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■春約(14)

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京平は今回の操作をするのに「血液型を何型に偽装すればいいか」よく分からないので、一週間ほど前、阿倍子が寝ている時に貴司に電話した。
 
「京平!?お前電話できんの?」
と貴司は驚いたように言った。
 
「パパ、ちょっとおしえてほしいんだけど」
「うん。何だい?」
「パパのけつえきがたはBがただったよね?」
「よく知ってるなあ」
「あたらしいママのけつえきがたはなぁに?」
 
ここで京平は美映の血液型を知りたかったので“あたらしいママ”と言ったのだが、貴司はその“あたらしい”というのをちゃんと聞いていなかった。それでてっきり“ママ”つまり阿倍子の血液型を尋ねたと思った。実際、京平が美映の血液型など聞く用事があるとは思えない。それで
 
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「ママの血液型はAB型だよ」
と答えた。
 
そういう訳で、京平は美映の血液型をAB型と誤解してしまったのである。
 

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京平は美映がABで貴司がBなら、多分子供の血液型はABでいいんじゃないかと思った(京平は戸籍上は3歳だが、中身は実質中学生なので、そのくらいは考えることができる)。そこで誰かAB型の人がいなかったかなあと考えてみると、ママ(阿倍子)がAB型じゃん!と思いつく。そこでママの血液とすり替えようと考えたのである。
 
それで環菜が生まれてすぐにお医者さんが足の裏に注射器を刺して血液を採取した時、先輩@伏見の力を借りて阿倍子から血液を少し採取し、それを医師が持っていた検体とすり替えてしまった。
 
それで医師は検査して「赤ちゃんの血液型はAB型ですね」と言った。
 

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ところが“AB型”という判定に問題があることに院長が気付いた。
 
「お父さんはB型で、お母さんはO型なんだよ。赤ちゃんがAB型の筈が無い」
 
検体を間違ったのではないかということになり、再度赤ちゃんの足から採血が行われた。それで京平は再度検体をすり替える。
 
「やはりAB型ですよ」
「お母さんかお父さんが血液型を間違って覚えているということは?」
「それはありそうだ!」
 
それで医師は詳細を告げないまま、検査のために両親の血を取らせて欲しいと言い、採取してチェックする。この時、京平は、美映はAB型で、貴司はB型だから問題無いと思っていた。医師が「お母さんはO型」と言っていたけど、それが何かの勘違いではと思ったのである。
 
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ところが医師はチェックしてから言う。
「やはりお父さんはB型でお母さんはO型ですよ」
 
え〜〜〜!?と京平は叫びたい気持ちだった。
 

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病院は赤ちゃんの取り違えを疑った。
 
似た時間に生まれた赤ちゃんがもうひとり居たので、その子の血液型(A型のはず)を再確認する。そしてその子が間違い無くA型であることを確認した。そちらの両親はふたりともA型なので、赤ちゃんはA型かO型のはずである。それで合っているし、そのふたりの子供がAB型のはずはない。
 
「DNA鑑定をしてみよう」
と院長は言った。
 
それで医師は環菜の口腔内から粘膜を採取した。
 
へー。ああやって細胞を採るのか!と京平は考える(2015年12月に京平は鑑定会社に貴司に連れられて行って同様にして細胞を採られているのだが、さすがに0歳5ヶ月の時のことは覚えていない)。しかしDNAってよく分からないけど、これママの細胞では多分まずいことになりそうと思う。
 
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すり替える時間は僅かである。幼い脳味噌を必死に働かせて京平が考えた結論は自分の細胞を使う!ということである。それで少なくともお父ちゃんの子供であるという判定は出るはずである。
 
それで京平は自分の口腔内を、看護婦が持っていた予備の綿棒を勝手に取り、それですくって環菜の検体とすり替えた。
 
ここで阿倍子が
「京平、そろそろ帰ろうか」
と言ったので、京平は後は運を天に任せて帰宅することにした。
 
京平は「どうせパパはたくさん浮気してるから、母親が違っていても大丈夫じゃないかなあ」と思ったのだが、その母親が子供を産んだのだということを忘れている!
 

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なお、緩菜の本当の血液型はA型である(信次がO型で千里はAB型)。貴司(B型)と美映(O型)の間にA型の子供は生まれないので、偽装は必要であった。実はこの場合、阿倍子の血液(AB)ではなく、美映の血液(O)とすり替えておけば、病院は「赤ちゃんの血液型がおかしい」とは思わなかったのだが、結果論である。
 

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病院ではそのあと、美映と貴司にも口腔内の粘膜を採取させてもらい、それでDNA鑑定(特急)に出した。結果は退院頃までには分かるはずである。
 
それに病院としては、産まれて数時間経つとけっこう陰裂?が明確になってきて(実は《こうちゃん》のしわざ)、それだけ見ると女の子にしか見えないので、赤ちゃんの性別に若干の疑義も持っており、DNA鑑定で性別についても再確認したいという気持ちもあったのである。
 

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なお、この日生まれた赤ちゃんの名前であるが、実は生まれたのが女の子なら環菜(かんな)、男の子なら秋緩(あきひろ)という名前にしようと言っていた。しかし性別が曖昧で、一応男の子だと思うが精密検査したいと病院が言っていたので(本当はそれを言い訳に親子鑑定しようとしている)、男女どちらでもいけるようにしようと貴司と美映は言い、結局、環菜と秋緩を合成して緩菜という名前にすることにした。これで女の子と確定したら「かんな」、男の子と確定したら「ひろづみ」と読ませようということにしたのである。(菜は採と同義なので「つむ」と読める)
 
「まあ男の子で“かんな”でもいいかもね。DOG in The パラレルワールドオーケストラの一ノ瀬緩菜(いちのせ・かんな)は男だし」
 
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などと貴司は言っていた。
 
「その人知らない」
と美映が言うので、貴司は自分のパソコンを開けて写真を見せる。東京ミカエル時代の写真である。
 
「女の子じゃん」
「女の子に見えるけど男なんだよ」
「男の娘?」
「いやヴィジュアル系」
「ああ、そっちか。私も美女♂Menとか好きだったよ」
「あのバンドは美人揃いだったよね!」
 
美映はRides In ReVellionのライブに数回行ったことがあるとも言っていて、元々ヴィジュアル系は好きなようである。
 

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さて、千里3は8月15日から22日までNTCで合宿をしていたのだが、23日早朝、いったんNTCを出た。
 
「さて行ってくるか」
と言って、大きく伸びをすると、千里は赤羽駅までジョギングを始めた。
 

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青葉は8月19日に行われた信次の四十九日には日帰りで行ってきたのだが、その後は毎日自宅近くの高岡総合プールに行き、泳いでいた。金沢まで出て大学のプールで泳いでもいいのだが、その往復時間が惜しかったのである。
 
その日23日も朝御飯を食べた後、プールに行く前に、台所を片付けたり掃除をしていたりしたら、ピンポンと玄関のベルが鳴る。
 
「はーい」
と言って、ドアを開けると千里姉なので、びっくりする。
 
千里はいきなり言った。
「強盗だ。お前の身体をよこせ」
「私の身体が目的なの〜〜?」
「美味しそうだから一度抱いてみたい気もするんだけど」
「ちょっと、ちょっと」
 
「まあ性転換手術しよってんじゃないからこちらに任せてよ」
 
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「性転換は困る!」
 
青葉が思わず笑った瞬間、千里姉はチラッと後ろに気配を向けた。
 
青葉に気を緩ませておいてその隙を突いたのである。
 

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青葉は何かに包まれるような感じがした。そして強引に何かをむしり取られるような感覚がある。
 
そして・・・
 
スッキリしてしまった。
 
「あれれ?」
と言って、青葉は自分の身体を見ている。
 
「青葉、紺屋(こうや)の白袴」
と千里姉が言う。
 
「え〜〜〜〜!?」
 
その時、青葉の後ろにいつもいる《雪娘》が言った。
 
『青葉、私たちがずっと呼びかけていたのに全然反応してなかった』
 
うっ・・・・
 
『青葉、わらわの声も聞いていなかったから、罰として30kmジョギング』
と姫様。
 
『え〜〜〜!?』
 
「青葉、彪志君と喧嘩したのは、変な霊に憑かれていたからだよ」
「うっそーーー!?」
 

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青葉が驚いたところで、千里は
「さあ行くよ」
と言う。
「どこに?」
「盛岡」
 
「え!?」
「今から出れば11:10の《はくたか》に間に合う。大宮で乗り継いで盛岡15:33着」
 
「待って。盛岡に何しに行くの?」
「行けば分かる」
 
「そんなぁ」
 

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青葉は盛岡に行くのなら、彪志や彪志の母に連絡しなければと言ったのだが、千里は連絡することを禁止した。
 
「今回は別件なんだよ。だから彪志君たちと会う時間は無いと思う」
「分かった」
「今回のが終わって帰りに大宮で降りて彪志君に謝りにいけばいい」
「そうする」
 
「それより、道中は松本花子の話をしようよ」
と千里が言ったので、青葉はここにいる千里が《千里3》であることを認識した。
 
「ん?私が誰か分からなくなったら私の携帯を見ればいい」
と言って自分の携帯セリエ・ミニを見せる。
 
「また私の思考読んでる!」
と青葉が言うと
『青葉が無防備なだけ』
とまた《姫様》に言われる。
 
「でも私、いつの間に変なのに憑かれたんだろう?」
「千里1の死の呪いと闘った時だと思うけど」
「あ・・・」
「青葉は信次を助けられなかったことで自分を責めた。一種の無力感に襲われて自分に自信を失った。その心の隙間に突け入れられたのさ」
「・・・それはあるかも」
 
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「あの場に居た、他の人たちもチェックしてあげて」
「分かった!」
 

それで彪志とのことはいったん置いておくことにして、松本花子のことを千里姉とたくさん話した。
 
「ちー姉は次の合宿は?」
「28日から国内最終合宿に入る。9月6日に渡米してアメリカ合宿、その後スペインで合宿をして、9月22日からカナリア諸島でワールドカップをする」
 
「じゃこの1週間だけ空いていたんだ?」
「実際にはしなければいけないことがいっぱいあるけどね」
「そんな時にごめーん!!」
 

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新幹線の中では、青葉がトイレに立っている間に、お弁当が用意されていたりする。あくまで自分の眷属の表だった行動は見せないつもりなんだなと思う。ともかくもお昼はまだ暖かい“峠の釜飯”と焼きたてっぽい“焼きまんじゅう”を食べた。
 
新高岡11:10-13:26大宮13:46-15:33盛岡
 
東北新幹線の中では、おやつに?喜多方ラーメンを食べた。例によって青葉がトイレに行っている間に座席の所にラーメンの丼が載っていて、驚く。
 
「***食堂という所の。学生時代に1度食べてからハマった」
などと千里は言っている。
 
座席のテーブルに載っている丼はプラスチック製だが
「器は入れ替えて食堂の丼はすぐ返した」
などと千里は言っていた。
 
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「雨宮先生の指示で参加したツーリングでさ、裏磐梯を走破したんだよ。景色が美しかった。冬だったから、その時はレイクラインとかは通らなかったんだけどね。そちらはもっと凄いと言われてたから、夏になってから1人で行ってきたんだよ」
などと言って、ノートパソコンに入っている写真を見せてくれる。
 
「凄い場所だね。日本じゃなくてアメリカの西部かどこかみたい」
 
「青葉はFJR1300だったよね?一度私のZZR-1400と一緒にツーリングしない?」
「あ、それもいいかな」
と青葉は言った。
 
だったら練習しなくちゃ!!
 

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やがて盛岡に到着する。
 
駅前からタクシーに乗って市内の大きなホテルに来た。
 
「松本花子の件で会って欲しい人がいるんだよ」
「その件か」
 
千里は青葉を連れて上の方の階に行く。ひとつの部屋のドアをカードキーで開けて入る。
 
「これに着替えて」
と言われる。そこにあるのは振袖である!成人式の時に着たものだ。
 
「なぜこの振袖がここに」
「男は細かいこと気にしない」
「私、女だよ!」
「女はなおのこと気にしない」
 
と言って、千里は青葉を裸にした上で肌襦袢、長襦袢を着せ、振袖を着せて帯を締めてくれた。更に千里は自分も訪問着を着る。
 
「帯は私が締めるよ」
「うん。よろしく」
 

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ふたりとも和服になった所で千里が言う。
 
「さあ、おいで」
「会うのはどんな人?」
「行けば分かる」
 
エレベータで2階まで降りる。そしてさっさと歩いて、小部屋?の障子を開けた。中に入ると
 
「青葉ちゃん、お疲れ様」
と彪志の母が声を掛けた。訪問着を着ている。
 
その隣には紋付き姿の彪志もいる。
 
「あ・・・・・」
青葉はやっと今日の行動の意味が分かって絶句した。
 
「青葉、今日は青葉のお見合いだよ」
と千里が言った。
 
「うん」
と青葉は、はにかむように頷き、座敷にあがった。
 
そして開口一番
「彪志、酷いこと言ってごめんなさい」
と謝った。
 
「いや、俺も色々言っちゃったけど、俺、本当は青葉のこと好きだから」
と彪志が言う。
 
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「私がいちばん悪かったんだよ。変なことしてごめんね」
と文月が言った。
 
千里が青葉の背中をトントンと叩く。それで青葉は言った。
「私も彪志のこと好き」
 
そして文月には
「お母さん、私ふつつかものですが、頑張って彪志さんの奥さん務めたいです」
と言った。文月も笑顔で頷いている。
 
千里は部屋のカードキーを青葉に手渡してから(今夜はふたりで泊まれという意味)、
 
「さあ、美味しい御飯を手配しているからみんなで食べよう」
と言って、呼び鈴を鳴らした。
 

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