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「バレエの衣裳でも上に上げずに中に納めたもんね」
「でも上にあげる衣裳恥ずかしいと思ってたからあれでいい」
「上?中?」
と茉莉花が訊く。
「男の子のあそこは足を開いてジャンプした時に挟むと痛いから、普通は上に持ち上げて、プロテクターで守るんですけどね。この子の場合は、夫が手伝って上に上げようとしたけど、小さくて持ち上げるのが無理っぽかったんですよ。それで年末に青い鳥を踊った時は、私が手伝って中に納めて、水泳用のアンダーショーツで落ちてこないように押さえ込んだんです。ですから、白タイツ穿いた時に、女の子と同じようにスッキリしたお股の形になっていたから、観客席から『今年は青い鳥役は女の子が踊っているのね』とか言われてましたけど」
「フロリナ姫じゃなかったら、まだいいよ」
などと龍虎は言っている。
「お姫様踊るはずだったの?」
「当日、フロリナ姫役の子が風邪引いて休んじゃったんですよ。ボクはいつもその子とペア組んで練習してたから、実はフロリナ姫の振り付けも踊れたんですけどね」
「へー!」
「青い鳥の振り付けはボクが休みがちだから、ボクが休んだ場合別の子が踊ってくれることになっていたし、その子に青い鳥を踊ってもらって、ボクにフロリナ姫を踊ってもらおうかとも言われたんですけど、結局、フロリナ姫は去年の公演で踊った中学生のお姉さんが踊ってくれたんです」
「それで青い鳥を踊ったんだ?」
「背丈が違うから大変でしたけど」
「ああ、そうだよね!」
「ボクが爪先立ちで踊って、フロリナ姫役の人が腰を落として踊って何とか辻褄合わせましたけど」
「それは逆に凄いことしている気がする」
午後からは集団演技が行われる。最初は6年生の鼓笛隊行進が行われる。5年生の龍虎はその次の出番なので、昼休みが終わるとすぐに集合場所の視聴覚室に行った。
ちなみに「祭神輿」に出る児童は理科室に、「集団ダンス」に出る児童は視聴覚室にと言われている。
龍虎が視聴覚室に行くと、増田先生が
「これ穿いてね」
と言って水色のミニスカートとカチューシャを渡すので龍虎はギョッとする。
「これ衣裳なんですか?」
「そうそう。スカート穿いて、髪にカチューシャ付けてね」
と増田先生。
彩佳が来て、龍虎を引っ張っていく。
「なんでスカートなの〜?」
と龍虎は彩佳に訊く。
「AKB48は女子のユニットだし」
「私たちも女子ばかりだし」
「ボク、男子だけど」
「龍ちゃんは半分女子だから、いいんだよ」
ボクって誤解されているかもと龍虎は思う。
「龍はスカートくらい普通に穿いてるじゃん」
「そうかも知れないけどね〜」
それで龍虎は仕方なく水色のスカートを穿いた。
「ハーフパンツを脱いでスカートだけになってもよいが」
「遠慮します」
カチューシャは自分で付けたのが「変だ」と言われて彩佳が直してくれた。
「カチューシャとかしたことない?」
「したことない」
「龍ちゃんセミロングヘアだし、割と似合うと思うけどなあ」
「よし、行こう!」
とこの集団ダンスのリーダーに指名されている真智が声を掛け、入場門の所に行った。すると先に「祭神輿」に出る“男子たち”が既に集合している。
「男子たちの衣裳凄いね」
「恥ずかしいよぉ」
と彼らは言っている。男子たちは褌(ふんどし)に法被(はっぴ)なのである。
ひぇーっという顔をしていた龍虎の視線に気付いた西山君が尋ねた。
「田代、褌(ふんどし)とミニスカとどちらがいい?」
「褌(ふんどし)よりはミニスカートかな」
と龍虎は即答した。
「つまり田代は、今は性別が曖昧だけど、やがて女子に収束するということだな」
と西山君は言った。龍虎は「しゅうそく」と言った西山君の言葉が分からなかった。でもボク、性別曖昧なんだっけ??
6年生の鼓笛隊が、西城秀樹の『ヤングマン』、光GENJIの『勇気100%』(忍たま乱太郎主題歌)、AKB48『フライングゲット』の3曲を演奏した。
続いて5年生男子による「祭神輿」が行われる。褌と法被姿の男子たちが神輿を担いで走り出し、勇壮なパフォーマンスをした。
茉莉花はプログラムに「5年生男子」と書かれているので、龍虎が出ているのではと思い、じっと見ていたのだが分からなかった。
「龍虎ちゃん、どこかな?」
「これには出てないみたいね」
「あら、どうしたのかしら」
そんなことを言っている内に、神輿のパフォーマンスは終わり男子たちが退場する。その後、5年生女子による「集団ダンス」と告げられる。
すると5年生女子がクラスごとに3つの集団に別れて出てきて、最初に全体でももクロの『行くぜっ!怪盗少女』のダンスをする。
「・・・あの1組の前面で踊っているの、ひょっとして龍虎ということは?」
と茉莉花は訊いた。
「ああ、やはりこちらに出てきたのね」
「でもなんで?あの子女子なんだっけ?」
「うーん。男子だと思うけど」
「龍虎は体力無いから、男子と一緒に神輿のパフォーマンスとかしたら怪我しそうということでこちらに入れたのかもね」
「でもスカート穿いてるけど」
「あの子、わりとスカート穿いてる時あるよね?」
「うん。学校にスカート穿いて行ったことも何度かある気がする」
などと田代夫妻は言っている。照絵はおかしくてたまらないような顔をしている。
「ほんとにあの子、男子として就学してるんでしょうか?」
「男子だと思いますよ〜」
「でも体育は女子のポジションでしてるみたいだし、トイレも女子トイレ使うんでしょ?」
「うーん。体育は体力無いから女子と一緒の方がよいというだけで」
「おちんちんが小さくて立ってできないからトイレは女子トイレ使った方が問題ないというだけで」
「スカート穿くのは好みの問題だし」
「先月の家庭訪問の時、担任の先生が龍虎のこと『お嬢さん』と言ってたけどたぶん言い間違い」
「まあ普通に男子だと思いますが」
「普通ではない気がする」
と茉莉花は言った。
「あの子、もしかして女の子になりたい男の子ということは?」
「女の子になりたいなら、女性ホルモン飲む?と訊いたら、別に女の子になりたいわけではないと言ってますけどね」
「うーん・・・」
やがてクラスごとのパフォーマンスが行われる。最初に1組の『Everydayカチューシャ』が行われたが、龍虎は4×4のフォーメーションの先頭中央に立ち、目立つパフォーマンスをしている。途中、隣に立つ長身女子と同時に立ったまま前方転回(ハンドスプリング)する技まで見せて、思わず観客から歓声があがった。
「なんかあの子、今凄いことしましたね!」
「あの子、身体が柔らかいから、ああいう技もできるみたい。バク転もできますよ」
「へー!」
「バレエやってるから身体が柔らかいみたい」
「なるほどー」
その後は2組のExile『Rising Sun』、3組のKis-My-Ft2『Everybody Go』とダンスが行われたあと、全体で日本古謡『さくら』に合わせて美しく優美なパフォーマンスをして、大きな歓声と拍手をもらい、5年生女子の出し物は終わった。
茉莉花は閉会式まで見てから言った。
「あの子は、とにかく目立つ子ですね」
「ええ。きっとあの子、その内歌手とかになりたいと言い出す気がします」
茉莉花は大きく頷いた。
5月21日(月)の朝は金環食があった。東京でも金環食になるのを見ることができるので、NTCに籠もっていた千里たちも、その時間帯には、みんな表に出て、予め渡されていた日食グラスで華麗な天体ショーを見た。
なお高梁王子は寝ていてこの金環食を見逃したのは言うまでも無い!
この日の金環食のデータ(東京)
部分食開始 6:19 金環食開始 7:32 食最大 7:34 金環食終了 7:37 部分食終了 9:02
「3年前の日食を思い出すね」
と玲央美が言う。
「あれ2回見たもんね〜」
「うん」
ちょうど《スペシャル・マンス》に掛かったため、千里は1度目は雨宮先生たちと一緒に奄美で皆既食を見、2度目はタイのホテルの中庭で部分食を見た。玲央美は1度目は桃香と一緒に福岡で部分食、2度目はタイのホテルで千里たちと一緒にまた部分食を見ている。但し千里は福岡で玲央美が桃香と一緒に日食を見たことは知らない。
21-22日は東京の代々木第2体育館で日本代表の壮行試合が行われた。
結果は次のようであった。
21(月) SVK×74-80○JPN
22(火) SVK×64-66○JPN
千里はこの2試合でも各々3〜4分しか出場していない。
これなら《すーちゃん》に試合出場の代理頼んでも良かったよ、などと脳内で独りごとを言うと《すーちゃん》が嫌そうな顔をしていた。
しかし・・・なんでこんなに出番が無いの?
王子は21日の試合には少し出してもらったものの、22日はまた出番が無かった。亜津子と玲央美の出番もほとんど無かった。
「まあ、私たち4人は落選候補ということなんじゃないの?」
と亜津子は言った。
「選手を選ぶのは上の人たちだから、その決定には私たちは何も言えないけど、面白くない」
と千里。
「まあ出られないのは面白くないよね」
と亜津子も投げやりな感じで言った。
千里が代々木第2で午後にバスケット教室などをし、夕方から試合のベンチに入っていた頃、“千里”は桃香・彪志と一緒に新幹線・はやぶさの乗り継ぎで高岡に向かい、青葉の誕生会に出た。
(この日青葉が《代役》に気付かなかったのは青葉が彪志ばかり見ていて、千里には注意を払っていなかったのもある)
誕生会が終わった後は家族だけで団欒をし、お風呂に入って夜23時頃には各々の部屋に入る。
彪志は青葉の部屋に、千里と桃香は桃香の部屋に入る。この2つの部屋は2階の並びの部屋である。大きな音を立てるとお互いに聞こえる。
青葉と彪志は筆談!を交えながら、音を立てないように気をつけて愛の確認をした。
「へー。だいぶ練習しているんだ?」
「先輩が車を夜中なら使っていいよと言うからさ、それで借りて練習してる。そもそも交通量の少ない夜間の方が少し下手な運転しても、周囲に迷惑掛けないだろうしね」
「確かにね。でもいい先輩いてよかったね」
「毎晩夜0時から2時頃まで運転の練習している。1日に80kmくらい走ってるから、もう2000kmくらい走ったかな」
「すごーい。だったら、今度の岩手行きの時に安心して運転任せられるかな」
「まだ初心者の部類だけど、頑張るよ」
一方隣の部屋では、桃香がいきなり千里を襲おうとして撃退され、お腹を押さえて苦しんでいた。
「今日の千里のパンチは普段より更に強い」
「季里子ちゃんがいるのに、浮気するなんてあり得ない」
「恋愛抜きのセックスは浮気の内に入らないと思うけどなあ」
「それ季里子ちゃんに言ってあげようか?」
「やめてー!」
しかし“千里”はその後、スヤスヤと眠ってしまう。桃香はおそるおそる起きてそっと千里の布団に侵入する。
「千里ちゃん寝てるかな〜?」
などと小さな声を出しながら千里にキスをすると、片手で千里の乳房を触りながら片手でパジャマのズボンを下げパンティも下げてしまう。ちんちんに手が触れてゴクリとつばを呑み込む。
「早く邪魔なちんちんなんか取ってしまえるといいね」
などと言いながら、桃香はその後ろの方に手をやり、ここかな〜?と思う所に自分のをインサートした。
「千里ちゃんって、まるで女の子みたいにスムーズに入るよね〜」
などと独り言をいいながら“眠っている千里”とセックスしてしまう(完璧にレイプである)。しかしそのやられている“千里”が思わず微笑んだことに桃香は気付かなかった。
“千里”は桃香にやられながら『すごーい。桃香ちゃん、排卵期じゃん。良質の卵子ゲット〜〜!』と心中思っていた。