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■春約(12)

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8月9-12日、東京辰巳水泳場で、水泳のパンパシフィック選手権が行われ、青葉は9日の女子800m、12日の女子1500mに出場した。
 
青葉は彪志と喧嘩したことで、物凄くムカついていて、そのストレスをぶつける相手が欲しかった。それをこのレースにぶつけるつもりになっていたのである。
 
すぐ謝りにくるかと思ったら、仙台に行ってる!?どうせ私より仕事が大事なんでしょ?もう知らないんだから、などと思っているが、何だか論理が破綻しているような気がする。だいたい青葉は自分自身がいつも彪志より仕事を優先していることを忘れている。
 

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9日800m(タイム決勝)の参加者は18人で3組に分けて行われる。青葉は最初午前中に行われる2組目と言われていたのだが、1人体調不良で欠場することになったため、繰り上げで夕方17:30の最終組で泳ぐことになった。繰り上げなのでいちばん条件の悪い8コースで泳ぐ。ジャネは事前の成績ランキングで3位なので6コースである。4コースと5コースはアメリカの選手だ。
 
1人ずつ名前を呼ばれて出てきて飛び込み台の前に並ぶ。やがて飛び込み台に上がる。ジャネが義足を外す。例によって義足だったことを知らない観客から悲鳴があがる。
 
出発の合図があり、全員飛び込んだ。
 
さすが環太平洋の大会である。みんな速い速い。それで青葉も無理しない範囲でそのペースに付いていく。しかし半分くらいまで行くと、遅れ始める選手も出る。結局600mまで行った所で、レースは4コースのホワイト、3コースのオーストラリアのジョーンズ、6コースのジャネ、8コースの青葉の4人に絞られた感じである。
 
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4人はほとんど差の無い状態で泳いでいた。700mまで来た所でジョーンズがスパートを掛ける。しかし全員付いていくので引き離すことができない。続いてホワイトが仕掛けるものの、そのハイペースに全員が付いていく。残り25mくらいの所でジャネがラストスパートを掛け、一瞬他の3人は引き離されるも、すぐに青葉も追いかける。それにジョーンズが必死で追いすがる。最終的に3人がほとんど同時にゴールした。
 
青葉はタイムを見た。
 
1.Jones 8:09:13 CR
2.Hatayama 8:09.37 NR
3.Kawakami 8:09.38
4.White 8:10.82
 
日本記録!? うっそー!?と青葉は叫びたい気分だった。ジャネが日本記録で、青葉の記録も0.01差なら、青葉も多分従来の日本記録を突破している。
 
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しかし青葉は首を振った。水からあがり、ジャネに「日本記録おめでとうございます」と言って、握手を求めたが、ジャネは一瞬ためらうようにしてから、青葉と握手をしてくれた。
 
「負けた。次は勝つ」
 
とジャネは厳しい顔で言った。タッチが下手な青葉を0.01秒のみ上回っていたということは、本当のタイムでは青葉が上回っていたのは確実である。
 
「いえ、今回は私が負けました。1500mでは勝ちます」
と青葉も言った。
 

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ともかくも表彰式では、ジャネは銀色のメダル、青葉も銅色のメダルを掛けてもらい、笑顔で握手してから観客に手を振った。
 
しかし、このレースでは「川上選手の方が幡山選手より早かったのでは?」という声が随分主催者に寄せられ、主催者ではあらためてビデオをチェックした。そして青葉の手がタッチ板を探している内にジャネがタッチ板にダイレクトにタッチしているのが確認されたのである。
 

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12日の1500m(これもタイム決勝)では、参加者は19名であった。800mに出ていた選手の中でアメリカの1人が参加せず、代わりに2人参加している。
 
青葉は800mで銅メダルを取ったこともあり、1500mでは最初から17:30からの最終組に組み込まれていた。
 
しかも今度は3コースである。ジャネは5コースで、間の4コースには800mで金メダルを取ったジョーンズ、6コースには4位で入ったホワイトが入っている。
 
ブザーが鳴り飛び込む。
 
今回はジョーンズ、ジャネ、青葉と7コースのアメリカ・マニュエルの4人が先行してレースは進んだ。
 
1500mは長丁場なので、あまり早く仕掛けると最後まで体力がもたない。4人はお互いの呼吸を意識しながら泳ぎ続けた。
 
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1000mまで行った所でマニュエルが仕掛けた。最初少しスパートを掛けて、更にペースアップしたので、ここでジョーンズが置いていかれて、マニュエル、青葉、ジャネの3人の争いになった。
 
しかし先は長い。3人は無理しないペース、但しけっこう速いペースで黙々と泳いでいく。
 
そして残り100m(1往復)となった所で、ジャネが仕掛けた。かなり速いペースである。これに青葉が付いていくがマニュエルは付いていけない。ここまでかなり速いペースがキープされていたので、疲れ切っていたのである。それで結局、ジャネと青葉の争いになった。
 
日本人選手ふたりが先頭を争っている事態に、観客が沸くが、泳いでいる本人たちにはそれは聞こえない。
 
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残り25mでジャネがラストスパートを掛けるが青葉は離されない。
 
そして満を持して残り10mで自分の限界を上回るピッチで腕を動かした。
 
水面を打つ手が痛い。でも気にしない。
筋肉が悲鳴をあげている。でも気にしない。
 

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タッチ。
 
その次の瞬間、一瞬意識が飛んだ。
 
それを頑張って意識を戻してタイムを見る。
 
1 Kawakami 15:59.02
2 Hatayama 15:59.03
3.Manuel 16:04.36
4.Christie 16:06.08
 
青葉は思わずガッツポーズをした。水からあがると、ジャネが参ったという顔で青葉に握手を求めた。
 
「負けた。でも次は勝つから」
「ジャネさん、アジア大会頑張って下さい」
「もちろん。金メダル2枚取ってくるから」
「はい」
 
なお、1500mの日本記録は15:58.55だったので、ジャネと青葉の記録はそれに迫るものであった。
 

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表彰台のいちばん高いところに立って金メダルを掛けてもらいながら青葉は思った。
 
やはりあの喧嘩、私が悪かったかな?大会が終わったら謝りに行ってこよう。
 

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8月13日(月).
 
彪志は昨日夜遅く仙台から戻って来たらしいのだが、この日は朝からずっと会社で、青葉は彪志のアパートでずっと待っていた。彪志からは
 
《ごめん。今夜は徹夜になる》
というメールが来ていた。
 
青葉はため息をついてその日は彪志の布団で眠った。
 

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8月14日(火).
 
青葉は(女性用)ビジネススーツを着て、東京新橋の◇◇テレビに来ていた。この日は2020年春に入社希望のアナウンサー志望の人向けのセミナーが行われるのである。セミナーといっても誰でも参加できる訳では無い。ここまでに既に書類選考と一次面接が行われている。青葉は代表活動と作曲活動、松本花子プロジェクトの作業などの忙しい仕事の合間を縫って、面接を受けて来た。実際には青葉が今、日本代表として活動中であることを言うと、面接の日時は合宿の合間に合わせてくれたのである。
 
青葉は他の東京キー局にも書類を出していたのだが、スケジュールが厳しすぎて、他の放送局は辞退。東京キー局ではもうここだけに絞っている。
 
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参加者は20名で、男性3名と女性17名だが、実際に採用されるのは多分男性1名、女性2〜3名であろう。かなり厳しい競争である。
 
ともかくもこの日青葉たちは原稿読み、カメラ実習などを受け、またフリートークも行われた。要するにバラエティセンスを見ているのだろう。
 
全体的な雰囲気は和気藹々としているが、結構ライバルを蹴落とそうという感じでさりげなく精神攻撃を掛けている人も数人いた。青葉も3人の女性から、結構意地悪な言葉を掛けられたが、そつなく、いなしたので、テレビ局の人も感心するように頷いていたし、その“ライバル”たちは、こいつは手強いぞと思っている感じだった。
 

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8月15日(水).
 
青葉はこの日彪志と電話で話したのだが、謝るつもりが、向こうの言葉にカチンと来て、また喧嘩になってしまった。
 
売り言葉に買い言葉の状態になり、とうとう青葉は
 
「もう知らない。彪志なんか嫌い」
と言って電話を切ってしまった。
 
そしてその後、ずっと泣いていた。
 

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今年のバスケット日本女子代表は、ワールドカップに出場するAチームと、アジア大会に出場するBチームに別れて活動しているのだが、Bチームが参加するアジア大会は8月15日-9月1日にインドネシアのジャカルタで行われた。
 
アジア大会なので、男子・女子双方のチームが参加しており、男子は1日早い8月14日から始まっている。
 
8.14 男子 台湾71-65×日本
8.15 女子 香港44-121○日本
8.16 男子 カタール71-82○日本
 
まで終わった16日夜、前代未聞の事件が起きる。
 
男子代表の内4人が、カタールとの試合終了後、食事をしようと選手村を出たあと、女を買っていたことが発覚したのである。
 
4人は即日本代表を剥奪。日本に強制送還された。この件で大会の選手団長を務めていた山下泰裕(柔道)、日本バスケ協会の三屋裕子会長(バレー出身)と川淵三郎エグゼクティブアドバイザー(サッカー出身)が陳謝する事態となる。
 
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4人は1年間の公式試合出場停止の処分が下され、三屋会長以下4名の協会幹部の自主的減俸も発表された。
 
国際大会に派遣されていた選手が日本代表のウェアを着用したまま買春するなどというのは全くあり得ない事態で全国のバスケット関係者・バスケット・ファンから怒りの声があがった。
 

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千里3は貴司に電話した。
 
「貴司、今回代表に入ってなくて良かったね〜。入ってたら貴司も一緒にやってたんじゃないの?」
「僕は女買ったりしないよ」
と反発するように貴司は答える。
 
「そう?暇さえあれば浮気しているのに」
 
「僕は浮気はするけど、恋愛感情の無いセックスはしない。だからソープにも風俗にも行かないよ」
 
「へー。開き直っているね」
「だって好きでもない女性を抱いたって、楽しくないじゃん」
「ふーん。でも好きになったら抱く訳だ?」
 
「僕は今年に入ってからは浮気してないよ!」
「ほんとに〜? 今年は私忙しすぎて貴司の監視をしてられないからさ。私の目を盗んでたくさん浮気しているかと思ったのに」
 
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「誓って僕は誰ともセックスしてない」
「・・・美映さんとはしてるんだよね?」
「してないよ。だって美映は妊娠中だもん」
 
(本当は千里3から男性器を取り上げられているのでセックスしようにもできないのだが、千里3は貴司の男性器を取り上げたことを忘れている)
 
「じゃ誰ともセックスしてないの?」
「してない」
 
「性欲我慢できる?」
「もう慣れた」
 
本当は睾丸が無いことで性欲も少なくなっているのだが、そのことには貴司自身気付いていない。
 
「テンガでも送ってあげようか?」
「あ、それは歓迎」
「OKOK。じゃ私の名前で自宅に送り届けるね」
「待て。それはやめろ」
 

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「冗談冗談。貴司自身の名前で会社宛に送るよ」
「助かる」
 
と言ってから貴司は言った。
 
「ねぇ、千里、3月に千里から、おちんちん取り上げられたままで、僕困っているんだけど、そろそろ返してくれない?」
 
「あ、忘れてた!」
マジで千里3は忘れていたのである。
 
「もうあれ捨てちゃおうかなぁ」
「勘弁してよぉ」
「じゃテンガを受け取ったら使えるようにしてあげるよ」
と千里3は《きーちゃん》を見ながら言う。《きーちゃん》が笑いながら頷いている。
 
「ありがとう!立っておしっこできないから本当に不便してた」
 
「座ってする方が好きな癖に」
「立ってするのに比べて時間が掛かるし、男子トイレの個室は塞がってたら長時間待たないといけないし」
「女子トイレ使えばいいのに」
「それこそ逮捕されるよ!」
 
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「日本代表の男子選手が日本代表のウェアを着たまま女子トイレに進入して捕まったりしたら、もう世界の恥だね」
「だから僕は女子トイレなんて使わないから」
 
「女の子になりたくないの?」
「なりたくないのは千里知ってるだろ?」
「怪しいなあ。ちんちん戻さずに代わりに女の子の形にしてあげようか?」
「断る」
 
 
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春約(12)

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