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■夏の日の想い出・赤い服(23)
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8月10日(水).
ローズ+リリー35枚目のシングル『Rain/赤い服』が発売された。
下記の曲を収録する。
『Rain』(マリ&ケイ作詞作曲)
『赤い服』(マリ&ケイ作詞作曲)
『夜12時の女の子』(マリ&ケイ作詞作曲)
『Rain』は私が夢で見た内容を歌にしたもので、雨の中をドライブしていたら虹の七色の服を着ていた人たちが雨に濡れていたので乗せてあげたという話である。やや童話タッチの曲。
赤い服の消防士さん
オレンジの服のフライトアテンダントさん
黄色い服の看護師さん
グリーンの学生服の男子中学生
青いセーラー服の女子中学生
紺色の服の花婿さん
すみれ色の服の花嫁さん
そしてて7人が全員同じ顔だった!という趣向である。
元々私の夢の中ではアクアが7人出て来たし、マリもアクアでMVを撮りたいと言ったが、アクアはとても時間が取れないので、今回のモデルをお願いしたのは、アクアのそっくりさんとして知られる尾崎鞠矢(まりや)である。彼女はけっこう男装も行けるし、もともと未成熟っぽい感じがあったので、まだまだ学生服・セーラー服が行けた。
彼女は172cmの長身なので、撮影時には、女子バスケットのチーム白鳩のメンバーがボディダブルを務めてくれた。車はエルグランド8人乗りを使用した。
この曲はアクアが無理ならということで白鳥リズムにモデルをお願いする話もあったのだが、彼女も結構多忙なので、結局、尾崎鞠矢になった。でもその話があったので、白鳥リズムがこの曲をカバーする話もできて、こちらは実行された。7月27日に出たリズムのシングルに含まれており、本家より先にリリースすることになった。また『アリババと40人くらいの盗賊』にも使用された。
『赤い服』は政子が歌った替え歌ではなく、私があらために詩を書き、曲を付けたものである。赤い服を着たかった女の子の赤い服への思いを綴ったノスタルジックな歌になっている。
小さい頃、お母さんに赤い服を買ってもらった。物凄く嬉しかったので、大事大事にしていて、めったに着なかった。すると母は「あんたあの服着ないね。赤は嫌い?」と言ってその後、赤を買ってくれなくなった。
でも本当は赤い服を着たかった。
そして中学生になり、高校生になり、大人になって
自分で赤いワンピースを買い、身に付けた。
15年ぶりくらいに着た赤い服を鏡に映して涙が出た。
それでお出掛けしたら、幼なじみの男の子に出会った。
「君、赤い服着てるの初めて見た。凄く似合うね」
そのような歌である。聴いていて涙が出たという声が多かった。
シングルはこの2曲を両A面にしている。
政子は
「この物語、実は男の娘の話じゃないの?小さい頃可愛い服を買ってもらって凄く嬉しかったけど、男の子に親はあまり可愛い服を買ってくれない。それでおとなになってから自分で可愛い服を買うようになる」
などと言っていた。
「なんでわざわざそういう解釈をする?」
MVでは、信濃町ガールズ関東の岩旗雪華(ゆきか)・月恵(つきえ)・良美(よしみ/よしはる)の三姉妹(三姉弟)に、幼い頃、少し大きくなった所、中学生になった所を演じてもらっている。3人はわりと顔立ちが似ているので、1人の女の子が成長していく様のように結構見える。大人になった姿を演じたのは、3人のお母さん!である。
お母さんは33歳だが、物凄く若いので20歳の女性を演じてもそんなに違和感が無かった。また若い頃劇団に居たということで、演技もうまかった。成人式に振袖で出た後、赤いワンピースを買い、それで男の子に声を掛けられる様子を撮影している。幼なじみの男の子を演じたのは、西宮ネオン(23)である。撮影の時、お母さんはネオンのファンだと言ってサインをもらっていた。
ところで、幼い頃の女の子を演じた岩旗良美君は本当は男の子!なので
「え〜?スカート穿くんですか?」
と抵抗したが
「お芝居、お芝居」
と言って着せてしまった。
「その服あげるよ」
「もらっても困ります」
「こっそり着てればいいんだよ」
と言って押しつけた(男の娘教育)。
幼い女の子を演じたのが実は男の子だというのは、政子には内緒である。女性ホルモンをプレゼントしたりしかねない!
3曲目の『夜12時の女の子』も童話っぽい作品である。
それは夜の12時になったら、子供の部屋に現れる魔法使いの女の子の物語である。散らかっている部屋を魔法で片付けてあげたり、やってない宿題をやってくれたり、買ってもらえなかった本を読んでくれたりする。
朝になったら居なくなってるけど、部屋はちゃんと片付いててお母さんに褒められるし、宿題はちゃんと出来てて先生に褒められる。読んでもらった本は残ってないけど、記憶は残っているから友だちと話が合う。
シンデレラとか『ニッキニャッキ』系統の夢物語である。
MVでは、信濃町ガールズ関西の準特待生・雪枝一美ちゃんが助けてもらう子供を演じ、信濃町ガールズ本部生の春野わかなが魔法使いの女の子を演じている。お母さんは高崎ひろか、学校の先生は品川ありさが演じている。
以上の3曲構成で、今回はメルヘン&ノスタルジーの作品となった。
今回の発売記者会見には、八雲課長と私だけが出席した。マリは臨月なので欠席と説明した。実は自分が出産したことをまだ発表しないでくれと言ったのである。なぜわさわざ隠すのだろうと私は疑問を感じた。
記者会見の時、記者さんから
「RainのMVに出てるのってアクアちゃんじゃないですよね?」
と質問がある。
「アクアは7人くらい居るらしいので1人くらい都合つかない?と声を掛けてみたのですが、全員日程が詰まっていて、1人も空かないらしいです」
と言うと、記者たちから笑い声が出ていた。
「それで今回のビデオに出てもらったのは、アクアのそっくりさんの尾崎鞠矢ちゃんです。彼女結構演技うまいですね」
と私が言うと
「ああ」
という声が多数あがっていた。名前を記憶してた人が多かった。
尾崎鞠矢は2020年頃は、アクアのそっくりさんとして、結構バラエティなどに出ていたのだが、ここ1年くらいは動向を知られていなかった。彼女はどこかの事務所と契約もしていた訳ではないので、連絡方法が無かったのだが、地元のテレビ局が、音楽教室の先生をしている彼女を見付けてインタビューし、ローカル番組で報道した。地元では“アクアそっくりのビアノの先生”として、わりと知られていたらしい。
「はい、ローズ+リリーさんのMVは久しぶりの芸能的なお仕事をしました。カメラに映されるのは何か楽しかったですね」
「これを機会に芸能活動再開するご予定は?」
「さすがに無理だと思います。私、歌もうまくないし、お笑いのセンスも無いし、私くらいの年齢の女優さんとか、うまい人がたくさん居て、私の入り込む隙間は無いですし」
と彼女は答える。
「映画『黄金の流星』でアクアちゃんのボディタブルをしたのではという噂も立っているのですが」
「その映画は公開されるまで知りませんでしたし、私はアクアちゃんと身長が違いすぎるのでボディダブルとか無理です」
「ああ、それはあるかもね」
「それにボディダブルする女優さんは相当演技が上手い人でないと無理です。特にアクアちゃんは上手いから彼女のボディダブルができる人は限られると思いますよ。私はかいわれ大根役者ですから」
「かいわれ?」
「まだ大根に育つにも時間が掛かる状態ですね」
「ああ」
このインタビューは後日、本人の許可を得て、全国放送でも流され、結構話題になった。中央の番組に出ないかというお話も何件かあったものの
「ローズ+リリーのMVは、とてもお世話になったマリさんからのお話だったので出ましたが、基本的に芸能界は引退した身なので」
と言ってお断りしていた。
しかし先割れフォークの事務所社長さんがわざわざ秋田まで来て話をし、彼女の都合のいい日に収録するからとまで言ったので、マリヤは出て行くことにした。
「久しぶりやね」
と先割れフォークのマツ也が明るく言う。
「その節は色々お世話になりました」
「でもアクアちゃんの『黄金の流星』はアクアが3役してたから、3人の内の1人は尾崎マリヤで、1人は姉ちゃんの尾崎珠里ちゃんかと思ったぞ」
「姉のことまで覚えてて頂いてありがとうございます。でも私演技力無いし、身長がアクアちゃんと違いすぎるから身代わりが務まらないんですよ」
「ああ、確かにあんた背が高いもんな」
「一度実際に並んだことありますけど、彼女の頭頂が私の鼻くらいの高さになるんですよね」
「だったら、マリヤの鼻から上を切断すればちょうど同じくらいの背丈になるんじゃね?」
とスキ也。
「顔を半分切ったら、アクアちゃんとそっくりじゃなくなるじゃないですか!」
とマリヤ。
このやりとりに関しては
「そういう問題か?」
というツッコミ多数。
「だいたい普通は下を切ったらと発想する」
「それを上を切ったらと発想するのがなかなか凄い」
「でもマリヤがマジに返したから笑いが取れた」
「ところで、マリヤ性転換した?」
とマツ也が訊いた。
「はい。2年くらい前にたくさんテレビに出して頂いて、たくさんギャラも頂いたので、そのお金で昨年性転換手術を受けて女の子に生まれ変わりました」
「おお、それはおめでとう」
視聴者からも「おめでとう」という声多数。
「ありがとうございます。だからもう戸籍上も女の子になったんですよ」
と言って彼女は性別が女性になったマイナンバーカードをテレビカメラに見せていた。
「おかげで、私、女子として大学を卒業できたし、女性として今の音楽教室に雇ってもらったんです」
「良かったな」
それでアクアの『お気に召すまま』の歌を歌っていたが
「歌がうまくなってる」
と言われていた。
彼女はテレビで性転換したことを明かして、生徒たちが辞めたり他の先生のレッスンに変えてくれと言わないか、不安があったらしいが、かえって「尾崎先生のレッスンを受けたい」という生徒が増えて、それまで週に12時間ほど担当していたのが、週に24時間くらい担当しないと生徒をさばききれなくなったらしい。
また彼女のツイッターアカウントに
「性転換おめでとう」
のメッセージが大量に来て、本人もびっくりしたらしい。
政子は出産の5日後、8月8日に退院して小平市の実家に戻った。退院の時、私は政子から頼まれて、かえでを抱いた。
政子の母は
「大輔さんに連絡しなくていいの?」
と言ったが、
「別に関係無いし、連絡する必要は無い」
と政子が言ったので、母は喧嘩でもしたのかなと思ったようである。
8月10日(水).
この日、日独合作映画『お気に召すまま』が全世界で公開された。この日公開されたのは、日本語・ドイツ語・英語・フランス語のバージョンで、それ以外の言語のものは順次調整中である。
例によって時差の関係で最初に公開されるのはニュージーランドになるのでオーストラリアからわざわざニュージーランドに行って、最初の公開を観た人たちもあったようである。
シェイクスピア作品の中では『ロミオとジュリエット』『ベニスの商人』、『ハムレット』『リア王』『マクベス』『夏の夜の夢』などに比べると知名度はやや落ちる。しかし色々対立があったのが、最後は全員仲直りして、何組ものカップルが誕生するという展開は、死人も出ないし(*57), 安心して観られる映画として、評価が高かった。
(*57) 最初のほうでシャンジュ(原作ではチャールズ)に殺されるレスラーたちは忘れられている。ただ映画はその“殺された”レスラーたちが楽屋で雑談している様子も映しているので、あの試合がデスマッチであったことは多くの観客に認識されていない。
原作を読んでいた人は、元の物語で唯一可哀想なことになるウィリアムにちゃんと恋人候補の女の子が提示されていて、原作よりハッピーになっていると言われた。(可哀想といえばオリバー牧師もだが彼はわりとどうでもいい)
アクアが男装して女役をするシーンは、1度見ただけでは状況が把握出来なかった人も多くあったようで、3回くらい見てから
「やっと分かった、アクア姉弟すごい」
などと言っていた人も結構居た。
シェイクスピアの時代でも1度だけでは分からなかった観客が結構居たのではないかと思う。
「これは男同士のラブシーンか?」
と誤解して怒った宗教指導者などもいたらしいが、映画会社の社長がきちんと説明すると
「ああ、男と女なら問題無い」
と理解してくれたらしい。
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