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■春色(16)

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青葉は千里と桃香の卒業式のあと彪志のアパートで数日過ごしていた。
 
28日の夜、都内の施設での合宿を終えた千里が戻ってきた。取り敢えず千里・桃香・青葉・彪志の4人でファミレスに行き、卒業祝いと合宿打ち上げを兼ねて一緒に食事をした。
 
「千里、これ玲羅さんから卒業のお祝いの花束」
と言って桃香が千里にカーネーションの花束を渡す。
 
「ありがと、ありがと」
 
「それから、これ千里の母ちゃんから千里に卒業祝い」
と言って封筒を渡す。
 
「ありがとう。お金無いだろうに悪いなあ」
などと千里は言っている。
 
「それからこれはうちの母ちゃんから千里へ」
と言って桃香はもうひとつ封筒を渡す。
 
「えー?それは申し訳無い」
「千里はうちの母ちゃんの娘でもあるから」
「うん。ありがとう」
 
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「ちなみに私ももらったが、中身は1万円だから。修士卒業ならもっとあげなきゃいけないかも知れないけど貧乏なのでと言っていた」
 
「いや、ほんとに申し訳無い」」
 

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「しかし千里がバスケをしていたということ自体に私は一緒に住んでいて全然気づいていなかったからなあ」
などと桃香は言っている。
 
「まあ私たちお互いの私生活にはあまり介入しないからね」
と千里。
 
「こないだ中学の友人でバスケやってる奈々美って子に聞いたら、日本代表のフル代表とかになると、どこかのチームに所属していてもそちらのチームの練習に全く参加できないくらい、ひたすら代表チームで合宿らしいね」
と青葉。
 
「うん。2012年の春が実はそうだった。3ヶ月間、代表チームでひたすら合宿。大学は公休扱いにしてもらったんで、レポート提出だけで単位をもらえたんだけどね」
と千里。
 
「ああ、そうしてもらえないと大学生とか留年しちゃいますよね」
と彪志が言う。
 
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「その頃、桃香は季里子ちゃんとラブラブだったから、これ幸いとこちらはバスケに集中していたし」
と千里が言うと、桃香はゴホゴホと咳をしている。
 
「しかし千里はそんなことしながら、ファミレスのバイトもしていれば巫女のバイトもしているし」
「まあ出られる時に出ているだけだから」
 
「巫女さんの方も今月いっぱいで辞めるんでしょ?」
「うん。ちょうど大学を出るタイミングだし、私を可愛がってくれた辛島さんって人が転出するのに合わせて退職する。明日と31日と顔を出してそれで辞める」
 
30日は引越があるのである。
 
「そして4月1日からはソフトハウスのSEさんか」
と桃香。
「今回はリオ五輪のフル代表ではなくてユニバーシアード代表だから、何とか会社勤めとは両立できるはず」
と千里。
 
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「逆にその程度の練習でいいもんなんですかね?」
と彪志が訊く。
 
「うん。練習のやらなすぎだと思うよ。各自は自分のチームで普段の練習はしているはずという前提だろうけど、代表チームでもちゃんと練習していないと連係プレイとかがうまく行かないと思うんだよね」
と千里。
 
「それはありそうですね」
と彪志。
 

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「しかし4月から家賃が一気に十倍になるなあ」
などと桃香は言う。
 
新しいアパートの家賃は、桃香のアパートが49,000円、千里のアパートが15,000円で合計64,000円になる。現在ふたりが住んでいる千葉市内のアパートは家賃6000円である。
 
「私が最初選ぼうとした所は千里がダメと言って変更したんだ。そちらだと月2万で、千里のとあわせて35,000円で済んだのに」
などと桃香は言っているが、
 
「あのアパートに住んでたら、桃香3年以内に死んでたよ」
と千里。
 
「むむむ」
と桃香は悩んでいるが、青葉は千里に大いに突っ込みたい気分だった。
 

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29日。千里がL神社で竹ぼうきを持ち境内の掃除をしていたら新人巫女の風希ちゃんが駆け寄ってきた。
 
「先輩済みません。掃除くらい私がします」
などと言って寄ってくる。
 
「ううん。今日出たらあとは明後日出て終わりだから、最後境内をきれいにしておこうと思って」
「ああ、なるほどですね」
と言って、結局もう1本竹ぼうきを持って来て、一緒に掃除をしてくれる。
 
「少しは慣れた?」
「まだ全然です。でも鈴を振るのはうまいと伶美歌ちゃんに褒められました」
「うん。素質あると思うよ」
 
伶美歌は昨年春に入った子ではあるが、巫女舞も上手いし声がいいので既にご祈祷や挙式などでは中核メンバーになっている。
 
「龍笛はまだまだですけど」
「玉依姫神社に出てこられる時はできるだけ事前に連絡するから、その日、向こうの勤務に入れてもらうといいよ。どうせ向こうは参拝客もそう多くないから、あちらで教えてあげるよ」
 
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「はい」
 
「でも先輩、長かったんですか?」
「まあ大学に入ってすぐからだから6年間。でも出席率がとっても悪い」
 
「理学部なんでしょう? 忙しそうだもん。仕方ないですよね〜。私なんか文芸学部・国際創造学科とか訳の分からない名前で、何をするのかも実はよく分からない」
 
「就職の面接の時、どういう勉強をしてきたのかとか聞かれそう」
「ほんとにそうですね!」
 

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「そうだ、風希ちゃんって時々変な物が見えるって言ってたね」
 
「実は悪夢とかも見るんですよ。そんな時は負けるものか!って気持ちを強く持つと消えてくれます」
 
「うんうん。死んでいる霊より生きている人間の方が強いから、気持ちで負けちゃダメなんだよ」
 
「やはりそうですよね」
 
「そうだ。御守りにこれあげようか」
と言って千里は作業用の道具類を入れていた肩掛け鞄から、未使用でビニール袋に入った龍のストラップを取り出して渡した。
 
「山形の羽黒山で毎年秋に女性の修行体験をやっててね」
「へー」
「その修了者だけがもらえるストラップ」
「わっ。それ貴重なものでは?」
「私は毎年参加しているからいいんだよ」
「すごーい」
 
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「この龍は諸々の悪霊を取って食べてしまうんだ。だから風希ちゃんのような子には合うと思う」
 
「いただきます」
と言って風希は早速自分のスマホに取り付けていた。
 
まあ、この子がどのくらいマジメに取ったかは分からないけど、もしこれを持っていてくれたら《この子たち》もしばらくは「食事」に困らないかな、と千里は思った。
 

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その日の夕方、千里が神社での奉仕を終えて帰ろうとしていたら、ユニバーシアード代表チームの篠原ヘッドコーチから呼び出された。
 
それで都内に出て、バスケ協会の事務所内で篠原さんと会った。
 
「実は4月8日に最終的な代表12人を発表するので、その人選をしていたんだけどね」
「どうもお疲れ様です」
 
「キャプテンとしては鞠原(江美子)君を考えているんだけど、村山君、副キャプテンをしてくれない?」
 
ああ、そういう打診で呼ばれたのかと納得する。
 
「まあいいですよ。私はキャプテンという柄じゃないけど、副くらいなら」
 
「ありがとう。それで、これが今考えているラインナップ」
と言って紙を見せる。
 
「私が見ていいんですか?」
「うん」
 
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千里は眺めていた。うん。妥当な線だろうなと思う。しかし千里はあれ?と思う。
 
「13人いますけど」
「実はシューターを、村山君はもちろん入れるんだけど、もうひとりを伊香(秋子)君にすべきか神野(晴鹿)君にすべきかコーチ陣の中でも意見が別れてね。それで率直に、同じシューターの村山君から見て、どちらがいいかと思ってね」
 
それを私に選ばせるわけ〜?
 
「実際には村山君以外にも何人かに尋ねている。それはあくまで参考意見としてあらためてコーチ陣内で検討するけどね」
 
なるほど〜。じゃ江美子や彰恵にも訊いたんだろうなと千里は考える。
 
「でしたら、シューターは伊香と神野の2人ということで」
「へ?」
「私が辞退しますから」
 
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「え〜〜?」
 
「だってふたりとも凄い練習してますよ。どちらも4月から修士課程に進学して引き続き大学のバスケ部でたくさん練習できると思うんですよ。それに比べて私は一般企業に就職しちゃったし、あまり練習量が確保できないと思うんですよね。ここは若い2人に任せた方がいいと思います。若い人の方が体力もあるし」
 
「しかし」
「やはり練習量の凄い人が本番では役に立ちますよ」
 
篠原さんは少し考えている。
 
「ね、今更だけど、君、そのソフトハウスへの就職ってやめてさ、どこかの実業団かクラブチームとプロ契約しない? 僕が斡旋するよ」
 
「クラブチームなら、自分のチームがあるんですけどね」
「そうだった!」
 
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篠原さんとの対談は夜9時すぎまでに及んだ。千葉に戻ってきたのはもう11時近くである。
 
「ごめんね〜、遅くなって」
と言って千里は桃香にキスする。
 
「たまには自分で料理作ってみようかと思ったのだが、何だか訳の分からないものができた」
などと桃香は言っている。
 
「あ、でもお腹空いたから食べる」
と言って千里は、桃香の作ったシチューとも筑前煮ともつかないものをニコニコしながら食べた。
 
「美味しい?」
「うーん。ちょっと個性的な味かな」
「私は不味いと思う」
「不味いってことはないと思うけどなあ」
 

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食事が終わってから桃香はウィスキーを出してきて自分で水割りにして飲む。千里はブラックコーヒーを飲む。
 
「このアパートでの夜も今日が最後だな」
「そうだね。桃香はここに6年、私も4年住んだから、ちょっと感慨深いものもあるね」
 
「それでさ、その千里が私のアパートに引っ越して来た時にさ」
「うん」
「千里、引越のついでに男物の服は処分したなんて言ってたじゃん」
 
「そんなこと言ってたかなあ」
「あの時、ほんとに男物の服なんて持ってたの?」
「えっと・・・」
 
「それ持ってたとしたら、実は細川さんの服だったんじゃないの?」
「あはは。お互いの恋愛には突っ込まないという約束で」
 
「まあそれは協定としていいけどさ。ひとつ正直に答えろ」
「何?何?」
「細川さんが結婚した後で、千里、細川さんと何回セックスした?」
 
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千里が一瞬「まずい!」という感じの顔をする。
 
「セックスはしてないよ。彼が今の奥さんと婚約した後は1度もしてないもん、私たち」
 
「それ絶対嘘だ!」
「ほんとにしてないって」
「嘘をつく子にはおしおきをせねば」
 
と言って桃香はズボンとパンティを脱いだ。
 
「それちょっと大きくない?」
「Lサイズだからな」
 

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千里がふと目を覚ますともう2時すぎだった。トイレに行ってきてからまた布団の中に入ったら、桃香が熱い口づけをしてくるのでこちらも応じる。激しくお互い愛撫していたら、桃香が言う。
 
「大学2年の時にさ」
「うん」
「12月くらいだったかな。千里、私に初めてヌード見せてくれた時」
「その頃だったっけ?」
 
「あの時、千里のヌードがまるで女の子なんで、私が千里いつの間に手術したのって言ったらさ」
「うん」
「バストはヒアルロン酸注射で、お股はタックしてると言ってたけど」
「うん」
 
「本当はあの頃、既にもうおっぱいは女性ホルモンで膨らんでいたんだろ?」
「うん、まあそれは認める。私さ、中1の時に病院にかかったら、中学1年でこんなに胸が発達していないのはおかしいと言われて大量の女性ホルモン打たれちゃったんだよ。飲み薬ももらってたし」
 
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「お医者さんに女の子と思われてしまったんだ?」
「そうそう。こちらは好都合だから、そのまま投与してもらっていた」
「なるほどね〜」
「それでも天然女性にはかなわないから、胸が小さいのがコンプレックスだったんだよね。だからあの頃、本当にヒアルロン酸も少し打ったんだよ」
 
「あとから考えると、何も無い胸にヒアルロン酸を少し打ったくらいであんな大きなバストになる訳が無かったんだ」
「ふふふ」
 
「下も本当は手術済みだったんだろ? それで本物の割れ目ちゃんを接着剤でくっつけて、あたかもタックであるかのように装っていた」
 
「いや、あれは本当のタックだよ。おちんちんはまだあったよ。実際あの時、桃香、中に指を突っ込んで、おちんちんに触って確認してたじゃん」
 
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「あれはニセおちんちんだったんだよ。ほら、こういうやつ」
と言って桃香は千里の手をそこに触らせる。
 
「ちょっ。これさっきのと大きさが違う!」
「性的に興奮すると大きくなるんだよ」
「そんな馬鹿な。大きすぎる! 私壊れちゃう!」
「たいしたことない。55だ。赤ちゃんの頭よりはずっと小さい」
「無理〜。私のは最大でも40までしか広がらない仕様なんだから」
「試してみないと分からん」
「やめて〜。そんなんで病院に駆け込みたくない」
「嘘ばかりつく子にはおしおきしないと」
「待って〜。助けて〜! せめて42-43にして〜」
 
春なのに熱い(?)夜は更けていった。
 
 
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