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■娘たちの収縮(12)

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そういう訳で、龍虎は幼稚園の時に最初に入院した時のネームプレートは「志水龍虎」だったのが、長野支香たちが介入して戸籍が作られてからは「長野龍虎」になり、小学1年の12月に退院する時は「田代龍虎」になっていた。但し戸籍上は長野龍虎のままであり、龍虎は田代夫妻の養子になる訳ではないので「田代龍虎」は通称である。しかし龍虎はこの通称で高校まで通すことになる。
 
なお、卒業証書は全て戸籍通り「長野龍虎」名義である。
 
2001 0歳 4月ワンティスデビュー 8月龍虎誕生 10月志水の許へ
2002 1歳
2003 2歳 12月高岡と夕香が事故死
2004 3歳 ピアノを習い始める
2005 4歳
2006 年中 原因不明の病気で倒れる
2007 年長 志水英世事故死。長野支香の知る所となる。上島の尽力で戸籍作成
2008 1年 浦和→4月再入院→8月手術→12月退院
 
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龍虎の病院代と養育費については、上島雷太が支香を通して支援してくれたものの、実際には田代夫妻は自分たちの給料だけで龍虎を育て、病院代(の保険外診療分)だけはありがたく支援されたお金を使わせてもらった。養育費相当分はずっと龍虎名義で貯金していた。
 
志水照絵は龍虎が田代夫妻のもとで暮らし始めてから最初の半年は我慢していたものの、田代幸恵から「可能でしたら時々顔を見せてくださいね。交通費は上島さんから頂いているお金から出しますし」と言ってきたので、その後は月に2回主として週末に福井から出てきて龍虎・田代夫妻と一緒に過ごすようにした。
 
なお龍虎は退院した後、ピアノのレッスンを再開したが、ヴァイオリンとバレエも習いたいと言ったので、彼の体調を見ながら教室に通わせた。ヴァイオリンの購入費やバレエの衣装代は上島からもらった養育費を使用させてもらった。
 
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結局龍虎は小学1年生の時はほとんど学校に行っていない。入学式も病院に入院していて欠席したし、この一応入学した浦和の小学校には全く出席しないまま12月まで過ごした。しかし幼稚園以来の友人たちはよく渋川の病院まで見舞いに来てくれた。
 
退院後は翌2009年1月に熊谷市の小学校に転入し、そこで初めて小学1年生としての生活が始まった。但し病み上がりでもあり、元々身体が弱かったので、龍虎は毎月4−5日は休んでいた。小学1−2年の龍虎を担任してくれたのは有森先生という40代の女先生で、とても優しい先生だった。有森先生は休みがちな龍虎の勉強が遅れないように、彼が休んだ日には手製のプリントを友だちに届けさせ、漢字や算数の勉強をしっかりさせた。
 
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3年の担任は君原先生という大学を出たばかりの若い男の先生であった。君原先生は龍虎が1学期の間、随分欠席したし、体育の時間をほとんど見学にしたので「少しは身体を鍛えた方が君の病気にもいい」と言い、2学期になってから昼休みに校舎の周りを走ることを勧めた。そして毎日一緒に走ってくれた。走るペースは体力の無い龍虎にも辛くないよう、歩いているのと変わらないようなゆっくりしたものではあったが、龍虎自身、このお陰で自分の体力に自信を持つことができるようになる。これ以降あまり休まなくなったし、4年生5月の運動会では徒競走で(6人で走って)2位になり賞状をもらっている。
 
4年の担任は中山先生といい逆に定年間近の男の先生だった。中山先生は龍虎が朗読に非凡な才能を持つことに気付き、彼を国語の時間の《朗読係》に指名すると共に発声練習をさせた。龍虎は育ててくれた人の発音環境から「ひ」と「し」の区別はしっかりしていたものの、鼻濁音を知らなかった。また単語のアクセントが適当であった。それで先生は龍虎に標準アクセントをしっかり教えるとともに、普通の濁音(「が」など)と鼻濁音(「か゜」など)の聴き分けと発声・使用法を教えてくれた。
 
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中山先生は龍虎が国語の教科書に載っている小説などを読む時、男のセリフは「男のような話し方」で読み、女のセリフは「女のような話し方」で読むことに気付き「男女どちらもできるようになると将来俳優とかになれるかも」と言って、女性の先生に協力を求めて、男の話し方・女の話し方それぞれを進化させてくれた。もっとも実際には龍虎のクラスメイトたちが「男の話し方」・「女の話し方」の身近な手本になっていた。でも訓練されたお陰で、龍虎はまるで1970年代生れのお嬢様たちのような、古風な女言葉も操ることができる(彩佳たちには「気持ち悪い」と言われる)。
 

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2012年5月6日の午後、瞬嶽は青葉が瞬醒と一緒に山を下りて行くのを見送った。
 
青葉と会うのはこれが最後だろうなと瞬嶽は思った。さて午後からだけでも回峰するかなと思いながら阿弥陀経を唱えていたら、はぁはぁ息をしながらやってきた者が居る。
 
「千鶴ちゃん!?」
と思わず瞬嶽は彼女(?)を昔の名前で呼んでしまった。
 
「新しい受精卵の材料を確保してきた。もう一度やり直そう」
などと彼女(?)は言っている。
 
「あはは、失敗したのか」
 
「確かに男の子のはずだったのに、生まれたのは女の子だったんだよ。それとも光ちゃん、女の子に性転換する?あの子を男の霊能者として目覚めさせることは可能だと思う。事実上FTMになっちゃうけど。どちらでも行けるようにあの子の性別の届け出を留保してもらっている」
 
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「今更性別なんてどうでもいいけどな。だからその子は普通に女の子として育ててあげなよ」
 
瞬嶽は思っていた。普段は弟子たちの前で威厳のある話し方をしているが、早紀の前ではどうしてもくだけた言葉になってしまうなと。かれこれ126年ほどの付き合いだ。
 
「そうしようかな。こっちの都合であまり翻弄するのも申し訳無いし」
 
「しかし、さっちゃんにしては随分と息が乱れているな」
 
「高野町から2時間で駆け上がってきたから。しかも表の道を使うと瞬醒たちと遭遇しそうだったから、弁天の道に回って回峰路を逆行してきた」
 
高野町から★★院までが2時間くらい、★★院からこの庵まで4時間掛かるのが《青葉や菊枝、瞬醒などの速度》である。但し青葉や菊枝は★★院に寄らずに短絡ルートを歩くことが多い。それだと高野町から5時間くらいで済む。その道を早紀は2時間で来たということらしい。《弁天》というのは回峰路の途中にあるポイントである。実は女性器に似た岩があるので、瞬嶽・瞬嶺や早紀は《弁天》と呼んでいる。そこにも登山路があることは多分瞬嶽と早紀しか知らない。その弁天からここまでは瞬嶽の足でも“歩いて”20分掛かる。
 
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「弁天の道、通れた?崖崩れとかしてなかった?」
「40年ぶりに通ったけど、通れたよ。夏になると雑草とかで通りにくくなるかも。でもこの格好では苦労した〜!」
 
と言っている久保早紀は高校の夏服女子制服である。靴はローファーである。
 
この弁天の道の途中には、ほぼ垂直の崖を30mほど登らなければならいな所や幅10-20cm,長さ100mほどの“蟻の門渡り”まであるのである。ドラえもんの中に書かれていたように、人は畳の縁のように、左右が同じ高さの平面であれば細くマークされた通路をまっすぐ歩くことができるのに、塀の上のように左右に大きな段差があったり、ましてや崖であったら「落ちないか?」という不安を持ち、その不安が身体のバランスを崩して実際に転落してしまう。
 
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深山に時々ある「蟻の門渡り」「剣の刃渡り」は、自分の精神力との戦いである。一瞬でも自分に不安を持ったら高さ300mの崖を転落する。物凄い精神集中が必要な難所だ。よくスカートにローファーでそんな道通るよ!と瞬嶽は思った。蟻の門渡りは、瞬嶽はもう今の“精神力”と“三半規管”では通る自信が無い。
 

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「夏服で寒くない?」
「平気平気。汗掻いたし」
「ああ。ここにはあいにくシャワーとか無いしな」
「大丈夫だよ。すぐ帰るし。それより魂のコピーを」
 
「今度は容器に入れてきたの?」
 
早紀はジュラルミン製の箱を持っている。冷蔵できる容器だが、バッテリーの関係でどうしても時間に限度があるので、早紀は走って登ってきたのである。4時間以内には電気のある所に持って行く必要がある。
 
「前回は他人の子宮にあったものを取り出したから自分の子宮に放り込んだんだけど、今回は体外受精する。そして受精させたらすぐに魂のコピー作業をする。あれは実は妊娠6週、つまり受精4週以内にやればいいんだよ」
 
「受精前なんだ!? 誰の卵子と精子?」
 
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「卵子はボクの。他の人の卵子をゲットするには色々工作しないといけないし。桃香ちゃんはレスビアンだからうまく行ったけど、ふつうの女子の卵子をゲットするのは難しい。精子は千里ちゃんのをもらってきた。これも時間無いから千里ちゃんの睾丸を持っている人物を誘惑してセックスしてゲットした。避妊具を被せてセックスして、避妊具内に溜まった精液をアンプルに吸い上げた」
 
「さっちゃんって割と誰とでも寝る?」
「そんなことないよー。実質千里ちゃんとセックスしたようなものだし」
 
「まあいいや。つまりその卵子と精子を受精させて育てたら、さっちゃんと千里ちゃんの子供になるのか?」
 
「うん。だから受精させてすぐコピー作業をしようかと思って」
 
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瞬嶽はしばらく考えていた。
 
「それ逆に千里ちゃんの卵子と誰かの精子なら男の子になるかも」
「え〜〜〜!?」
 
「千里ちゃんの精子は、全てがX精子ではないかという気がする」
「うっそー!?」
 
と言ってから早紀は言う。
 
「実はこないだの受精卵は確かに男の子だと思ったんだよ。Y染色体を見た気がしたんだよね。だから光ちゃんの魂をコピーするのに使えると思ったのに。念のため生まれた子供の遺伝子検査もしてもらったんだけど、染色体はXXだと言われた。ボクが持ち込んだ資料との親子鑑定もしてもらったけど、間違い無くその2人、つまり千里ちゃんを父親とし、桃香ちゃんを母親とする子供だということが分かった」
と早紀。
 
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「妊娠初期ではXYだったのかも知れないけど、途中でXXになったのかもね」
と瞬嶽。
 
「そんな馬鹿なぁ。YがXに変わるもの?」
「遺伝子の性転換かな」
「だってY染色体ってサイズはでかいけど、情報量は極めて少ないよ」
 
「あるいはXXYだったのがYが排除されるか封印されてXXになったとか」
「そんなの聞いたことない」
 
「あの子は色々と変則的なんだよ。神様を産み育てるために色々な仕掛けがされている」
「うーん。。。。」
 
「僕は長年の修行の成果、100年を越える寿命を得ている。さっちゃんは転生を重ねることで500年くらい生きてきた。でも千里ちゃんは多分素で1000年生きる」
「さすがのボクも500年は生きてないよ。でも、あの子、人間なんだっけ?」
「さっちゃんよりは、よほど人間に近い気がするよ」
 
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えっと・・・と早紀は悩む。
 
「じゃ何とか、千里ちゃんの卵子を取ってくる」
「千里ちゃんの体内には卵巣が多分3セットあるから、千里ちゃん自身の卵巣を間違えないようにね」
「え〜〜〜〜!?」
 
「あと精子はどうするの?」
「光ちゃんの精子は使えないんだっけ?」
「僕の睾丸はもう100年も前に機能停止してるよ。さっちゃんの睾丸は?」
「ボクの睾丸は小学生の内に取っちゃったんだよね〜。男性ホルモンを体内に放出してほしくなかったから。自分で手術した。まあいいや。精子は適当な人のを獲得するよ。また来るね」
 
と言って早紀は1時間ほど前に青葉が降りていった道を駆け降りていった。
 
「全く元気な奴だ」
と瞬嶽は呆れるように言った。
 
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