可愛いから、襲われやすいよ。私たちと一緒にトイレは行こう」
と彩佳が言う。
「襲われるって?」
と龍虎は意味がよく分からずに訊く。
「私も同意見。龍はとっても危ない」
と桐絵が言う。
 
「トイレ一緒に行くのはいいよね?」
「あ、うん」
 
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そういう訳で龍虎は修学旅行では彩佳たちと一緒にトイレに行く約束をしたのだが、それが何を意味するか、龍虎は分かっていない!
 

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男子との恋愛の話もあり、「セックスに誘われても応じないように」と言われたが、セックスって何だっけ?と龍虎は思っていた。更に「ボーイフレンドがいて念のため避妊具を持っておきたい人にはあげますから後で保健室に取りに来てください。一切詮索せずにあげますから」と言っていたが、“ヒニング”って何だろう?と思って聞いていた。
 
また生理のことについてもお話があり、旅行などに出ると環境の変化のため、突然生理が来てしまうこともあるので生理が来る予定の無い人も、必ず使い慣れた生理用品を少し多めに持って行くことと言われた。また、まだ生理が来ていない人もこういう時突然来ることがあるので、お母さんなどと相談して生理用品を用意しておくことと言われた。
 
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「龍は生理用品持ってる?」
と桐絵から訊かれる。
「さすがに持ってない」
「生理まだ来てないんだっけ?」
「さすがに来てない」
 
「でも来るかも知れないからナプキン買っておくといいよ」
「そうなの!?」
「何なら買うのに付き合ってあげるよ」
「うーん」
 
龍虎はやや不純な動機でナプキン持っていてもいいかなあ、などと思った。
 
そんな不純なことを考えていたので、なぜ自分が女子だけへの説明の場にいるのかについては、何も考えていなかった。
 
龍虎がどうも不純な悩みをしているようなので、彩佳は笑いをこらえていた。
 

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娘たちの悪だくみ(9)

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