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■女の子たちのインターハイ・高3編(10)

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「あれ?なんかわき水があるよ」
と龍虎が言う。
 
今さっき湧きだした水である。
 
「ぼく、のどがかわいちゃった。のんでもいいよね?」
 
千里が《こうちゃん》を見ると、知らんぷりしている。飲んでまずいものであれば、不親切な《こうちゃん》といえども注意してくれるだろう。
 
「うん、飲んでいいよ」
と千里は言った。
 
すると龍虎は両手ですくって1口飲むと
「おいしい!」
と言う。
「たくさんのんでいい?」
「どうぞどうぞ」
 
「ういたえのそばで湧き出すから、これ、ういたえ水というんだ」
と《こうちゃん》は言った。
「ふーん」
 
千里は何となく龍虎が何杯飲むかを数えていた。龍虎はなんと45杯も飲んでしまった。
 
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「ぼくおしっこしたくなった」
 
そりゃ、あれだけ飲めばね!
 
近くの公園にトイレがあったので、そこでさせる。トイレから出てくると龍虎は
 
「もし、おちんちんなくなっちゃったら、おしっこするとき、どうすればいいんだろう?」
などと言っている。
 
「おちんちん取ってみればわかるよ。取ってみる」
「いやだよぉ!」
 
ああ、本気でおちんちん取られたくないと思っているな。
 
「じゃ、帰ろうか」
「うん」
 
それで千里たちは《こうちゃん》に乗って、2時間ほどの飛行で渋川市内の病院に帰着した。
 
「じゃ、おねえちゃん、またね」
「うん。龍虎も明日の手術頑張れよ」
「うん。ぼく、おちんちんとられないようにがんばる」
 
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千里は少しだけ楽しい気分になって《こうちゃん》と一緒に宿舎に戻った。
 

『千里、あの子があそこで水を何杯飲むか数えてたな』
『何となく数えた』
 
『あの水、新月の前後の深夜0時前後だけ湧くんだよ。それも毎回湧く訳ではない。このことは村でも知っている人はごく少数。今回は千里の演奏へのお礼で土地神様が湧出させてくれた』
 
『へー! それは運がよかったね』
 
『千里、アクア・ウィタエって知ってるか?』
『知らない』
『直訳すれば生命(いのち)の水という感じかな』
 
千里は考えた。
 
『もしかして・・・・』
『あの子が飲んだ数が、寿命が延長される数』
『助かるの?』
『ただし千里が今日の試合に勝つことが条件。そういう約束したろ?』
 
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約束したのは川南なんだけど。
 
龍虎の手術は今日の千里たちの試合とほぼ同時刻である。
 
『そんなに緊張しなくてもいいよ。本来はあの子は手術中に死ぬ運命。それに6歳か7歳くらいで死ぬのと51-52歳で死ぬのと、どちらが幸せかは難しいぜ。働き盛りにポックリ逝かれると奥さんも子供も大変だしさ。だから千里は変に気負わずに自分のベストを尽くせばいい。でもまあ奇蹟ってこともあるかもね』
 
と《こうちゃん》は言った。
 
『ところであの子のおちんちんは?』
『切ったほうがいいなら、俺が切ってくるけど』
『よけいな親切はやめとこう』
『へーい』
 
『薫のなら切ってあげてもいいけど』
『無いものは切れないけど』
 
千里は一瞬考えた。
 
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へー!!!
 

2008年8月1日。この日、女子の会場では準々決勝の4試合が行われる。昨日まではシルクドームのメインアリーナに2面コートが取られて試合が行われていたのだが、今日は1面だけ取られる。
 
千里たちは午後の試合なので、朝軽くジョギングをして(伊香保温泉の階段の往復を暢子が提案したものの、さすがに試合前はやめとけと南野コーチに停められ、試合後にやることになった)、身体をほぐしてから、会場入りした。
 
一方V高校に宿泊しているメンバーは、試合撮影係の子たちを除いて、早朝からいったん熊谷市に宿泊している山形Y実業のメンバーと同市内で落ち合い、そちらのBCチームと練習試合を行ってから、本庄市の本会場に入った。練習試合の時は
「今日はトップチームどちらも勝ち残れるといいですね」
と言い合った。
 
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BCチームのメンバーが会場入りしたのは12時半くらいであるが、千里たちはその1時間ほど前に入っている。既に第1試合が終わり、愛知J学園が福岡C学園を倒していた。
 
「ああ、C学園はここまでか」
 
旭川N高校のBCチームは昨日C学園と、一昨日にJ学園との練習試合をしている。
 
「C学園もくじ運悪いよなあ」
「今回はとりあえずBEST8まで上がってきたから、まだマシな方か」
「相手がJ学園じゃしょうがないですよね」
 
そんなことを言っていたら揚羽が言う。
「今日、私たちが負けたら、きっとみんな相手がF女子高じゃ仕方ないよね、と言いますよね」
「だろうね」
 
「そんなこと言われないようにしましょう」
「もちろん」
 
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第1試合が終わったところでみんな軽食をとっておく。試合は13:20からなので、11:20頃までに昼食を取っておけば試合開始頃までにはこなれている。
 
第2試合は札幌P高校と東京T高校の戦いである。伊香さんは既にQ女子高との試合を終えているので遠慮無く使う。しかしT高校は彼女について研究不足だったようである。どんなにリバウンドに強い森下さんがゴール下で頑張っていても遠距離から放り込まれるとどうにもならない。
 
加えてP高校はT高校のメンバーがボールの場所を見失うほど素早くボールを回して攻め込む。
 
終わってみれば大差でP高校がT高校を倒していた。
 
「よし。私たちもいくぞ」
と暢子はみんなに声を掛ける。
 
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N女子高のチアリーダーたちの声援に送られて千里たちはフロアに降りて行った。
 

 
F女子高はPG.芳岡/SG.左石/SF.前田/PF.大野/C.ラーマ という布陣できた。こちらはPG.雪子/SG.千里/SF.夏恋/PF.暢子/C.留実子という先発メンバーにした。向こうはあれ?という顔をしている。充分向こうもこちらを研究しているだろうから、SFには寿絵あるいは昨日の試合で大活躍した絵津子を使うことを予想していたであろう。
 
ラーマさんと留実子でティップオフをする。
 
背丈の差の貫禄でラーマさんがボールをタップし、前田さんがボールを確保してそのまま攻め上がってきた。
 
こちらは前田さんに千里、大野さんに暢子が付くトライアングル2のゾーンを敷く。前田さんがラーマさんにパスする。ラーマさんが中に飛び込んでくるが夏恋の横を抜こうとした時に接触した。
 
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笛が鳴る。
 
ラーマさんのチャージングである。残念という顔をしてボールを残して自陣に引き上げる。こちらは夏恋のスローインから雪子がドリブルで攻め上がる。千里に前田さん、暢子に大野さんが付く。どうもこの試合ではお互いにこの組合せでマッチアップすることになりそうだ。
 
雪子がいったん留実子にパスし、そこにラーマさんが突進するようにチェックに来るものの、留実子はすばやく夏恋にボールを送る。即夏恋はスリーを撃つ。
 
外れる。
 
リバウンドを取りに留実子とラーマさんがジャンプする。
 
ポールは留実子の真上くらいに落ちてきたものの、ラーマさんがかなり強引に留実子を押しのけてボールをキャッチする。留実子は押されて倒れそうになるが何とか踏みとどまる。
 
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笛。
 
ラーマさんのブッシングが取られる。
 
試合開始早々まだ1分も経たないのにファウル2個である。
 
ラーマさんが審判に思わず抗議した。
 
テクニカルファウルが宣告される。
 
あっという間にファウル3個。
 
前田さんが両手で頭を抱えている。
 
たまらずベンチがラーマさんに交代を命じる。代わりにアヤさんが出てくる。
 

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結局N高校のスローインだが、ここで雪子からのスローインを受けた千里がきれいなスリーを入れる。旭川N高校が先制して、やっと試合は動き出した。
 
当初、F女子高側は、前田さん・大野さんを中心にしてボールを回した上で、最終的にはセンターのアヤさんがシュートを撃つ形で試合を進めようとしたものの、アヤさんより背丈で15cmも低い夏恋がきれいにブロックする。アヤさんはまだ経験が浅いようでジャンプシュートに精度が無く、ゴールを狙うには地面に着いた状態から撃つしかないようである。
 
夏恋をスターターに入れたのは、千里・暢子とのコンビネーションプレイを考えたのと、164-165cmの寿絵・絵津子より、170cmの夏恋の方がまだ相手の長身の外人選手とマッチアップした時に少しは対抗できるかというのを考えたものであるが、ラーマさんが早々にベンチに下がってアヤさんが出てきた偶然もあり、夏恋は彼女を随分停めてくれた。
 
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また夏恋のブロックをすり抜けても留実子がリバウンドを全部取ってしまう。向こうはアヤさんがシュートするので、大野さん(174cm)や左石さん(172cm)がリバウンドを狙ってくるのだが、(自称)180cmの留実子の存在感は大きい。向こうは全然リバウンドを取れない。
 
一方こちらは、千里・暢子が厳しくマークされていると夏恋がスリーを狙うし、夏恋を気にしすぎると千里が前田さんの一瞬の隙にマークを外してはこちらもスリーを撃つ。
 
それで第1ピリオドは12対18と、旭川N高校がリードする形で試合が進んだ。
 

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第2ピリオド、向こうは再びラーマさんを入れてきたが、やり方を変えてきた。
 
シュートは前田さん・大野さんが撃つようになり、ラーマさんはリバウンドに徹する。実際には留実子とラーマさんの対決は、このピリオドではラーマさんが6、留実子が4という感じであった。半々くらいではあるのだが、ややラーマさんの方が多く取っている。
 
加えて守備の時、前田さん・大野さんは千里・暢子に完全に没頭して、他は見ないようにした。特に前田さんは他に一瞬気を移した隙に目の前から千里が居なくなるというのを体験して、これは試合全体のことは忘れて、千里封じだけに専念する以外無いと割り切ったようである。
 
「前田さん、開き直ったね」
と客席で見ていたJ学園の大秋さんは言う。
 
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「あれは実際に村山さんとゲーム中に対峙したことのある人しか分からないんですよ」
と佐古さんも言う。
 
「こうやって客席から見てると、なぜ今のマーク外されたんだ?とか、なぜ今の抜かれたんだ?と思うんだけどね」
 
「村山さんって、気配を残したままどこかに行っちゃうんですよ」
と昨年のインターハイでさんざん千里のマークをした道下さんが言う。
 
「まるで分身の術だよね」
と佐古さんは言ったが
 
「分身の術という面ではP高校の佐藤さんのがもっと凄い」
と大秋さんは言う。
 
明日、J学園はそのP高校と戦うのである。佐古さんと道下さんは緊張した面持ちでフロア上のゲームの進行を見守った。
 
「でも花和さん、外国人センターに全然負けてないね」
「半分くらい取ってるよね?」
 
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「サーヤは4割くらい取ってる」
と冷静に中丸さんが言う。
 
「ボクもサーヤもクララ(C学園の熊野サクラ)もマチンコ(T高校の森下誠美)も、簡単には外人センターに負けないよ」
と中丸さんは言ったが
 
「その固有名詞がわからん!」
と白子さんから突っ込みが入った。
 

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女の子たちのインターハイ・高3編(10)

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