広告:まりあ†ほりっく 第3巻 [DVD]
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■春代(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-07-17
 
2015年3月26日。
 
昨日千里・桃香の卒業式をお祝いするために母と一緒に千葉に出てきた青葉は、そのまま彪志のアパートに数日滞在することにした(但し母との約束でその間のセックスは3回まで)。母はその日は桃香のアパートに泊まった。千里はユニバーシアード代表候補の合宿中である。
 
翌日、青葉は桃香たちと合流し、ふたりの引越先に行ってみることにした。
 
桃香と千里は4月からは別々に住むことを1月に決めたのだが、その後千里がひじょうに多忙であったことから実際のアパート探しにはなかなか取りかかれなかった。ようやく3月2日に修士論文の最終版を製本・提出した後、3月3日に候補にしていた地域を見て回った上で4日に不動産屋さんに行って契約した。その後一部の荷物はぼちぼちと運び込んでおこうかという話はしていたものの、実際には元々段ボールに入っていた夏用の服を少し持って行った程度で、結局30日にほぼ全ての荷物を移動することになりそうである。
 
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千里のミラを借りて朋子が運転し、桃香の案内で先に桃香の引越先のアパートに行ってみた。この日は一応ミラに桃香の本を入れた段ボールを4つ積み込んで持って行っている。
 
「本なんか持って行っても向こうでは役に立たないのでは?」
と母は言うが
 
「いや調理器具とか持って行くと、こちらで御飯作るのに困るから」
と桃香は答える。
 

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桃香の新しいアパートの前で車を停め、青葉はそのアパートを見上げた。
 
「どの部屋?」
と青葉は桃香に訊く。
 
「409号室。そこの北東の角の部屋。北東で鬼門だから安かったんだよ。しかも部屋番号が4と9。他の部屋は家賃が56,000円なのがここだけ49,000円なのだよ」
「家賃まで4と9なんだ!」
「52,000円だったのだが、どうせなら4で埋めようと言って44,000円にならないかと言ったのだが、あの店長頑張るんだよな。結局49,000円で妥結した」
 
「さすが桃姉!」
「買物は徹底的に値切るのが基本だよ」
 
「でもそんな部屋大丈夫なの?」
と朋子が訊く。
 
「凄く良い部屋」
と青葉が言うと
「良いのか?」
と桃香は驚いている。
 
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「今住んでいる所よりもいい?」
「今住んでいる所は問題外。比較の対象にもならないよ」
と青葉は言う。
 
「あんまり酷いんで強制的に改良しているとか言ってたよね?」
と朋子が訊く。
「そう。あそこは本来人が住んだら半年以内に自殺するようなとんでもないアパート。あそこ住人が居着かないでしょ?」
と青葉。
 
「だいたい1年以内に出て行く人が多い。おかしくなる人も多いみたいで、夜中に包丁振り回して警察に捕まった住人とか薬で捕まった住人も居た。私が住んでいる時にも自殺した人もあった。安いアパートを探していたクラスメイト男子が一時引越して来たらホモに目覚めたようだ。私は最初からレズだから平気だけど」
 
「女装に目覚めた人も居たって言ってたね」
「そうそう。スポーツマンで凄い男らしい人だったのだが、3ヶ月もした頃、そこによく若い女が出入りしているのに気づいて。最初ガールフレンドかと思ったのだが本人だったのだよ」
 
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「それ最初から女装趣味があったとかは?」
「最初の頃、オカマは皆殺しにしろみたいなこと言ってたのに」
「実は本人がその傾向持っている時に、わざとそんなこと言う人もよくいるよ」
 
「そのあたりは分からんな。でも特に今私たちが住んでいる部屋は、前の住人さんとその前の住人さんが自殺して、更に1つ前の住人さんは新婚さんだったのが3ヶ月で離婚したらしい。だから破格に安かったんだよ」
と桃香は平気な顔で言う。
 
「そんなに酷かったの?前の住人さんが自殺したというのは知ってたけど」
と朋子が言う。
 
「あのアパートのある界隈数十メートルの範囲が人が住めないような場所なんだよ。ところがあのアパートの周囲に強烈な結界が巡らしてあって、あのアパートだけ砂漠の中のオアシスみたいになってる。しかも桃姉たちの部屋は更にシェルターのようにして守られている」
と青葉は言う。
 
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「へー。それはまた凄いね。それって青葉がしてくれたの?」
と桃香。
 
「さあ。誰かさんがしたんだろうけどね」
と青葉は言っておく。
 

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「でもとにかくこのアパートは良い所だよ。周囲が良い気に満ちている。特に桃姉が借りた東翼側は良好」
「へー!」
 
このアパートは4階建てでコの字の形をしており、南側に5軒(3〜7号室)、西翼側に2軒(1〜2号室)、東翼側に2軒(8〜9号室)の住居がとられている。桃香はその東翼の端の9号室を借りたのである。
 
「南側の部屋は向い側のビルから形殺を受けるんだよ。両翼はその影響が無い。特に上の階になるほどいい」
「ほほお」
「西翼側はお寺から出ているラインに引っかかっているんだけど、東翼側はその手のものにぶつかってない」
 
「つまり4階の8・9号室が良好なの?」
と彪志が訊く。
 
「そうそう」
 

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それで中に入ってみる。
 
「ここエレベータ無い訳〜?」
と朋子が言う。
 
「5階建てまではエレベータを設置する義務は無いらしい」
と桃香。
 
「これ引越の時に大変そう」
「何、引越すのは入る時と出る時の2度だけだ」
「確かにそうかも知れないけど」
 
青葉以外の3人が息切れしながらも何とか4階まで辿り着く。
 
「ダイエットにはいいアパートだ」
「確かに」
 
それで部屋の中に入る。
 
居室の中央奥の所に小さな袋が置かれている。
 
「その袋は?」
と彪志が訊く。
 
「千里がここに来た時真っ先に置いたのだが、伏見稲荷で頂いてきた砂らしい。何か清めの砂とかで」
と桃香。
 
「うん。この砂がこの部屋をすごくクリーンに保っているよ」
と青葉は言った。
 
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さすが、ちー姉だ!
 

青葉は窓から外を眺めたり、部屋のあちこちで方位磁針を確かめたりしていた。そして見ながら青葉は確信した。
 
ちー姉は基本的にはここに住むつもりだ。明らかに自分も住む前提で色々なものが選ばれている。しかしよくこんなに良い部屋をわずか1日で見付けたものだと青葉は思う。
 
「1Kと聞いてたから狭い部屋を想像していたのに、ここ割と広いね」
と朋子が言う。
 
「この台所、4.2畳くらいらしい。4.5畳無いとDKを名乗れないらしい」
と桃香。
「数字が『死に』ですか?」
と彪志は半ば呆れながら訊く。
 
「それでさ、気づいたか?各階の間の階段の数は13段なんだけど、地面から1階へも床上げしてあるので5段の階段を登る。だから地上から4階にあがる階段の数は合計44段」
 
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「このアパート建てた人変です!」
と彪志が言う。
 
「でも実は建設関係の法規に従うと、階と階の間の階段数って13段にするのがいちばん効率がいいんだよ」
と青葉は言う。
 
「あ、そういうもの?」
「階と階の間は280-290cm程度。階段の1段の高さは23cm以下。だから290÷23=12.6で13段になる。だから階段が13段っていう住居は多いし、普通だよ」
 
「なーんだ」
 

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「部屋はこれ8畳より広いよね?」
と青葉は言う。
 
「9畳なんだよ。部屋の真ん中に鴨居があるだろ?本来は四畳半2間の2DKで設計施工したらしい。ところがよく見ると、手前の部屋には窓が無い。すると居室とは認められず、1KSになっちゃう。それならいっそのこと1Kにして広い居室があるということにした方が高く貸せるのではないかということで、設置するはずだった敷居を付けずに9畳の1室にした。でも鴨居は残った」
と桃香は説明する。
 
「それ窓を開ける訳にはいかなかったの?」
と朋子が訊く。
 
「両方に窓を付けると、この建物自体が強度不足になるらしい」
「そんなにギリギリの強度なんですか!?」
「でも千里はここはまだ6−7年は崩れないって言ってたよ」
 
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「しかし何か無計画な建設やってるなあ」
と彪志。
 

「それでここに神棚を置く予定なのね?」
と青葉は確認する。
 
「神棚」と書かれた紙が、鴨居で区切られた奥側(南側)の小壁の端に貼ってある。そこに神棚を設置すると神棚は南を向く。神棚や仏壇は東または南に向けて置くのが基本である。
 
「うん。千里がここに置けと。神棚なんて別に要らんのに」
 
「いや、ちゃんとした神棚を置いた方がいい。今居るところは略式の祭り方をしているから」
 
その祭り方は1年前に青葉がしたものである。しかしちー姉は私があれをするまで3年間あそこに住んでいて、なぜ神棚を置かなかったのだろうと青葉は疑問を感じた。しかし今度は置くつもりになったようである。
 
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ちなみに部屋の中のあちこちの床には桃香の字で「本棚8段」とか「水引」とか「机」とか「カラーボックスA」などといった文字の書かれた紙が貼ってある。
 
「これ一応、引越の計画だけは立てたのね?」
「そうそう。千里とふたりで計画して紙を貼っていったんだよ」
 

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「方位とかはどうなの? これって玄関が鬼門よね?」
と朋子が言う。
 
「玄関の位置、トイレの位置、お風呂の位置、レンジ台の位置、居室の方向、全て大吉」
と青葉は言う。
 
「すごい!」
 
「桃姉は艮命だから北東は伏位、西側に天医・延年・生気と並ぶ。ちー姉は乾命だから北東が天医、西側に伏位・生気・延年と並ぶ」
と青葉は解説する。
 
「要するに桃香さんと千里さんって吉方位が同じなんだ?」
と彪志が驚いたように言う。
 
「そうそう。生年が違うからふつうなら吉方位が食い違って面倒なことになるんだけど、ふたりの場合は偶然にも一致するんだよ」
「へー」
 
「実はちー姉を男命で見る必要があったら、吉凶が反転してしまって桃姉の吉方位がちー姉には凶方位になってしまうんだよ。でも私は性転換した人、少なくとも若い内に性転換した人の運気は転換後の性別で見てよいと考えているんだよね」
と青葉は追加で解説する。
 
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「じゃ万一千里が男のままであったら、私とは共同生活不能になってたな」
と桃香は言う。
 
「4年間も共同生活できたこと自体が、ちー姉の運気を女性の運気で見ていいことを表していると思う」
と青葉。
 
「ああ、じゃやはり性転換してよかったんだな」
 
「そうだね。それでここは玄関が北東、居室が西側だからどちらも吉。お風呂は南東で凶方位、トイレも北で凶方位、ガスレンジの方向も東で凶方位。こういうものは凶方位に置かないといけないけど、ピッタリなんだよね」
 
「全部うまく行ってるんだ?」
と朋子が感心したように言う。
 

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結局、桃香の新居は風水的に最高に良いということが確認できた。
 
それで今度は千里が借りるアパートに移動する。桃姉のアパートがあんなに良い風水になっているなら、ちー姉のアパートも、そこまでじゃないかも知れないけど結構良い場所なんだろうなと思いつつ車で3分程度の移動をする。
 
そして降りてみて青葉は顔をしかめた。
 
何これ〜!?
 
「こちらはどう?」
と桃香が訊く。
 
「桃姉、ここの家賃いくら?」
「ここは15,000円なのだよ。羨ましいと言ったら、私のアパートの家賃は千里と折半することにした」
 
つまり、やはり、ちー姉は実質向こうに住むつもりなんだ! しかしそれにしてもこれって何? ここはもしかして元々は住宅地ではなく、神社かお寺かその類いのものがあったのではなかろうか。
 
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青葉はそんなことを考えながらアパートを見ていたのだが、ちょうどそこに70歳くらいのお婆さんが通りかかる。
 
「すみません」
と青葉はその人に声を掛けた。
 
「はい?」
「このあたりに確かお稲荷さんか何かあった気がしたのですが、どこかご存じないですか?小さい頃に見たような気がして」
 
すると彼女は顔をしかめていった。
 
「実はね、このアパートが建っている所に7-8年前までお稲荷さんがあったんだよ」
「ここでしたか!」
 
「それがお稲荷さんを祭っていた年寄りが死んだ後、息子がこんな場所にこんなもの建てておいてもったいないと、お稲荷さんを潰してしまってさ」
「あらら」
「それでこのアパートを建てたんだよ」
「そういうことでしたか」
「だけどさ、やはりお稲荷さんは怖いよ。そんなことした翌年、その息子が死んでしまってね」
「あらあ」
 
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「事業にも失敗したみたいで大変だったみたい。このアパートは銀行が抵当で取って、不動産屋さんに管理委託したみたいだけど、そういう経緯を知ってたらちょっと住みたくないよね」
 
「ほんとですね」
「でもこれあまり人には言わないでね」
「ええ。人には言いませんよ」
 

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お婆さんが立ち去ってから彪志が言った。
 
「ね、それってお稲荷さんの祟りもあるかも知れないけど、ここは元々あまり人が住むような場所じゃなかったりして」
 
「そうだね。神様なら住んでもいいかも知れないけど」
と青葉は言ってから、ちー姉ってまさか実は神様なんじゃないよね? などと一瞬考えてから、まさかねと思う。
 
「さて帰ろうか」
と青葉は言った。
 
「中を見なくてもいいの?」
と桃香。
 
「見る必要もない。ちなみにちー姉の部屋って2階だよね?」
「いや、1階なのだが」
 
「1階か・・・・そのどっち? 右側? 左側?」
と青葉は訊いたが
 
「真ん中なんだけど」
と桃香が言うと
 
うっそー!! と青葉は思った。
 
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絶対やだ! 絶対に1階のこの真ん中の部屋にだけは住みたくない!!!
 
ここは木造2階建て、各階3室のアパートなのだが、その1階真ん中の部屋に明らかに何かの跡がある。きっとここにそのお稲荷さんのお社が建ってたんだ。
 
「青葉、ここ良くないの?」
と朋子が訊く。
 
「うん」
 
「そんな所選んじゃって千里ちゃん、大丈夫かしら」
と朋子が言うが
 
「まあそもそも方位とか風水とか気のせいだから」
 
などと桃香は言う。いや、ここは方位とか風水とか以前の問題なんだけど。
 
「何か考えがあるんだと思う」
と青葉は言った。
 

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