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■夏の日の想い出・赤い服(15)

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その湯谷薫さんを呼び出す。
 
本人と両親が入ってくる。本人は赤いブラウスに白い膝丈キュロットを穿いている。両親は、対照的な夫婦だなと私は思った。お父さんは190cmくらい、体重も100kgくらいありそうだ。でも肥満ではなく筋肉質の身体である。漁師さんか林業関係あるいは体育の先生とかだろうかと私は思った。一方でお母さんは小柄で150cmあるかどうか。体重も40kgあるかどうかという感じ。でも美人だ。薫ちゃんはお母さん似のとても可愛い子である。身長も152-153cmで、体格もお母さんに似たようだ。
 
「おめでとうございます。湯谷さん、あなたが優勝です」
 
「ほんとですか!嬉しい!!」
と彼女は大喜びである。両親も笑顔である。
 
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「契約しますか?」
「はい、お願いします」
 
それで私たちは湯谷親子と契約書類を交わした。
 

「でもこいつの就職先を心配しなくて済むみたいでホッとしました」
とお父さんは言った。
 
「やはり地元は、なかなかお仕事少ないですか?」
と私は尋ねる。
 
書類を確認するが、青森県むつ市川内町と書いてある。
 
「この町の読み方は“かわうち”ですか“かわち”ですか、あるいは“せんだい”ですか?」
 
「読み方は“かわうち”です。山ばっかりの町で、高校に通うのにバスで1時間くらい掛かるんですよ」
「結構中心部と離れているんですね」
「湯野川温泉って小さな温泉があって、観光客が少々来るくらいで」
「ああ、その温泉の名前は聞いたことあります。そこ確か漫画家の藤崎竜さん(封神演義などで知られる)のご出身地ですね」
 
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「実家が近所でした」
「おお、そうでしたか!」
 
「他に、ずっと昔『飢餓海峡』って映画に、こちらの温泉が出て来たことあるんですよ」
「名作映画ですね」
「その映画が撮られた頃は鉄道も走ってたんですが廃線になって、国鉄バスが走ってましたけど廃止になって、村営バスが走ってましたが倒産して」
「大変ですね!」
 
「一応民間の会社が引き継いでくれたのですが、いつまでもつことやら。昔は高校も町内にあったんですが、大湊の高校に統合されて、スクールバスで1時間くらい掛けて通わないといけないんですよ」
「ほんとに大変だ」
 

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「私は昔は大間で漁師をしていましたが、今は林業やりながら温泉関係の仕事もしてます。長男は私の昔の友人のツテで大間に出て漁船に乗ってます。次男は八戸まで出て、電気工事関係の仕事してます。長女は女房に似て頭が良くて青森の高校に入って。あ、女房は中学教師をしてるんですよ。それで長女は盛岡の大学に行きたいと言ってまして」
 
「それは優秀ですね」
 
と言うと嬉しそうだ。どうも長女さんはお父さんの自慢の子のようだ。でもなるほど奧さんは学校の先生か。
 
「次女は長女ほどは頭が良くないものの、剣道が強くて全国大会まで行ったんですよ」
 
「それはまた凄いですね」
 
その次女さんもお父さん自慢の子のようである。きっと次女さんはお父さんの体格や運動能力を引き継いだのだろう。
 
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「町に仕事が無いから、長男も次男もよそに出て行ったし、長女は青森の高校だし、次女も高校出たら、青森に出たいと言ってて、みんな出ていく。こいつは成績も悪くて、町に出ても仕事無さそうだし、といって地元で仕事探すにも、腕力無くて畑も耕せないし、温泉客のお膳とかも2個持てないし、船に乗せても船酔いするし、木にも登れないから営林関係の仕事もできないし、背も低くて女みたいに華奢な身体付きで、女みたいに非力で困ったもので。俺の頭と女房の体格を引き継いだんですかね」
 
ゆりこが噴き出した。
 
「あのぉ済みません。“女みたいに非力”って、こちらお嬢さんですよね?」
と私は訊いた。
 
「え?男ですが。でも確かにこいつ、よく女に間違われるんですよ。お前、いっそ金玉取って性換転(←お父さんの発言ママ)して女になった方が使えるかもしれんぞとかよく言うんですけどね」
 
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コスモスが頭を抱えている。ゆりこはとても楽しそうである。
 

「あのお、これは女の子のアイドルを選ぶオーディションなんですが」
 
「え〜〜〜〜〜!?」
と両親も本人も驚いている。私は冷静に観察したが、本人の驚きは演技ではないと思った。もしこれが演技なら名優として逆にスカウトしたい。しかし全く知らなかったのか?
 
私とコスモスは彼女、いや彼の生徒手帳のコピーを確認した。性別が“男”を斜線で消しているように見えるのだが、むしろ男にチェックマークを付けているようにも見えないことはない。何だかどっちにも取れる状態だ。でも写真はセーラー服を着ているように見えるけど!?
 
「知らなかったの?」
「はい。済みません。応募するのから手続きとかも全部下の姉がしていて、私は姉に言われた日時に参加していたので」
 
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「“ビデオガールコンテスト”というタイトルも見てなかった?」
「そういうタイトルだったんですか!」
と本人はマジで驚いているようだ。
 
これは西宮ネオンと同じパターンだなと思った。彼の場合もお姉さんが全部手続きしていたので、本人は女の子のオーディションとは知らずに本選まで来てしまったのである。
 
「姉自身も1次審査は通ったのですが、2次で落ちました」
と薫ちゃんは言っている。
 
1次審査が通ったということは、かなり優秀な人である。西宮ネオンの場合も一緒に応募したお姉さんはブロック予選で落ちている。しかしあの当時と今では応募者の数が違う。当時は都道府県大会は10分の1くらいの確率で通過できた。今年の1次は600分の1の確率である。剣道で全国大会まで行ったのなら、きっと結構な長身なのだろう。長身というのは目立ちやすいから有利だ。多分剣道で鍛えた運動神経でダンスも上手いのだろう。私はそのお姉さんにも興味を感じた。
 
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「でも君、スカート穿いてるよね?」
「え?これショートパンツですが」
 
いや、キュロットに見えるぞ。そんな裾の広がったショートパンツがあるか?
 
「でもウォーキングテストの時は、普通の膝丈スカートだったよね?」
「はい。足の動きがよく見えるように膝丈か膝上のスカートでということだったのでスカート穿きました」
 
「普段もスカート穿くんだっけ?」
「ええ。わりと穿きます。うちは上から、兄兄姉姉、そして私なので、だいたい姉のお下がり着てたんです」
 
「なるほど」
 
男の子が2人着た服はもう使用不能な気がする。女の子2人ならまだ行けるだろう。
 

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「だからスカートは普段着という感覚なので、小学校時代は時々スカートで学校に行ってましたし、中学でもチア部でミニスカート穿いてパフォーマンスしてます」
 
「ああ、ダンスが上手いのはチア部で鍛えたのね」
 
「はい。チア部の部長をしてます」
「凄いね!」
 
あの動きなら部長にもなるだろう。でもスカートに抵抗が無いわけだ!スカートが普段着というのはアクアと同じパターンだなと思った。このいう男の子は時々居る。アクアは男の子かどうかが微妙だけど!
 
「君の生徒手帳の写真はセーラー服着ているように見えるね。学校にもセーラー服で通学してるの?」
 
「いえ。私が入学した年はコロナのせいで3月から5月まで学校が休みで」
「ああ」
 
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「学校には登校できないけど、身分証明書として生徒手帳は必要だからということで、各自写真を提出して、それで生徒手帳を作ってもらったんです。でもうちの町、写真屋さんとかもないし、ありあわせの写真を提出したので、私の学年の子はみんな私服で生徒手帳の写真貼られてるんですよ」
 
なるほど。これは私服な訳だ。それにしてもセーラー服に見えるけど?
 

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「そしたら、こいつ失格ですか?それともすぐに女になる手術受けさせましょぅか?」
などとお父さんは言っている。
 
私とコスモスは2〜3言、ことばを交わしてから、コスモスが言った。
 
「薫さんはとても優秀な方なので、芸能契約はこのまま有効ということにさせて下さい。ただ、コンテスト自体は応募資格外だったということで、優勝は取り消しということになります」
 
「だったらこいつの身分は?」
「うちの事務所のタレント予備軍の、信濃町ガールズという組織があるので、そのメンバーに参加してもらうということでもいいですか?それで様子を見て、歌手デビューできそうならデビューしてもらうということで」
 
「ガールズということは、やはり女になってからですか」
「いえ、ガールズといっても歴史的な経緯でそういう名前になっているだけで、メンバーには男子もいますし、そのまま男性歌手としてデビューする人もいるんですよ」
 
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「じゃ、別に女になる手術しなくてもいいんですか?」
「はい。男子のままでいいですよ。デビュー保証が無くなるだけです。信濃町ガールズのお給料は毎月最低20万円です。たくさんお仕事した時はその分、多くなります」
 
「ああ、最低保証付きの歩合制ですか」
「はい、そうなります」
「だったら東京に出て行っても、お前食っていけるな。東京は家賃高いけど、節約してれば何とかなるだろう」
 
お父さんは東京の家賃の相場を知らないな、と私は思った。
 
「寮に入っていただくので、家賃は要りませんよ」
「それは素晴らしい」
 

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ということで、1位の湯谷薫さんは、優勝辞退扱いになり、男子信濃町ガールズになることになった。
 
しかし彼はお父さんから「女になる手術受けさせて」とか言われる度にドキドキしたような顔をしていた。スカート自体好きでよく穿いてるというし、この子、ほんとうは女の子になりたいのだろう、と私は思った。セーラー服を着た写真を提出して生徒手帳を作ってもらったのも、きっと確信犯(誤用)だ!
 
あるいはこの子の傾向を見て、学校側もそういう写真を許容したのかも?
 
だいたい、中学3年生にもなって声変わりしてないのは、とっても“怪しい”。
 
私たちは、彼に渡した書類の中で、女子寮入寮の案内という書類を返してもらい、代わりに男子寮入寮の案内の書類を渡した。
 
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でも女子寮でもよかったりして!?
 
親子3人は「女の子のオーディションとは知らずに申し訳ありませんでした」と謝ってから退出した。
 

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私たち3人は話し合い、先日花ちゃんから提言があったように、1位が失格しても、2位は“繰り上げ優勝”にはせずに、2位のままにすることにした。
 
つまり第3代ビデオガールは空位とする。
 

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夏の日の想い出・赤い服(15)

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