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■春約(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-09-21
 
2018年5月14日(月)、川島信次は千葉支店から名古屋支店に転勤になった。3月に結婚したばかりの妻・千里は1日遅れの5月15日に名古屋に来るということだった。
 
この日は千葉の実家を出て朝一番の新幹線で名古屋に向かい、名古屋支店に出勤した。
 
千葉4:45(横須賀行き)5:33品川6:00-7:28名古屋
 
千葉支店では設計2課・システム係長という肩書きだったが、名古屋支店では個人住宅設計課・標準化室長という肩書きである。給料はこれまでより3万も上がる。それで係長から室長へというのは出世のようにも見えるが、名前からして閑職っぽい“香り”がある。実質左遷かなぁ、という気もしている。でもまあ、自分は部長とか支店長とかまで出世するタイプでもないし、などとも思う。
 
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名古屋駅から会社に直行。8:20頃に到着。新しいIDカードをタッチして正門を通る。左手の方に新しい棟を建設中のようだ。正面にある棟はけっこう古い。恐らく築後40年くらい経っているなと思った。個人住宅設計課は1階である。入って行くと、奥の方に大きなテーブルがあり、そこに40歳くらいの男性が座っているので、挨拶に行く。
 
「おはようございます。千葉支店から転勤して参りました、川島信次と申します」
 
「おお、川島君。待っていたよ」
とその人物は笑顔で迎えてくれた。会議室に入る。
「水鳥君、お茶ね」
と近くに居た若い男性?社員に声を掛けた。
 

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「書類はそちらに行っているとは思いますが」
と言って、辞令と、念のためまとめておいた業務経歴書を見せた。
 
「おお、一級建築士だけでなくシステム監査技術者を持っているんですね」
「システム部門が長かったもので取りました」
「住所はどちらですか?」
「中村区**2丁目です」
「名駅のすぐ近くですね!」
「ええ。駅に行くには便利な場所のようですね。でもその割には家賃が安くて」
「それは掘り出し物でした」
 
少し話をしている内に、さっき声を掛けられた27-28歳くらいの男性社員が「失礼します」と言って入って来て、お茶を出してくれた。
 
が、信次は大いに混乱した。
 
スカートを穿いている!?
 
「こちらの支店では男性社員もスカートの制服を選択していいんですね?」
などと信次は言ってしまった。
 
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「ん?」
 
「あ、すみませーん。私、よく間違えられるけど女です」
とその社員は言う。
 
え?え?今の話し方は男の話し方に聞こえる。声は男にしてはやや高いピッチという気はするけど。
 
「水鳥君、もう性別間違えられたのは5回目くらいだっけ?」
「たぶん10回以上です」
 
「ごめーん」
と信次は謝る。
 
「水鳥君、いっそ下はズボンにする?」
「それでもいいですよー。誰も私を女と思わなくなるかも知れないけど」
 
「川島君もスカート穿きたかったら穿いてもいいけど。男性社員がスカートを穿くことは就業規則では禁止されていないから」
 
「いや、遠慮しておきます」
と信次は照れながら言った。しかしそう言う信次を水鳥は不思議そうに眺めていた。
 
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その日はまだ千里が到着していないので、会社から新居に戻っても1人である。加えて引越の荷物は水曜日に到着するようにしていたので、アパートにはまだ何も無い。それで夕食は外に食べに出ることにする。
 
名駅の東側の地下街を歩きながら、安くて美味しそうな所は無いかなあと思い、眺めていたら、うっかり人にぶつかってしまった。
 
「ごめんなさい」
と思わず女声で言った。
 
実は信次は今夜女装していたのである。それは帰宅して晩御飯を食べてから、ひとりで“おいた”するためである。
 
信次がぶつかった若い男性も
「あ、ごめん」
と言った。
 
そしてふたりは一瞬お互いを見る。
 
「あれ?」
と彼は言った。
 
「あのぉ、まさか、川島さんですか?」
 
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信次はギョッとした。自分を知っている人にこんな格好している所を見られるなんで。でもこれ誰だ?と必死で考える。
 
「あ、もしかして・・・水鳥さん?」
「はい。思わぬ所で会いましたね」
 
彼(彼女?)は完璧に男性の装いだった。
 

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何となく誘い合うようにして居酒屋に入った。
 
「へー。宝塚にいたのか」
「男役やってたんで、男性的な仕草とか男みたいな話し方が抜けないんですよね〜。だから私、まず男と思われるし、女らしい服を着て歩いていても、女装した男にしか見えないんですよ。だから最近はもう開き直ってこんな格好してることが多いです。女らしい服を着ていて女子トイレに入ると悲鳴あげられて何度か通報されたんですよ」
 
「それは大変だねって・・・だったら今みたいな格好してる時はトイレはどうするの?」
「もちろん男子トイレを使います。一度も騒がれたことありません」
 
「凄い。君、恋愛対象は・・・バイ?」
「男の人にしか興味ない・・・なんて言っても信じてもらえないだろうなあ。川島さんは・・・・ゲイですか?」
 
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「よく分かるね」
「だってMTFさんじゃないみたいだもん。雰囲気が」
 
「うん。MTFの人とゲイの人は全く雰囲気が違うんだよね。だってMTFは基本が女の子だけど、ゲイは基本が男なんだよ。僕は女の子になりたいわけではない。だから女装はするけど、これはプレイにすぎない」
 
「奥さんいるって言ってましたけど、奥さんって男の人?」
 
「元男性かな。今は完全な女性。性転換手術済み」
「だったら、カップルとして成立しない気がします」
「大丈夫。僕が女役で、彼女には***をつけて男役してもらっているから」
「なるほどぉ!」
「スポーツウーマンだから筋力あるよ。僕、何度かお姫様抱っこしてもらった」
「川島さんが抱っこされたんですか!」
「僕は身長も低いし、体重は43kgしかないから」
「それ軽すぎです!私より軽いじゃないですか!」
 
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「実は逆駅弁したこともある。彼女に抱き抱えられたまま結合」
「うっそー!?」
「あまり楽しくなかったから1度しかしてないけど」
「質問です」
「ん?」
「その時、どちらがどちらに入れたんですか?」
「えっと・・・彼女が僕に入れたんだけど」
「それは逆駅弁ではなく、普通の駅弁だと思う」
「そうかも!」
 
ふたりは何だか意気投合してしまった。居酒屋で3時間くらい話してから結局閉店間際にお店を出る。
 
「波留ちゃん、おうちはどこ?電車まだある?」
と信次は尋ねた。
 
「うち、アクセス悪いんですよね〜。家まで辿り着けるのは名駅を10時発の便までなんです。だからどこか安いビジネスホテルにでも泊まります」
 
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その時、唐突に信次は言った。
 
「それなら僕と一緒に泊まらない?」
 
水鳥波留はじっと信次の顔を見つめていた。
 

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2018年5月、歌手の芹菜リセが俳優・山口輪樽との離婚を発表した。芹菜は昨年12月に山口と結婚し、500名も招待した盛大な結婚式をあげたのだが、半年も経たない内の離婚となった。
 
芹菜リセは1995年にデビューした歌手・保坂早穂の実妹で、1998年にデビューした。歌唱力豊かな姉といつも比較されていたが、それ故に人一倍努力し、彼女の評価は年々高まっていった。しかし決して姉を越えることはできなかった。
 
そのせいか、彼女はある時期から歌手活動より、テレビタレントとしての活動に重点を移していった。彼女の歯に衣を着せない話し方は、一定層のファンを得て、いつしか「芸能界のご意見番」などと呼ばれるようになっていた。若手の歌手やタレントで彼女から無茶苦茶言われて、恨むようになった人もかなりあると言われた。
 
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ところがその彼女が2015年の6月頃から唐突にテレビ番組から姿を消した。実際には5月に出演していたものは4月中に収録されていたもののようで、ゴールデンウィーク明け以降、完全に活動を停止したのである。
 
そのことについて事務所やレコード会社に多数の照会があったものの、どちらもノーコメントで通した。しかしその問題を報じたマスコミはほとんど無かった。
 
どうも何かやらかして出演禁止になったようだという噂がネットを駆け巡る。テレビ局のワイドショーなどでも話題にならないことから、事務所が全部抑えてしまったのだろうと噂され、彼女の事務所社長で、業界のドンとも呼ばれる鈴木一郎社長を批判する声もあった。
 
彼女の消息はどこにも出ることなく、死亡説、入院説、外国渡航説、性転換説!?などが飛び交っていたが、2017年6月に唐突に3年ぶりの新曲を発表する。
 
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新曲はわりと好評で、全国5ヶ所でのライブも行った。しかし彼女は歌番組を含めてテレビには一切出演せず、インタビューでこの2年間のことを訊かれても「申し上げることはありません」としか言わなかった。
 
彼女はその後、11月には5年ぶりのアルバムも発表したのだが、その直後結婚することを公表。12月に盛大な結婚式をあげて、芸能界からの引退を表明した。
 
ところがその結婚が半年もせずに破綻。離婚の記者会見で芹菜は
 
「主婦に専念しようと思っていたのですが、離婚しちゃったので、恥ずかしながら歌手に復帰したいと思います。蔵田先生のところに頭を下げに行ってきまして、新曲を書いて頂くことになりました」
と語った。
 
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新曲は今年作曲家が全員多忙であることから、制作スケジュールが立てられないものの、秋頃には発売したいと彼女は語った。
 
ネットでは
「わがままな性格の芹菜リセが専業主婦なんてできる訳ないと思った」
とか
「旦那の収入がどう考えても芹菜リセの50分の1以下。金銭感覚が違いすぎるから、結婚生活が成り立つ訳ないと思った」
 
などといった辛辣な意見が多く出ていた。
 
ただ、芹菜リセは2015年の休業前は派手な衣裳でも知られていたのだが、先日の記者会見では、清楚なワンピースを着て、髪も肩までのセミロングに切り揃えており、どうもイメージチェンジを図るつもりのようだと噂する人もあった。口調も丁寧で穏やかな語り口であり、かつての「芸能界のご意見番」的な雰囲気は微塵にも無かった。それでかえって彼女を好感する人もあったようである。
 
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天月西湖(生徒名:天月聖子、芸名:今井葉月)はその日、“分数”が分かってない人向けの補習授業を受けていた。
 
「みなさんの中には1/3(3分の1)とか、5/7(7分の5)とか、横線が引かれていてその上下に数字が書いてあるのを見ただけでも頭が痛くなるという人もあるかも知れません」
 
うん、それは私だ、と西湖は思った。
 
「でも難しく考えることはありません。ここにケーキがあります」
と言って、先生はこの日持って来た道具箱の中からラウンドケーキを取り出す。
 
「残念ながら模型です。生のケーキを使いたい所なのですが、予算が無いので」
と言うと、教室内に笑い声が起きる。
 
「ケーキがここに3個あります」
と言って、ラウンドケーキの模型を3つ並べる。
 
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「ここにお友だちが3人いたら、このケーキを1個ずつもらうことができます」
 
と言って、先生は前の方に座っている、西湖、菊池由美奈(女優の稲川奈那)、立花紀子(Flower Lights)の3人を立たせ、まずはケーキを1つずつ持たせた。見ると、子供のままごとで使うケーキのようで切れ目が入っており、マジックテープでくっついてホールケーキ状になっている。
 

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いったんケーキを先生の所に戻す。
 
「さて、ケーキが最初から3個あったらいいのですが、不幸にして1個しか無かった」
と言って、先生はケーキの内の2個を片付ける。
 
「しかし友だちは3人いる。その場合どうするか?」
 
「ひとつの手はジャンケンして買った人だけが食べる。でもそれでは負けた2人が悲しい。そこで3つに分ける訳です」
と先生は言って、ホールケーキの模型のマジックテープを剥がして3つに分けた。
 
「そして3つに分けたひとつひとつを3人で取るわけです」
と言って、分けた各々を西湖、由美奈、紀子に渡す。
「これで平和になりますね。この各々のことを、3つに分けた内のひとつだから3分の1と言って、1/3と書く訳です」
 
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西湖たちも頷く。わりとそのあたりまでは理解するのだが、その先がどんどん分からなくなる。
 

ケーキはいったん先生の所に戻す。ケーキもいったんマジックテープをくっつけてホールケーキの状態に戻す。
 
「さて、ここで友だちが6人いたとしましょう」
と言って、先生はあと3人前に出して6人並べる。
 
「6人いるんだけど、ケーキは1個しかない。そしたらケーキ6分割すればいいわけです」
と言って、先生はマジックテープを剥がして今度は6つに分けた。
 
「それで分けようとしていた所で、3人が帰っちゃった」
と言って、今出てきた3人に席に戻るように言う。結局、西湖、由美奈、紀子、の3人だけになる。
 
「ところがケーキは6つに分けてある。どうすればいいか?天月」
 
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と言って、先生は西湖に尋ねた。
 
「えっと・・・2つずつ取ればいいと思います」
 
「そうそう。だから3人に2つずつ配る」
と言って、先生は実際に6分割したケーキを2つずつ3人に渡した。
 
「これがつまり6つに分けた内の2つだから、6分の2という訳だ」
と言って、先生はさっき黒板に1/3 と書いた所の横に2/6と書いた。
 
「さて、3つに分けた内の1つと、6つに分けた内の2つ、どちらが多い?立花」
と訊くと、紀子は
「2つの方です」
と答えた。
 
先生が一瞬「うっ」と声をあげる。横から由美奈が言う。
 
「食べられる量は同じです」
 
「そうそう。数は2つになっているけど、食べられる量は同じだろ?立花」
「ああ、そういう意味なら同じです」
と紀子。
 
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「だから、1/3と2/6は同じなんだよ」
と言って先生は黒板の、1/3と2/6の間に=(イコール)という記号を書いた。
 
ああ、1/3=2/6って、そういう意味だったのかと西湖は納得した。
 

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