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■夏の日の想い出・赤い服(13)
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7月20日(水).
全国の多くの小中高校で終業式が行われ、学校は夏休みに突入した。
富山県南砺市在住の観音倭文(かんのん・しず)は、友人たちに「さよなら」を言い「頑張ってね」と激励されて教室を出る。昨日までの内に荷造りを終え、荷物を積んで校庭で待っている母の車に乗った。そして一路富山空港に向かう。
待機していたHonda-Jet
Tigerに母と一緒に荷物ごと乗り、熊谷に飛んだ。SCCの車に荷物を積み替えて、17時頃五反野の女子寮に到着。入寮した。彼女はA201に入った。
お母さんはこの日寮の部屋に一緒に泊まり翌日部屋の片付けや必要なものの購入などを手伝ってから富山に帰った。
一方、兵庫県尼崎市在住の守口清美は、同様に級友たちに見送られて両親の車に乗る。そして両親が交替で運転して、20時頃、五反野の女子寮に到着。入寮した。彼女はA202に入った。
両親はこの日はホテルに泊まるつもりだったが、花ちゃんが
「“メゾン・ドゥラ・カデット”に泊まっていいですよ」
と言ったので、夫婦でそちらに泊まった。
そして翌日7/21娘の新しい生活の準備を手伝い、夕方帰って行った。
夏休みが始まったので、七石プリム(杉本ひかり)は女子寮に“移動”になった。
「すみません。ドアが開かないんですが」
と、ひかりは学校から帰ってきてから言った。
「ああ。ひかりちゃん、夏休みの間は女子寮に移動ということになってるから向こうに帰って」
と寮母の門脇さん。
「でも部屋に荷物が」
「荷物は移動されてるはず」
「え〜〜!?」
ということで、学校から帰ったままのセーラー服姿で(「こんな格好で恥ずかしいよぉ」と思っている)女子寮に行ってみると寮母の天羽さんが
「ひかりちゃん、いらっしゃい。あなたの部屋はA608ね」
ということで、天羽さんに案内してもらって1号館6階に上がる。それでA608のドアは、ひかりのidカードで開いた。
「じゃ困ったことあったら言ってね」
「はい。ありがとうございます」
ということで中に入ってみると男子寮の部屋に置いていた荷物が完全に同じ配置で置かれているので「すごー」と思うと同時に
「ぼく夏休みの終わりに本当に男子寮に帰してもらえるのだろうか」
と物凄く不安に思った!
このまま女子寮に移動になり、女子生徒としてこちらの中学に通ってとか言われないよね?
(↑今でも女子生徒として中学に通っている気がするか?)
ちなみにひかりは、最初佐々木マネージャーがひかりの性別を勘違いして(正しい認識だったりして)、女子寮から近いE中学の女子制服を作って送って来ていたので、今着ている世田谷区F中学の女子制服だけでなく、足立区E中学の女子制服も持っている。
だから、こちらに転校しても問題無く通える!
青葉は7月20日に記者会見を開き、昨日妊娠による休養が発表されたことについて、現役選手の身なのに、うっかり妊娠してしまったことを陳謝した。しかし青葉が既に入籍を終えており、近い内に結婚式もあげるということで世間は歓迎ムードだったので、コスモスも私もホッとした。これでアクアのアルバムの作業はこのまま進められる。
記者会見の最後で記者の質問に答える形で、青葉は出産後練習を再開してパリ五輪を目指します、と言ったが、あくまで修辞の範囲だろうと、多くの人が思った。
さて、そのアクアのアルバム制作作業は元々日程に無理があったし、11日以降、青葉の妊娠が判明したことから更に遅れていて、このままだと編曲の仕上がり終了が8月15日くらいになりかねず、アクアの日程が取れなくなることから年内の発売は絶望的になるかも・・・という感じになってきていた。
コスモスはやはり、一部の楽曲を醍醐先生にお願いしようと思い始めたのだが、18日頃から青葉のペースが上がったのである。
コスモスは青葉の身体を心配して南田容子に電話してみた。
「大宮万葉先生、ご無理なさってないよね?」
「はい。大丈夫です。火水と土曜日(7/12,13,16)は、醍醐春海先生が深夜まで付き合って下さったんですよ」
「ああ、なるほど」
千里さんも、自分でも代理の編曲作業をしながら、よく青葉さんの作業のフォローまでするなとコスモスは思う。しかも“別の”醍醐先生だと思うけど、東京のスタジオで制作指揮を執っているものの経験不足の花咲ロンドの相談にも乗ってあげている。
「日曜日は醍醐先生は盛岡に結婚式の日取りとかの打合せに行かれたのですが、桜蘭有好(おうらん・あるす)先生が夜遅くまで付き合って下さいました」
「は?」
それは青葉ではないのか?
「大宮先生がやはり夜中までやってるの?」
「大宮先生は21時でお休みになりますよ。だいたい、午前中と夕方から大宮先生が作業なさって、午後と深夜が桜蘭有好先生なんです」
「うーん・・・」
「大宮万葉先生と桜蘭有好先生の見分け方、だいぶ分かりました。大宮万葉先生は左利きで、桜蘭有好先生は右利きなんですね」
「へー!」
どうも“何かが”起きてスピードアップしたようだが、別に青葉さんが無理しているわけではないようだとコスモスは判断し、細かい問題は、いいことにした!
女子寮の看護師・山口さんから、杉本ひかりに電話があった。
「女子寮では、寮生のみんなに生理用品は無料で希望の銘柄のものを配布してるんだけど、あなたは何使ってる?」
「あ、はい。センターインのコンパクト1/2無香料ふつうの日用です」
(↑随分スラスラと答えるね)
「多い日用は?」
「私、あまり重くないので使ってません」
「了解。今在庫ある?」
「あ、少なくなってきた所です」
「じゃ配送システムに載せてあげるね」
「ありがとうござます」
「少なくなったら部屋の中のオーダーシステムで頼んでね。無料で届けるから」
「分かりました。ありがとうございます」
5分ほどで部屋の前に荷物が届くので出てみるとお届け袋がある。部屋の中に持って来てから開けるとナプキンが入っている。
「わあ、着けてみよう」
と言って、トイレに行き、開封すると、1個取り出して袋を破りシールを剥がしてパンティに取り付けてみた。
(↑使い方は知っているようだね)
それでパンティを穿くと不思議な気持ちである。
「生理の日を決めてカレンダーに印付けとこう。それとナプキン入れを買っておかなくちゃ」
と、ひかりは楽しそうに“初めての生理”を体験した。
ちなみに山口さんは1日から女子寮に滞在している立山煌には生理用品の銘柄など聞いたりしていない!(葉月と龍虎は「在庫があるから大丈夫です」と言った)
7月22日(金).
千里3が参加していたバスケットボール女子日本代表の第3次合宿が終了した。ここで1名落とされた。残りの14名で次の合宿を行う。
7月23日(土).
昔話シリーズ第7弾・倉田ミチコ主演『小公女セーラ』が放送された。若手女性タレントの注目株のひとりだけに、まあまあの視聴率となった(*42).
令和の時代に合わせて物語は、かなりソフトな設定に変えられている。
ミンチン先生はそんなに意地悪ではない。父親が亡くなり、授業料が払えなくなったセーラを本来なら放り出すところを、
「女の子がひとりで生きていくのは大変」
と“同情”して、屋根裏の部屋を与え、学園の雑用をさせて多少の給料まであげている、という設定である。未払いの授業料についても『出世払いでいいから、子供があまり気にしないように』などと大らかに言う。
ラヴィニアもそんなに意地悪ではない。セーラが生徒から使用人になり、図らずも自分が学園女王の座に返り咲いたが、『ゆとりのある者は苦しい人を扶けるべき』と言って、親を亡くしたセーラに同情してジェシーに言って、古い教科書や筆記具を含め、色々物を届けさせたりしている。
もちろんアーメンガードは、父親を亡くしたセーラを励まし、心の支えとなり、ロッティと3人で遊んだりもしている。
要するにみんないい人になってる!、
ただセーラがそれまで贅沢な生活をしていたのが、父親を亡くし、生活が色々不便になったし、まだ16歳(原作では11歳:倉田ミチコの実年齢は18歳)なのに自分の食い扶持を自分で稼がなければならなくなったというだけで充分悲劇は描かれているのであり、意地悪されるのは蛇足という面もある。
「これだけ学校でのいじめが問題になっている時代に、主人公がひたすらいじめられるという展開は、もう許されないのかもね」
と多くの視聴者が感想を述べた。
このドラマの主題歌はセーラを演じた倉田ミチコが歌い、7月20日(水)に発売された。
(立山煌と同じ日である。デイリーランキングでは倉田1位、立山2位だったが、ウィークリーでは逆転した。これは立山煌のファン層は30代の山ガールたちがコアになっていて、反応が遅いためと思われる/倉田ミチコのファン層は中高生男子)
次回はネルネル主演・白鳥リズム共演・“話題の”左座浪源太郎助演、3時間スペシャルと発表され、大いに期待が高まった。
(*42). 視聴率が制作側の期待したほどではなかったのは、主演者と物語の相性問題があると見られた。つまり『小公女』が圧倒的に女子に人気の物語で、この手の物語に男子はあまり興味が無い一方で、倉田ミチコのファン層は圧倒的に男子であり女性ファンは少なく、ターゲット層がずれていたのである。
これに対してUFOの『注文の多い料理店』やスパイス・ミッションの『ブレーメンの音楽隊』は誰でも知っている話だったので高視聴率が取れた。またこれらのユニットは女性ファンも結構いる。女子中高生たちはUFOやスパイス・ミッションのファッションに敏感である。UFOのオクが付けてたカバのイヤリングが人気になって品切れを起こしたりした。ネットライブの観客も2-3割が女性である。
また先日の織田淳二君の『小公子』の場合、織田淳二君は女性ファンが多いが『小公子』は女性も読んでいるので、うまく行った。
つまり読者層の男女比に開きがある物語は出演者に工夫が必要であることを制作チームは認識するに至る。
アクアのアルバムであるが、7月18日頃から編曲者大宮万葉(青葉)のペースが上がってきて、これなら、何とか月末までに全曲仕上がるかもしれないと思われたものの、結果的に演奏者の負荷があがる!
実質的な制作指揮をしている花咲ロンドは、演奏者の人たちには、自分の出番でない時は、寝ているように言い、スタジオ管理人さんに男女別の仮眠室を設定してもらって、休むようにさせた。またサポートのミュージシャンを追加して、ヴァイオリンやフルートは交替で入ってもらうようにした。
また実はエレメントガードのベース奏者が、エレメントガード結成以来担当してきたエミ(柿田江美 1989)が12月に結婚するので引退したいと言っていた。それで後任の人選を進め、ライブサポートで入ってもらったことのある、望田寿子(1999) を選び、今回のアルバム完成後に交替する予定だった。しかしギターのヤコとベースのエミの疲労が激しいので、彼女に早めに来てもらい、適宜ギターとベースを弾いてもらうことにした。
望田寿子(ヒサ)はギターもベースも上手い。実はキーボードも上手い。更にフルート・クラリネット・サックスにトランペットとホルンも吹くという、万能プレイヤーである。中学高校の吹奏楽部では“便利屋さん”だったらしい。ただトロンボーンが苦手というのは、音程感覚がやや弱いのだろう。しかし彼女は他の人の演奏の雰囲気に似せて弾くのも上手く、今回とても役に立った。
エミは昔ヤコと一緒にサイドライトというバンドをやっていて、その縁でヤコが勧誘してエレメントガード結成に参加させたもので、これでエレメントガードのオリジンルメンバーはヤコだけとなる。またバックバンドの平均年齢は2.5歳若返ることになった。
そのようにして、演奏者のほうは何とかやりくりするものの、アクアの替えは利かない!
アクアが歌唱している内にリズムキープできなくなり、そのまま崩れるように椅子からずれ落ちた。
「アクア!」
「龍ちゃん!」
驚いてみんな駆け寄るが、眠っているようである!
「歌いながら眠ってしまうって凄い」
「過労状態だからなあ」
たまたま陣中見舞いに来ていた千里が
「私が部屋に連れてく」
と言ってアクアを抱きかかえると部屋を出て行く。
「1時間くらい休憩!皆さんも仮眠してて」
と花咲ロンドが宣言する。
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