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■東風(7)
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8月2日(月).
女子バスケットは、まず10:00から、日本とナイジェリアの試合があった、日本はこれに勝つことが前提である(負けたら話にならない)。
しかしさすがに格の違いを見せつけ、日本は終止リードを保った。
(22-30 16-21 19-33 26-18 T.83-102)
ということで102-83で勝利である。
青葉はこの試合を記者証で会場の大宮アリーナに入場し、現地から解説者の三木エレンさんと一緒に実況。試合終了後、千里を含む数人の選手にインタビューした!
千里が青葉からマイクを向けられて仰天していた!
千里姉は、ネットを通した応援に感謝した上で
「第4クォーターで向こうにあんなに点数取られたのは問題」
と不満を漏らしていた。
「でも、きちんと勝って、あとは午後のアメリカ・フランス戦ですね」
「そう。それ次第で運命が決まります」
「アメリカ頑張って欲しいですね」
「ええ。アメリカが勝ってくれることを祈るのみです」
と千里姉は言っていた。
この時点で、日本が予選リーグ2位になる条件は下記のいづれかになることである。
・アメリカが勝つ
・フランスがアメリカに31点以上の大差で勝つ
後者の可能性はほぼ無いので、アメリカが勝ってくれることを祈るしかない。
現時点でA組は順位が確定している(1スペイン2セルビア3カナダ4韓国)。C組は1,2位と3,4位が確定している(1・2:ベルギーと中国、3・4:オーストラリア・プエルトリコ)。B組はナイジェリア4位だけが確定していて1〜3位の順位は、午後のアメリカ−フランス戦次第である。
日本は現在2勝1敗で、A組3位のカナダ(1勝2敗)を勝ち点で上回っているので、決勝トーナメント進出自体は確定である。しかし2位通過と3位通過では、決勝トーナメントで“置かれる位置”がまるで違うので、ここはアメリカが勝ってくれることを祈るのみである。
「1番さん、オリンピックに出られるまで回復したんだね」
と青葉は後で千里3に電話して言った。
青葉が見ていた試合に出ていたのは千里1だったのである。
「予選リーグの3試合は1人1試合ずつ出ることを決めていた。1番は直前まで自信無ーいとか言ってたけど、よくやったと思う」
と千里3は言う。
「会場行ってみたら1番さんがいるから、私びっくりしたよ」
「自分がここに立てるようになったというので、あの子涙してた」
「ほんとにリハビリ頑張ったね」
2017年7月に千里1はいったん死亡し、蘇生したものの全ての能力を失っていた。当時《姫様》は千里姉が霊的な力を取り戻すことはないと言った。それなのにこの4年間のリハビリで霊的な力・音楽的な能力・バスケット能力の全てを取り戻した。驚異的な復活だ。
途中、霊的な力が暴走して、人を性転換しまくったりもしたが!(犠牲者は数十人)石川県X町の切株事件とか東京都B市の通り魔事件のように、千里姉が暴走していたからこそ解決できた事件もあった。
「まあ去年1月の時点で、スリーを入れる力だけではもう亜津子にはほぼ追いついていたんだけどね」
「そういえばそうだった!」
日本の運命を決める、アメリカ対フランスの試合は13:40から始まった。
第1Q、この試合にぜひとも勝ちたいフランスが必死の攻撃でアメリカをリードするも、第2Qでアメリカが少し本気を出して突き放し、前半は44-50である。第3Qではフランスが必死に追いすがり4点差まで詰め寄る。しかし第4Qでアメリカは再び突き放して、最終的には92-83でアメリカが勝った。
(22-19 22-31 23-21 15-22 T.82-93)
この結果、B組は1位アメリカ、2位日本、3位フランスで、アメリカと日本は決勝トーナメント進出が決定。
フランスも得失点差でA組3位のカナダを上回っているので決勝トーナメントに進出するが、同じ決勝トーナメントに進むにしても2位通過と3位通過では組合せの有利不利が出るはずだ。
最終的な決勝トーナメントの進出者と組合せはこの後行われる、C組の2つの試合で決まる。
青葉は16日まで結構時間があくので、熊谷からは離脱して浦和で15日まで過ごすことにした。普通の年なら大船渡でお墓参りもしたい所だが、コロナの折、行かないことにする。慶子さんに送金して、お墓にお供え物だけしてもらった。
石崎部長から
「作曲家アルバムの撮影をしよう」
と言われた。夏休み中でラピスラズリの日程が取りやすいのである。
(でも私、休職中なのに?−そういえば休職中なのに実況アナウンスもしたぞ)
「結局、作曲家アルバムは継続ですか?」
と青葉は部長に尋ねたのだが
「うん。継続・継続。漆野さんとの話し合いでは一応来年の春で終了予定」
「そのあたりで主な作曲家は網羅してしまいそうな気がします」
この時、青葉はなぜ石崎部長が“来年春”という期日を出したのか、その意図を全く知らなかった。
石崎さんがケイさんと話し合って、このような日程が組まれていた。つまりオリンピックの最中にやっちゃおうという魂胆である。
取材日/放送予定日
8.3 8.16 スカイヤーズ(集団取材)
8.4 8.30 サウザンズ(集団取材)
8.5 9.13 スリーピーマイス(集団取材)
8.6 9.27 上野美由貴
8.7 10.11 マリ&ケイ
とうとう“08年組”が登場する。ケイは自分たちより1つ年上の醍醐春海(千里)を先に取材してもらいたかったようだが、千里はオリンピック中で取材不能だったので、先にマリ&ケイをすることになった。
実はスリーピーマイスも2008年デビューで、初期の頃は08年組のイベントに相乗りすることも多かったが、最近は3人が各々忙しいことから、その手のイベントにまではあまり関わっていない。
上野美由貴さんは彼女の曲がメジャーで売られ始めたのは2013年ではあるが、シンガーソングライターとしての活動は2008年から始まっているので、ここに入れることにした。
しかし・・・今回の取材はひたすらハードな取材が続く!と青葉は思った。
女子バスケは、8月2日の夕方・夜にC組の残り2試合が行われ、中国とオーストラリアが勝利。全ての順位が確定した。この結果、日本は総合5位で、総合4位のベルギーと準々決勝では当たることになった。決勝トーナメントの組合わせは下記である。
AUS-USA━━┓
CHN-SRV━━┻┓
BEL-JPN━━┓┣
ESP-FRA━━┻┛
ベルギーに勝った場合は、フランスとスペインの勝者と当たることになる。準々決勝は8月4日、日本は第3試合 17:20 である。
8月3日(火)、スカイヤーズの集団取材は、Pow-eruさんの御自宅に、BunBun, YamYam, Chou-ya の3人が来て、そこに青葉、ケイ、ラピスラズリとカメラマン、ディレクターがお邪魔するという形を取った。
ケイが彼らには“禁酒”をお願いしていたのだが、彼らはお酒が入ってなくても、とっても楽しい人たちだった!(この人たちアルコール入ってなくても酔ってるのでは?と青葉は思った)。
しかし酔っても、扱いにくくなるタイプや、いやらしくなるタイプ(後述)ではないので、高校生のラピスラズリも、楽しく盛り上がって取材をすることができた。YamYamさんが、うまく東雲はるこをノセるので、ふだん発言の少ない、はるこがこの日の取材ではかなりよくしゃべっていた。
8月4日(水)のサウザンズの集団取材は、ケイ!の自宅マンションに、樟南・在杢・獄楽・釜倉・稲邑・釣丘というメンバー6人を招いて、そこで取材を行った。自宅以外で取材するというのは、この番組始まって以来、初めてのことである。これは6人の自宅がどれもあまりにも酷く散らかっていて「とても映せない」ので、6人の中で最も常識人である獄楽さん(顔はヤクザにしか見えないが)のリクエストで「第七のメンバー」ケイの自宅を使うことにしたのである。
「ケイさん、サウザンズのメンバーだったんでしたっけ?」
「洋子はサウザンズの初代チューニング係で、永久名誉メンバーだ」
などと樟南さんは言っていた。“(柊)洋子”はケイがローズ+リリーを始める前の芸名である。
メンバーの中に“音感のある”人が1人もおらず、当時スタジオでバイトしていたケイが見かねて楽器のチューニングをしてあげるようになってから、サウザンズは売れるようになったらしい。それまでは「ただの騒音」と言われていたのである。楽器のチューニングをせずに音感の無いメンバーだけで演奏していたら、確かに騒音以外のなにものでも無かったかもしれない(ピアノまで音がくるっていたらしい)。
実は初期の楽曲は当時公表されていた手書きスコアと後にケイによってリライトされソフトで作られたスコアがまるで違う。初期のスコアに忠実に演奏しようとすると、“音楽”に聞こえない。そもそもソかラか分からない音、ミかファか分からない音など、手書き譜面からは読み取れない音が大量にある。1小節の中に8分音符が9つあったり7つしか無かったりするのも珍しくなかった(要するにスコアも適当に書かれていた)。
もっとも彼らの演奏は気分次第でフレーズが省略されたり唐突に聞いたことないモチーフが挿入されたりするので、同じ演奏は2度と無いとも言われる。歌詞も歌う度にまるで違っていたりする(もしかしたら音楽の本来の形なのかも)。
他の歌手に楽曲を提供する場合“モチーフのかたまり”を渡されるので代々の“チューニング係”がそれを楽曲の形に整理して当該歌手に渡している。でも印税の3割をもらえる。実際、チューニング係との共同作品に近いと思う。でもこの印税は美味しくて、初期のケイもそれで随分活動資金を得ていた。
チューニング係はケイが多忙になった後は、代々“音感のある男の娘”が受け継いできたという。現在5代目のチューニング担当が付いているが、可愛い男の娘高校生で、彼女は女子制服姿を取材のカメラに曝して手を振っていた。
(声も女の子にしか聞こえないので東雲はるこが「本当に男の子なんですか?」と驚いていた)
サウザンズのメンバーにもケイは禁酒をお願いしていたのだが、全く守られてなくて全員アルコール臭かった!でも彼らは酔ってても酔ってなくても無茶苦茶なのて、この日はもう訳の分からない混沌とした取材になった。
ラピスの2人がセクハラ(というより痴漢)されないように、ケイと、まだシラフに近い獄楽さん(「ごめん。ちょっとと思ってビール5缶飲んだ」と言ってた)がガードしていた。青葉はたくさん胸やお尻に触られたけど気にしないことにした。
町田朱美はその中でもしっかりメンバーから色々な話を引き出した(東雲はるこはかなり悲鳴をあげていた)。最終的に編集された番組は、一応放送可能なものになっていた。今回は町田朱美のパワーのお陰で、番組が成立した。
「今日はもうプロレスでした」
などと朱美は言っていた。朱美に抱きついてきた樟南は思いっきり蹴り上げられて10分くらい、うずくまっていた。
「もうこいつ去勢しちゃおうぜ。洋子、良い病院紹介しろよ」
などと在杢から言われていた。
8月4日は女子バスケットの準々決勝が行われたが、この件は後述する。
8月5日(木)はスリーピーマイスの集団取材だったが、これはプロデューサー兼マネージャーのリデルの自宅に、エルシー、ティリー、レイシーの3人が来て、そこにラピスたちが行く形を取った。
それは彼女たちが個人主義で、お互いの自宅の所在地を他のメンバーにも教えない主義でやってきているからである。彼女たちは音源制作でも決して同席しない。各々自分のパートをスタジオに来て吹き込んで帰るというスタイルを取っている。3人はお互いの電話番号やメールアドレスも知らないので連絡は全てリデルを通してしているのである。
町田朱美は
「あのぉ、仲が悪いわけではないんですよね」
と確認する。
「仲はいいと思うなあ」
とティリーは言う。
「お互いのプライバシーには関わりたくないだけだよね。少年隊方式」
とエルシー。
「お互いに尊敬してるよね。最近ではガーネット・クロウもこういう方式だった」
とレイシー。
スリーピーマイスは、楽曲も各々がひとりで詩・曲を書いたものを集めてアルバムを作っている。誰かが詩を書いて、それに他の人が曲を付けるということもない。初期の頃は、エルシーが曲を書いたのにティリーが詩を付けて、レイシーが編曲していた(これがガーネット・クロウ方式に近い)が、最近はそれもしないらしい。
「まあ3人が顔を揃えるのはライブの時たけだね」
とエルシーは言っていた。
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