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■春約(8)

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バスケット日本代表に参加している千里3は6月19日までの合宿が終わった後、1週間おいて6月25日から第5次合宿に入った。この合宿は国内では7月3日までで、その後スペインに行き、マヨルカ島で7月14日まで合宿を続ける。
 
千里2の方はこの時期はアメリカでWBCBLをやっているのだが、7月12日に冬子と一緒に、丸山アイ・若葉が昨年秋から進めてきたMuse Project(夢紗蒼依)に参加することになる。こちらはお金に糸目をつけない性格の若葉・アイがやっていたのでスーパーコンピューターを使い、何十億の資金を投入した巨大プロジェクトになっている。
 
一方青葉の方は6月22日(金)から再度NTCで競泳日本代表合宿に入った。日本代表の一部は6月21日(木)からスペインに渡り、シエラネバダで高地合宿をしている。ジャネなどはそちらに参加しているが、青葉たち下位ランクの選手はまずは22日から7月1日まで国内で合宿をし、数日おいて7月7日から15日までの一週間、シエラネバダに行って高地合宿に合流することになっている。
 
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6月30日から7月1日までは中部インカレ(インカレ中部予選)があるが青葉は日本代表の合宿優先でそちらには参加しない。青葉が参加しなくても、K大女子は昨年本戦のシード権を取っているので、インカレの本大会には参加できる。(男子は中部予選で2位以内になって団体出場するか、個人戦で出場水準を越えた人だけが本大会には個人出場で出られる)
 

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日本ではシエラネバダというと、アメリカの方のシエラネバダを連想する人が多いが、実はシエラネバダ(sierra nevada)というのはスペイン語で「雪の積もった山脈」(sierra=山脈, nevado=雪の掛かった)という意味で、そういう名前の地名は世界各地にあるのである。日本語で言えば「白山」だ。
 
スペインのシエラネバダはスキー場を中核とするリゾート地として知られているが、ここの標高2300mの地に国立のスポーツ施設があり、50mプールもあって競泳日本代表は、しばしばここで高地トレーニングをしているのである。
 
それで上位入賞を期待されている選手たち(ジャネなど)は3週間にわたり合宿をしているのだが、あまり期待されていない選手たち(青葉など)も今回お試し的に高地合宿をすることになる。
 
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それで青葉は取り敢えず7月1日までNTCでの国内合宿でひたすら泳いだ。この間、23日まではツインの部屋をシングルユースしていたが、24日夜からは前泊で来た千里(千里3)が入って来て、1日夜まで同じ部屋で寝ていた。
 
その間もふたりは“松本花子・松本葉子”のシステムについてたくさん意見を交わした。
 

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丸山アイたちが進めていたのは本物の人工知能。対して《せいちゃん》が作ったのは、伝統的な手続き型プログラムである。しかし実はパターン化された思考で済むものは、人工知能より手続き型で作った“似非(えせ)人工知能”の方が高速に品質のよいものを生み出すことが、非力なマシンで仕事をしてきた“端末系”プログラマには知られているのである。
 
大型機で仕事をしてきたSEにはこういう発想が欠けている。それができるマシンを知っているから“本物”を作ろうとする。
 
そういう訳で千里2が丸山アイや冬子と一緒に億単位のお金を投じて廃工場まで買って莫大な電力を使用して人工知能による作曲をしようとしていた時期、実は千里3は青葉・ゆまたちと一緒に極めてチープな作曲システムを開発していたのである。小樽ラボの電力は実際問題として民家の屋根に並べたわずか20個の太陽光パネルでほぼまかなえている。
 
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きーちゃんは情報操作して、双方のプロジェクトがお互い相手には知られないよう気をつけていた。
 
そしてこのあたりの作業が6〜7月に急ピッチで進められたのである。
 

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青葉は7月1日(日)までの合宿が終わると、7月2日(月)の朝、選手村を出て、新幹線で高岡に戻った。
 
なお今年は青葉が全然高岡に居ないので、通学用のアクアはだいたい明日香が運転している。結果的に明日香の負荷が高くなっていることと、就職準備も見越して、星衣良と世梨奈は、この夏休みに免許を取ろうかなあと言っていた。
 
青葉や星衣良のK大学の夏休みは8月7日〜9月30日、世梨奈や明日香のH大学の夏休みは8月9日〜9月17日である。
 
ちなみに美由紀は「あんたは運転に向いてない」とみんなから言われたので、取りに行かない方向のようである。彼女は景色に見とれて事故を起こしたりしそうである(そのあたりが芸術家脳という感じではある)。
 
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2018年7月4日早朝、名古屋で主婦をしながら大量の埋め曲を書いていた千里1に極めて強力な《死の呪い》が掛けられた。
 
《くうちゃん》は全眷属を名古屋に召喚した。
 
《すーちゃん》《せいちゃん》《こうちゃん》など、千里の分裂を知っている眷属は、なるほどこれが“霊的な力を失った1番”かと思うのだが、
 
「おい、どこが霊的な力を失っているって?」
と《せいちゃん》は《きーちゃん》に言う。
 
「まあ、並みの霊能者よりはよほど凄いね」
と《きーちゃん》も答えた。
 
『凄い。2ヶ月くらい前に見た時から、かなりパワーアップしている』
と《すーちゃん》が言っている。最近彼女は玲央美の傍にいることが多いが、しばしば千里3の代役をやらされている。
 
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『俺たちの出る幕ある?放っといても千里が跳ね返すだろ?』
と《せいちゃん》。
『俺も同感。何もしなくていいから、酒でも飲みながら、千里の活躍を見てようぜ』
と《こうちゃん》。
 
彼のポリシーはだいたい<自分より弱い宿主は要らん>ということである。だから自分を屈服させた千里2に従っている。
 
『まあでも万一のこともあるから、呪動物を排除しようよ』
と《きーちゃん》が言う。
 
『まいっか、やるか』
『そうだな。俺たちも時々実戦やらなきゃ』
と2人も同意した。
 
『ところでお前最近何やってんだ?』
と《こうちゃん》が《せいちゃん》に訊くが
『それそっくりお前に返す』
と《せいちゃん》は言った。
 
それで千里の分裂に気付いていない眷属も含めて、ともかくも千里を守ろうとした。
 
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呪いは多数の呪動物に分割して送り込まれてきている。しかしそれを察知した青葉が介入して大半の呪動物を倒してしまう。それでもかなり残っているものを眷属たちは退治始めた。
 

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ところが眷属たちが戦闘を開始してすぐ、千里1の夫・信次が千里の身体に何か付いているのに気付き手で払ってしまったのだが、その“何か”は信次にくっついてしまう。
 
それで呪動物たちのターゲットが信次になってしまった。
 
「どうする?」
「放置でいいだろ?」
 
「うん。信次は重篤な癌に冒されている。呪いとかなくてもあと数時間の命」
「どっちみち今日は信次の命日だよ」
 
「でもだからといって、千里の思い人が、素人女の呪いにやられるの黙って見てるのかい?」
 
「それも不愉快だな」
「しかたない。やるか」
 

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それで眷属たちは残っている呪動物たちをひたすら退治していく。それでかなり片付き、あと少しと思い始めた時、呪いを掛けた本人・多紀音が信次の前に現れるので眷属たちは仰天する。
 
「おい、まだ更に何か術を掛けるつもりでは?」
「さすがに手が回らんぞ」
「貴人、あいつを見てろ。この呪動物たちは他の者でやる」
「分かった」
 

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それで《きーちゃん》が1人離脱して信次を守るように傍に立つ。
 
ふたりは何か言い争いを始めた。
 
そして女が逃げて走り出す。信次が
 
「そこ入ったらダメ!」
と叫ぶ。
 
「危ない!」
という声が上の方からする。
 
女が上を見て悲鳴をあげる。
 
信次が思いっきり彼女を突き飛ばした。
 
一番近くにいた《きーちゃん》が彼女の手を握ってグイっと引いた。
 

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ズシンという鈍く大きな音がした。
 

眷属たちは、みな無言でそこを見ていた。
 
女は放心状態だった。
 
多数の人が走り寄ってくる。
 
《きーちゃん》が泣いていた。
 

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信次は病院に運ばれ、医師によって死亡が確認された。実際には医師が確認しなくても、死亡しているのは明らかな状態だった。上司の高橋課長が信次のアパートに電話をする。電話に出た千里(千里1)に高橋は信次が事故で亡くなったことを伝えるが、それを聞いた千里はショックで受話器を落としたまま放心状態になり、高橋は取り敢えず病院を伝えたいのに、伝えられない。
 
ところがそこに千里の身を案じて東京から新幹線で駆けつけた桃香が到着する。桃香が千里に代わって電話に出ると、高橋はホッとしたように、病院の名前と場所を伝えた。桃香は千里を励まして一緒にアパートを出る。そして病院に向かった。
 
その数分後、まだ残っていた呪動物たちが一斉にアパートに飛び込んだ。
 
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そして物凄い爆発が起きた。
 

病院に着いた千里は信次の遺体に取りすがって泣き、桃香や信次の同僚たちが声を掛けても何もできない状態であった。千里が“使えない”状態なので、桃香は千里の携帯(Gratina2 KYY10)を取って信次の母に掛けた。そして信次が亡くなったことを伝える。お母さんは一瞬絶句していたが、すぐに名古屋に向かうと言った。
 
実際にはお母さんは息子の太一と一緒に新幹線でやってきた。
 
千葉10:40-11:22東京11:50-13:31名古屋
 
青葉は金沢の大学に出ていたのだが、桃香からの連絡を受け、1時限目(8:45-10:15)だけで早引きして名古屋に急行した。
 
金沢大学10:20(車で金沢駅へ)10:50金沢駅11:48-13:45米原13:57-14:25名古屋
 
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金沢市内は道が混んでいて、10:48の《しらさぎ》を僅かの差でキャッチできず、1時間後のになったので、名古屋の病院に到着したのは15時頃である。
 

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それより前のお昼頃、千里の携帯に電話が着信する。(千里は茫然自失状態なので)桃香が取る。
 
「もしもし。私、川島千里の友人ですが」
「こちら、**荘の大家(おおや)で##と申します」
「お世話になります」
「川島さんご夫婦はご無事でしょうか?」
 
あまり無事ではない気がするのだが・・・
 
「何かあったんですか?」
「実は**荘でガス爆発がありまして」
「え〜〜?」
「瓦礫と化している状態なので、生き埋めになった住人がいないか、電話して確認している所なんですよ」
 
「それでしたら、川島信次も千里も所在は判明していますので問題ありません」
「ああ。よかった。残り判明していなかったのが、川島さんご夫妻だけで」
「他の人は?」
「全員、偶然にも出かけていて、ひとりもアパートには居なかったんですよ」
「それは良かったです」
 
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「今瓦礫の片付けを消防署の人、警察の人も入ってしている所なのですが、もしお手間が取れましたら、大事なものだけでも拾いに来てくださると」
 
「分かりました。誰か行けるようにします」
 

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それで桃香が高橋課長に相談すると、社員の男性2人・女性1人が行ってくれることになった。
 
この件を青葉に連絡すると、青葉も病院に顔を出したらアパートに向かうということだった。
 
「まだ呪いは続いているんだろうか?」
と桃香が青葉に訊くと、青葉は少し考えるようにしていたが
 
「もう終わったと思う。そのガス爆発が最後っ屁だよ」
と答えた。
 
 
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