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■娘たちの収縮(7)

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千里たち女子日本代表候補の一行は4月22日にナショナル・トレーニング・センターに集合した後、23日にアメリカのフェニックス(アリゾナ州)に向けて出発した。5月15日まで3週間にわたるアメリカ合宿の始まりである。
 
NRT 4/23(Mon) 17:25-10:45 SFO 12:40-14:43 PHX
 
サンフランシスコまでは9時間20分の旅、サンフランシスコからフェニックスまでは2時間3分の旅である。今回の目的地のフェニックス(山岳時間)、ロサンゼルスとシアトル(太平洋夏時間)はUTC-7で全て日本(UTC+9)と16時間の時差がある。日本の16時が現地の同日0時である。フェニックスは夏時間を使用しないので、結果的に太平洋時間の夏時間と同じ時刻になる。
 
アリゾナ州はカリフォルニア州南部の東隣である。北側がユタ州で北西にネヴァダ州、東隣はニューメキシコ州で南側はメキシコと国境を接する。アリゾナ州北部にある大峡谷地帯がグランドキャニオンである。
 
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なお、カリフォルニア州の北隣はオレゴン州でその北隣にシアトルのあるワシントン州がある。
 

到着当日の23日は時差調整もあり、ホテルで休む。到着は4/23 14:43だが、日本時刻では4/24 6:43になる。夜通し起きていたようなものである。千里は夕食もパスさせてもらって、すやすやと寝ていた。他にも夕食を食べずに寝ていた子が結構いたようである。
 
24日からは早速練習が始まる。練習の場所になるのは、このフェニックスを拠点とするNBA Phoenix Suns と姉妹チーム WNBA Phoenix Mercury の本拠地となっているUS Airways Centerの練習用コートである。
 
そしてPhoenix Mercuryというのは羽良口英子の所属チームである!
 
ここはサンズのオーナーJerry Colangelo主導のもと、1990年から建設が開始され1992年に竣工したもので当初アメリカ・ウェスト航空が命名権を持って、America West Arenaと呼ばれた。2007年に同航空がUSエアウェイズに吸収されたため、ここの名前もUSエアウェイズ・センターと改名されたものである。
 
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(その後、2015年にUS Airwaysが撤退して代わってホテルなどを経営するTalking Stick Resortが命名権を取得。2018年現在はTalking Stick Resort Arenaと呼ばれている)
 

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さて・・・コーチングスタッフであるが、結局今回、ヘッドコーチもアシスタントコーチも来ていない。代わって練習の指揮を執るのは、エレクトロ・ウィッカの村出監督である。
 
選手達にとっては見知った顔なので率直に尋ねた。
 
「今回のヘッドコーチとかアシスタントコーチって、一体どうなってるんです?」
 
「うーん。僕にもよく分からないんだよ。ほんの一週間前にヘッドコーチがアメリカに入国拒否されたんで、代わりに頼めないかと言われて、慌ててESTAを取ったんだよね。本当にどうなってるんだろうね?」
などと村出さんも言っている。
 
「入国拒否って、一体何をやらかしたんです?」
「何だろうね?」
「ESTAの質問項目のどれかにうっかりYESと答えてしまったとか」
「ああ、それ割とありがちなんだよね。マウスで変な所クリックしてしまったりとか」
「あるいはテロリストと同姓同名だったとか」
「実は薬物で捕まったことがあったとか」
「不法滞在したことがあったとか」
とみんな無茶苦茶言っている。
 
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「でもアシスタントコーチの方は?」
「何かの手術を受けて回復まで1ヶ月くらい待って欲しいということ」
「それ本番に間に合うんですか〜?」
「どうなんだろうね?」
と村出さんも投げやりである。
 
「でも何の手術なんだろう?」
「年が年だしなあ。何があってもおかしくない気はする」
「性転換手術とか?」
「まさか」
 

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しかし馴染みのある村出さんの指揮なので、選手たちものびのびと練習することができた。
 
元々ハイレベルの選手ばかりなので、やはり中心となるのは連携練習である。練習は午前中(9-12h)と午後(14-17h)の2回6時間と、時間的にはやや不満のある時間数であるが、午後の時間には、フェニックス・マーキュリーの女子選手たちと合同練習になり、レベルの高い選手たちのプレイを間近に見て刺激を受けている選手も多かった。
 
今回の合宿参加者はスペインに居る横山温美を除く19名である。マーキュリー所属の羽良口英子は、この合宿では日本側の選手として参加である。彼女の仲介で、向こうの多くの選手と交歓ができて、思った以上に有意義な時間となった。特に若い世代の選手は向こうの選手から色々指導してもらった。亜津子と千里もマーキュリーのシューター Susie Johnson から色々教えてもらったものの「君たちは凄すぎてあまり教えることないなあ。私もあと2-3年で引退するし、その後うちに移籍してこない?」などと勧誘(?)されてしまった。亜津子はかなりマジに取っていたようである。
 
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羽良口英子ともうひとり現地からの参加者は、ロサンゼルスのトロイ大学に留学中の高梁王子である。トロイ大学はNCAAの女子バスケットボールリーグ1部(DI)に所属しており、高梁は充分ベンチ枠を狙える位置で日々の練習に励んでいる。
 

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25日の午後からはUS Airways Centerのメインアリーナで、マーキュリーの選手たち(主としてボーダー組)と練習試合をする。現在WNBAはセレクション期間でロースターが固まっておらず、ロースターに残ることができなければ解雇されるので、このボーダー組は必死である。その必死さにやられてこの日は大敗したものの、強い人たちのマジな試合は、極めて強い刺激になった。
 
夕方からはそのメインアリーナで行われた NBAのフェニックス・サンズと、サンアントニオ・スパーズ(San Antonio Spurs)との試合を観戦する。マーキュリーの選手たちと一緒に観戦し、兄弟チームであるサンズの応援をしていたのだが、4点差で敗れてしまった。しかしさすが男子の試合は物凄いと思った。
 
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4月27日。青葉はこの時期に心ならずも関わってしまった事件を解決するため、高野山に瞬嶽を訪ねた。高野山の瞬嶽が寝起きしている山は、やっと雪解けし、普通に歩けるようになったばかりだったが、所々まだ残雪があり、青葉は靴にアイゼンをつけて登っていった。
 
瞬嶽は青葉に「回峰行に付き合え」と言い、山道を歩く。青葉は「はい」と言ってその後に付き従う。
 
瞬嶽は夏も冬もこういう生活を数十年続けているのである。あちこち塚のようなものがある場所で瞬嶽は真言のようなものを唱える。それを聞いて青葉が復唱する。回峰は夕方まで続いた。
 

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「ところで、師匠、晩御飯はどうしましょうか? 何か適当に木の実など取ってきましょうか?」
と青葉は訊いたのだが、瞬嶽は青葉を崖の所に連れて行った。
 
「どうだ。空気が美味しいしだろ?」
「そうですね。風が心地いいですし」
「思いっきり、この空気に含まれている気を吸収しろ。けっこう腹が膨れるぞ」
 
へ!?
 
「まさか、これが師匠の毎日の御飯ですか?」
「うん」
「師匠、ほんとに霞(かすみ)を食べて生きてたんですね!」
 
「霞(かすみ)じゃ無い。大気に含まれているエネルギーをもらうんだよ。お前、自分が持っているエネルギーを病人などに注入できるだろ?同じ要領で自然の大気から気が吸収できるはず」
 
「分かりました!やってみます」
 
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それでやってみると、確かに自分を“吸収モード”に設定すると、風の中に含まれているエネルギーから身体の中に染み込んでくるものがあるのを感じる。その染み込んでくるものがとても清々しい。
 
「自分の身体の中が清浄化されていく感じです」
「清浄になるだけではダメだな。ちゃんとエネルギーを取り込まないと身がもたないぞ」
「はい!」
 
青葉は「そうか。仙人ってこうやって生きていたのか」と大きな発見をした気分であった。
 
こういうのを素直に受け入れるのは青葉の良い所だ。これが千里なら
「私はお肉食べてきます」
と言って、暗い中、下界まで往復してきそうである!
 

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「ねえ、お父さん、連休中、友だちのアパートで壁の吹きつけやってて、その間、どこかに待避しておかないといけないらしいのよ。泊めてもいい?」
と季里子は父に言った。
 
「友だちって男?女?」
「女の子だけど」
 
「だったら俺に訊かなくてもいい。母さんに言っておきなさい」
「うん」
 
それで桃香はその日季里子の実家を訪れると、お父さんには千里からお土産にもらった、大分の清酒「八鹿」を出す。
 
「ああ、これは聞いたことある。ちょっと飲んでみようかな。高園さんはお酒行ける方?」
とお父さんが嬉しそうな顔で訊くと
 
「この子はお酒強いよ」
と季里子が言う。
 
「じゃ、どうです?一緒に」
「頂きます」
 
ということで、ふたりの酒盛りが始まったのであった。その様子を季里子の母は微笑ましげに眺めていた。
 
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さて、日本とフェニックスは16時間の時差があるので、フェニックスの夕方20時が日本時間の昼0時、朝8時は日本時間の深夜0時に相当する。つまりこのようになっている。
 
日本(UTC+9) Phx(UTC-7)
5/01 _0:00 4/30 _8:00
5/01 12:00 4/30 20:00
5/01 18:00 5/01 _2:00
 
千里の父は5月1-2日の日中なら居るということだった。そこで千里は練習が終わった後の時間を使って行ってくることにしたのである。
 
4月30日の練習が終わり夕食も取った後、千里はシャワーを浴びると気分を引き締めるのに少し良い下着を身につけ、香水も振る。ストッキングを履き、可愛いピンクのスカートにそれより少し薄めの桜色のブラウスを着る。髪を整え、ルージュのパンプスを履いた。
 
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それで留萌行き列車に乗っている《きーちゃん》と入れ替わる。こちらは5月1日の12:00くらいである。
 
12:04、列車は留萌に到着。駅前に母がブーンで迎えに来ている。母は千里の姿を見て顔をしかめる。
 
「あんたその格好で父ちゃんと会うつもり?」
「うん。男の振りをするのはもう終わり。普段の私を見てもらう」
 
母も仕方ないかという感じで車を発車させた。
 

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その頃、自宅で父はご機嫌斜めであった。
 
冷蔵庫に“ビールらしきもの”があったので、開けて飲んだら
「全然ビールと違う不味い飲み物だった」
と言うのである。
 
「だからそれ《第4のビール》ってやつだから」
と玲羅は言うが
 
「ビールの密造酒か?」
などと言っている。
 
「密造酒じゃないよ。ちゃんと大手メーカーが作ったものだけど、税金を安くするために、ビールに似た製法で材料とかを工夫したものなんだよ。ビールの値段って4割くらいが税金だから」
 
と説明するが、父は理解する能力に欠けているようである。
 
350cc缶の場合、ビールの税金は77円、発泡酒は47円、第3・第4のビールは28円になる。これらの価格差の大半が税金である。
 
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「じゃお母ちゃんに連絡してスーパードライか何か買ってきてもらうから」
と言って、玲羅は今、母の携帯にメールした所である。
 
父はぶつぶつ言いながらテレビを付ける。すると最近売り出し中のニューハーフタレントさんが出ていた。
 
「可愛い子だな」
などと言って父は見ていたが、司会役のお笑い芸人さんからいきなり絵具の入ったバケツをかぶせられる。顔も服もひどいことになる。すると思わず彼女が
 
「何するのよ!」
と叫んだが、その声が男の声である。
 
父はギョッとしている。
 
「まるで男みたいな声だ」
 
うーん・・・と玲羅は悩んだものの
 
「まあこの人はニューハーフさんだから」
と言う。
 
すると
「こいつ男!?」
と驚いたように言う。
 
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「まあ元は男だったというか」
「チンコ付いてるの?」
「付いてたけど、手術して取っちゃって女の形に変えたんだと思うよ」
「そんな男のくせに女みたい形にしたって、もう化け物みたいなもんだな」
などと父は言っている。
 
なんか、まじぃなぁと思いつつ玲羅は
 
「でも今は女なんだから女でいいんじゃないの?」
と言ったのだが、父は
 
「気持ち悪い。本物の女と間違えないように、こういう奴らは全部捕まえてどこかの島にでも集めて機関銃掃射して皆殺しにすべきだ」
 
などと言っている。
 
ひぇー。姉貴ったら何てまずいタイミングで帰ってくるんだ?と玲羅は思った。
 

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娘たちの収縮(7)

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