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■女の子たちのインターハイ・高3編(16)

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N高校のメンバーはフロアから引き上げる。チアリーダーたちが迎えてくれる。「健闘を称えて」と言ってエールを送ってくれた。チアに入っている紅鹿や海音が泣いている。チアには入っていないものの必死で応援していた不二子やソフィア、蘭や志緒も泣いている。
 
「済まん。私があんなところで転ばなければ」
と言った暢子はほんとに落ち込んでいるようだ。
 
「いや、誰もあれは責められないよ。不可抗力だよ」
と千里が言う。
 
「掃除係の子たちが叱られていたみたい」
「いや、それを叱るのは可哀想だよ」
「掃除していても、どうしても試合の終わりの方では床の状態はよくないからなあ」
「特に延長戦だったもんね」
 
こうして千里や暢子たちのインターハイは終わってしまったのである。
 
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その時、暢子がふと千里の左手に気付いた。
 
「あ、その護符」
「え?」
と言って千里は自分の左手を見た。梵字は今朝書き直したのでくっきりと残っている。
 
「あっ」
と千里も声を挙げる。
 
「私の護符はもう消えてしまっている」
と暢子が自分の掌を見た。
 
「ごめーん。自分のを描いた後、暢子にも書いてあげようと思った時にちょうどあの食い逃げ騒ぎがあったもんだから」
と千里。
 
「食い逃げ? あれ自殺未遂じゃなかったんだっけ?」
「宿代が払えないから窓から逃げようとしたんでしょ?」
「それ食い逃げというの?」
「うーん。。。泊まり逃げ?」
 
「それどういう護符なの?」
と寿絵が訊く。
 
「うん。パワーが逃げて行かないように封じる護符なんだけどね」
と千里。
 
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「私はパワーが食い逃げして、あんな所で転んだのかも知れないなあ」
 
と暢子は本当に悔しそうであった。
 

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試合終了後、例によって「3位の表彰式」が行われる。3位になったチームが明日の最終日を待たずに帰ることができるようにするためである。
 
今日敗れて3位になった愛知J学園と旭川N高校の選手が整列し、主催者から3位の賞状。そして銅メダルを授与された。
 
J学園の大秋さんとN高校の暢子が前に出て3位の賞状を受け取る。ふたりとも物凄く悔しそうな顔で賞状を受け取り、そして握手をした。
 
銅メダルは1人1人プレゼンターから掛けてもらった。千里はメダルを掛けてもらって握手した後、今年こそ他の色のメダルが欲しかったのにと心底思った。他のメンバーを見ていたが、暢子・留実子・夏恋・雪子・揚羽たちはみんな悔しそうな顔をしている。単純に喜んでいるのがメグミ・寿絵・川南・絵津子たちである。
 
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ここで3位を喜ぶか悔しがるかというのは性格の違いなのかも知れないなと千里は思った。
 
表彰式が終わった後、千里は大秋さんに尋ねた。
「メイちゃんたち、今日帰ります?」
「まさか。明日まで居るよ」
「ですよね?」
「宿は最初から今夜の分まで予約しているし。千里ちゃんたちもでしょ?」
「もちろんです」
 
表彰式のあと、両チームとも、ベンチに入らなかった部員を全員入れて記念撮影をする。ここでは両軍の選手もみな笑顔で写真に写っていた。
 
千里は主催者さんから声を掛けられた。
「村山さん、それから若生さん、もう帰られますか?」
「いえ。明日の決勝戦を見てから最終便で帰ります」
「じゃ表彰式も見られます?」
「ええ」
「ではもしかしたら表彰式前にお声を掛けるかも知れませんので、よかったらもしチームの他の方が先に帰られる場合でも、お二方は表彰式が終わるまで残っておいていただけませんか?」
「いいですよ」
 
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この日も伊香保温泉に戻ると、暢子はまた階段の往復をするぞ!と宣言した。
 
「試合もう終わったのに」
と寿絵が文句を言うが
 
「神社までお礼参りだよ。準決勝まで私たちを行かせてくれたお礼」
と暢子は言った。
 
それでまた全員頑張って階段を登り、今日は全員が上までたどり着いてから伊香保神社に一緒に参拝して、この4日間の加護に感謝した。
 
「私はみんなが大きな怪我もなくここまで来てくれただけでも充分神様に感謝しているよ」
と南野コーチは言った。
 

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その日の夜は「残念会」と称して、豚しゃぶをしてもらい、お肉をたっぷり食べた。食べ過ぎて動けなくなる子が続出であった。
 
「雪子」
と暢子がまるで酔っ払ったように抱きついて声を掛ける。
 
「はい」
「ウィンターカップ出ろよ。そして今度こそ優勝しろ。今の1年が成長したらかなり強くなるぞ。きっと私たちより強い」
「頑張ります」
 
「よし、飲むぞ!」
 
「キャプテン酔ってるみたい」
「キャプテンはどうもコーラで酔えるようだ」
 
暢子は薫にも抱きついている。
「おい、薫」
「何?」
「なんでお前、千里みたいに高1の内に性転換しておかなかったんだ?」
「そんなこと言われても」
「お前が出ていたら負けなかったのに」
「老兵は死なず。消えゆくのみ」
「なんだそれ?」
「おばあちゃんは引退して若い子たちに任せようということだよ」
 
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暢子が随分1−2年生に絡むので南野コーチからアルコールチェッカーで検査されていた。
 

翌日は伊香保温泉に泊まっていたメンバーは早朝から同じ伊香保温泉内の別の旅館に泊まっていたJ学園の選手たちの所を訪問する。そして近隣の小学校の体育館を借りて、両者で「裏の3位決定戦」などという危ない試合をした。結果は88対88の同点であった。
 
「負けたら3位の賞状と銅メダルを堂々と持ち帰られない所だったから、結構ドキドキだった」
とお互いに言い合った。
 
「じゃ国体かウィンターカップで会う選手も多いだろうけど」
「もうこれが最後の選手もあるかも知れないし」
 
などと言って、一緒に朝食を兼ねた懇親会をして、更に一緒に温泉で汗を流してから別れた。またオールジャパンの終了後に、1年前と同様に親善試合をすることも約束した。(場所は後日話し合うことにした)
 
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N高校の部員たちはその後、いったん都内に行きV高校の宿舎に泊まっていたメンバーと合流して一緒に宿舎の片付けと清掃をした。ついでに校庭の草むしり・ゴミ拾いなどまでしたら、V高校で部活の練習に出てきている子たちも手伝ってくれた。
 
「インターハイ終わったんですか?」
「ええ。昨日負けました」
「それは残念でしたね。また頑張ってください」
「ありがとうございます」
 
千里は何か大きな喪失感を感じていた。一応まだ今月中旬の国体予選があるし勝てたら大分で国体本戦だ。自分はU18代表候補にもなっているので、そちらで代表に選ばれたらインドネシアまで行ってくることになる。
 
しかし。
 
そういう今後の話もインターハイに比べたら半ばどうでもいいことのように思えてしまった。
 
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自分にとってインターハイこそが憧れだったし、この大会で優勝することを目標にここ2年近く頑張ってきた。
 
でもインターハイは終わってしまった。
 
明日から自分は今のようなテンションを維持できるだろうか。
 

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夏恋が声を掛けてくる。
「千里、大学でもバスケ続けるよね?」
 
大学?大学のバスケ??
 
「どうしよう?私、インターハイの後のこと何も考えてなかったよ」
 
「私は大学でもやるよ。そしてインカレで優勝を狙う」
と夏恋は決意を秘めた表情で言う。
 
そうだよなあ。夏恋は本当にこの1年半ほどで伸びたもん。
 
「私ももう少し頑張らないといけないかなあ」
「インカレで会おうよ。あるいはオールジャパンかも知れないけど」
 
「そうだね。オールジャパンあたりで対戦できるかもね」
 
千里はやっと笑顔になって夏恋と堅い握手をした。
 

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決勝戦は13時からなので、その少し前に会場に入った。全員で札幌P高校と静岡L学園の試合を観戦する。今日は全員制服姿である。当然昭ちゃんも女子制服を着ている。
 
「昭ちゃん女子制服姿が様になってる」
と川南から言われる。
「蘭ちゃんから言われて毎日この服を着て買い出しに行ってました」
「おお、蘭もしっかりやってるな」
 
フロアでは激戦が繰り広げられていた。
 
「伊香さんは本当に成長したね」
「そしてP高校のこの動きが凄いよね」
「うん。男子並みのスピードだもん」
 
千里がボーっとした感じで試合を見ていたら、暢子がいきなり千里のお股に指を突っ込んでくる。
 
「ちょっと! 今のあそこに入るかと思った!」
「別に処女ではないから構わんだろ?お互いに」
「そういえば暢子の彼氏って知らない。どういう人なの?」
「秘密」
と言ってから暢子は言う。
 
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「2週間後にはあのチームとうちが対戦しないといけないからなあ。どうやって倒すか、今日のL学園の試合を見て考えなくちゃ」
 
ほんとだ!
 
「うん。頑張って見なくちゃ」
 
試合は結局伊香さんや佐藤さんの大活躍もあって、89対73でP学園が勝利。インターハイ初優勝を飾った。P学園のメンバーが物凄く喜びあっているのを見て千里はあそこに居たかったなと思った。
 

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主催者さんが来て、千里と暢子に下に降りてきてくださいと言ったのでふたりは降りて行く。J学園の中丸さんも呼ばれたようだ。手を振って軽く挨拶しておく。
 
表彰式が始まる。
 
「平成20年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会・第61回全国高等学校バスケットボール選手権大会女子、優勝・札幌P高等学校」
 
と呼ばれて佐藤さんが優勝旗を受け取る。客席から大きな拍手が送られる。賞状その他が送られ、選手とマネージャー全員に金メダルがひとりひとり贈られる。佐藤さんが、宮野さんが、猪瀬さんが、徳寺さんが、伊香さんが、嬉しそうにメダルを首に掛けてもらう。
 
続いて準優勝の静岡L学園が表彰される。そして今年も特別賞が発表された。
 
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「特別賞を旭川N高校と札幌P高校に贈ります」
と大会長が告げる。
 
「旭川N高校は2回戦から準決勝までの4試合でのファウルが合計8個、札幌P高校は1回戦から決勝戦まで6試合のファウルが合計12個で、どちらもとてもクリーンな試合をしたので、特別賞を贈ります」
 
それでP高校の佐藤さんとN高校の暢子が前に出て賞状をもらい、ふたりは握手した。
 
その後個人賞が発表される。
 
「最優秀選手・札幌P高校・佐藤玲央美さん」
「はい」
と返事して佐藤さんが優勝旗を徳寺さんに預けて前に出る。
 
「得点女王・旭川N高校・村山千里さん」
「はい」
 
千里はぴっくりした。てっきりスリーポイント女王かと思ったのに!?とにかく前に出る。しかし続けて呼ばれる。
 
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「スリーポイント女王・旭川N高校・村山千里さん」
「はい」
 
と千里は前に出たまま答えた。きゃー!両方取ったのか!
 
考えてみると今年は昨年の日吉さんのような点取り屋さんが最後の方まで残らなかった。Q女子高の鞠原さんは3回戦敗退、F女子高の前田さんも準々決勝敗退だ。おそらく自分と前田さんの点数差は僅差だったのではという気がした。
 
「リバウンド女王・愛知J学園・中丸華香さん」
「はい」
と答えて中丸さんが前に出てくる。
 
佐藤さんは試合が終わったばかりでユニフォーム姿だが、千里と中丸さんは制服姿である。
 
「アシスト女王・札幌P高校・佐藤玲央美さん」
「はい」
と佐藤さんが前に立ったまま答える。
 
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へー!! つまり佐藤さんって自分で得点できないと見たら、宮野さんや河口さん、あるいは伊香さんにパスして得点を挙げていたんだろうなというのを千里は考えた。
 
そういえば佐藤さんって去年の12月に会った時「For the teamに目覚めた」なんて言ってたなと思う。
 
その瞬間、千里の頭の中に国体予選でのP高校との戦い方のイメージができてしまった。そうか!そうすればいいんだ。「元から絶て」ばいいんだ!!!
 

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前に並んだ3人に5枚の賞状が渡された。佐藤さんと千里は2枚ずつもらった。お互いに笑顔で握手する。それで後ろに下がった。
 
大会長の挨拶などがあったあとで式は終了する。P高校、L学園のメンバーが試合に出ていない部員も入れて記念撮影をしている。バスケ雑誌の記者も写真を撮っている。
 
千里はそれを遠くから見ながらフロアを出た。
 
N高校のメンバーはもうみんな下に降りてきている。千里は個人賞の表彰をみんなから祝福してもらい、6日間の激戦の場を後にした。
 

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「今年のインターハイは準決勝のJ学園・P高校戦が事実上の決勝戦だったね、などと言っている人がいたよ」
と寿絵が帰りの便を待つ羽田空港で言っていたが
 
「言わせておけばいいさ」
と薫は言う。
 
「うちが来年も再来年もその先もインターハイやウィンターカップに出て上位に食い込めば、そんなこと言われなくなるよ」
と千里も言う。
 
「まあ、そういう訳で、ウィンターカップ頑張れよ、次期キャプテン」
と言って暢子は揚羽の肩を叩く。
 
揚羽はキョロキョロしている。
 
「次期キャプテンって?」
 
「揚羽が次期キャプテンだよな?」
と暢子。
 
「同意」
と雪子が言っている。リリカも「賛成」と言っている。
 
「次期キャプテンは雪子じゃないの〜〜〜!?」
と揚羽。
 
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「まあ、副主将くらいはしてもいいよ」
と雪子。
 
リリカや蘭・志緒などもパチパチと拍手をしている。
 
「決まったみたいね」
と寿絵も笑って言っていた。
 
 
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女の子たちのインターハイ・高3編(16)

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