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■娘たちの悪だくみ(3)

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「フェイちゃんたちのRainbow Flute Bands、結構な反響があっているようですね」
「うん。凄い。かなり売れてる。もう全国ツアーが決まった。世間ではメンバー各々の性別が議論されているけど、フェイの性別が分かった子は少ないみたいね」
 
メンバーが全員セクマイというRainbow Flute Bandsは今年1月にデビューした。雨宮先生も千里もけっこうこのバンドに関わっており、デビュー曲も提供している。フルートの指導自体は忙しくて他の先生に委ねたものの、メンバーが使用する虹の七色の特製フルートは、製作費を千里が出してあげている。
 
なお、Rainbow Flute Bandsのメンバーは全員中高生なので、それぞれ各地区の学校にそのまま通い、音源製作やライブの時だけ札幌や東京に集まる形で活動をしている。Dream5などと同じ方式である。アリスなどはこのバンドの活動がきっかけになって学校から女子制服での通学を認めてもらった。
 
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雨宮先生も千里も彼らのバンドの出資者なので、売上げの一部をバックマージンとして受け取ることになっている。
 
「まあ迷いますよね。あとジュンちゃんも男の娘かと思われているみたい」
「あの子はそのあたり訊かれると曖昧な答えをするから、かえって疑われている」
「まあ男の娘でソプラノが出るのは、かなりレアですからね。ケイとか私とか」
 
「ケイにしても千里にしても実は元々女なのではないかという疑いがあるんだけど」
「それは無いです。ちゃんと去年プーケットで性転換手術してきましたから」
 
「それ考えていたんだけど、あんたどこの病院で手術したと言ってたっけ?」
「TAH, Tanputa Aesthetic Hospitalですけど」
「やはりそれであんたの嘘が分かる」
「なんでですか?」
「確認したけど、タンプータ先生は2009年に亡くなってその病院は閉鎖されている」
「嘘!?」
 
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「だからTAHで性転換手術を受けられたのはあの病院が設立された2004年から先生が病気に倒れる前の2008年まで。それ以降の予約は全て同じプーケットでサングァン先生がやっているPhuket Plastic Surgery Instituteに引け受けてもらっている。だからTAHで手術したということ自体で、あんたが手術を受けたのは中学2年から高校3年の間であるということが確定する。そもそもあんた高校2年の時に間違いなく性転換手術済みだったからね。医師も確認している」
 
先生が言う「医師が確認」というのはバスケ協会からの指示で性別検査を受けさせられた2006.11.13ではなく、雨宮先生に連れられて去勢手術を受けに行った2007.5.13のことである。この時、雨宮先生と蓮菜も千里のお股が間違い無く女の子の形であることを見ている。もっとも本当に千里が女の子になったのは2007.5.21である。
 
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「うーん・・・」
 
千里はこのタイムパラドックスに悩んだものの、あまり悩みすぎるのは“危険”な気がして、それ以上考えるのはやめることにした。
 

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ところで千里は別のことで悩んでいた。
 
結婚式を挙げるはずだった12月22日にその結婚式を挙げるはずだったホテルに行ってみたら偶然にも貴司と遭遇した。そしてうまく誘惑すると結局貴司はその後1週間千里と一緒に居てくれた。
 
この時はほぼ貴司の再略奪に成功したと思っていた。
 
ところが貴司は、なかなか阿倍子と別れることに同意しないのである。彼女に慰謝料を払う必要があるなら自分が肩代わりするからとも言ってみたが、何やらごにゃごにゃ言っていてハッキリしない。
 
その後1月のデートも、2月のデートも、自分としては結構うまくやったつもりだ。しかし貴司は阿倍子と別れてくれない。自分に再プロポーズしてくれない。
 
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千里は貴司の気持ちが分からなくなりつつあった。
 
貴司が自分とセックスしたがっているのは分かっているので、させてあげる手はある。しかしそれは最後の切り札なので、その切り札を使っても貴司が自分になびいてくれないと、千里はその先の手段を失うことになる。
 

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2013年3月6日(火).
 
日本バスケット協会はユニバーシアード(7.6-17)女子代表12名と、アジア選手権(10.27-11.3)女子代表候補24名を発表した。その名簿を見て、驚いた玲央美は直接協会の強化部長に電話した。
 
「ああ、佐藤君。君は今の時点では代表候補ということになっているけど、実際には代表確定だから、よろしく」
と強化部長は言った。
 
「それはいいんですが、なぜ村山がリストに入ってないんですか?」
と玲央美が訊くと、強化部長は困ったように言った。
 
「実は彼女の所属チームが分からなかったんだけど、聞いてない?」
「あの子は千葉ローキューツに籍はあるはずです」
「え?でも社会人選手権とかに出てなかったよね?」
「それなんですけど、2012年中は、前半は日本代表の活動で忙しく、後半は大学の卒業準備とか結婚で忙しいからというので、籍だけ置いて試合などには参加していなかったんです」
 
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「村山君結婚したの?」
「結婚する予定だったんですが、婚約破棄されたんですよ」
「嘘!?」
「だから結果的に村山は現在まだ独身です」
「彼女のプレイを最近見ている?」
「7月以降は見ていませんけど、彼女はトレーニングを怠っていない筈です」
「そうかぁ。一応検討してみるけど、試合から遠ざかっているというのはちょっと問題だなあ」
「召集すればすぐ勘が戻りますよ」
「ちょっと検討はしてみる」
と強化部長は言葉を濁した。
 

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2013年3月9-11日、大阪で全日本クラブ選手権が開催された。ひじょうにレベルの高い大会でローキューツも苦戦したものの、何とか優勝。昨年の優勝に続き2連覇を達成した。なおこの大会は一昨年は震災の影響で中止されたが、その前の2010年にはローキューツは3位であった。
 
今年千里は選手としては参加していないものの、オーナーとしてチームに同行。玉緒たちと一緒に事務処理などで奔走した。代表者会議にも千里が出席している。
 
この大会を見に来ていたバスケ協会の強化部長が、その代表者会議の終わったあと、千里に声を掛け、別室で少し話した。
 

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「じゃ本当に結婚がキャンセルになったんだ?」
「もう昨年の夏は踏んだり蹴ったりでした。直前で日本代表から落とされて、精神的に疲れて帰国してきたら、いきなり婚約破棄を通告されたんで」
「それは大変だったね」
と部長は同情するように言う。
 
「ついでに持病の治療で手術を受けたりもして、実は9月頃まであまりバスケをしていなかったんですよ」
「ああ。手術とかも受けてたんだ?」
 
「まあそのリハビリ中に自動車レースのラリーとかやっていたんですけどね」
「へー!それは凄い」
 
「バスケはだから10月頃から再開したんです。一時的に実力も落ちていたからこっそり練習しようと思って、私設体育館を建てちゃったんですよ」
「嘘!?」
「後で見られます?」
「それはぜひ見せて」
 
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それで千里は大会が終わった後、3月12日のまず午前中にJRで甘地駅まで移動して強化部長さんに市川ラボを見せる。
 
「ここに建てたのは本来はこの3月から私は大阪で婚約者と同居する予定だったからなんですよ」
 
「なるほど。しかしこれは凄い。本格的な試合ができる。最新鋭の電子得点板まであるじゃん」
 
「ゴールに取り付けたセンサーユニットで自動的に得点がカウントされるので。ひとりで練習している時に便利なんです。FIBA非公認の機能だから大会の時はセンサーは外しますけどね」
 
「なるほど」
 
「でもここ、あくまで練習用だから、観客席とかが狭いんですよ」
 
千里は観客席とか要らないと言ったのだが《たいちゃん》が『どうせこういうのを建てるなら経費は大差無いから作っておくべき』と言ったので、1000人程度は座れる観客席が2階に設置されているのである。むろんセンターコート仕様にすれば合計2000人くらいは観戦できるはずである。一応消防署にはバスケの大会で2000人、ライブコンサートなら3000人ということで認可も取っている。
 
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(フロア面積が1540m2なので法令上はフロアに7700人まで入れられるが、さすがにそれは無茶である)
 
「あぁ・・・。でも中高生の大会とかで使わせてもらってもいい?」
「はい。お安くしておきますよ」
と千里は笑顔で言った。
 

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午後から新幹線で移動して、夕方には常総ラボもお目に掛ける。
 
「こちらは本当に個人的な練習用って感じだね」
「そうなんです。狭いですし。あくまでトレーニング用です」
 
「それでさ、実際どのくらいできるの?ちょっとスリーを撃ってみせてよ」
「スリーくらいいいですよ」
 
それで千里は30本撃ってみせたが、全部入る。
 
「衰えてないじゃん」
「スリーくらいは入りますよ。でも7月以降全然試合に出てないから、勘がにぶっていると思います。ですから、今回はおそらく日本代表では皆さんの足手まといになりますよ」
 
強化部長は考えていた。
 
「ねぇ、君、4月からWリーグに来ない?今ならまだ12人のロースターが固まっていないチームもある。Wリーグに来たら、その試合勘がすぐにも取り戻せるよ」
 
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「私の実力じゃWリーグなんて無理ですよ〜」
「君が無理なら、無理でない選手が5〜6人しか居ないよ!」
と強化部長は言った。
 

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「うーん。君の実力は評価するけど、悪いけど今うちスモールフォワードは既に2人いるから、これ以上増やせないんだよ」
 
とそのチーム責任者は貴司に言った。
 
「そうですか」
「もし来年とかに欠員が出たりしたら連絡してもいい?」
「はい、よろしくお願いします」
と言って、貴司はその事務所を出た。
 
はぁ、とため息をつく。似たような感じでもう4チームに断られているのである。
 
「やはり動き出すのが遅すぎたかなあ。でもタイミングが難しいよ。みんないつ頃、チーム巡りとかしてるんだろう?」
と貴司は呟いた。
 

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その日、千里は川南の仲介でさいたま市内のファミレスで龍虎と会い、彼が持って来た折り畳み式の碁盤とプラスチック製の碁石を使って囲碁を打った。
 
龍虎が9子(し)置き、対戦したのだが、その9子のハンディ(目にして90目分くらい)があっという間に無くなるので、龍虎は「凄ぇ」と思った。彩佳だと9子置いてしまうと龍虎が勝ってしまうこともあるのである。
 
「このくらいにしておこうか」
「はい、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
 
「でも場面場面で物凄く考えさせられた」
と龍虎は言う。
「今みたいなのを指導碁と言うんだよ。考えさせるように千里さんは打ってくれた」
と観戦していた彩佳が言う。
「なるほどー」
 
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「龍ちゃん、囲碁ソフトで練習してたでしょ?」
と千里が言った。
 
「あ、はい!」
「独特の癖がある。龍ちゃんの打ち方はソフトの打ち方の裏をかくんだ」
「わっ」
「それは人間には通用しないんだな」
「そっかー」
「だから、これからは人間相手にたくさん打つといいよ」
 
「いやこれだけ打つのなら私が5子くらいで対戦したい。私も勉強になる」
と彩佳は言っている。
 

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「龍ちゃんは今5-6級の腕前だと思う」
と千里は言った。
 
「昨年秋の囲碁大会でこの子、BEST8に残って5級認定されたんですよ」
と彩佳。
「やっとあの認定に追いついたかも」
と龍虎。
「それちゃんと追いついたのが偉いね」
と川南。
 
「千里さん、私とも打って下さい」
と彩佳。
「うん。石は何個置く?」
 
「5子くらいでいいですか?」
「いいよ」
それで彩佳が千里と打ち始め、龍虎と川南が観戦した。
 
ちなみに今日の龍虎はピンクのカーディガンにペールピンクのブラウス、白い膝丈のプリーツスカートに可愛いマイメロのミュールを履いていたが、龍虎の服装には誰も突っ込まなかった!
 

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娘たちの悪だくみ(3)

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