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■女の子たちのインターハイ・高3編(2)

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千里が検診を受けていた間、V高校の合宿所では午前中紅白戦をしていた。
 
千里が居ないこともあり、ここのところ少し疲れの溜まっていた主力が元気のありあまっている控え組に押されるという思わぬ展開になるが、最後は何とか逆転して主力の面目を保った。
 
「でも控え組も、枠外に漏れてる元気な子たちに押されるかも知れん」
という声も上がる。実際、薫・昭子まで入れると、川南・結里・ソフィア・志緒・蘭などといった面々はあなどれないメンツである。
 
午後からは東京T高校のメンバーが来訪する。千里が復帰したAチーム、そしてBチーム・Cチームに別れて練習試合をした。今回T高校とは別の山になっていて当たるとしたら決勝戦なので、ある程度手の内を見せ合ってもいいだろうということで、この日の練習試合が実現した。どちらもこの時期に強い相手と試合をして最終調整をしておきたいところである。
 
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この両校が対戦するのは実は初めてである。それで千里とマッチアップした向こうのシューティングガード萩尾さんが
 
「全然かなわない!」
と音を上げる。しかし千里がポンポン3を放り込むのを見て彼女も物凄く良い刺激になっていたようである。
 
Aチームでは、竹宮さんと暢子、山岸さんと雪子の対決もお互いかなり本気になった感じで
「決勝でほんとに激突した時、どうやったら勝てるのか少し考えてみる」
などとお互いに言ったりしていた。
 
リバウンドでも「ボク少女メーリングリスト」もとい「センター・メーリングリスト」のメンツでもある留実子と森下さんが初めて直接対決したが留実子が昨年インターハイのリバウンド女王である森下さんと充分良い勝負をしていて
 
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「花和さんってトップエンデバーに招集されていても良かったレベルじゃん」
と竹宮さんが千里に言っていた。
 
またBチームではソフィアが点を取りまくるし、耶麻都もよくリバウンドを取るしで、特にソフィアについては
「なんであの子トップチームに入れてないの?」
と向こうのコーチさんがこちらに訊くほどであった。
 
「あの子は選手登録をした6月末からこの1ヶ月間に物凄く成長したんですよ」
と南野コーチが言うと
「そういう伸び盛りの時期ってあるんですよねー」
と向こうも頷くようにしていた。
 

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昨日は遅く着いたためもうお風呂にも入らずに寝たので、この日がV高校での最初の入浴になるが、人数が多いので、1年生と2-3年生で時間帯を分けた。しかし1年生の絵津子・ソフィア・不二子の3人は「もうそろそろ上がりなさい」と言われるのを「あと少し」などと言って遅くまで練習していて1年生の時間帯に入りそびれてしまったので、南野コーチから
 
「今日は特別に上級生と一緒に入れてあげて」
と言ってもらい
「よしよし、可愛がってやるから」
と暢子に言われ、おそるおそる入浴していた。
 
「可愛がるって、どうされるんですか?」
とソフィアが若干おびえながら尋ねたが
 
「昭ちゃんにおちんちんがあるか確認してくること」
などと言うのを薫が
「それってセクハラ」
と言って停めていた。
 
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「で、薫はあるわけ?」
「個人情報保護法により開示できません」
 

この日はN高校バスケ部OGでいつもバスケ部に寄付をしてくれている東京在住の漫画家・村埜カーチャさん、占い師の中村晃湖さんが来訪した。ふたりは年末にウィンターカップ見学とオールジャパン出場のために東京に来た時も来訪する話があったのだが、あの時はやはり向こうも忙しくて実現しなかったのである。今回は練習風景と紅白戦を合計2時間ほど見学してもらってから、お昼休みに宇田先生・教頭先生に暢子・千里・雪子・揚羽の4人で食事しながらいろいろお話をした。
 
「今年のN高校はかなり強いみたいね」
とふたりとも言う。
 
「1年生に活きの良い子たちが入って来たんで、2年生も3年生も結構危機感を持って頑張っているんですよ」
と暢子が言うと
「だったら来年もまた期待できるね」
と中村さん。
「ええ、私や村山は卒業してしまいますが、原口や森田たちが頑張りますよ」
と暢子は答える。
 
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千里は3年後に青葉の家族の葬儀の時に中村さんに再会するのだが、中村さんはその時は千里のことを覚えていなかったようである。
 
「しかしこれだけ多くの女の子たちを連れて遠征とかしていると管理が大変でしょう」
と村埜さんは言う。
 
「そうなんですよ。万が一にも事故の類いがあってはいけませんから」
と教頭先生も答える。
 
「会場との往復以外は外出禁止なんですけど、実際は日々の練習でクタクタになって、外出までする気力は無いみたいですね」
「それにこの学校は遊べるような場所から隔絶されているから」
「近くのコンビニに行くくらいだもんね」
「夜も11時消灯だし」
「まあ消灯後もけっこうおしゃべりはしてますけどね」
「夜中すぎまで起きてたら強制送還と脅しているし」
「ゲーム機は既に昨夜1晩目にて3人没収されましたね」
 
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「冬にいらっしゃった時は男子部員もという話でしたけど、今回は女子だけなんですね」
と村埜さん。
 
「正直男女混合で連れてくると、恋愛問題・性的なトラブルの問題で神経を使うので、この方が楽です」
と宇田先生は本音を言う。
 
「私たちの頃は女子高だったから、男子というのは想像上の生き物でした」
と中村さん。
 
「まあ今回戸籍上男子って子はいるけど、実態が既に女子化しているから」
などと暢子が言う。
「へー、いわゆる男の娘ってやつですか?」
と村埜さんが興味津々という感じだ。あ、漫画のネタに使うかな?などと千里は思う。
 
「まあ少なくとも見た目、男には見えない子ばかりですしね」
と千里は開き直って言った。
 
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「それって着替えとか、泊める部屋とか、やはり考慮しないといけないですよね?」
と訊かれるが
 
「着替えもふつうに他の女の子たちと一緒だし、部屋も普通に女子扱いですね」
と宇田先生が言う。
 
今回、千里は暢子・留実子・寿絵と一緒、薫は夏恋・睦子・敦子と一緒で、昭ちゃんも蘭・志緒・結里と一緒の部屋である。男性機能が残っている昭ちゃんに関しては、保健室の山本先生と同じ部屋にする案もあったのだが、部員たちの悩み事相談なども受け持つ山本先生の部屋は個室にしたいというのと、蘭や志緒が私たちと一緒で大丈夫ですよと言ったので、初めて昭ちゃんは純粋に女子の部屋に泊まることになった。
 
「お風呂も一緒に入っているしね」
と揚羽。
「お風呂に入れるって凄いですね!」
と村埜さん。
「でもおちんちんあるんじゃないの?」
と中村さんは訊くが
「じょうずに隠して、見せないようにしてるようですよ」
と雪子が言う。
 
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「もっとも隠しているというのが建前で、実はこっそり手術して取っちゃってるのではという疑惑はあるけどね」
と暢子が言う。これは薫のことだ。
 
「つまり、ふつうに男の子が女湯に入るんなら、おちんちんを隠す訳ですが、あの子の場合は、おちんちんが無いのを隠しているのではという疑惑があるんですよ」
と千里は補足する。
 
「それは面白い!」
と村埜さんが言う。
 
ああ、これは絶対このネタで漫画を書くな、と千里は思った。
 

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「でもなんか懐かしいですよ。私たちの頃は合宿とか行くと、よく夜中まで怪談とか話してました」
などと村埜さんが言う。
 
「ああ。怪談はけっこうやってますよ」
と暢子。
「このV高校で部活のために出てきている子から、この学校の怪談とかも教えてもらいました」
と揚羽。
「この研修施設の女子トイレにも怪人赤マントみたいなのが出るって噂があったみたいですが、特に怪異にあった子はいませんでしたね。12月の時も」
と雪子が言う。
「あれは冬だったからね。夏なら出るかもよ」
と暢子が言う。
 
「何でしたら、私、ちょっと見てみましょうか?」
と中村さんが言うので、一同その噂のあったトイレに行ってみる。
 
「過去には何か居たようですね」
と中村さんはその女子トイレの中の個室を眺めて言った。宇田先生と教頭先生はさすがにトイレの外側で待機しているが、千里たち4人は中まで入って、中村さん・村埜さんと一緒にトイレの中の様子を見ていた。
 
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「どんな奴?」
と村埜さんが訊く。
 
「まさに怪人赤マントみたいな奴。無害だよ。女の子を脅かして楽しんでるだけ」
と中村さん。
「要するに、チンチン見せる痴漢なんかと同類か」
と村埜さん。
 
「そうそう。そういうどうしようもない奴のエネルギーが妖怪化したんだろうね」
「でも過去には居たんだ?」
「うん。これは居なくなってから半年くらい経ってるかも」
 
「だったら、私たちが冬に合宿に来た時に居なくなったのかな」
「元気な女の子がたくさん来たんで、おそれをなして逃げ出したのかも」
などと暢子・雪子が言う。
 
「ああ、そうかも知れないですよ。こういう奴って意気地が無いから」
と中村さん。
「意気地があると、また怖いですけどね」
と暢子。
 
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「女子高生にちんちん見せるくらいは無害だけど、パンツ取ったりするようになったら有害」
と中村さんも言う。
 
「誰かパンツ取られたりしてないよね?」
と暢子が訊くが
「そういう話は聞いてないから大丈夫と思いますよ」
と揚羽は言った。
 

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翌日27日(日)の午後はこの日の朝の便で東京に来たという札幌P高校と練習試合をした。P高校ともAチーム・Bチーム・Cチーム戦をする。
 
お互いに一週間前にも道民バスケットボール大会の決勝戦で対戦したばかりだが、この日はAチーム・Bチーム・Cチーム、ともにかなり本気ばりばりの勝負をした。(但し怪我だけはしない・させないよう注意した)
 
やはりこの時期、少し本気を出すというのもやっておかないと、エンジンに火が点かない感じであり、お互いの手の内を知り尽くしているP高校とN高校の場合、最適の相手であった。
 
Aチームもかなり頑張ったのだが、Bチーム戦の熱気には負ける感じもあった。
 
どちらの学校も秋以降のベンチ枠入りを目指したアピールの機会になるので、みんな物凄く熱が入っていた。こちらでソフィアや蘭が頑張れば、向こうでも1年生の有力選手加入でトップチームから弾き出されてしまった2年生の小平さんが復帰のアピールに相当頑張り、狩屋コーチも南野コーチも嬉しそうな顔で彼女たちを眺めていた。
 
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この日の夕方、千里が夕食後に部屋で暢子たちとおしゃべりしていた時、携帯に電話がある。見ると雨宮先生の一派の管理人ともいうべき新島さんである。何だろうと思って取る。
 
「おはようございます。何でしょうか?」
「千里ちゃん、雨宮さんの行方知らないよね?」
「雨宮先生でしたら、5月中旬に電話で話したのが最後ですが。どうかしたんですか?」
 
「★★レコードの加藤さんから先日話のあった女性歌手(冬子のこと)の件で相談したいので連絡がつかないかと訊かれているんだけど、つかまらないのよね。ごめん、どこに居るかちょっと占ってみてもらえない?」
「はい」
 
それで千里は荷物の中からタロットカードを取り出して、1枚引いてみた。剣の6が出た。海を渡って旅に出る絵だ。
 
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「どこか海外にでも行かれているのではないかと」
「やはり? 困ったなあ。どのあたりかはわからない?」
 
それでもう1枚引いてみる。金貨の王女が出る。使っているのはバーバラ・ウォーカーのタロットなので、魔法使いマーリンがストーンヘンジのような所で恋人のニムエに封印(監禁)されている絵である。千里にはそのストーンヘンジの石の並びが立ち並ぶ摩天楼のように見えた。
 
「ニューヨークかも。女の人に捕まってます」
「ニューヨークか! それで女性というのなら、何となく見当が付くよ。毛利君に呼びに行かせる。ありがとう」
 
この時、雨宮先生は日本で女性歌手と揉めてアメリカに逃げ出し、別の女性歌手の音源製作をしていたようである。ところが呼びに行った毛利さんが雨宮先生に丸め込まれて「ミイラ取りがミイラになって」しまい、結局9月になって、多忙な新島さんが自身で乗り込み、ふたりを帰国させるハメになった。
 
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そして雨宮先生が海外逃亡中であった期間に、冬子たちのプロジェクトは迷走して複雑な展開になりつつあった。
 

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女の子たちのインターハイ・高3編(2)

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