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■女の子たちのインターハイ・高3編(13)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-04-06
 
2008年8月2日(土)。冬子は早朝から車のクラクションの音で目を覚ました。冬子はここのところずっとサウザンズの制作の補助をしていて結構疲れていたのだが、そういえば今日は政子がバイトで甲府の設営をするので一緒に行くことにしていたのだった。
 
急いでポロシャツとキュロットにハイソックスなどという服装に着替え、両親の寝室の外で「ちょっとバイト行ってくるね」と言ってから飛び出す。
 
「お待たせしました」
と言って花見さんの車の後部座席に乗り込むが政子は居ない。
 
「あれ?政子さんは?」
と訊いたら
「30分ほど電話鳴らしたり玄関のドア叩いたりしてやっと起こしたんだけど、唐本を先に連れてこないと俺の車には乗らないと言うんだよ」
「ああ」
「それに何だか唐本がそばに居たほうがあいつ機嫌がいいみたいでさ」
「へー」
「じゃ、これからまた政子の所に行って甲府な」
「はい、よろしくお願いします」
 
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やはり春にレイプされかけたので、本当に政子は花見さんに対して不信感持ってるんだろうなと思い、信用できない相手なら別れればいいのにとも思いつつ、まだ寝足りない分を政子の家までの道筋、目をつぶって意識を半分眠らせて補った。
 
しかし政子の家に着いて冬子が彼女を呼び出すと、政子は設営スタッフをやるのには不向きなくらい可愛い服を着て笑顔で出てきて助手席に座り、甲府までの道すがら花見さんと何だか楽しそうに話をしている。うーん。政子、やはり花見さんのこと一応好きなのかな?どうも政子の気持ちは分からないなどと思いながら、雨模様の空を眺めていた。そして心の中に軽い嫉妬の気持ちが湧くのを抑えきれない気分でもあった。
 
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私、もう男の子の機能無いし、政子のこと好きになってもしょうがないからな。そんなことを冬子は考えていた。その脳裏に春にレイプされそうになった政子を助けたあと、彼女を抱きしめてキスした時の甘い記憶がリフレインされていた。
 

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同じ8月2日(土)。伊香保温泉の旅館で目覚めた千里は左手の封印の梵字が随分薄くなっていることに気付いた。それで美鳳さんからもらった筆ペンできれいに書き直した。そして、暢子のもそろそろ消えているだろうから、書いてあげようと思ったのだが、暢子を起こそうとした時、突然
 
「キャー」
という悲鳴が窓の外で聞こえた。
 
びっくりして千里がベランダに出てみると、同じ階の、少し離れた部屋の窓の外に手だけで窓の下の配管の所にぶらさがっている女性がいた。
 
「誰か助けて!」
と窓から顔だけ出しているもうひとりの女性が叫んでいる。
 
ここは4階である。落ちたら死ななかったとしても大怪我するであろう。
 
「なんだなんだ?」
と言って暢子も起きてきた。留実子も続いて出てくる。
 
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「そこの人、僕がそちらに行って引き上げるから、部屋の鍵を開けて!」
と留実子が叫んだ。
 
「分かりました!」
と言って窓から顔を出していた女性の姿が消える。
 
「私も行く」
と言って暢子と留実子が急いでそちらの部屋に向かった。
 
千里は
「今助けが行くから頑張って!」
と窓からぶら下がっている女性に呼びかける。寿絵も起きてきて様子を見る。
 
その時、千里は窓の外にロープが垂れているのに気付いた。
 
「あのロープ何だろう?」
と千里は半ばひとりごとのようにつぶやいた。
 
「窓から脱出しようとして失敗したのでは?」
と寿絵が言う。
 
「脱出?何のために?」
と千里。
「宿代が払えなくて逃げようとしたのでは?」
と寿絵。
 
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「うーん。4階から逃げるのは忍者の修行が必要かも」
 

その時、かなり辛そうな顔をしていた女性の手が窓枠から離れてしまった。
 
「あっ」
と寿絵が声を挙げる。
 
『りくちゃん!助けてあげて!』
と千里が心の中で叫ぶ。
 
《りくちゃん》は即飛び出して行くと、女性の身体をぐいと持ち上げた。そして彼女の手が窓枠の所に掛かる高さまで持ち上げてやった。
 
そしてちょうどそこに、留実子が到着して、窓枠そばにあった彼女の手首をがっちりと掴む。続けて暢子も到着し、ふたりは女性の手を一緒に持つと、ぐいと引き上げ、部屋の中に倒れ込むようにした。《りくちゃん》も手伝って外から押してあげた。
 
「ね、今、女性の動きが変じゃなかった?」
と寿絵が言う。
「留実子が飛びついて引き上げたのでは?」
と千里。
「あ、そうか。それで上に上がったのか」
と寿絵も納得したようであった。
 
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千里と寿絵もそちらの部屋に向かった。
 

助け上げられた女性はハアハア大きな息をしている。暢子と留実子も大きな息をしている。もうひとりの女性は涙を浮かべている。そこに旅館の人も到着した。
 
「いったい何事ですか?」
 
「この人が窓から落ちそうになったので、私たちで助けました」
と暢子が簡単に状況を説明する。
 
「落ちそうになった?」
と聞くと旅館の人は窓の所に行く。そしてロープを見付ける。
 
「あんたたち逃げようとしたのでは?」
 
「えーっと天気を見ようとしていただけなんですけど」
「このロープは何です? それに29日から4日分の宿賃をいったん精算してくださいと先ほどお願いして、ちょっと着替える間待ってとおっしゃるので、それを待っている間のこの騒ぎ。あなたたち、お金が無いんですか?」
 
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と旅館の人が厳しい顔で女性たちに言う。
 
暢子や千里たちはお互いに顔を見合わせた。
 
「私たち、歌手なんです。ちょっとマネージャーが来るのが遅れているんですよ。宿賃はちゃんと事務所が払いますから」
とひとりが言う。
 
「なんて名前ですか?」
「リリー・フラワーズといって東京じゃ中高生に人気なんですけど、知りませんか?」
 
旅館の人が千里たちを見て訊く。
 
「あんたたち知ってる?」
 
「知りません」
と千里が答える。暢子も留実子も知らないようだ。
 
「事務所はどちらですか?」
と千里は彼女たちに訊いた。
 
「△△社と言って、創業30年くらいの老舗(しにせ)なんですけど」
と彼女たち。
 
「その会社なら知ってます。そちらに問い合わせてみられたらどうでしょう?」
と千里は旅館の人に言った。
 
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「電話番号は?」
「ごめんなさい。今携帯のバッテリーが切れててアドレス帳が見られない」
と彼女。
 
「私が分かりますよ」
と言って千里はデータとして携帯に保存している業界関係の住所録を開くと、△△社の電話番号をメモ用紙に書いて旅館の人に渡した。
 
それで旅館の人はそちらに電話した。
 

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その日、△△社で、徹夜で市ノ瀬遥香の新しいアルバムの音源をミックスダウンしていた須藤美智子は、事務所の電話が10回ほど鳴ったのを、やれやれという表情で取った。「今日は甲府まで往復だから少し寝たいのに」などと文句を言いながら電話を取る。
 
「はい。△△社です」
と答える。
 
「すみません。こちらは伊香保温泉の**楼と申しますが、そちらのタレントさんにリリー・フラワーズという女性の2人組、おられますか?」
 
「はい居ますよ」
「宿代を頂きたいと言ったら、事務所が払いますと言っておられるのですが」
 
須藤さんは少し考えた。
 
「イカホ温泉ってどちらでしたっけ?」
「群馬県渋川市ですが」
 
群馬か・・・だったら宇都宮の近くかな?じゃ明日のイベントの前泊だっけ?と考える。自分は前泊しろという指示は出していないが、社長か遠藤君あたりが言ったのかも知れないな。もし違っていてもこちらで代わって払っておいて、あとでギャラから引けばいいしと考える。
 
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「分かりました。こちらで払いますから口座番号を書いた請求書をFAXしてください。番号は03-XXXX-XXXXです」
 
それで須藤さんは電話を切ると、音源の方の作業に戻った。
 
須藤さんは群馬県と栃木県がしばしば頭の中でごっちゃになっていて、この電話応対をした時も、群馬県のほうが栃木県より東側にあり、宇都宮も群馬県のような気がしてしまったのであった。
 

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一方△△社に電話した旅館の人は
 
「疑って申し訳ありませんでした。ちゃんと先方は払うとおっしゃってます」
と言う。
 
「じゃ、私たち帰ってもいいですか」
「はい、失礼しました」
 
それでリリー・フラワーズの2人は荷物を持つと帳場の方に行く。成り行きを見守っていた千里たち4人も引き上げる。留実子たちが助けてあげた女性が
 
「さっきは本当にありがとう。もう死ぬかと思った」
と言ってお礼を言った。
 
その時彼女の鞄から、何か手帳のようなものが落ちた。
 
「落ちましたよ」
と言って寿絵が拾って渡す。
 
「わあ、ありがとうございます。パスポートなかったら飛行機に乗れない所だった」
と彼女は言った。
 
「お気を付けて」
と言って千里たちは彼女たちを送り出した。
 
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そして千里はこの騒動で、梵字を暢子の掌に書いてあげるのを、きれいさっぱり忘れてしまったのであった。
 

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その頃、花見さんが運転する車は非常駐車帯に寄せて停まっていた。花見さんが地図を見ている。
 
「やはり道を間違ったようだ。上里サービスエリアというのは中央道じゃなくて関越道だ」
などと花見さんは言っている。
 
冬子も若干責任を感じていた。サウザンズの制作疲れがあったのと、政子とのことをぼんやりと考えていたので、外の景色についても深く考えなかった。色々思い起こしてみると、花見さんの車は中央道の甲府方面に乗ったのは良かったのだが、何を考えたのか八王子JCTで圏央道に分岐してしまい鶴ヶ島JCTから関越道下りに入ってしまった。そして上里SAの標識を見た所で「こんなサービスエリア、中央道にあったっけ?」などと言い出したのである。
 
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「国道140号線を突っ切って行けば早い気がする」
と花見さんは言っている。
 
国道140号線??
 
「やめましょう。それって有名な酷道、過酷の酷の方の道ですよ」
と冬子は言った。
 
以前蔵田さんの運転する車の後部座席に乗り、楽しそうに運転する蔵田さんに対して樹梨菜さんとふたりで悲鳴をあげていた時の嫌な思い出が蘇る。
 
「藤岡の近くなんだっけ? そしたらそのまま上信越道に入って長野自動車道経由で甲府に行けばいいんじゃない?」
と地図をのぞき込んでいる政子が言う。
 
「私は来た道を戻った方がいいと思います」
と冬子は主張した。
 
「それやると高速料金で今日のバイト代が赤になる」
などと花見さんは言っている。
 
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そんなことを言っていた時、パトカーが近づいて来た。窓をノックするので開ける。
 
「故障ですか?」
と警官が尋ねる。
 
「いいえ」
「いや、故障だったら三角停止板が出てないなと思ってね。免許証見せて」
 
高速で非常停止して三角停止板を出していないと1点である。花見さんは免許証を警官に渡した。もうひとりの警官に渡して照会しているようだ。
 
「済みません。道に迷ってこのあとどう行けばいいか悩んでました」
と花見さんが言う。
 
「そういうのはサービスエリアでやりなさい。こんな所に停めたら危険だよ」
「済みません」
 
「でもどこに行くつもりだったの?」
「甲府です」
「全然方角が違うじゃん。どこから来たの?」
「都内なんですが」
「なんで関越に乗ったの?」
 
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「すみません。ぼーっとしてました」
 
冬子は頭を抱えた。今花見さんは漫然運転(安全運転義務違反)を自己申告したも同然である。点数は2点だ。
 
警官はため息をつく。
 
「適度な休憩してないんじゃないの?」
「済みません。昨夜遅くまでバイトしてたので疲れてて」
 
冬子は首を振った。過労運転の自己申告だ! これは酒気帯び運転並みに重い罰則が待っているので警官には絶対に言ってはならない言葉のひとつだ(と冬子は蔵田さんから教えられていた)。しかし花見さんは
 
「ここから甲府に行くにはどこ通って行くのがいちばん速いですかね?」
などと警官に尋ねている。
 
「うーん。本当はいったん下りて関越の上りに乗り直して、鶴ヶ島JCTから圏央道を通って中央道に行った方がいいと思うけどね。さっき本庄付近の上り線で事故が起きたんだよ」
と人の良さそうな警官は言う。
 
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「あらぁ」
「だとすると、上信越道・長野道を回った方が速いかも」
と警官。
 
「私の言った通りだ」
と政子が言う。
 
「あるいはね。佐久ICで下りて国道141号を南下する手がある。但し途中から清里高原道路に分岐する必要があるんだけど分かるかな」
と警官。
 
「その道、友人の車に同乗して通ったことがあるので、私分かります」
と冬子は言った。
 
「通ったことある人がいたら大丈夫かな」
と警官も言う。
 
「ありがとうございました。それではそのルートで行きます」
と花見さんは言ったのだが
 
「待った待った。ここに不必要に車を停めていたから駐停車違反。点数2点」
「えー!? ここ停めちゃいけないんですか?」
「ここは故障した車が待避のためやむを得ず停める場所。はい、これ署名して」
 
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どうも漫然運転の方は取り敢えず勘弁してくれたようだし、過労運転のことは聞かなかったことにしてくれたようだ。
 
冬子がやれやれと思って窓の外を見た時、一瞬空を飛ぶ龍の姿が見えたような気がした。へ?と思って目をゴシゴシすると、どこにもそのような影は見当たらない。何かの見間違いだよね?と冬子は思ったが、その時、冬子は身体の中に何か強い衝動が沸き上がってくるのを感じた。
 

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女の子たちのインターハイ・高3編(13)

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