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■娘たちの収縮(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-05-20
 
2012年4月9日(月).
 
彪志の大学の入学式が千葉ポートアリーナで行われた。彪志は母に買ってもらったスーツで式に出席した。
 
学長の話を聞きながら、彪志は一昨日青葉を抱いた感触を思い起こしたりしていた。
 
青葉は7日に高岡から出てきて、ふたりでディズニーランドに行きたくさん遊んだ。そして一晩一緒に過ごした後、8日にはお昼を桃香・千里と一緒に食べ、8日午後は4人でのんびりと桃香のアパートで過ごした。
 

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8日、千里は実は日本代表候補の合宿をしていて、この日は最終日だったのだが、お昼前に電気系統の故障(?)からフロアが使えない状態になってしまい、練習は終わってしまった。それでこれ幸いに彪志・青葉たちに会いに行き、青葉・彪志・桃香・千里の4人でお昼ごはんを食べた後、午後は桃香のアパートでのんびりと過ごした。
 
夕方、青葉と彪志が一緒にアパートを出て東京に向かう。それで桃香は季里子のアパートに帰るということだったので、ディオチェスタを貸し、千里本人は《きーちゃん》に転送してもらって《すーちゃん》と入れ替わりで江戸川区のマンションに行き、そこで作曲作業をした。
 
明け方、少しアイデアに詰まったので、ドライブでもしてこようと思い、マンション近くの駐車場に行く。ここにはインプレッサが駐まっている筈であった。
 
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この時期、千里はこの江戸川区の駐車場と千葉市内中心部近くの駐車場の2つを借りていて、片方にインプレッサ、片方にZZR-1400を駐めていることが多かった。ところがこの日、駐車場に行ってみると、自分の駐車枠の所に異様な物がある。
 
「何これ〜〜〜!?」
と思わず声をあげる。
 
そこには見たことの無い軽バンが駐まっているのである。何やら貼り紙がしてある。
 
「千里へ。喜べ。これを中身ごと君にプレゼントする。インプレッサはイオンに駐めておいた」
 
「こんなのをプレゼントって、一体何させるつもりなのさ〜〜〜!?」
 

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取り敢えず車を見てみると、ダイハツ・ハイゼットである。鍵は掛かっていない(盗まれたらどうするんだ?)ので開けてみると、ギョッとする。
 
車内にバイクが1台入っているのである。
 
そのバイクをチェックすると、カワサキのNinja ZX600Rである。昨年秋に“もらった”ZZR-1400の弟分のようなバイクだ。ところがよく見ると、ミラーが取り外されている!取り外したミラーは傍の箱に入れられているのだが、箱の中をよく見ると、スタンド、ウィンカー、タンデムステップも取り外されているようである。こんなのを取り外したまま走行することはできない・・・・
 
と思っていて気がついた!
 
これはサーキットで走るための設定だ。
 
よく見るとライトにもテーピングが施されている。サーキットでバイクを走らせる場合、ミラーやライトは割れて飛散すると危険なので取り外したり、テープを貼ったりするのが基本である。先日富士スピードウェイでインプレッサを走らせた時もテーピングをした。
 
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要するに・・・・これでサーキットを走れということで、この状態のバイクは公道は走れないので、このハイゼットで現地まで運んでいけということか!
 
何て親切な。
 
他に段ボール箱が置いてあり、中を見ると、レーシングスーツ、グローブ、靴、ヘルメットなどが入っている。どうもこれはバイク用の装備のようである。四輪用のレーシングスーツをオーダーした時に多分二輪用も同時にオーダーしてあったのだろうなと納得する。
 
あらためて運転席の方を見てみると、予約票を印刷したものがある。バイクの講習会の予約である。
 
日付を見てみると・・・・明日かい!?
 
日付は4月10日(火)、ツインリンクもてぎになっているのである。
 
やれやれ、今度は栃木か。
 
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なお、インプレッサを長時間イオンに置いていたら叱られそうなので、朝になったら取り敢えず千城台の体育館へ移動しておいてくれるよう《きーちゃん》に頼んだ。
 

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4月10日(火).
 
千里はZX600Rを載せたハイゼットを運転して常磐道を走り、水戸北SICを降りて30分ほど走り、栃木県茂木町(もてぎまち)の《ツインリンクもてぎ》にやってきた。
 
ここには5つのコースがある。
 
スーパースピードウェイ(2.4km)、ロードコース(4.8km)、マルチコース(600m), 北ショートコース(1km)、南コース(1.2km)
 
北ショートコースと南コースが主として講習などに使用される。今回の講習は南コースを使うという話であった。
 
バイクのライセンスは走る場所によって、サーキットを走るロードライセンス、オフロードのコースを走るモトクロス、オンロードとオフロードを複合したスーパーモト、バイクの操作技術を競うトライアル、そして未知のコースを走り、バイクが壊れたら自分で修理してまた走るという耐久レース?のエンデューロ、と分けられている。
 
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千里が取りに来たのはロードレース国内ライセンスである。
 
これを取るには講習会の受講と3時間のスポーツ走行が必要である。
 
ロードレース国内ライセンスの上には、レースでの実績によって昇格する国内B級、国内A級があり、更にその上に国際B級、国際A級がある。また講習会を受けただけで取れるフレッシュマンというライセンス、更には誰でも申請するだけでもらえるエンジョイ・ライセンスというのもある。エンジョイは事実上、競技ライダーのための保険のようなものである。
 

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今回の講習は平日ということもあり、参加者は8名である。男性6名と女性2名だった。もうひとりの女性は紅畑さんと言ってニンジャ250Rに乗っているということだった。
 
「わぁ。同じニンジャだ!」
「そちらは?」
「ZX600Rなんですよ」
「すごーい!私まだ大型二輪を取ってないんですよ」
 
この日は紅畑さんと女2人でおしゃべりしていると、どうも男性は近づきにくいようで、声を掛けてきたのは結城さんという人だけだったが・・・ナンパするような感じではないし、そもそも彼の“話し方”が特殊である。
 
「ね、ね、もしかして結城さんって、乙女ちゃん?」
「えへへ。分かります?」
「じゃ私たち“女3人”ということで」
 
彼(彼女?)はトイレは自粛して男子トイレを使用していた。
 
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最初2時間ほど講義があり、その後、南コース(1.2km)に出てインストラクターの方が模範走行をしてくれる。それを見て各自走ってみて色々注意をされるのだが・・・
 
千里はほとんど注意されなかった!
 
「君、かなりサーキットで走っているでしょ?」
「いえ、バイクでサーキットを走ったのは初めてですが」
「ああ、峠とかを攻めるタイプ?」
「うーん。この1月に北海道の雪道を走った来ましたが」
「それはなかなかハードなことをしてるな」
 
1時間ほどの指導の後、講師の後に付いて南コースを走る。これはゆったりとしたペースで、基本を再確認するような走行となった。これをまず30分走り、休憩を挟んで再度30分走って講習は終了した。
 
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休憩を挟んで、希望者だけ今度はロードコース(4.8km)に行ってフリー走行をする。これには6人が参加した。紅畑さんは入っていたが、結城さんは参加していない。これに参加しない場合は《フレッシュマン・ライセンス》を持ち帰ることになる。後日3時間のスポーツ走行をすればロードレース国内ライセンスにステップアップできる。
 
千里や紅畑さんは今日1日でそこまで取るつもりである。
 
このフリー走行は最初はみんな110km/h(一周2:36)くらいのゆっくりしたペースから始めたが、千里はすぐに120km/hに上げ、更に130km/h(一周2:13)に上げた。そして千里の後をずっと紅畑さんが付いてきた。男性4人の内1人CBR1000RRに乗っている人は最初から150km/hくらいで走っていたが、2人(YZF-R6,GSR250)は千里と似たようなペース(少し速め)、もう1人は本当の初心者のようで110km/hくらいで走り続けていた。しかし走行ラインが定まっているので、安心して抜いていくことができた。
 
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1時間ほど走ってから休憩する。取り敢えずトイレに行くが、紅畑さんも一緒である!取り敢えずお互い感想など言い合った。
 
「さっきのペース辛くなかったですか?」
「まだ余裕がある感じでした」
「じゃもう少しスピードアップしてみましょうか?」
「ええ。そうしましょう。バイクであのスピード出すの何か物凄く気持ちいいです」
「私も思った!」
 
彼女は小さな声で言った。
「セックスより気持ちいいと思わない?」
「思った!」
 
それでお互い笑った。
 

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昼食を取り、少し休憩した後で、2度目のフリー走行になるが、参加者は5人だけである。さっき低速で走っていた男性が午前中だけでリタイアしたようだ。また後日挑戦するのだろう。
 
今回千里は130km/hから始めて140km/hくらいまで上げて行く。紅畑さんはしっかり付いてくる。他の人もさっきよりペースが速めになっていて、CBR1000RRの人は170km/hくらい出ている感じだった。
 
1時間走ってからまた休憩する。そして3本目のフリー走行になるが、1人リタイアしたようで4人になった。高速走行しているCBR1000RRの人と、やや速いペースで走っているYZF-R6の人、そして千里と紅畑さんである。
 
(GSR250の人は体調が悪くなってリタイアし、しばらく医務室で寝ていたらしい)
 
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この3回目のフリー走行では、CBR1000RRの人は180km/hくらいで走った。YZF-R6の人も170km/hくらい出しているが千里たちは、150km/hくらいで走り始めた。直線で160km/hくらいまで上げてみても紅畑さんは付いてくるので「このくらいまでは行けるようだ」と考えて、直線を160km/h, カーブを少し落として走った。
 
30分くらい走った所でYZF-R6の人がサンドに突っ込んでいるのを見る。
 
ありゃ〜と思ったのだが、彼はその後復活して走り続けて最終的にはちゃんと1時間走行を達成した。でもトラブルの後は130km/hくらいで走っていた!
 

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フリー走行が終了する。
 
「165km/hくらいまで上げても付いてきてましたね」
と千里は紅畑さんに言ったのだが
「あのくらいが限界だったみたいですー」
と彼女は言っていた。
 
「じゃマシンの性能ぎりぎりくらいまで上げた感じかな」
「そうかも〜。でも気持ち良かった!」
 
千里たちはYZF-R6の人にも声を掛けた。
 
「お怪我はありませんでした?」
「かすり傷程度です。いやぁ面目ない。ちょっとカーブでスピード出しすぎた所に横風を受けて、あっと思った時には砂の中に突っ込んでました」
「でも完走できてよかったですね」
「ええ。おかげさまで」
 
ともかくも今日は千里・紅畑さんと男性2人の4人がMFJのロードレース国内ライセンスの申請資格を得たので、その申請書類を書いて提出した。
 
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千里たちが書類を書いていたら結城さんが
「おめでとうございます」
と言って、拍手しながら近づいて来た。スカート穿いてお化粧もしてる!講習の時はバイクに乗る服装ということでツナギだったのだろう。
 
「もしかして見学してました?」
「今日はスポーツ走行する自信が無かったからまた次回挑戦ということで。でもここのサーキットライセンスだけはもらって、南コースの方で少し練習してました。30分くらい前にあがって着換えてみんなの走りを見てたところです」
 
「だったら次からフリー走行できますね」
「ええ。頑張ります」
 
千里と紅畑さんも、MFJライセンスと同時に、このサーキットのライセンスも取得している。
 

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結城さんは自分のGSX250SSカタナをACTY軽トラに載せてきていた。
 
「村山さんのバイク、かなり大きいのにハイゼットバンに載るんですね!」
と彼女(と書いていいだろう)は言っている。
 
「よく分からないけど、きれいに載ってますね」
「凄いなあ。屋根付きで載ってくれると雨に濡れなくて済むし」
と結城さん。
 
「ああ、確かに軽トラで運んで雨に濡れて動かなかったなんてことあるらしいですよ」
と紅畑さんは言っている。
 
紅畑さんはニンジャ250で自走してきていた。それで取り外していたミラーやスタンド、ウィンカーにタンデムステップを取り付け、ライトに貼っていたテープを取り外して、タイヤの空気圧も公道走行用の圧力に戻し、それから帰るということであった。千里のハイゼット、結城さんのACTYと、紅畑さんのNinjaで一緒に走って宇都宮に出て“女3人”で一緒におしゃべりしながら宇都宮餃子を食べた。
 
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結城さんは、バイクの講習を受けていた時はツナギ姿でお化粧もしてなかったからか男子トイレを使っていたものの、スカートを穿き、お化粧もしていると、女子トイレを使っている。
 
「結城さん、常時女子トイレを使うようにした方が問題少ない気がする」
「なかなか自信がなくて」
「でもスカート穿いてても、男だと思われたら通報されますよ。だから逆にズボン姿でも、お化粧してなくても、いつでも女に見えるように身だしなみとかも気をつけるようにした方がいいと思う」
 
「そうですね。少し頑張ってみようかな」
と結城さん。
 
「5年後の性転換を目指して頑張ろう」
と紅畑さん。
 
「性転換・・・どうしよう?」
と結城さんは悩んでいるようであった。
 
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しかしこの日もなかなか楽しい1日であった。
 

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娘たちの収縮(5)

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