広告:まりあ†ほりっく 第1巻 [DVD]
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■東風(16)

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この後、ネットで直接つながっている記者たちとの記者会見は続いたのだが、その先は、話のダイジェストだけが、ΛΛテレビのツイッター・アカウントから流れることになる。
 
アクアの記者会見を生中継できるだけの容量があるメディアは存在しないのでこれはやむを得なかった。
 
なおアクアが
「だったら脱いでみましょうか」
と言った後だが、結局ΛΛテレビのディレクターさんが介入して脱ぐのは禁止!ということになった。
 
「女性の上半身裸を曝す訳にはいかないので」
「だから私、男ですって」
「いや、女性である可能性が濃厚なので困ります」
 
ということでテレビ局が許可しなかったのである!
 
そういうわけで、アクアの性別問題はうやむやのままであった。その後の記者たちの質問も、アクアのデビューに至るまての話、病気療養の話、アクアが赤ちゃんの頃の話などが主であった。
 
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アクアMは精神的にかなり消耗した記者会見を終えた後、上島先生、支香さん、田代の両親、照枝母さん、から各々誕生日のプレゼントをもらって疲れた身体で和紗に送ってもらって代々木のマンションに帰った。
 
荷物が多いので、地下の駐車場に留めて手分けして持って18階まで上がる。龍虎の両手がふさがっていたので、和紗が鍵を開ける。
 
と、クラッカーのシャワーを浴びるので、和紗は思わず荷物を落とした。
 
「あ、ごめん」
と中に居た女子3人。
 
「ごめーん。ケーキの箱落としちゃった」
と和紗。
「あ、ごめーん」
と彩佳。
 
「形崩れても食べれば同じだよ」
 
桐絵が言った。
「和紗さん、西湖ちゃんここに呼んできて、一緒に誕生祝いしませんか?」
「でも多人数の会食は禁止だから」
「パーティーは飲食無し。ソーシャルディスタンス。食事は各自の部屋で」
「だったらいいかな」
 
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「和紗さん、疲れてるでしょ。私が運転しますよ」
と彩佳が言って、それで彩佳と和紗が地下の駐車場に降りて行った。
 
それで結局用賀のマンションで作っていた料理も持って!和紗・彩佳に西湖の3人で戻って来た。
 

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そして夜9時頃から、飲食抜きで、龍虎と西湖の誕生祝いが行われたのであった。
 
ケーキ(龍虎用と西湖用の2個用意)のロウソクは息を吹きかけずに、うちわ!で扇いで消す方式を採った。それで飲食抜きでおしゃべりして、10時には各自の部屋に入る。そして食事は各部屋で食べた。
 
Mの部屋に、彩佳と龍虎、Fの部屋に西湖と和紗、Nの部屋に桐絵と宏恵が入って寝た。Nの部屋には“鏡”(緩菜の黄銅鏡)があるので、ここはセックス禁止である。それで桐絵たちが入った。
 
↓再掲

 
ちなみに、西湖の用賀のマンションにあるのは京平白銅鏡、尾久の羽鳥セシルのマンションにあるのは、緩菜洋銀鏡である。
 
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Fの部屋に入った和紗と西湖は
「ここFさんの部屋だよね。悪いね」
などと言いながらベッドに入る。
 
「でもFちゃんは彼氏とデートだろうしね」
と和紗。
「あの2人急速に進展しているみたい」
「Fちゃんは赤ちゃん産みたいと言い出すかもね」
「赤ちゃんかあ・・・」
「せいちゃんが20歳過ぎたらさ」
「うん?」
「私、赤ちゃん産んでいい?」
と和紗が訊くと、西湖はみるみる内に真っ赤になった。
 
「ボクの赤ちゃん!?」
「コスモス社長からは、せいちゃんが妊娠するのは困るけど、私の妊娠は構わないと言ってもらった」
 
「ボクが妊娠することもあるんだっけ?」
「どうすればせいちゃんが妊娠するのかはよく分からない」
 
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Mの部屋に入った、彩佳と龍虎Mだが
 
「誕生日だし、1回だけは頑張る。でもその後は何もしないで寝ない?」
と龍虎は彩佳に提案した。
 
「うん。いいよ。1回したら寝てて。後は私が全部してあげるね」
 
ひぇー!?やはり1回では済まないか、と龍虎は思いながらも彩佳にキスした。
 

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龍虎Fは今日はずっと八王子の家で、ベッドに寝転がって『ピーターパン』の台本を読みながら、頭の中で役作りをしていた。途中何度か気分転換にプールで泳いだ。
 
まあプールがあると便利ではあるけどね。
 
ちなみにここの水は敷地内に降った雨水を浄化して使うので、水道代はほとんど掛からないという話だった。
 
夕方、理史が自分の車で来る。
 
玄関まで出てキスで迎える。
 
「ハッピーバースデイ」
「ありがと」
 
と言って再度キスする。
 
「入って入って。ごはん作っといたよ」
「悪いね。僕が料理くらい用意しないといけないだろうに」
「理史は日中お仕事あるもん」
「龍は僕の倍、仕事してると思うけど」
「今日はボクの分2件しか無かったよ」
「龍の分だけで2件もあったのか!」
 
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それで理史が持って来たモエドシャンドンのシャンパンで乾杯し、同じく持って来たバースデイケーキに20本のロウソクをつけて吹き消し「ハッピーバースデイ」と言ってキスする。ケーキを切り分けてから、龍虎Fが作っておいた料理を一緒に食べた。
 
「美味しい!龍って料理も上手だよね」
「小さい頃からやらされてたからね。女の子はお料理できないと、いい彼氏を捉まえられないぞと言われてた」
「なんか龍の小さい頃の話し聞いてると、そもそも女子として教育されてる気がするんだけど」
「ボク女の子だし」
 

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「そうだ。龍にプレゼントあるんだけど、受け取ってもらえるかなあ」
「なあに?ボクは基本的にもらえるものはもらうよ」
「そう?」
と言って、理史は小さな紙の袋を取り出した。そして“水色のケース”を取り出す。龍虎はドキッとした。
 
「これをもらってくれない?」
と理史は真剣な顔で言う。
 
龍虎は答えた。
「ボクの指につけてくれたら」
「うん」
 
それで理史は指輪ケースを開けると、中から大粒のダイヤが載っている指輪を取り出し、龍虎の左手薬指に填めてあげた。
 
「ありがとう」
と言って、龍虎は理史にキスをした。
 

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8月21日。
 
この日、主要新聞は、昨日の記者会見のことはあまり大きく取り上げていなかった。
 
テレビ局なども、アクアの両親については、あまり取り上げなかったが、アクアが戸籍を獲得するまでのドラマティックな話は弁護士さんをゲストに迎えて解説したりしていた。
 
「思い切って発表したのに、あまり反響は無かったみたい」
とアクアは言ったが、コスモスは笑って言った。
 
「君の周囲の人たちが言っていた通りだよ。つまり今更なんだよ。アクアが大して売れてないタレントで、親が超有名人だったという発表ならみんな騒ぐ。でもアクアはデビュー以来25枚連続ミリオンなどという前人未踏の記録を続けている。それに対して君のお父さんは言っちゃ悪いけど18年も前に亡くなっていてもう過去の人。知らない人も多かった。だからあまりニュース価値は無かった」
 
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「そんなもんですかねー」
 
「君はデビューする時に言った。親が有名人だからというので騒がれて売れるのは嫌だ。自分の実力で売れるようになりたい。君はまさにその通り、自分の実力だけでビッグになったんだよ。だから今更親が誰かなんて、どうでもいいことだったのさ。だから君が望んだ通りになっただけだよ」
 
「そっかー」
 
「誰もが、高岡猛獅と長野夕香の娘のアクアではなく、美少女タレント・アクアとして見てくれてる。だからこれからも“世界の女優アクア”として頑張ればいい」
 
「ボク男の子なんですけどー」
 
「もう諦めなよ。君を男の子と思ってる人は誰もいないから」
「そんなー」
 
「男を主張するのなら、男性ホルモンの補充療法とか受けてもっと男らしい身体になる?」
「それは嫌なんですよねー。声変わりは絶対起こしたくないし」
 
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「だったら、もう女でいいじゃん。別にちんちん切れとは言わないからさあ」
「うーん」
アクアが悩んでいるようなので言う。
 
「ちんちん切ってもいいよ」
「いやです」
 
「あ、そうそう。NHKから今年はアクアさん紅白は紅組でいいですよね?と照会されたんだけど」
 
「白組でお願いします」
 
「NHK側では、アクアを戸籍上男だからといって白組から出すのは可哀想です、実際は女の子なんだから、ちゃんと紅組から出してあげてくださいというメールとか電話とか大量に着ているらしいんだけど」
 
「そんなこと言われてもボク男の子だし」
 

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紅白に関しては、その後、NHKの部長さんが来訪してアクアと面談した。
 
「視聴者からは、アクアさんは紅組から出してあげてという声が圧倒的なんですよ」
と部長さんは言う。
 
「そんなこと言われても、私、男の子なんですけど」
とアクアは困ったように答える。
 
「こんなに来てるんですよ」
と言って、部長さんはNHKに寄せられた手紙・ハガキの類いを見せる。廊下に待機していたスタッフが段ボール箱を10個ほど積み上げた。
 
「これはほんの一部です。実際はこの100倍あります。その他にメールが200万件、電話も30万件来てます」
 
「ひぇー!」
 
「でも男性歌手が紅組から出たり、女性歌手が白組から出たりしたこともあるんですよ」
と部長さんは言った。
 
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「そんなことあったんですか?」
「和田アキ子さんはだいたい紅組で出ていますが、1度だけ白組からも出ています」
「へー!」
 
あの人なら白組でもいいかもと一瞬アクアは思った(実際には男性歌手とのコラボだったので白組から出た)。
 
「サザンオールスターズの原由子さんはだいたい白組から出ていますが、一度だけソロの歌で紅組から出ています」
 
「ああ、そういうのはありでしょうね」
 
「Pabo(*9)はメンバー全員女性ですけど、白組から出ていますし」
「あれ、そうでした?」
「ゴリエ(*7)さんは紅組から出ましたし」
「そうでしたっけ!?」
「AAA(トリプルエー)は2010-2012は白組、2013年は紅組、2014年は白組、2015年は紅組、2016年は白組です」
 
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「そんなに紅と白を行き来していいんですか?」
 
(*7)Paboは里田まい・スザンヌ・木下優樹菜の女性3人組。紅白では羞恥心(つるの剛士・野久保直樹・上地雄輔の男性3人組)とセット扱いにされて白組から出た。
 
(*8)ゴリエはでガレッジセールのゴリが女装したキャラ。ゴリエを演じている最中は女性に徹しており、トイレも女性スタッフに付き添われて女子トイレを使用していたらしい。紅白では女性2人(Jasmine & Joann) と一緒に歌ったこともあり、紅組から出場している。
 
紅白では男女混成ユニットはメインボーカルの性別で紅白に振り分けるのが原則とはされているが、青い三角定規のように女性メインボーカルなのに白組から出た例もある。男女デュオは紅組から出ることが多いが『カナダからの手紙』を歌った平尾昌晃&畑中葉子は白組から出た。このあたりは紅組・白組の出場人数の都合で調整されている感もある。
 
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「実は最近、紅白では紅組が劣勢でして」
「へー!」
「2012年以降、白が6勝・紅が3勝なんです」
「差が付いてますね!」
 
「だから紅組にテコ入りするのに、人気が高くて、どちらでも出れそうな人にはできるだけ紅組から出て頂いているんですよ」
「なるほどー」
「テコ入れで、アクアさんにも、紅組の応援で紅組から出てもらえませんか?」
 
「うーん。。。紅組が劣勢でそれを応援するのならいいかなあ」
「じゃ、紅組から出て頂けます?」
 
「分かりました。今年は紅組から出ます」
とアクアは言った。
 
「ありがとうございます!」
 

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ということで、アクアは紅組から出ることに同意してしまったのである。
 
むろんここでNHKの部長と話し合ったのはアクアMである。Fなら喜んで紅組から出場したいと言う所だった。
 
話し合いが終わって部長さんが帰ってから、コスモスは
 
「じゃすぐに紅白用に可愛いドレスを発注するね」
と楽しそうに言った(実は発注済み)。
 
「うーん・・・・」
とアクアMは紅組からの出場を同意したことをもう後悔していた。
 

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なお、NHKからは「アクアさん以外に紅組で3組§§ミュージック内から推薦してください」とは言われたのでコスモスは、ラピスラズリ・常滑真音の2組は確実として、あと1人を誰にするか悩み、9月末までに返事することにした。
 
 
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