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■春卒(13)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-03-28
 
試合後は着替えた後、多くの選手が仮眠を取って体力の回復をはかった。
 
そして午後12:40からの決勝戦の相手はローキューツを破ったミヤコ鳥となった。宮古島から出てきたチームである。宮古島の観光開発企業に勤めている人が中心のチームで、宮崎や福岡の強豪校にいた選手が数名入っており、試合前、福岡C学園出身の橋田桂華と手を振り合ったりしていた。
 
試合開始早々相手は超猛攻を仕掛けて来た。
 
フォワードを5人入れるという構成でじゃんじゃんプレスを掛けてくるし相手のいちばん上手い人が千里を激しくマークするので、こちらも精神的な焦りが出て、いきなり16-4 という展開になる。
 
ここでベンチに居た小杉来夢が監督に言ってタイムを取ってもらう。それで選手に一息つかせ、冷静さを取り戻させた。
 
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気を取り直して出て行く。点差は考えないようにしてひとつひとつのプレイを丁寧にこなしていく。
 
するとその後は互角の戦いとなり、第1ピリオドは24-12で終了した。
 

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第2ピリオドでは夕子/千里/来夢/麻依子/神田リリムという精神的にタフなメンバーで出て行く。相手が少しラフなプレイで挑発してきてもこちらは冷静に対処していく。夕子・千里・来夢・麻依子の4人は誰もが攻撃の起点となれるのでサインプレイで攻撃パターンに変化をつけていく。そして相手の隙があると千里がすかさずスリーを放り込む。
 
それで第2ピリオドは16-20とこちらが優勢に進み、前半は40-32である。
 
第3ピリオド。雪子/渚紗/星乃/暢子/誠美というオーダーで出て行く。これはおそらく千里が抜けた後、4月以降のベストオーダーだ。
 
ここで渚紗が千里が抜けても不安は持たせないぞというアピールをするかのごとく無茶苦茶頑張った。この10分間の間にスリーを3つも放り込む活躍をする。一方で星乃は相手のはやる気持ちをうまく肩すかしを食わせるようなプレイを重ねる。
 
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それでこのピリオドを12-17として、ここまでの合計52-49とわずか3点差に迫る。
 

第4ピリオドでは、ポイントガードにチーム最年長の山高初子(岐阜F女子高/ローキューツ/スカイ・スクイレル/関東の実業団数チーム)を起用し、初子/千里/橘花/暢子/由実というメンバーで出て行く。
 
初子はとにかく巧いポイントガードである。雪子とは違った意味で相手にこちらの攻撃パターンを読ませない攻め方を演出していく。この相手のようにパワーで押してくるタイプのチームにはひじょうに効果的に相手のペースをくるわせていく。
 
橘花・暢子は全く違うタイプのフォワードだが、どちらもゴールに対して貪欲である。由実はチーム最年少だがパワーより読みでリバウンドを取るタイプである。自分より背の高い相手センターに勘で競り勝つ。そして千里はスリーをどんどん放り込む。
 
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向こうも必死なのだが、勢い的にはこちらが少しずつ押していき、残り5分でとうとう逆転する。
 
ここで監督は初子と橘花を下げて雪子と麻依子を投入する。千里の最後のゲームということで旭川N高校のOGを全員入れ、更に当時N高校と一番競っていたL女子高の麻依子も入れる。
 
これは千里へのはなむけのオーダーである。
 
千里は監督の配慮に感謝し、撃てるチャンスがあったらどんどんスリーを撃っていった。
 

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ゲーム終了のブザーが鳴る。
 
スコアボードは 70-77 という点数が表示されていた。
 
千里が近くに居た暢子と抱き合う。麻依子が雪子を抱きしめる。由実は一瞬キョロキョロしてから千里・暢子の所に行って3人で抱き合った。
 
整列する。
 
「77対70で東京フォーティーミニッツの勝ち」
「ありがとうございました」
 
こうして40 minutesは全日本クラブ選手権を2連覇したのであった。
 

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下田監督、矢峰コーチ、夕子主将、千里(副主将)、更に次期主将の星乃、次期副主将の麻依子、チーム最年長の初子まで胴上げされた。
 
千里はこの試合で8本のスリーを入れ合計43本という記録を叩き出した。
 
男子の決勝戦を経て表彰式が行われる。
 
優勝カップ、トロフィー、優勝楯、プレートを夕子、千里、星乃、麻依子が受け取り、ウィニングボールは雪子が受け取った。そして全員金メダルを掛けてもらう。
 
千里が金メダルをもらったのは、U18アジア選手権、U20アジア選手権、2012年の全日本クラブ選手権(Rocutes)、そして2015年の全日本クラブ選手権(40 minutes), 2015年アジア選手権に続いて6度目である。
 
6つの金メダルの内3つが全日本クラブ選手権だが、来季からはWリーグに移籍するので、全日本クラブ選手権の金メダルはこれが最後ということになる。
 
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千里は掛けてもらった金メダルを触りながら感無量の思いになった。
 

個人表彰では、得点女王はミヤコ鳥のフォワードさん、スリーポイント女王は当然千里、リバウンド女王は誠美、アシスト女王はローキューツの原口紫が取り、本人もびっくりしていた。ローキューツには現在あまり優秀な控えPGが居ないので紫は出場時間がどうしても過度に長くなる傾向がある。そのせいでアシスト数も増えたようである。大会のMVPには千里が選ばれた。
 
表彰式が終わったのが17時くらいで、千里たちは食料品を買い込んでから帰りの福山行きバスに乗り込んだ。22人という人数なので来た時と同様、1台貸切り状態にしてもらった。実はここに江戸娘の青山・六原・足立・六本松の4人も同乗したのだが(つまり26人で乗り込んだ)、
 
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「私たちは背景と思っててね」
という青山さんの言葉を受けて遠慮無く車内で祝勝会をさせてもらった。
 
「ビールは2缶までOK」
と解禁して恵比寿ビールを2箱(48本)積み込んだので、お酒好きの暢子が夕子とビール一気飲みをしていた。
 
「なあ、千里もう1本ダメか?」
などと言うので
「じゃ私のを1本あげるよ」
とあげたら喜んで3本目を飲んでいた。他にも数人ビールの「枠」をトレードして3本目行っている子がいた。
 
結局青山さんたちも「まあまあ一緒に」などと言われてビールをもらいおつまみや食べ物ももらって祝勝会に実質参加していた。
 

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「千里の送別会はあらためて4月3日・日曜日にするから」
と星乃が言った。
 
「レッドインパルスの方は大丈夫なんですか?」
「うん。許可取った。向こうの歓迎会は4月1日・金曜日にやるらしいし」
「4月4日月曜日は40 minutes運営会社の設立ね」
「4が揃っていて縁起がいいな」
「縁起がいいんだっけ?」
「しあわせ(4合わせ)だよ」
 
「オカマの日だね」
「オカマの選手も歓迎」
「プレオペの人には手術してくれる病院を紹介するということで」
 
「しかし完璧に見た目女の子って人は本人が言わなきゃバレないってのあるよね」
「言えてる言えてる。戸籍なんていちいちチェックしてないし」
 
「4は偶数で陰だから女子チームにも良い数字だと思う」
「あ。午後4:44に登記したら?」
「いや朝1番にする」
 
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「設立パーティーとかすんの?」
「そんなお金無いから」
「まあビールとピーナツくらいなら出すよ。来てくれた人には。一応お昼14時と夕方19時に簡単な会を開く」
 
14時は主婦の人、19時は勤め人向けの会である。
 
「よし、ビール飲みに行こう」
「14時も19時も行けばビール2度飲める?」
「酔いつぶれない程度にね」
 
「もっともあの狭い事務所にいったい何人入るかは疑問だけど」
「寿司詰め状態になったりして」
「その時は千里のおごりでお寿司屋さんにでも」
「まあいいけどね」
 
福山に着いた後は新幹線で東京に帰還した。
 

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なお40 minutesの事務は元ローキューツのキャプテンである石矢浩子がしてくれることになった。彼女は2012年春に大学を卒業して商社に就職すると共にローキューツを退団したが、次第にバスケに対する情熱が高まり、結局会社を退職して、千葉県八千代市内のファミレスでバイトをしながら、同市内の趣味的なバスケットチームで活動していた。
 
しかしそこがこの年末で解散になったため、またどこかバスケットができる所を探していたという。
 
「浩子ちゃん、選手兼任でいけるよね?」
 
「私、全国優勝するようなチームの選手なんか務まらないよお」
 
と本人は言うが
 
「うちはのんびりやりたい人はのんびりやるチームだから」
「1日の練習は40分すればよいというので40 minutesなんだよ」
「そうだったんだ!?」
 
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ということでローキューツ時代の背番号6にちなんで66番で選手登録した。結果的には4年ぶりの現役復帰ということになった。実際彼女はベンチ枠に入るかどうかのボーダーラインの選手たちとけっこう良い勝負をしていた。
 
彼女とはプロ契約はしないものの、事務員(肩書きは総務部長!)としての給料を月額18万円(賞与予定額1.5ヶ月分)払う。
 
「安月給で申し訳無い」
「いや、今までのファミレスの給料より良いしボーナスももらえるなら嬉しい」
 
結局スタート時点で事務所に常駐するのは立川社長、電話番頼むと言われて出てきてくれることになった立川さんの奥さん(当面は無給だが、肩書きは社長秘書!)と浩子の3人ということになった。
 
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オフィスは練習場所の体育館近くにあった築65年!?の4階建てマンション(?)の1室を家賃4万で借りた。広さは15m2(約9畳)で、本当に取り敢えず会社の登記場所を確保しただけという感じである。
 

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一方ジョイフルゴールドの事務所は母体のKL銀行の三鷹支店内に置かれた。これはジョイフルゴールドの練習場所が三鷹市内の体育館であるからである。社長に就任した藍川真璃子は千里に
 
「幽霊でも会社役員になれるんだね〜」
などと言っていた。彼女は死んだ時に『遺族』が存在しなかったこともあり戸籍が抹消されずに残ったままになっているのである。ただいつまで自分が今のような状態にあるのか分からないので、万一突然消滅したら後のことを頼むと千里は言われている。
 
ジョイフルゴールドも事務は元選手の戸鳴亜耶(旧姓向井)さんが管理部長の肩書きで務める。
 
「苗字が『むかい』から『となり』になったんですか?」
「それ会う人、会う人から言われた」
 
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またローキューツの登記上の住所は取り敢えず高倉昭徳社長の御自宅に置き、事務所の確保は少し落ち着いてからにすることになったようである。事務は当面雨宮先生の弟子のひとりで千葉市内在住の女子大生・武雄晴海(たけおはるみ)さんが総務主任の肩書きでしてくれることになった。彼女は高校時代軽音部でキーボードを弾いていた人で年間20曲ほどの曲を書いている。最初は総務部長にすると言われたものの「部長なんて恐れ多い」と言って主任の肩書きになった。
 
「でも私武雄を名前、晴海を苗字と誤解されて、男と思われることよくあるんです」
と本人は言っていた。
 
「性別のまぎらわしい名前は裁判所に申告して変更可能だけど、苗字はどうにもなりませんね」
「いっそ男名前に改名しちゃおうかな」
「性転換するんですか?」
「ちんちんあったら楽しそうだし興味無いこともないけど、男になったらなったで色々大変そう」
 
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「性転換したら雨宮先生が凄く喜ぶかも」
「口説き落とされそうで怖い。妊娠しないからいいじゃんとか」
「いや、あの先生そもそも種無しだから妊娠はしない」
「そうだった!」
 
「セクハラが無ければいい先生なんだけどねー」
「でもセクハラが無くなったらあの先生老け込んじゃうかも」
「ああ。本人はセクハラ行為の付属物なんだな」
 

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