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■春卒(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-03-25  
青葉は3月1日も彪志の実家に泊めてもらい、2日のお昼過ぎの新幹線で高岡に帰還した。
 
そして3月3日(木)は卒業式であった。
 
先日千里とも話したが、女生徒として入学し、女生徒として卒業できるのはこの学校が最初である。青葉はこの3年間の様々なできごとを回想し感無量の思いだった。
 
卒業式には朋子も会社を休んで留袖を着て出席してくれた。みんなの顔を見ると、既に行き先の決まっている子は笑顔だが、まだ決まっていない子、特にこれからまだ試験のある子は、卒業式どころではないという雰囲気である。
 
なお、3年生の進学組、理数科・社文科の生徒は、まだ国立の後期試験までは補習が引き続き行われるので、まだまだ学校に出てくる子はいる。しかし入試のためにこの卒業式にも出席できない数名を除いてほぼ全員が揃うのはこれが最後になる。
 
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青葉は1人ずつ名前を呼ばれ壇上にあがる卒業生たちを見ながら、様々な思いを抱いていた。
 
普通科6クラスが終わり、理数科になる。ヒロミが女子制服を着て壇上に上がるのを見て微笑んだ。彼女に関しては少し心が痛む所がある。あの中途半端な状態は何とかしてあげないとやばいよなあ。あの状態で結婚すると旦那さんが夜中に仰天する。
 
やがて最後の社文科になる。明石君、(石井)美由紀、江藤君、(大谷)日香理に続いて5人目に
「川上青葉さん」
と呼ばれ、青葉は
「はい」
と大きな声で返事して壇上にあがり、校長から「卒業おめでとう」と言われて卒業証書を受け取った。
 
式の最後に2年生の翼の伴奏で全校生徒で校歌を歌った時、青葉はこれがこの校歌を歌う最後なのかなと思うと寂しい気分になった。
 
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式の後、教室に戻り、3年間社文科を担任してくれた音頭先生からあらためて卒業証書が渡され、その後お話があって解散となる。合唱軽音部2年生の久美子が教室にやってきて「卒業おめでとうございます。これからも頑張って下さい」と言って記念品を渡してくれた。中を開けるとコーヒーカップだった。
 
「あれ?私のとは色違いだ」
と亜耶から記念品を受け取った日香理が言う。
 
「日香理のは白で私のは青か」
 
「青葉はやはり名前に青って入っているから青なんだよ。光って白いイメージだから白なのでは」
と美由紀は解説していた。美由紀は美術部の後輩から水彩色鉛筆セットをもらっていた。
 
あちこちで並んで記念写真を撮る姿があった。青葉も美由紀や日香理たちと撮ったり、空帆や須美たちFlying Soberのメンバーで集まって撮ったり、何組も写真を撮りあった。
 
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「ヒロミは呉羽ヒロミの名前で卒業証書もらったの?」
と尋ねると
 
「2枚もらった」
と答える。
「呉羽ヒロミ名義と呉羽大政名義」
 
「なるほどー」
「卒業証明書はどちらの名前でも発行するよと言われた」
 
「でも20歳になったら改名するんでしょ?」
 
「それなんだけど、お母ちゃんとも話し合ったけど、今年中に名前だけ改名しちゃおうかと」
「おぉ!」
 
「性別は20歳まで直せないけど、名前は考えてみたらいつでも直せたんだよね。実は私もお母ちゃんたちもそのことに全然気づかなくて」
 
「じゃもう正式に呉羽ヒロミになるんだね」
 

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「でも今はそれより入試の方が心配で」
「ああ」
 
国立大前期の合格発表は3月8日である。ヒロミはそれに落ちていた場合に備えて後期試験(3月12-13日)に向けて毎日たくさん勉強をしている。
 
一方美由紀は美大の中期試験(3月12,14日−中期とは言っても実際には他の大学の後期日程と重なっている)を受けるため、毎日美術の先生に絵を見てもらっているようである。彼女は前期でT大の芸術学部を受けているがその合格発表は3月8日である。
 

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「青葉、今年は3月11日、岩手に行かないの?」
と日香理から訊かれる。
 
「今年はみんな受験とかが大変でさ」
「なるほどー」
「だからゴールデンウィークに集まろうかという話をしている」
「だよねー。今は時間的余裕がないもんね」
「もう進学先が決まっている子もいるけど、まだまだ戦闘中の子も多い」
「まあこちらもだよね」
 

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卒業式の翌日、3月4日は大学の授業料振替用の口座を開設しに指定銀行の近隣の支店に出かけて行った。
 
「K大学ですか。合格おめでとうございます」
と言われ、まずは窓口で書類を書いて口座開設の手続きをする。
 
「身分証明書に保険証か運転免許証などありますか?」
というので運転免許証を提示する。
 
運転免許証のいい所は性別表示が無いので、性別問題で揉める必要が無いことである。青葉は口座開設申込書は「川上青葉・女」で出している。
 
「今日いくらか入金なさいますか?」
「授業料を27万引き落とさないといけないので余裕見て30万円入れておきます」
と言って青葉は現金で30万円渡す。
 
「お預かりします」
と言って窓口の女性は1万円札を数えて
「確かに30万円お預かりしました」
と言って書類に金額を記入した。青葉はその数え方がすごく綺麗だなと思った。
 
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授業料の口座振替の手続きをした上で窓口の女性が言った。
 
「もしよろしかったらこの機会に一緒にクレジットカードをお作りになりませんか?学生さん向けにデビューカードというのがあるんですが」
 
「あ、いいですね。そうだ。ETCを付けられます?」
 
実はETCカードをどっちみち作りたいと思っていたのである。
 
「はい。ETCの他にWAONなどもセットできますが」
「WAONはどっちでもいいけど、つけてもいいですよ」
 
それで結局、カードの申込書類も書く。親権者名に「高園朋子」と書くと
「あら苗字が違うんですか?」
と訊かれるので
「私、里子なんですよ」
と答えると
「分かりました。了解です」
とあっさり言ってくれた。
 
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収入、および親権者の収入を書く欄があるので、青葉は自分の収入は4000万、親の収入は300万と記入する。
 
「あら?今ご収入がおありですか?」
「ええ。私、勤労学生なんですよ」
「なるほどですね。あ、でもここ単位は千円ではなくて万円なんですよ」
「ええ。昨年の所得額が4400万円でしたから」
 
と青葉が言うと窓口の女性はピクッとした。
 
「少々お待ちください」
と言って席を立って後ろの方のデスクに座っていた男性を呼んでくる。その男性は副支店長の名刺を出した。
 
「大変失礼ですが、昨年のご収入が4400万あったとか?」
「ええ」
「何か収入を証明する書類などお持ちですか?」
「ああ。先日税務署に提出した確定申告の書類の控えが確かまだバッグに入っていたはず」
と言って取り出して見せる。副支店長さんはその書類を見て驚いている。
 
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(本当は確定申告の控えは単に「申告した」ことを意味するだけで何も証明能力は無いのだが世間では収入の証明として結構信用されることが多い)
 
「作曲家さんですか?」
「はい。占い師もしていますが、作曲家の収入の方が大きいです」
 
「あの、でしたらゴールドカードをお作りになりませんか?」
「ゴールドカードって30歳以上なのでは?」
「原則はそうですが、高収入の方は別なんです。それでしたら限度額が大きいので、高収入の方でしたら使用金額も大きいでしょうし、便利だと思いますよ」
 
「なるほどですね」
 
実は青葉は北海道の某銀行が発行したゴールドカードも中学1年の時から持っている。北海道のクライアント越智さんが作ってくれたもので、これまでも緊急に飛行機などに乗らなければならないような時に重宝していた。しかしさすがに北海道の銀行ではいろいろ使いにくい部分もあった。
 
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それで結局青葉は書類を書き直してゴールドカードの申込書類を書いた。
 
「クレジットカード本体、およびETCカードは御在宅確認の電話のあと1週間ほどで配達記録郵便で郵送致しますので」
 
「分かりました。よろしくお願いします」
 
青葉はしばらくは家に居ること多いし、在宅確認の電話はいつあってもいいなと思っていたのだが、実際にはその日の夕方掛かってきた。
 
そして実はその日の内に掛かってきて助かったのである。
 

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青葉が銀行に行ってきた翌日・3月5日(土)の朝8時すぎ、東京の冬子(ケイ)から電話が掛かってきた。
 
「青葉、今日・明日、用事ある?」
「あ、いいえ」
「だったら、本当に申し訳無いんだけど、今日の午後の新幹線で福島まで来てくれない?」
「え?」
 
「実はうちの風花がインフルエンザで倒れちゃって」
「あらぁ」
「それでKARIONのステージでフルートと篠笛を吹く人が居ないんだよ。七星さんが使えたら良かったんだけど、彼女今月いっぱいはスターキッズ自身のアルバム制作でニューヨークに行ってて」
 
「ああ・・・」
「千里に訊いたら青葉をよろしくと」
「また千里姉ですか!」
 
「今回の分の交通費・宿泊費は私が負担するから、悪いけど来てくれない?例によってギャラは払えないんだけど、逆にギャラが払えないから身内の人間にしか無理が言えなくて」
 
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「まあいいですよ。受験も終わった所だし」
「助かる。取り敢えず交通費はスルガ銀行の青葉の口座に9時になったらすぐ振り込むから」
 
「分かりました」
 
スルガ銀行同士だと、休日でも即日振込ができるのである。他にジャパンネット銀行や郵便局の口座同士でも同様のことができる。
 
「私も夕方くらいには福島に移動するけど、福島駅に着く頃連絡して。スタッフの誰か迎えに行かせるから。レコード会社のスタッフとかは昨日からずっと居るから早い到着でも構わない」
 
「分かりました」
 

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それで母に言うと
「あんた、ほんとに忙しいね」
と半ば呆れているようであった。
 
それで青葉は急いで旅支度をした。着替えのカバンと楽器のカバンを作る。楽器はフルート、篠笛と念のため龍笛も2本(曾祖母由来のものと最近買ったもの)入れる。少し考えたがサックスも持っていくことにした。これは別の専用ケースだ。
 
新幹線の時刻を調べていたのだが、唐突に「車で行ってみようかな」というのを思いつく。それで母に相談すると
 
「青葉の運転の腕は信頼しているけど、ひとりで走るなら2時間走ったら1時間休むのが条件」
と言われる。
 
「うん。新幹線で行った場合、12:48の《はくたか》に乗って福島は16:32着なんだよ。でも今から車で出れば走行距離が450kmくらい。だいたい5時間で着くと思うんだよね。途中2時間の休憩入れても7時間。16時には着くから到着時刻に大差無いんだよ」
 
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「駐車場とかは?」
「今日明日は福島西ICのそばにイベントのために無料駐車場ができているんだよ。そこに駐める」
「なるほどー!」
 
それで母は充分休憩を取り、眠くなったらすぐ休むこと、そして定時連絡を入れることを条件に車での往復を認めてくれた。
 
「帰りは余裕あるだろうから、もっとたくさん休みながら帰っておいで」
「うん。帰りはついでに桃姉たちの所に寄って来ようかな」
 
「だったら、お正月に桃香が置いていったお酒も載せていく?」
「ああ、そうしようかな」
 

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