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■春色(7)

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その日の午後は、青葉は早紀の家に行き、そこに椿妃や他に数人の友人も来て、久しぶりの再会を楽しんだ。結局、青葉はそのまま早紀の家に泊まることになった。
 
なお、彪志は青葉を全く占有できなさそうなので、いったん一関に戻ることにした。朋子と桃香・千里は大船渡市内の旅館に泊まる・・・つもりだったのだが、結局「勝手に使っていた方がいい」という話に基づき平田さんの家に泊まった。
 
「ちゃんと電気・水道が来ているのか」
と桃香が驚いていた。
 
「電気代を毎月ちゃんと払っているということだよね」
 
「ガスは止めてあるみたいね」
と朋子。
 
プロパンガスなのだが、ボンベなどは設置されていない。
 
「誰もいない家でガスが使えたら、どう考えても危険だよ」
と桃香。
 
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「でも水は赤さびがほとんど出なかったね」
と言って千里も驚いている。
 
「それって逆に漏水してない?」
と言って3人で調べてまわると、土間の水道から凍結しないように土の中にパイプを通して、庭の池に水が供給されていることが分かった。
 
「池に魚がいるぞ」
 
見るとけっこう大きな鯉が数匹泳いでいる。
 
「4年間生きてたのか?」
「エサは?」
 
それで青葉に電話して確認すると、ここの池の鯉は越冬期を除いてはシルバー人材センターの人に餌やりもお願いしていたということだった。しかし水が水道から供給されていたのは青葉も知らなかったという話であった。
 
「流してる量が少量だし、基本料金以内だから青葉も気づかなかったのかも」
「定期的に清掃しているから、掃除機を動かすために電気は来ていたし、水も使うだろうからということで、電気と水はずっと青葉の口座からの引き落としで料金を払っていたらしい」
 
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なお水道の方は平田さんの名義のまま青葉の口座から引き落としているものの電気の方は名義を一致させてくれと東北電力から言われて青葉名義の契約に変更しているらしい。またこの家の排水は浄化槽によって処理されたあと近くの川につながる溝に流されているが、浄化槽のメンテは毎年冬になる前の10月にしているらしい。
 
桃香は家の玄関の所に「用事がある人は下記に連絡して下さい」と書いた紙を貼った。連絡先には桃香の携帯番号を書いておいた。
 
「これで占有している感じが出るだろ?」
などと桃香は言っている。
 
「シルバー人材センターの人がお世話してくれるのなら、プランターに花とか植えてもいいかもね」
と千里。
 
「青葉も頻繁に大船渡に来てるんだから、その時はここに泊まればいいんだ」
と桃香。
 
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「それがいちばん自然だろうね」
と朋子も言った。
 

翌日3月11日。この日はひたすら雪である。
 
大船渡市では、当日2時半から市内のホールで東日本大震災四周年大船渡市犠牲者追悼式という式典が行われた。
 
しかし青葉は朝から大忙しであった。以前££寺で作ってもらった法衣に瞬高さんからもらった袈裟を着て、川上家の一員として法事を頼まれていた家を雪の中何軒も訪問した。
 
主として青葉のことを知っている人の家を回ったのだが、
「青葉ちゃんこそ大変だったね」
と言って、おやつをごちそうになったり、亡くなった家族の話を聞いてあげたりなど、どうにも時間を食うことが多かった。
 
青葉が性転換したことを知らなかった人もいて
「ますます女の子っぽくなってる。あなた高校には学生服で通ってるの?」
などと訊かれ
 
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「女子制服です。身体ももう手術して女の子になりました」
と言うと
「すごーい。でも良かったね」
と言ってもらえた。
 
青葉が性別・女の生徒手帳を見せると
「セーラー服、似合ってるね!」
などと言ってくれた。
 

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今回、この檀家回りをしているのは、住職の法嶺(69)・長男の法満(45)、次男でふだんは神奈川県のお寺にいる法沢(43)、一関市の本家から手伝いに来てくれた法願(36)、法満の長男の法健(21)、そして青葉の6人である。法健はまだ住職の資格を持っていないのだが、人手が足りないので担ぎ出されている(青葉は住職の資格を持っている)。
 
※川上家の家系概略
 
(1)川上法光(1860-1949)の3人の子供
 長男・法海 大船渡の££寺を継ぐ。
 次男・法空 一関の¢¢寺の住職になる。
 長女・珠  鶴岡の僧・山原顕大に嫁ぐ。
 
(2)法海の家系
 長男・法潤 お寺を継がずに漁師になってしまう。
   法潤とイタコの遠敷桃仙の間の息子が川上雷造で青葉の祖父である。
   つまり実は青葉は本来、川上家の元々の本家筋なのである。
 
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 長女・トラ 仙台のお寺にお嫁に行く。
 次男・法隠 招集されて26歳で戦死(1944)。
  彼の死亡で後継者が居なくなったため一関の法越が大船渡に来ることに。
 
(3)珠の家系
 珠の娘・道は出羽の修験者・佐竹旺と結婚して佐竹伶を産む。
 佐竹伶は青葉の曾祖母・八島賀壽子の弟子となって大船渡に住む。
 伶の娘が佐竹慶子、その娘が真穂である。
 
(4)法空の家系
 長男 法博 そのまま一関の¢¢寺の住職を継ぐ。
    法博の息子が法雲、その息子が法願、その息子が法泰。
 
 次男 法越 大船渡に戻って££寺の住職を継ぐ。
    大船渡在住の女性と結婚。
 
(5)法越の家系
 長男 法嶺 ££寺を継ぐ。青葉の祖母・八島市子と同級生。
 次男 法楽 花巻のÅÅ寺の住職になる。
 
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 法嶺の長男・法満 法嶺の後継者。££寺の副住職。
 法嶺の次男・法沢 神奈川県の大きなお寺に居る。
 
 法満の長男・法健 現在大学生で仏教系の学部で勉強中。
 

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午後2時でいったんあがって、朋子・桃香・千里・慶子・真穂とともに追悼式に出席する。この式典にあわせて一関から彪志と、今日は父の宗司が出てきてくれたのだが、青葉は式典が終わると、またお寺に戻って檀家回りである。
 
結局青葉が「お坊さんのお仕事」を終えたのはもう18時すぎであった。彪志はその間ずっと待たされることになったので、手持ちぶさたでもあったので平田さんの家に行き、雪下ろしをした上で、父子で家の中を見て回り、床の傷んでいる所などを補修したりしていた。
 
桃香も結構作業を手伝っていたが、千里と朋子は食料品とIHヒーター、電気炊飯器・電気ケトル・ホットプレートを買ってきた後は、御飯を炊いておにぎりを作ったり、家の中の掃除をしたりしていた。
 
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18時過ぎに法健さんに車で送ってもらって青葉が戻って来たが、
 
「取り敢えず精進明けで焼肉しよう」
などと桃香が言って、平田家の居間で新しいホットプレートを置いて焼肉を始めると、青葉が涙を浮かべて
 
「私、子供の頃よく、平田さんとお母さんと未雨姉ちゃんと4人でこの居間で焼肉していたんだよ」
と言った。
 
「じゃここで焼肉すれば平田さんの供養にもなるな」
と桃香が言うと、青葉も
 
「うん」
と言って、焼肉をつつき始めた。
 

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食事が終わったあとはきれいに掃除をする。食器は洗ってきれいにしまう。ゴミは彪志が
「うちに持ち帰りますよ」
というのでお願いすることにしてカムリに積み込んだ。
 
「さて帰ろうか」
という話になった時、彪志のお父さんが
 
「すみません。私を一関まで乗せてもらえませんか?」
と千里に言う。
 
「え?」
「私の車は彪志が運転して、青葉ちゃんを一関まで連れて行くと思うので」
「なるほどー!」
 
「じゃ、私たちは先に帰ってしまうけど、後はよろしく〜」
と桃香が言う。
 
青葉は「え〜?」という感じで手で口を押さえているものの、結局青葉と彪志を残して、他の4人で先に出発して行った。
 

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「えっと、私たち何すればいいんだっけ?」
と青葉が言うが
 
「俺たちは愛し合ってるんだから愛し合えばいいんだよ」
と彪志は言った。
 
「そうだね」
と青葉も言い、ふたりは熱くキスをした。
 

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青葉は平田家の布団を借りて彪志と睦みごとをした後で、きっとお母さんはこの布団で平田さんと寝てたのかなあ、などと思うと感慨深いものがあった。お父さんは・・・・お母さんと平田さんのことを知っていたのだろうか。もし知っていたら嫉妬しなかったのだろうか。そんなことを考えてみたが、それはもはや誰にも分からないことだと思った。
 
おとなってどういう感覚で浮気をするのだろう?と考えるが分からない。
 
ちー姉はなぜ桃姉と愛し合っているのに、細川さんとの関わりも続けるのだろう。桃姉もなぜちー姉のこと好きなのに、他の恋人を作ろうとするのだろう。千里の元彼の細川さんも、なぜちー姉を振って今の奥さんと結婚したのに、未だにちー姉との関わりを続けるのだろう。
 
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全然分からないや!
 
青葉には、冬子が政子と同棲生活を送る一方で、男性の婚約者・木原さんとの関係もキープしていること、政子さんも冬子さんのこと好きなはずなのに、やはり男性の恋人・松山さんともしばしば会っていることも理解できない。
 
きれいに片付け、お布団は「この布団干してください」というメモを置いて家を出た。シルバー人材センターの人は週に1度は来てくれるはずである。
 
「この家、彪志も自由に使っていいよ。鍵を1本渡しておくから」
と言って彪志に渡した。
 
「これコピーして返せばいい?」
「ううん。そのまま持ってて。震災の後、鍵を付け直したから、その時オリジナルの鍵を3本もらったんだよね。1本は慶子さんに渡して私が2本持っていたんだよ。だから1本は彪志に」
「了解」
 
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「秘密の趣味の道具とかをここに隠してもいいよ」
「特に秘密にしている趣味は無いけど」
「女装したければ私の服を着てもいいけど」
「青葉の服が俺に着れる訳無い」
「確かに」
 

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