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■東風(3)

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この日の旅館で、アクアは特別室の個室、ケイナと遠下が同室で、緑川とビーナが同室になっていた。アクアは主役だから特別室、あとの4人は“性別”で2室に分けたものである。
 
「え?ボク緑川さんと同室ですか?」
「ごめんね。予算節約で」
「で、でもボク男の子なんですけど」
「ああ。戸籍上はまだ男なんだっけ。でも性転換手術終わってるんでしょ?詩恩ちゃんから聞いたよ。この事務所ではそういう微妙な性別の子は多いから気にしなくていいよ」
 
なんかボクは女の子である、あるいは女の子になった、というのが既成事実化されつつないか?とビーナは不安を覚えた。
 
もっともビーナは女性不感症なので、緑川さんが着替えたりしていても、特に何も感じない。一応、後ろ向いてたら「純情な子ね」と笑われた。
 
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お風呂については、最初
「ボク今日はお風呂やめときます」
と言ったのだが、仕事上、ちゃんと汗は流しておかないと困ると言われる。
 
「まだ女の子になりたてで恥ずかしいのなら夜中に入るといいよ」
と言われ、本当に夜中0時過ぎに入ることにした。
 
(アクアは特別室なので、部屋にお風呂が付いている。ケイナと遠下は当然男湯に入る)
 

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0時過ぎてから
「お風呂行って来ます」
と緑川さんに言ってから、大浴場に行く。男女分かれている所で男湯の方に入ろうとしたら、そこから従業員さんが出て来て
 
「お客さん、女湯は向こう」
と言われてしまうので
「すみません」
と言って、ドキドキしながら女湯の暖簾をくぐる。
 
幸いにも誰もいないようだったので、おそるおそる服を脱いで浴室に入る。中にも誰もいないので、ビーナはホッとして素早く髪を洗い、身体も洗った。そして湯船に浸かっていたら、話し声がするのでギョッとする。
 
「もう出よう」
と思って、湯船から出て、脱衣場に移動した。
 
入って来た客は女子大生っぽい2人組である。2人はまだ服を脱ぎかけた所だった・
 
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「こんばんわー」
と挨拶されるので、こちらも
「こんばんわ」
と挨拶する。
 
「あれ?松梨詩恩ちゃんじゃないですよね?」
「すみません。詩恩の妹なんです」
とビーナは答える。
 
さすがに女湯で“弟”を名乗る訳にはいかない。
 
「きゃー、妹さん?よく似てるね」
「よく言われます」
「妹さんはデビューしてないの?」
「その内デビューするかも知れないけどまだです。ドラマの端役とかには出てるんですが」
「あ、『青空高校の午後』に出てない?」
「はい。名も無き女生徒役ですけど」
「いや、結構露出してる気がする」
「松梨詩恩ちゃんに似てるね、とか友だちと言ってたんだよ」
「そうか。妹さんだったのか」
「きっと、お姉さん以上の女優さんになるよ」
「ありがとうございます」
「じゃ、頑張ってね」
「はい」
 
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結局彼女たちとエア握手した。
 
それでビーナは素早く下着をつけると、浴衣をはおって彼女たちに会釈し、脱衣室を出た。
 
でもボク、もう男の子タレントとしてデビューすることはできない気がするとビーナは思った。
 
取り敢えず、おっぱいがあって、ちんちんは無い所、しっかり見られたし!
 
(そもそもここまで女役でしか出てないという問題は意識していない)
 

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翌日は三方五湖の周辺で撮影をおこなったが、ここが本当に美しく、アクアにしても、スタンドインのビーナにしても、その美しさに感嘆していた。この日は敦賀市内の女子大生10人を動員して一緒に撮影しているが、彼女たちは一週間前から公共交通機関の使用と外食を禁止し、直前に簡易検査キットでコロナ陰性を確認している。
 
でもみんな暑い!と言っていた。
 
(アイスを食べたり冷たいお茶を飲んだりネッククーラーで身体を冷やしたりして撮影は進められた)
 
ビーナは撮影されていて、これはスタンドイン無しでは撮影不能だと思った。元々冬用の服を着ているし、それでなくても暑いし。
 
実は昨年はスタンドイン無しで演じたケイナが倒れる寸前だったので、今回はケイナはギャラ自費!で遠下をスタンドイン役に連れてきていた(宿泊費や交通費は§§ミュージックが出してくれた)。
 
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撮影は日曜日の夕方終わったが、メーカーさんは
 
「いい絵が撮れました。来年もよろしく」
と言っていた。
 
来年もこの真夏の撮影をするのか!?
 
小浜に移動して夕食を取ってから、Honda-JetRedで郷愁飛行場に戻り、アクアとビーナはSCCのドライバーさんが運転する車で緑川と一緒に東京に戻ったが、ケイナと遠下はとても東京に帰る体力が無かったので、ホテル昭和の本館に部屋を取ってもらい、翌日の夕方!まで寝ていた(結果的に2泊した)。
 
ケイナと遠下が泊まった部屋は、布団がくっつけて敷いてあったので、どうも男女の泊まり客と思われたようであった。ケイナと遠下は
「どちらが男と思われたんだと思う?」
と言い合った。
 
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ちなみにビーナは2人のことをどちらも女性と思い込んでいた!
 

今年のビデオガールコンテストの優勝者および上位入賞して信濃町ガールズに入る子たちはだいたい7月中に§§ミュージックの寮に引っ越してきた。
 
2階に住んでいた唯一の高校生・大仙イリヤは7/20に3階に移動してもらった。この引越は、仲の良い安原祥子・山本コリンなど、更にはわざわざ男子寮から篠原倉光に頼まれたと言ってセレンとクロムが来て手伝ってくれた(篠原君は舞音の音源制作で熊谷に行っている)。この男の娘2人は大いに戦力になった。
 
7/20に都内在住の鈴木春南が男子寮2F 203号室に入居した。転校手続きはお母さんが自身でして、すぐ女子制服(?)も作っていた(本人は学生服で通学するが女子制服も持っていたいらしい)。
 
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同じ7/20 徳島の四宮七菜がG450で荷物ごと飛んで来て、女子寮2Fに入居した。この日 水泳の津幡組の移動にはA318を使用している。
 
鈴木春南・四宮七菜が男子寮・女子寮の入寮第1号であった。
 
7/21に函館市近郊・江差町から風谷リンゴが、G450で荷物ごと飛んできて女子寮3Fに入居した。彼女は私立中学に入れるので、佐々木春夏が連れて行き転入の手続きをした。
 
同日、愛知県の成瀬久美は、お父さんが荷物をワゴン車に積んで東名を走ってきて女子寮2Fに入居した。
 
7/22には富山県の広中礼音が、G450で富山空港から荷物ごと飛んできて、男子寮204号室に入居した。彼は私立中学に入れる(リンゴとは別の学校)ので、佐々木がその手続きをした。
 
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同日、福岡県の森田浩絵はA318で北九州空港から郷愁飛行場に飛び、荷物を運んで来て女子寮2Fに入居した。
 
最後の移動になったのが池田芽衣である。彼女は7/24に与那国空港からG450で荷物ごと移動してきた。遠距離なので、引越を手伝った家族は翌日G450で与那国に戻っていった。
 
リンゴ以外の女子は、足立区の公立中学に(女子として)転入するので、全員そろった所でまとめて佐々木が連れて行き、手続きを済ませた。
 

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新人の加入により、女子寮の2-3F, 男子寮の2-3Fはこのようになった。
 
女子寮3F 8人(7室)
広原恵美(左蔵真未)、魚中広菜(山本コリン)、植野純央(豊科リエナ)、溝口千歌(水谷康恵)・溝口双乃(水谷雪花:千歌と同室)、横山朋菜(箱崎マイコ)、酒井青花(大仙イリヤ)、風谷リンゴ
 
女子寮2F 7人
佐藤晴恵(鹿野カリナ)、森村雪子(鈴鹿あまめ)、平良百合(花貝パール)、池田芽衣、四宮七菜、森田浩絵、成瀬久美
 
男子寮3F 3人(不変)
末次一葉(花園裕紀)、篠原倉光、柴田数紀(水森ビーナ)
 
男子寮2F 4人
広中礼音、鈴木春南、須舞恵夢(山鹿クロム)、菱田ユカリ(三陸セレン)
 
春南はすぐに恵夢・ユカリと仲よくなり、いつも3人でセーラー服を着て、フロントかキュアルームで見るようになる。(女子中学生が3人おしゃべりしているようにしか見えない)
 
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礼音が「ここ女子寮生もいるんですか?」と戸惑うようにユキさんに尋ねていた!
 

五反野の§§ミュージック女子寮の裏手には、かなり老朽化した5階建ての賃貸マンションが建っていたのだが、7月下旬、その周囲に工事用フェンスが建てられ、やがて工事する音が聞こえてくる。そしてフェンスの所には
 
《パレ・ドラ・メール2号館建築工事》
と書かれていたので、女子寮の住人たちの間ですぐ話題になる。
 
「とうとう、第2女子寮の建設ですか?」
と副寮母の花ちゃんに質問が来る。
 
「来年にはあふれるの確実だからね」
と花ちゃんは答える。
 
「女子寮の建設って幾らくらい掛かるんですか?」
「さあ。聞いてないけど、今の女子寮は20億掛かったはず」
「きゃー。新しい寮も同じくらいですかね」
「まあそんなものじゃないの」
 
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2015年に建てた現在の女子寮はアクアが好調だったため建設費を銀行が10年ローンで融資してくれたが実際には2年で完済している。そして今回は土地代3億円も建築費12億円もキャッシュで払っている。現在§§ミュージックは無借金経営である。
 
工事をするのはムーラン建設である!播磨工務店より少し高くなるが、安心感がある。播磨工務店だと無茶苦茶速いし安いが、出入口のない部屋が出来ていたりしかねない。しかしムーラン建設でも普通の工務店の半額以下だと思う。
 
ちなみに古いマンションは不動産会社の所有で、そこから実質土地代だけで買いとった。そこに住人が3家族だけ入居していたので、比較的近くのもっと新しいマンションを確保してそちらを斡旋し、転居料も払って移動してもらっている。古いマンションを崩すのは播磨工務店“茶組”(斫り専門部隊)に頼んだが、彼らは1晩で撤去してくれた(単にどこかの山奥に持ってっただけかも?)。実はこれで建築費を4億は節約できた。
 
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裏手でマンション工事が始まった翌日には、本棟の前面にも、10m×5mほどの建物が建てられ始め、これは建物自体はわずか3日でできてしまった。
 
こちらは“臨時厨房”である。これまでも寮に住んでいる人数に比して厨房が狭すぎて、コロナが発生する前まで食堂に使っていた部屋まで現在配膳室として使用して何とか凌いでいたのだが、取り敢えず厨房をこの新しい建物に移動することにした。1階が食料倉庫と更衣室で、2階が調理室である。そしてこの2階と女子寮2階の間に渡り廊下を設置した。調理係自体も1人増やして6人体制になっている。
 
実は、新女子寮ができたら、現在本棟に住んでいる3人にいったんそちらに移ってもらい、本棟を建て替える(研修室・練習室を増やす)つもりなのだが、厨房は既に逼迫しているので、臨時厨房を作ることにした。調理設備などを1日で移動して、1日だけ昼食の提供を休んだ(その日に昼食の欲しい子にはお弁当を配った)だけで、夕方から新しい厨房で食事の作成ができるようになった。
 
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またここに旅館藍小浜などで導入されている自動配膳システムも一週間ほどの工事で造り込んでいる。これで配膳係のひまわり・亜蘭の負荷がかなり小さくなった。各フロアまでは自動で運ばれているので、そこから各部屋に配膳すればよい(2人だけでは辛いとこぼしていた)。
 

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2021年7月24日(土)友引・みつ・満月。
 
川崎ゆりこは各報道機関にFAXを送り、この日朝10時に“芸能人ではない男性”との婚姻届けを目黒区役所に提出したことを発表した。結婚式・披露宴は、多忙につき行わないとした。
 
ゆりこが男性と交際していたなどとは誰も知らなかったので驚かれた(コスモスだけは今年中に結婚したいと聞いていた)。多数の報道機関が記者会見を開いて欲しいと要求したので、結局この日の夕方あけぼのテレビで“ゆりこ単独”で記者会見を開いた。
 
「あのぉ、結婚相手の方は」
「非芸能人ですので、こういう場に出すのは勘弁して下さい」
「おのぉ、お名前だけでも」
「非芸能人ですので、匿名で」
「ご職業だけでも教えてください」
「会社員です」
「日本人でしょうか?」
「日本人に見えます」
「ご出身は?」
「九州です」
「男性でしょうか?女性でしょうか?」
「ちんちん付いてたので、たぶん男性たと思います。婚姻届けも受理されましたし。私はたぶん女だと思うし」
「既に同居なさっていますか?」
「都心にマンションを1個買って、そこで今日から一緒に暮らし始めました。今夜初夜になります」
 
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といった感じで、結局記者たちは、ゆりこからほとんど情報を引き出せなかった!
 
しかし、情報はゆりこの周囲から少しずつ漏れて、一週間ほどの後には、ゆりこの結婚相手が、あけぼのテレビ技術部長の、則竹星児であることが、ネット民たちには知られることとなる。
 

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則竹星児は1985年、長崎県吉井町(後に佐世保市に併合)生まれである。
 
佐世保西高から九州大学工学部に進学し、2008年3月に卒業。★★レコード東京本社に入社して、技術部に所属。ローズ+リリーの覆面ユニット“ロリータスプラウト”の制作に関わった。それが縁で、ローズ+リリーの制作にその後も深く関わっていた。
 
彼は“自由人”で、元々あまり会社勤めには向かない性格である。松前社長時代は会社全体に自由な雰囲気があったので、技術部長から勤務態度(遅刻や無断欠勤が多いし納期を全然守らない)を注意されながらも、のびのびと仕事をしていたが、2017年に社長か村上に交替してからは社内の雰囲気が変わったのを嫌って退職した。
 
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その後、横浜のSF音楽学院という所でシンセサイザの講師を2年間したが、彼を可愛がってくれていた、八重美城校長が退職したのを機に、そこを辞めた。そしてフリーになっていたのを、ローズ+リリーのケイがスカウト。2019年秋に、新設したサマーガールズ出版の映像部門の技術担当に就任する。このサマーガールズ出版の映像部門が2020年1月に、§§ミュージックの映像制作部門と合流し、株式会社サンシャイン映像制作が設立された。則竹はこの会社の技術部長に就任した。この会社は会長がケイ、社長がコスモス、副社長が近藤七星と川崎ゆりこ(いづれも名前だけ)という会社で、則竹は、肩書きは部長でも事実上の会社トップである。
 
ところが2020年3月に、§§ミュージックが中心になって“あけぼのテレビ”を立ち上げると、その番組制作をサンシャイン映像制作が全面的に担当することになり、彼は事実上、あけぼのテレビの放送業務を統括することになったのである。
 
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土日を除くと夕方から仕事が始まり深夜までという業務サイクルは、朝に弱い彼にとって理想的な勤務環境となった。
 
(現在でも彼は正確には“あけぼのテレビ”ではなく“サンシャイン映像制作”の部長である)
 

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