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■娘たちの悪だくみ(12)

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運動会の代休あけの21日(火).
 
クラス委員の佐苗が朝の学活の時間に言った。
 
「修学旅行の班分けができました。プリントを配ります。★をつけた人は班長なので、よろしくお願いします。班長は連絡用に携帯を持って来て欲しいのですが、自分の携帯を持っているか、お母さんなどから借りられない場合は、私か増田先生に相談してください。学校でレンタルできると思います」
 
龍虎たちの1組は34人だが、なかよし(特別支援学級・知的)の子(男子2名)を入れて36人で編成する。それで6人ずつ6班に分けたということだった。
 
班長に指名されたのは、だいたいしっかりした性格の子である。クラス委員の佐苗と木下君、昨年クラス委員を務めた麻耶と藤島君、それに伊東君と彩佳である。“なかよし”の子(竹谷・須磨)は一緒の方が不安が少ないだろうということで、藤島君の班(6班)に入れている。ここは
 
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藤島・岩間・竹谷・須磨・育江・美樹
 
という男4女2の編成にしている。木下君や佐苗の班にしなかったのは2人はクラス委員で忙しいので、“なかよし”の子のお世話まで手が回らない可能性があるからである。それで昨年のクラス委員の藤島君にお願いし、保健委員の美樹も組み込んだ。
 
プリントが行き渡った所で
「なんで俺たち男だけなの?」
という声が一部の男子からあがっている。
 
「男子が圧倒的に多いので、1班だけ男子のみにしました。他の班は6班以外男女同数です」
とその1班の班長でもある木下君が説明している。
 
「仕方ない。金野にスカート穿かせてお化粧させよう」
「俺身の危険を感じる!」
 

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龍虎は彩佳の班(3班)に入っていた。このメンツはこのようになっている。
 
入野桐絵・内海光春・田代龍虎・立石柚季・★南川彩佳・西山拓郎
 
「ねぇ、龍。連絡用の携帯だけどさ、龍のを貸してくんない?」
と彩佳は龍虎に言った。
「うん。彩佳ならいいよ」
 
それでこの班の連絡用携帯は龍虎のを使うことになった。
 
龍虎はプリントを見て「ボクたちの班も男4女2か」と思った。ここで龍虎はさっき木下君が「1・6班以外は男女同数」と言ったことを聞き漏らしている。
 
「なお、ホテルに泊まる時は、当然男女別になりますので、別途部屋割りを作っています」
と佐苗は言っていた。
 

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韓国に行っているバスケット男子日本代表は5月20日に準決勝で中国と対戦したが、相手が、軽く流している感じなのに全く歯が立たず大敗した。そして21日の香港戦では何とか勝って日本は3位となった。最終的な順位はこのようになった。
 
1.韓国 2.中国 3.日本 4.香港 5.台湾 6.モンゴル 7.マカオ
 
5位以上が7月のアジア選手権(マニラ)に進出する。
 

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男子日本代表の一行は5月22日(水)に帰国した。成田で記者会見などをしてから解散となる。取り敢えず前山・新野と3人で空港内のカフェでお茶を飲みながら1時間近く話した。それでまだ話しながらカフェを出たところに千里がいるのでびっくりする。慌てて左手を隠したが、指輪をつけている所をしっかり見られた。
 
「あ、細川君の奥さん、こんにちは」
と前山。
「こんにちは、前山さん」
と千里も笑顔である。
「あれ?僕のこと知ってました?」
「それは日本代表のサイトでお顔が出ていますし」
「あ、そうか」
 
新野が尋ねる。
「前山君、奥さんを知ってたの?」
「バスケ関係ではかなり有名。そもそも細川君と同じ結婚指輪してるじゃん」
「あ、ほんとだ」
 
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「今回はなんで日本代表に入らなかったんですかね?」
「凄い人たちがいますから」
「三木エレンとか引退させて、細川さんを入れればいいのに」
などと前山は言っている。
 
「レンさんはリオ五輪の直前に引きずり降ろしますよ」
「さすがにリオまでやるってことはないでしょう」
 

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前山は新野を連れて
「じゃ僕たちは先に失礼しますね」
と言って行ってしまう。
 
「じゃ帰ろうか?貴司」
「何で帰る?」
「A4 Avantを持って来ているよ」
「嘘!?」
 
「のんびりと運転して帰ろう。貴司は寝てていいから」
「うん。時間はあるよね?」
「21時までに市川に着けばいいんでしょ?」
「もしかして今日も練習?」
「それとも大阪のマンションに帰る?」
「まだ死にたくないから大阪には帰らない」
「勘がいいな」
 

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空港の駐車場に駐めていたA4 Avantに乗る。貴司は助手席に乗ろうとしたが、千里は「寝やすいように後部座席に乗った方がいい」と言うので、そうさせてもらうことにした。
 
「台湾戦すごかったね。あれで日本は決勝トーナメントに進出できた」
「我ながら頑張れたと思った」
「貴司は修羅場の経験が足りない。ああいう試合をたくさん経験することで貴司は伸びると思う」
「そうかも知れないね」
 
ふたりは時々パーキングエリアでトイレ休憩しては運転交替して、東名・名神と走っていった。17時頃に加西SAまで来る。残りは15分ほどで到着する。4時間ほどの余裕がある。千里はSAの建物からかなり遠い位置に車を駐めた。フロントグラスにはサンシェードを貼り付ける。そして言った。
 
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「少し休もうか」
「そ、そうだね」
「取り敢えずトイレ行ってこようよ」
「うん」
 
トイレに行って来た後、2人は一緒に車の後部座席に入る。
 
「いいの?」
「取り敢えず貴司、横になるといいよ。裸になって」
「マジ?」
 
それで貴司が嬉しそうな顔をして裸になるが、千里は服を脱がない。
 
「千里は脱がないの?」
 
「特に脱ぐ必要ないと思うけど」
と言って、千里は貴司の足をマッサージしはじめた!
 

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「気持ちいい!」
「これかなりこっているね」
 
千里は右足、左足を交互にマッサージしていく。
 
「できたら別の足もマッサージしてくれると嬉しいんだけど」
「貴司って足が3本あるんだっけ?」
「だからあそこだよぉ」
 
「私には分からないなあ。貴司の彼女さんなら分かるかも知れないけど」
「千里は僕の彼女じゃないの?」
「彼女と言うのなら、再度私に指輪を贈って欲しいなあ。でも私は貴司の妻だけどね」
 
しかし千里のマッサージがとても気持ち良かったので、貴司は結局そのまま眠ってしまった。
 
「ほんとに素直じゃないんだから」
と千里はつぶやいたが、素直じゃないのは自分かも知れない気もした。
 
「でもこれなんで立たないのかなぁ。私に性欲を感じない?」
などと言いながら千里は貴司が寝ているのをいいことにそれを弄んでいた。
 
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その日龍虎は彩佳と桐絵に“連行されて”ドラッグストアにやってきた。
 
「そんなもの買ってたら通報されて、ボク警察に捕まらないかなあ」
などとかなり不安を持っているようである。
 
「女の子が生理用品を買うのを誰も変には思わない」
「ボク男の子だよぉ」
「龍は女の子にしか見えないから問題無い」
 
それで3人で一緒に生理用品のコーナーに行く。
 
「この付近がパンティライナー、この付近がタンポン、ここ2列はナプキン」
と彩佳は説明する。
 
「タンポン使うのは、スポーツしている人とか、外国人とかが多いから、パンティライナーとナプキンを買っておけばいいよ」
 
「なんか色々種類があるね」
と龍虎。
「そそ。昼用・夜用、少ない日用・多い日用」
と彩佳。
「そして羽根付き・羽根無しがある」
と桐絵。
 
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「どれを選べばいいの?」
「それ私たちでも迷うもんね〜」
「うん。私も色々試行錯誤している」
 
「羽根無し・羽根ありは、ほらここにサンプルがあるでしょ」
「これどうやる訳?」
「羽根ありは、この羽根を裏返してパンティに貼り付けるから動きにくいんだよ」
「なるほどー」
「でも結果的に付けていることが一目瞭然だから、龍は羽根無しでいいと思う」
「さすがにつけてるの見られたら、変態かと思われそう」
 
一瞬彩佳と桐絵は顔を見合わせたが、気にしないことにした。
 

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「だったら、昼用の普通の日用・羽根無しを買えばいいと思う」
「でも色々ブランドがあるんだね」
「まあどこを使うかは好みだね。鉛筆をトンボを使うか三菱を使うかみたいな話」
 
「どこがお勧め?」
「どれかひとつ適当に買ってみて、それを使い切ったら別のブランドを買ってみればいい」
「うーん。試行錯誤か」
「やはりその人の肌に合う所、合わない所があるんだよ」
「そういうものか」
 
それで龍虎はセンターインの普通の日用・羽根無しを買うことにした。パンティライナーも同じメーカーのものを使ってみようということでソフィふわごこち・無香料のを買うことにした。香料付きはさすがにやばい。
 
レジを通る時、龍虎はまるで悪いことでもしているかのように、ドキドキしていたが、レジのお姉さんは何も言わずに龍虎が買ったものを紙袋に入れてくれてその上で龍虎が持って来たマイバッグに入れてくれた。
 
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「これなんで紙袋に入れてくれるの?」
とお店を出てから彩佳に尋ねる。
 
「まあ外から見られないようにだね」
「へー。こういうことするの、生理用品だけ?」
「うん。そうだと思う。だって持ち帰る時に人に見られたら恥ずかしいじゃん」
「そうか。恥ずかしいものなのか」
「乙女の恥じらいだよ」
「そのあたりがボクはよく分からない」
 
「でも龍って男の子の心も分からない」
「それは思う」
 
「だから女の子の心を少しずつ覚えていけばいいね」
「うーーーーん」
 

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彩佳たちは龍虎をその後100円ショップに連れて行き、布製の生理用品入れを買わせた。そしてそこにナプキン2枚とパンティライナー2枚をセットした。
 
「これいつも持ち歩いているといいよ。急に生理来た時に困らないように」
「そうしようかな」
 
と龍虎が真面目に答えるので、彩佳と桐絵はつい笑いそうになったのを何とか我慢した。
 
「でもナプキンってどこに置いておけばいいのかなぁ」
「うちはトイレに置いてる。そこがいちばん使う確率高いし」
「私は自分が使う物は自分の部屋に置いてる」
「龍も自分の部屋に置いてればいいと思う」
「お母ちゃんに見られて変に思われないかなあ」
「龍ちゃんのお母さんなら、容認してくれると思うよ」
「うーん・・・そうかも知れない気がする」
 
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貴司が目を覚ました時、車は市川ラボの駐車場に駐まっていた。
 
「わ!?」
「貴司、そろそろ21時だよ。練習行かなきゃ」
「うん。ありがとう」
「服は着た方がいいと思うけど」
「もちろんそうする!」
 
と言って貴司が女物のパンティとブラジャーを着けているので、千里は
 
「やはり貴司は女装に目覚めたのね?」
とからかう。
 
「いやこないだ言ったみたいにここでは僕は女子選手ということになっているから」
「じゃ本当の女子選手になれるように、これ切ってあげようか?私、止血できるよ」
「いや無くなるのは困る」
 
それで貴司は2階に上がっていった。
 
「さて、私も行かなきゃ」
と言って千里はスペインに戻してもらった。
 
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千里の練習時間は日本時間では21時から朝4時までである。
 

貴司は2階への階段を昇る途中で女の身体になった。そして練習が終わって部屋に戻るが千里が居ないので
 
「帰ったのかな?」
と思った。千里が居ないせいか身体は女の形のままである。
 
夜食が置かれていたのでそれを食べる。レンジで温めなくても充分暖かかったので、たぶんちょっと前まではいたのだろう。
 

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それで貴司はシャワーを浴びて眠ったが、朝目が覚めると千里がいる。パソコンを開いて何か作業しているようだ。
 
「あれ?いたの?」
「夜間に練習してたから」
「そうだったんだ?」
「最近私は夜9時から明け方4時くらいまで練習しているんだよ」
「そうだったのか」
 
それで取り敢えずトイレに行ったのだが、その時気付いた。
 
これ射精してる!?
 
いつの間に!????
 
ちなみに貴司は遠征中はペニスは存在せず、帰国して千里と出会った時に復活した。その後練習が始まる前に消滅し、練習が終わっても(千里がいなかったから?)無いままだった。しかし起きた時は復活していた(多分千里が部屋に戻った時に復活した?)。だから射精したのは今寝ていた間の可能性と、練習前に車の中で寝ていた時の両方があり得ると思った。
 
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トイレから出ると千里はお茶を入れていて、テーブルにマフィンに似たお菓子が乗っている。しかしマフィンより甘そうだ。
 
「これピオノノ(pionono)というんだよ。スペイン南部のグラナダ発祥のお菓子なんだって」
「へー」
「通りがかりのお菓子屋さんに出てたから買ってきた」
 
千里は本当にグラナダの町中で買ったのだが、貴司は東京か大阪のお店で買ったのだろうと思っている。
 
実際に食べてみるとシロップを染み込ませたロールケーキという感じであった。最近練習量が凄いので甘いおやつは食べていて心地よい。
 
貴司は千里と話していて、射精のことは、言及しない方がいいかもという気がした。そして普通にまたバスケの話でおしゃべりする。
 
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やがて朝食も一緒に取り、甘地駅に行き、千里に見送られて始発に乗った。千里は乗る前にキスをしてくれた。そして別れ際に千里は言った。
 
「私は貴司がプロポーズしてくれるのを待つ。貴司が私を愛してくれていることだけは確信できたから、今はそれでいい」
 
「今の段階では千里にプロポーズできる時が来るかは分からない」
「その時が来るまで5年でも7年でも待ってる」
 
貴司はそれには答えず千里にキスした。千里は人目をはばからずに貴司を強く抱きしめた。
 
「貴司、早く京平を産んでね。京平が生まれたら私貴司と結婚できるし」
「僕が産むんじゃないよ!」
 
貴司の身体は甘地を出てすぐに女の身体になってしまったが、そんなことよりも貴司は今千里が言った「5年・7年」という言葉を脳内で何度も再生していた。
 
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一方、千里(せんり)のマンションでは、ベッドですやすやと阿倍子が眠っていた。彼女は朝に弱いのでだいたい10時頃までは寝ている。
 
 
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娘たちの悪だくみ(12)

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